ABO FAN


よくある質問 [新バージョン]…現在作成中です

 Ver.1は平成9年に書いたのですが、その後にあちこちから情報や刺激をいたただいたり(ありがとうございます*1)、いろいろな調査*2をしたり したので、かなり書き直す必要が出てきました。とは言っても、なかなか書き直すきっかけがなく、ず〜とそのままになっていたのですが、やっと重い腰をあげて書き直すことにしました。

 ですから、このページは、いわばABOFAN10年の集大成です。(ちょっと恥ずかしい・苦笑)

*1 Special Thanks to 新・血液型性格診断のO型管理人さん m(._.)m
*2 参考文献としては、松田薫さんの『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』、白佐俊憲・井口拓自さんの『血液型性格研究入門』がオススメです。残念ながら、現在はどちらも絶版 のため入手不可のようです。

  

FAQリスト

【基本編】
■血液型で性格はわかるの?
■血液型は4種類しかないから性格も4種類しかないの?
■血液型と性格の研究は誰が始めたの?
■心理学者に否定されているのでは?
■歴史的に決着済みなの?
■調査によって結果が違うの?
■心理学者の研究でバッチリ差が出ているのってあるの?
■差があるといっても小さすぎるのでは?
■外国でも流行ってるの?
■外国でも研究されてるの?
■欧米人は本当に自分の血液型を知らないの?

【歴史編】
■血液型と性格ってなぜ広まったの?
■血液型ブームって昔もあったの?
■旧日本軍ではどんな研究をしていたの?

【人物編】
■能見正比古さんってどんな人?
■前川輝光さんってどんな人?
■古川竹二さんってどんな人?
■原来復さんってどんな人?
■目黒夫妻ってどんな人?
■古畑種基さんってどんな人?
■朝田一さんってどんな人?
■大村政男さんってどんな人?
■サトウタツヤさんってどんな人?
■菊池聡さんってどんな人?

【統計編】
■首相にO型が多いってホント?
■血液型に向いたスポーツってあるの?

【科学編】
■血液型って何?
■血液型って何のためにあるの?
■人類最初の血液型はA型だった?
■骨髄移植をすると血液型は変わるの?
■血液型って変わることがあるの?
■脳に血液型はないの?
■歴史上の人物の血液型ってどうやって調べるの?
■B型はノロウイルスに強いってホント?
■珍しい血液型ってどんなのがあるの?
■血液型で体型が違う?
■血液型の比率って変わることがあるの?
■人間以外の動物の血液型は?
■植物にも血液型ってあるの?

【マニア編】 v(^^)
■心理学でちゃんと研究されてるの?[論点の変化]
■FBI効果ってどんなもの?
■性格検査を血液型でチェックすると?[ビッグファイブの問題点]
■多重比較をしていないのはおかしいのでは?
■ランダムサンプリングしないでいいの?
■血液型による性格って男性と女性で違う?
■ABO式以外の血液型でも性格が違うの?
■血液型と性格って疑似科学なんじゃない?
■2004年のBPOの要望って何?
■胎児期には血液型遺伝子が神経に大発生!
■医学的な根拠があるってホント?
■ABO式血液型が発見されたのって1900年?1901年?
■マニア向けの文献を紹介してほしい(笑)

【ダークサイド編】
■血液型差別ってひどいんじゃない!
■ナチスドイツが血液型差別のルーツってホント?

注1 上のページ内リンクは、IEしか使えません
注2 リンクがないものは作成予定のものです

血液型で性格はわかるの?

 これは、昔から非常によくある質問ですね。実は、この質問に正確に答えるのは至難の業です。ということで、まずは私の尊敬する血液型と性格のパイオニア、能見正比古さん*1に登場していただくことにしましょう。

 以下は、彼の著書『血液型エッセンス』の34ページからです。

「血液型で性格が判るんですか?」
と問われると、一瞬とまどう、まあ、相手の質問の意図は察知できるから、
「ハイ、わかりますよ」
とは答えるものの、やはり抵抗を感ずる。それは「性格が判るか?」という部分に対してである。そもそも性格とは、どんなもので、人体のいかなる構造(メカニズム)から発しているのかは、現在の科学では、まるで判っていないからだ。それを少しでも判ろうとして、血液型を手がかりに苦労している。もし、正しい答え方をするなら、次の言い方であろう。
「ハイ、血液型ごとに、いろんな行動の特徴が、見出せますよ」

 『血液型エッセンス』が昭和52年に出版されてから、30年ほどがたちましたが、現在でもほとんど事情は変わっていません。遺伝子やゲノムの研究が進んでも、性格の実体や、いったいどんなメカニズムで性格が決定されるのか…などなど、真相はまだ藪の中と言っていいでしょう。

 しかし、そんなことを言ってもはじまりませんし、皆さんと共通の前提がないと全然話になりません。
 ですので、私のホームページでは、性格心理学*2の定義する性格を、一応正しいものとして扱うことにします。

 実は、性格心理学での性格の定義もいろいろあるのですが、ここでは心理学の性格検査(心理テスト)のデータをメインに扱う*3ことにしましょう。 つまり、心理学の手法をそのままそっくり使う、ということです。

 さて、元に戻ると、性格心理学の定義では、性格は行動に現れることになっていますから、能見さんの言うように「血液型ごとに、いろんな行動の特徴が、見出せます」ということになります。

 なお、私のホームページで「血液型」と言った場合、特に断りがない限りABO式血液型のことです。この理由も簡単で、一番文献が多い*4からです。

*1 大正14年(1925年)生、金沢市出身、B型、昭和56年(1981年)没。東京大学工学部卒、同法学部中退。三木鶏郎文芸部に参加し、放送作家の道に入る。昭和46年(1971年)に出版した『血液型でわかる相性』がベストセラーとなり、戦後の血液型ブームの火付け役となる。代表作は『血液型人間学』『血液型愛情学』 『血液型活用学』
*2 最近は「パーソナリティ心理学」というらしいですが…
*3 その理由は簡単で、血液型と性格について、一番文献が多いことと、比較的結果が数値化しやすいからです。
*4 例は少ないですが、他の血液型でも研究はされています。例えば、R.B.キャッテルの研究では、P式などに有意な差が出ています。

H20.8.17作成

詳しくは血液型と性格の謎を推理するをどうぞ!

【参考】心理学者の意見

 菊池聡さん 不可思議現象心理学9 血液型信仰のナゾ−後編 月刊『百科』 平凡社 平成10年3月号 28〜29ページ  (太字は私)

ただ、最近は血液型性格判断を撲滅しようという意識ばかりが先走って、適切でない批判をする人も散見される。…

性格とは血液型のように生まれつき定まるものではなく、育ってきた環境によって決まるものだ、という反論もある。性格の発達にとって環境要因が決定的であることは確かである。しかし、新生児でも敏感さや気分の安定性などが子どもによって異なることも知られており、性格における遺伝的要因は決して無視できるわけではない。

血液型が性格に影響を与えるメカニズムが明らかでないことを批判点として挙げる人もいる。説明原理の不在は科学理論として決して望ましいものではないが、現実に承認されている他の科学理論にも詳しいメカニズムが不明なものはある。メカニズムを解明しようとしない血液型学の提唱者を批判することはできても、理論自体をこの点だけから批判するのはフェアではない。

血液型は4種類しかないから性格も4種類しかないの?

 どうも、こういう誤解が広まっているようですね。例えば、男女、国民性、県民性、職業、年齢などで性格が違うと言った場合、普通はその種類によって100%性格が決まるとは言いません。せいぜい、○○の傾向があるというぐらいでしょう。
 血液型だけがなぜ100%性格が決まるように言われるのか不思議です。実際にデータを取ってみても100%当たることはまずありません。

 しつこいようですが、血液型で性格はわかるの?で書いたとおり、4種類の血液型でその人の性格が完全に決まるということは ないのです!

 せいぜい、ある程度の影響はあるといったところです。これは、男女、国民性、県民性、職業、年齢などで性格が違うというのと同レベルの状態です。 この点は、心理学者の菊池聡さんもこう書いています(太字は私)。

菊池聡さん[信州大学准教授] 不可思議現象心理学9 血液型信仰のナゾ−後編 月刊『百科』 平凡社 平成10年3月号 28〜29ページ

ただ、最近は血液型性格判断を撲滅しようという意識ばかりが先走って、適切でない批判をする人も散見される。よく聞くのは「多様な人の性格が四つになんか分けられるはずがない」という批判である。しかし「何らかの基準によって四つに分ける発想」自体には本質的に問題はないのである。もちろん境界線上であいまいに分類される欠点はあるが、この発想自体は心理学でも類型論という考え方で受け入れられている。…

血液型性格学への批判は確かに重要だが不適切な批判で満足しているとすれば、それは非論理性という点では相手と同じ穴のムジナになりかねないことに注意しなければなるまい。

H20.8.17作成

【参考】血液型十戒

 もちろん、私も「AB型だから○○の性格」といわれるのはあまり好きではありません(笑)。そこで、 能見正比古さんの『血液型エッセンス』(192〜196ページ)に書いてある血液型十戒をここにも書いておきましょう。

  1. 血液型で、人の性格を、決め付けてはいけない。
  2. 血液型が、性格のすべてであると思ってはいけない。
  3. 血液型で善悪を分けたり、人を非難してはならない。
  4. 血液型で頭の良し悪しをいってはいけない。
  5. 血液型で、性格は、もう変わらないと早合点してはいけない。
  6. 血液型は適性適職に対して重要だが、それですべてを決めてはならない。
  7. 成功や業績は人間の努力の結果、それを血液型で割り引いてはならない。
  8. 血液型と性格の関係分野を、医者の領分とカン違いしてはいけない。
  9. 血液型を、占いの一種と思ってはいけない。
  10. 血液型による違いより、人間どうし共通性がはるかに大きいと思うべきである。

血液型と性格の研究は誰が始めたの?

 世界で初めて、血液型と性格の関係を示唆した論文は、大正5年(1916年)に日赤長野支部の医師である原来復さん(東大卒、A型)と小林栄さんが発表した「血液ノ類属的構造ニ就イテ」(『医事新報』954号)とされています。

 しかし、血液型と性格の関係があるという説は、昭和初期の教育学者・心理学者である古川竹二さん*1(A型)によって有名になったため、彼が実質的な提唱者であるといっても過言ではありません。

 彼の最初の論文は、昭和2年8月の『心理学研究』に掲載された「血液型による気質の研究」です。昭和7年には、研究の集大成とも言える『血液型と気質』が三省堂から発行されています。

 古川説は、一時は旧軍部にまで研究される有力な説だったのですが、結局学会*2で支持を得られず消え去っていきます。この経過については、松田薫さん(AB型)の『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』に詳しく書かれています。非常に詳しく書いてありますので、興味がある方は読んでみるといいでしょう。

*1 明治24年(1891年)生、昭和15年(1940年)没。東京大学卒、心理学者、教育学者、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)教授。
*2 意外なことに、主な議論は法医学会などで行われ、心理学会では正味4件の論文しかありません。 →歴史的に決着済みなの?

H20.8.17作成

詳しくは古川説の再検討をどうぞ!

心理学者に否定されているのでは?

 これまたよく聞く意見です。しかし、詳しく調べてみると、いろいろな心理学者がいろいろなことを言っていますし、さらに、時期によって内容も微妙に変わってきているようです。そこで、ここでは、血液型の性格の研究で有名な心理学者、立命館大学教授のサトウタツヤ(佐藤達哉 、立命館大学教授)さんの意見を聞いてみましょう。現在入手できる最新の文献からの引用です(太字は私)。

朝日新聞 平成20年7月20日号 be 「常識ずらしの心理学B」 サトウタツヤさん

血液型と性格に関することは、学校など正統的な学問の場では習わない知識だ。学問的には承認されていないからである。ではなぜ心理学者たちはこの説が正しくないと言うのか。歴史的に見て決着済みというのが一つ。調査をしても一貫した結果が出てこないという理由もある。ステレオタイプにすぎず偏見を作っているというのも理由の一つである。

 要するに、その理由は大きく分けて2つあり、

 ということになります。

 では、まず、最初の「歴史的に見て決着済み」について考えてみることにしましょう。

歴史的に決着済みなの?

 「歴史的に見て決着済み」というのは、戦前の古川説のことでしょう。 血液型と性格の研究は誰が始めたの?

 確かに、昭和7年(長崎)と昭和8年(岡山)での日本法医学会で古川説は実質的に否定された、と考えていいと思います。ただし、これはあくまでも「法医学」の見解です*1

 実際に戦前の文献を調べてみて意外だったのは、心理学の論文がほとんどないことです。私が調べた限り、学術誌に掲載されたのは、以下の6件だけ*2です。古川さん自身のものを除くと4件ですから、正味は4件ということになります。

 賛成派

 反対派

 ですので、素直に考えると、心理学では「歴史的に決着済み」とは思えません。
 それを裏付けるように、心理学では戦後の本でも「血液型と性格」は否定されていないようです。例えば、割と肯定的なものに次の2つがあります。

*1 私が調べた限り、以前は古川説に賛成していた、当時の血液型の権威で東京大学教授(法医学)だった古畑種基さん(AB型)が反対の立場に回り、学会では否定される結果になったようです。
*2
独自の研究かつある程度の分量があるもの(1ページ以下や、レビューのみのものは除く)

H20.8.17作成

詳しくは古川説の再検討をどうぞ!

調査によって結果が違うの?

 「調査をしても一貫した結果が出こない」とのは、たぶん心理学の性格検査のことでしょう。

 ところで、普通の性格検査はぺーパーテストです。数十から数百の質問項目に、自分があてはまるかどうかチェックしていくアレです。

 この手の性格検査は、簡単に実施できて数値化も可能というメリットがありますが、反面、自分の感じていることをそのまま集計するため、どうしても結果に本人の主観が入ってきてしまうというデメリットがあります。つまり、他人から見た性格や行動ではなく、あくまでの自分から見た性格が検査結果に反映されることになるのです。

 これを、血液型で考えるとどうなるでしょうか?

 実は、日本人の70%程度は血液型と性格に関係があると思っているのです。そう思っている人の多くは、「×型は○○な性格」と感じているはずです。もちろん、「×型は○○な性格」はかなりの部分一致しています。そうじゃないと、血液型の話が盛り上がりませんから当然ですよね(笑)。

【参考】血液型と性格に関係があると思っている日本人の割合

1.血液型と人の性格は関係ありそうだ(無作為抽出の首都圏15〜69歳の住民1,102名)

回    答

回答率

そう思う 75.0%
そう思わない 18.4%
どちらともいえない  5.9%
わからない・無回答  0.6%

出典:昭和61年NHK世論調査資料

2.あなたは、血液型と人の性格や相性と関係あると思いますか?(無作為抽出の全国20歳以上の男女2,320名)

回    答

回答率

関係あると思う 18%
多少関係あると思う 46%
関係ないと思う 21%
わからない 14%
無回答  1%

出典:昭和62年毎日新聞「こころの時代」全国世論調査

 なお、1.2のデータは、草野直樹さんの『「血液型性格判断」の虚実』から引用させていただきました。どうもありがとうございます。

3. 血液型と性格は関係していると思いますか?(無料メール転送サービスCLUB BBQの会員506名[血液型不明者30名])

出典:アイシェアの調査結果(2008.6.5付)

 例えば、「A型は神経質」というような“有名”な特性(いわゆる「信念」や「ステレオタイプ」)を質問すれば、必ずA型は神経質が多いという結果が出ます。なぜなら、本当にA型は神経質かどうかは別として、そう信じている人が大多数なのですから…。

 具体例を書いておきます。

 下の表は、佐藤達哉さんの論文からのものです。他人から見たA型のイメージとしては、「几帳面」「神経質」「真面目」が多いことがわかります。

表1 各血液型のイメージ(N=197) →A型の回答が多いものだけを抜粋*1

回答\血液型

A O B AB 合計

几帳面

111 0 0 0 111
神経質 77 1 1 3 80
真面目 54 0 0 3 57

 実際に性格検査のデータに当たってみると、ほとんどはA型が神経質のスコアが高いという結果が出ています。まぁ、当然と言えば当然ですね。
 もし、差が現れないとすれば、サンプル数が少ないか、質問がよくなかった(「神経質」といった質問がない)ということになります。
 こうなると、(日本の)心理学の性格検査のデータなら、「調査をすると必ず一貫した結果が出る」*2*3はずなのですが…。

*1 『現代のエスプリ〜血液型と性格』 No.324 「プラットタイプ・ハラスメント」 至文堂 H6 より(元のデータは上瀬由美子さんのもの)
*2 平成4年の坂元章さんの論文、平成11年の白佐俊憲さんの論文などで、この予想が裏付けられています。
*3 平成19年(2007年)には、世界中のデータを分析した韓国・延世大学の孫栄宇教授の論文が発表され、「血液型と性格」の関係を裏付ける結果が得られています。

H20.8.17作成 H20.10.13更新

詳しくは否定論者の自己矛盾!?をどうぞ!

心理学者の研究でバッチリ差が出ているのってあるの?

 実は、心理学者の研究で、バッチリ差が出ているものがあったのです。今度はそれを紹介しておきましょう。

 それは、大村政男さんのデータで、クロニンジャーのパーソナリティ理論(TPQ*1)を使ったものです。これらの内容は、平成16年10月7日の『スパスパ人間学!』と、平成16年12月28日 の『ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント!本当の自分&相性探し来年こそは開運SP!』で放映されました。ここでは、わかりやすい後者のデータを引用しておきます。

各血液型の血液型傾向の平均値

回答\血液型 A O B AB
損害回避傾向(慎重さ) 48.7 27.7 30.7 54.0
新規性追求傾向(好奇心) 32.4 41.8 31.7 59.0
報酬依存傾向(人付き合い) 37.2 34.1 54 67.5

《番組ホームページのデータ》

 慎重なA型、好奇心旺盛なB型、人間関係に気を遣うO型と、それぞれ血液型別の傾向がよく現れているといっていいでしょう。

 ただ、不思議なことに、この実験の追試は行われていませんし、データも明らかにされていません。心理学者からの批判も、私が知る限りたった1件だけ*3です。

 なお、この他にも差が出ている文献はいくつかあります*4*5*6*7が、あまり有名ではないようです。

*1 TPQでは、新規性追求がドーパミンに、損害回避がセロトニンに、報酬依存がノルエピネフリン(ノルアドレナリン)に関連づけられて考えられています
*2 当初発表されたTPQの3因子モデルが改訂され、最近はTCIの4因子モデルが使われています
*3 上村 晃弘、サトウ タツヤさん 疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性 日本パーソナリティ心理学会 パーソナリティ研究 Vol. 15 (2006) , No. 1 (2006) pp.33-47
*4 山崎賢治、坂元章さん 血液型ステレオタイプによる自己成就現象−全国調査の時系列分析− 日本社会心理学会第33回大会発表論文集 pp342-245 1992
*5 山崎賢治、坂元章さん 血液型ステレオタイプによる自己成就現象−全国調査の時系列分析− 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 pp288-291 1991
*6 白佐俊憲さん 血液型性格判断の妥当性の検討(2) 北海道女子大学短期大学部研究紀要 36, pp1-18, 1999 (浅井学園大学)
*7 山岡重行さん 
血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の影響 日本社会心理学会第47回発表論文集 2006

H20.8.21作成 H20.11.16更新

詳しくは大村政男さん の転向の謎を推理する坂元章さんの論文白佐俊憲さんの論文週刊ダイヤモンドの記事をどうぞ!

差があるといっても小さすぎるのでは?

 私が知る範囲では、2〜3年前から懐疑論者の間でポピュラーになってきた主張です。少なくとも、数年前にはなかった記憶しています。
 さて、ここで問題になるのは、「小さな差」と「大きな差」の定義です。あるいは、「弱い関係」と「強い関係」と言い替えてもいいでしょう。

 いくつか文献を読んでみたところ、どうやら1%程度の差なら「小さな差」とされているようです*1*2*3。しかし、私の知る限り、「大きな差」を明確に定義している文献は皆無で、これでは議論になりません。なぜでしょうね?

 と、ブツブツ言っても始まらないので、実際のデータに当たってみることにしましょう。

 ここでは、わかりやすいように、「ルールや慣習や秩序を重視する」と回答した人の比率で考えることにします

 最初にデータ*4を示しておきます

血液型 回答者数 比  率
29.7% 57.7%
36.7% 54.7%
22.5% 50.7%
AB 11.1% 41.2%
合計  613人   −

 ほぼ予想どおり、O≒A>B>ABの順になっています。

 思ったより差が小さいと思う人もいると思います。では、この程度の差で「大きな差」が出るのでしょうか?

 実は、この程度の差でも「大きな差」が出ると考えるのが自然です。というのは、平均を中心にグラフを書いてみると分かりますが、ある基準以上(または以下)の人の割合は血液型によって数十パーセントは違うからです 。具体的には、BやCより大きい部分だけで比較すれば、O型はAB型より圧倒的に多く、確かに「大きな差」はあるといえます。下がそのイメージ図です。

 

  当然のことながら、Aより大きい部分で比較すれば、出現確率が数十パーセントも違うということはありません。ほとんど差はない、と言ってもいいでしょぅ。

 つまりこういうことです。

 「大きな差」という定義があいまいなのです!

 あるいは、こういうことも言えるはずです。差が1%程度の「小さな差」がある可能性を認めてしまえば、「大きな差」がないことを否定することはできなくなってしまうのです。

 結局、「大きな差」か「小さな差」なのかは、環境や条件次第で変わる(A、B、Cのどの点を基準とするか)、と考えるしかないようです。

*1 長谷川さん(岡山大学)の批判的思考のための「血液型性格判断」(2005年発表)
*2 菊池誠さん(大阪大学)の岐阜県産業技術センター(2007/4/19)資料
*3 興味深いことに、これらの文献では「小さな差」が存在することは、暗黙裏に認めているようです
*4 詫摩武俊・松井豊 S60 血液型ステレオタイプについて 東京都立大学人文学報 第172巻 15〜30ページ
*5 上の表のデータで、A
B型とAB型以外に分けて予測力(決定係数に相当)を計算すると約5%(ユールのQの値を計算すると0.258で、その2乗)で、好奇心に影響を与える遺伝子のD4DRと同程度ですから、必ずしも「小さい差」ではないと思うんですが?

H20.8.21作成 H20.9.14変更

詳しくは懐疑論者の自己矛盾!?大きな差?小さな差?をどうぞ!

外国でも研究されてるの?

 もちろん、欧米でも研究されていますし、最近では中国・韓国・台湾などのアジア諸国でも論文が発表されています。ここでは、私のサイトで取り上げられているものを紹介するだけにとどめておきます。

 心理学者の井口拓自・白佐俊憲さんも、日本だけでしか研究されていないという誤解に対して、このように批判的な意見を述べています。

『現代のエスプリ〜血液型と性格』 海外における「血液型と性格」の研究 井口拓自、白佐俊憲

あまり知られていない海外の「血液型と性格」の研究

血液型性格判断をめぐる論議の中で、海外では血液型と性格について、ほとんど研究もされていなければ話題にもなっていない、ということがこれまでたびたび書かれてきた。
そして、それは「だからやっぱり血液型と性格など関係はないのだ」という主張を補強する材料となってきたように思われる。「海外でやっていないからまやかしだ」あるいは「海外でやっているから正当だ」といった主張は単なる舶来崇拝主義のようで、あまり説得力のある議論とは思えない。しかし、 その前にまずは事実の確認をしてみることも大切なことだろう。

H20.8.21作成

詳しくは 英語版のデータライブラリをどうぞ!

外国でも流行っているの?

 日本人だったら、外国で流行っているかどうかは当然気になりますよね。(^^;;

 私的に結論から言うと、日本と同じかそれ以上に流行っているのが韓国、それなりに流行っているのは台湾、言われるほど流行っていないのは中国です。欧米では、若干の論文や書籍はあるものの、2000年前後の血液型ダイエットブームを除いては、流行っているとは言えないでしょう。

 さて、韓国では、国際的な英語の論文だけでなく、韓国の心理学学会誌に韓国語で論文も発表されていますし、能見さんの本の翻訳だけではなく、韓国人が書いた本も出版されているようです。

 私が知っている情報だと、2004年の日本の血液型ブームが韓国に飛び火し、血液型ブームが発生したそうです。能見俊賢さんを中心とした日本の研究が紹介され、これに対して、心理学会も反論を開始、まるで日本の代理戦争のようだった、という話を聞いています。

 このブームが高じて、2005年には、なんとイ・ドンゴン主演の映画『B型の彼氏』まで制作され、血液型が社会現象にまでなりました。ちなみに、『B型の彼氏』は能見俊賢さんが監修しています。俊賢さんは、日韓の間をかなり往復していたらしいです。韓国の心理学会誌には、最初の論文(否定的な内容)が掲載されます。

『B型の彼氏』のDVD[オリジナルの韓国語版] 2005年

 2006年になると、テレビで検証番組の放送がありました。また、この年には、韓国の心理学会誌には『B型の彼氏』を受けて、血液型と恋愛に関する論文が掲載されています。なお、その論文によると、血液型と恋愛には関係はなかったそうです(苦笑)。

 ところが、2007年には、心理学会の態度が一転し、血液型と性格関係を肯定する韓国・延世大学 孫栄宇教授の論 文が発表されます。

 ちなみに、韓国の調査*1(2007年12月30日付の「中央日報」)では、国民の約50%が血液型と性格の関係を肯定しているそうです。

 実は、私は韓国のソウルに行ったときに、書店に行って血液型の本を探してみたことがあります。しかし、私の韓国語のレベルでは、血液型の本がどのコーナーにあるのかわからないし、そのときは時間もなかったのであきらめました。少しぐらいは漢字や英語で書いてないかなぁ、と期待していたのでが、残念ながらすべてハングルだったのです。

 現在はどうなんでしょうね?

 では、台湾ではどうでしょうか? これまた台北に行ったときに、血液型の本を探してみたのですが、意外と売っていたので何冊か買ってきました。韓国と違って中国語なので、漢字が読めばなんとかなります。ただし、韓国や日本以上に流行っているわけでなさそうです*2

 能見俊賢さんの『血液型恋愛成功法』中国語版 [ABO FACTORYのプレゼントで入手] 1999年

 最後の中国ですが、これも上海に行って来たときに血液型の本を探してみました。種類は少ないのですが、何冊も平積みになっていたので、1冊買ってきました。また、中国No.1のポータルサイト『百度』にも血液型の掲示板がある*3ようです。

 以前に中国人の著者からメールが来た本もあります。すべて中国語だったので、返事が書きようがないのであきらめました。罪滅ぼしにタイトルだけ紹介しておきます。

 続金健(xu jinjian)さん ABO在中国 ― 百年血型再発見 黒龍江(heilongjiang)人民出版社 2002年

 番外編として、オーストラリアのシドニーに行ったとき、ニューサウスウェーズ州立図書館に立ち寄る機会があったので、端末から蔵書を検索してみたことがあります。日本語の蔵書もあったのにびっくり(松岡圭祐『ブラッドタイプ』)。残念ながら、英語の文献としては、ダダモさんの血液型ダイエット本や能見さんの“You are Your Blood Type”ぐらいしかありませんでした。

 ダダモさんの血液型ダイエット本 “Eat Right for (4) Your Type”

 実は、ヨーロッパも行ったことがあるのですが、こちらは残念ながら時間がなくて調査できませんでした。大英図書館に行きたかったなぁ。

H20.8.24作成

*1 2007年12月30日付「中央日報」 国民の48% 「血液型と性格関係ある」

 http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=94321&servcode=400&sectcode=400

 韓国国民は、「血液型が性格に影響を及ぼす」という意見が「及ぼさない」という意見に比べ多いことが明らかになった。
  SBS(ソウル放送)ラジオは29日、世論調査機関であるリアルメーター(イ・テクス代表)に依頼し、血液型と性格の相関関係について調査した結果、回答者の半分近くの48.2%は「関係がある」と答え、「関係がない」と答えた回答者は、33.4%だったと明らかにした。
  血液型による性格学が科学的にほとんど証明されていないにもかかわらず、多くの人が相手の性格を把握するのに血液型を参考にしていることが分かった。
  性別に見ると、男性(44.5%)より女性(51.7%)の方が、「血液型と性格は関係がある」という意見が多かった。
  男性は信じる人と信じない人が半々だったが、女性は「血液型が性格と関連ある」とする回答者が「関係ない」と答える回答者より約2倍多いことが分かった。
  年令別では、50代以上では、 意見の差(関係ある35.7%、関係ない31.6%)がほとんどなかった。その他の年令層は、(20代:関係ある54.6%、関係ない35.7%)(40代:関係ある54.5%、関係ない31.6%)、(30代:関係ある53.4%、関係ない35.7%)で、関係があるという意見が過半を占めた。
  この調査は18日、全国の19歳以上の男女500人を対象に電話で調査された。

*2 呉坤和さん(台湾高雄県)による研究結果(2005年)

 調査の対象者は、台湾第2の都市である高雄市の高校2年生から約3000人が選ばれました。
 血液型の本を読んだことがある人が75%、血液型と性格が関係あると思っている人が66%ですから、日本とだいたい同じような状況と考えていいでしょう。

 元のデータは次の通りです。

Table 1 [抜粋]

Books b
  Yes 2489
  No 851
Belief c(信念)
  Yes 2175
  No 1137

a [省略]
b Reponses to "Have you read any books about blood type and personality?"[血液型の本を読んだことがあるか]
c Reponses to "Do you believe there is a relationship between blood type and personality?"[血液型と性格は関係あると思うか]

 ※日本のデータはこちらです。調査によりますが、だいたい全体の70%程度が関係あると答えています。

*3 百度では、たまにABOFANの紹介がされてたりします。f(^^;;

詳しくは次のページをどうぞ!

欧米人は本当に自分の血液型を知らないの?

 最近、近面白い話を聞きました。

 欧米人は自分の血液型を知らないはずがない、というのです。なぜなら、ほとんどの欧米の軍隊なら、死傷した時に備えて、兵士の血液型は必ず調べ るからだそうです。このため、兵士は、通称「ドッグタグ」という、個人を認識できるタグを付けています。もちろん、「ドッグタグ」には血液型も書いてあります。

 Wikipedia 英語版で「ドッグタグ」を調べると、血液型も調べているとあります(太字は私)。

Dog tag (identifier)

A dog tag is the informal name for the identification tags worn by military personnel, because of their resemblance to actual dog tags. The tag is primarily used for the identification of dead and wounded along with providing essential basic medical information for the treatment of the latter such as blood type [血液型] and history of inoculations.

ドッグ・タグは、兵士のIDタグの通称で、形が犬の鑑札(ドッグ・タグ)に似ていることからそう呼ばれている。このタグは、主に死傷者、特に負傷者の手当をするための情報として、血液型や予防接種の履歴などの基礎的な医学情報が記されている。

 また、どの国でも献血率は5%ぐらいです。献血カードには、もちろん自分の血液型が書いています。

 念のため、ニューヨーク血液センターのサイトを見てみましたが、確かに献血カードには血液型が書いてあります。

 ということは、自分の血液型を知らないのではなく、何らかの理由で人には教えたくない、と考えたほうがよさそうです。

 要するにタブーということでしょう。

 某有名研究者に聞いたり、某通信社の記事を読むと、血液型はナチスを連想させるから研究しない、というのも本当だと思えてしまいます。 なにしろ、ユダヤ人はB型が多い劣等人種だというのが、ナチスの常套文句でしたからね。これがついにはホロコーストまで行き着いてしまうのですから、笑っているわけにはいきません。
 そういう背景もあり、欧米、特にドイツ、アメリカ、イギリスなどでは、人種差別との関係で、研究することがタブーとなっているというのです。

 ただし、ABO式以外はいいらしいです。
 だって、ナチスの時代には、HLAなんか発見されていませんでしたから。(笑)

【H21.8.15追記】

 フランスでは、全員8歳の時に血液型の検査を受けるので、国民全員が知っている。アメリカでは、高校や大学に献血車が来るので、献血をした人は知っている。 ということで、欧米人は意外と自分の血液型を知っているようです。 徴兵されるときは血液型も調べるのですが、それだけじゃなかったんですね。《出典:アンアン 2009.8.12号》

【H26.8.10追記】

 2005年に大阪大学が実施した調査では、アメリカ人4907人のうち、自分の血液型を知っていると回答したのが3108人、知らないと回答したのが1799人です(無回答を除く)。
 ですので、アメリカ人が自分の血液型を知っている比率は予想以上に多く、63.4%と過半数です。 意外と知られているものなのですね。(^^) 《出典:大阪大学21世紀COE [http://srdq.hus.osaka-u.ac.jp/]》

H20.8.17作成 H26.8.10変更

 

 血液型と性格ってなぜ広まったの?

 血液型と性格が、ここまで日本で広まったのには、いろいろな説があります。例えば、

  1. 日本人は、血統を大事にするので、もともと血液型の話が好きである

  2. 日本人は、世界的に見て4つの血液型の比率が均等であるため、話題になりやすい

 確かに本当のような気もしますが、実は私はこの話は結構アヤシイと思っています。

 例えば、1.についてですが、血統を大事にするのは、日本より中国・韓国ですから、そのリクツで言えば、本家本元の中国では日本以上に流行っていないとおかしいのですが、必ずしもそうではありません。また、欧米でも、実際には日本よりは血統を大切にしていますが、「血液型と性格」があまり流行っていないことは確かです。

 日本の場合は、現実には血統と言っても「血縁」より「疑似血縁関係」の方が重要なことが多く、「遠くの親戚よりは近くの他人」という諺もあるぐらいです。それに、実際、職場が最優先というケースも少なくありませんから、必ずもしも「血統を大事にする」とは言えません。だいたい、血統が最優先なら、歴史的に「主君押込め」や「末期養子」なんていう制度があるのはおかしいのです。

 2.については、そのリクツで言えば、韓国は日本よりO型の比率が少ないため、たぶん世界一4つの血液型の比率が均等なはずです。しかし、現実にブームになったのは、2004年の日本の血液型ブームを能見俊賢さんが紹介してからのことです。確かに、それ以後は日本以上のブームになったようですが、それならもっと前からブームになっていないとおかしいと思います。また、台湾に関しては、かなりO型が多いので、「世界的に見て4つの血液型の比率が均等」とは言えません。

『B型の彼氏』のDVD[オリジナルの韓国語版] 平成17年(2005年)

 結局、1.2.の条件が絶対とは言えないのではないでしょうか?

 また、有名な血液型の研究者(「血液型と性格」の研究者ではありません!)に聞いた話で、こんなことがありました。

血液型については、欧米、特にドイツ、アメリカ、イギリスなどでは、人種差別との関係で、研究することがタブーとなっている[ようだ]。だから、血液型の研究は日本が進んでいる[らしい]。
もっとも、フランスなどではそれほどタブー視されていない[ようだ]。

 この理由は比較的単純で、血液型はナチスドイツにアーリア人至上主義の理由付けとして利用された事実があるからです(現在は死語の骨相学なんかもそうです)。更に、血液型は優生学とも結びついていたようです。ここまで書けば、わかる人はわかるでしょう。欧米人には、血液型→ナチスドイツの人種差別→優生学→ホロコーストといった連想が働くらしいので、特に英語圏やドイツ語圏では話題にするのはタブーのようなのです。ただし、フランスなどでは、そこまでのタブーはないらしいので、ブールデルの本がそこそこ売れたということなのでしょう…。

 フランスの女性心理学者 ブールデルが出版した「血液型と性格」の本 昭和36年(1961年)

 話題を元にもどすと、日本では、「血液型と性格」に関するタブーはほとんどありません。だから、戦前にあれだけ古川説が流行ったということなのでしょう。昭和7年には、彼の研究の集大成とも言える『血液型と気質』が三省堂から発行されています。しかし、残念なことに、戦前の日本での血液型ブームは、当時の法医学界の「権威」によって否定されてしまいました。*1

 古川竹二著 『血液型と気質』 昭和7年(1932年)

 ただし、必ずしも「タブー」という理由で否定されたのではありません。あくまで、当時の血液型の「権威」が、「関係がない」という結論を下したからです。また、戦後に復活したのは、能見正比古さんという、リーダーとなる人物が出現したからでしょう。正比古さんの存在がなければ、現在の血液型ブームが存在しなかったのは、説明するまでもないでしょうから…。

 能見正比古さん 『血液型人間学』 昭和48年(1973年)

 こう見ると、結構偶然の要素が働いている、と思うのは私だけでしょうか?

*1 ちなみに、全体で300件程度の論文があったそうですが、そのうち心理学の論文は賛成2件・反対2件ですので、必ずしも心理学によって否定されたとは言えません。

H21.1.1作成

 血液型ブームって昔もあったの?

 最近では、Jamais Jamaisさんの『B型自分の説明書』が大ブームを巻き起こしましたが、実は戦前にもブームはありました。

 このブームの経緯については、松田薫さん(AB型)の『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』に詳しく書かれていますので、興味がある方は読んでみるといいでしょう。

 さて、血液型と性格の関係があるという説は、昭和初期の教育学者・心理学者である古川竹二さん*1(A型)によって有名になったため、彼が実質的な提唱者であるといっても過言ではありません。

 彼の最初の論文は、1927年(昭和2年)8月の『心理学研究』に掲載された「血液型による気質の研究」です。1932年(昭和7年)には、研究の集大成とも言える『血液型と気質』が三省堂から発行されています。

 古川竹二さんの説が広まったのは、当時の血液型の権威、古畑種基さん*2のバックアップがあったようです。古畑さんは、大坂中央放送局で1929年(昭和4年)1月19日に放送された「血液型による親子の鑑別」についての番組で、古川竹二さんの「血液型と気質」を積極的に宣伝したのです。

 このせいもあり、「血液型と性格」は一大ブームを引き起こし、1931年(昭和6年)には、大阪*3で血液型専門誌の『血液型研究』という雑誌が発行されたり、軍部で血液型の研究(次の項目を参照)が流行したり、あげくのはてには、血液型占い師が現れたりと、昔も現在と変わらない状況だったようですね。

 しかし、なぜかその後、古畑さんは「血液型と気質」を批判する側に回ります。その理由は、派閥抗争なのか、あるいは学術的な面なのかは、私にはわかりません。結果的に、 1933年(昭和8年)3月28日の法医学会では、厳しく古川説批判が行われ、血液型と性格は実質的に否定される(少なくともアカデミックな面では)ことになり*3、ブームも収束に向かうことになりました。

*1 1891年(明治24年)生、東京帝国大学卒、心理学者、教育学者、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)教授。1940年(昭和15年)没。
*2 1891年(明治24年)三重県生まれ、東京帝国大学卒業、東京帝国大学教授、科学警察研究所長などを歴任し、1975年(昭和50年)没。
*3 当時は日本一の大都市で、大大阪(だいおおさか)と呼ばれた。

H21.4.19作成

 旧日本軍ではどんな研究をしていたの?

 意外なことに、旧日本軍では血液型(と性格)の研究が大流行しました。ちょっと調べただけでも、面白そうな研究結果がゴロゴロしています*1。ただ、残念なことに、これらの研究結果は、旧陸軍は『軍医団雑誌』、旧海軍は『海軍々医学雑誌』に発表されているケースが多く、比較的入手しにくいようです。現在では、どちらも、歴史のある医学部や防衛省関係機関ぐらいにしか保存されていません。

 そこで、ここでは、戦前の歴史に詳しい、松田薫さんの『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』から内容を紹介することにしましょう(353ページ)。

軍隊の服や武器の係をする、輜重(しちょう)兵第16大隊の一等軍医(大尉)の井上[日英]は、1932年日本で、サンプル134人を血液型別に8班つくった。その内容は、上官がA型で部下がA型というふうに上下の血液型がおなじ班と、上官がA型で部下はO型というふうに上下の血液型がちがう班との性格試験で、4ヵ月間だけ日本でためしたら、上下の血液型がちがう班の兵業成績がよかった…*2

 なるほど、やはりいろいろな血液型がいた方が、成績が上がるんですね。

 では、もう一つ、海軍の研究結果を紹介しておきます。こちらは、大村政男さんの『新訂 血液型と性格』からです(167ページ)。海軍軍医の塚原宗たちが、軍艦「八雲」乗務員680人の血液型を調べたら、O型25.9%、A型19.3%、B型35.3%、AB型19.6%と、O型とA型が少なく、B型とAB型が多かった*3というものです。

  これらの研究とは別に、能見正比古さんの『血液型活用学』(209ページ〜211ページ)には、読者の永山直材(なおき)さんの面白い体験談が紹介されています。永山さんは、戦前は大隊長か中隊長をしてたいそうですが、輸血に便利だろうと思って、血液型別に班編制をしたときの話です。残念ながら、AB型の班は人数が少ないため無理だったそうですが、

O型班は、一番まとまっていたという。A型班は、もめごと、いざこざ続きであった。あけても暮れても、けんか口論が絶えず、班長は仲裁にいとまもない状態である。
「B型班はどうでした」
私がたずねると、私がB型であることを知っているA型の永山さんはちょっと、気の毒そうに口ごもった。
「班長が弱っていたようです」
「どう弱っていました?」
「集まれといっても仲々集まらない。すぐ、どこかへ行ってしまう、物は失くす……」
私は、思わず笑い出した。

 能見さんは、通常とはO型とA型は逆だが、それは戦時と平時の職場の違いと説明しています。私も同感でして、血液型は一見簡単なようで、実は意外と奥が深いのです。

*1 戦前の文献は、白佐俊憲・井口拓自さんの『血液型性格研究入門』や、古畑種基さんの『血液型の文献集』(昭和10年発行)が詳しいです
*2 井上日英 血液型別に観察したる軍隊教育の成果に就て 軍医団雑誌 256号 1575〜91ページ 昭和9年9月
*3 塚原宗ほか 軍艦八雲乗員の血液型 海軍々医学雑誌 21巻1号 92ページ 昭和7年2月

H20.8.21作成

能見正比古さんってどんな人?

 履歴書的に書くと、大正14年(1925年)生、金沢市出身、B型、昭和56年(1981年)没。東京大学工学部電気工学科卒、同法学部中退となります。東大中退後は、三木鶏郎文芸部に参加し、放送作家の道に入りました。その後、学習研究社に入社し、総合雑誌『現代』や『現代新百科事典』編集長を経て独立、フリーとなって血液型と性格の研究を本格的に開始しました。

 たまに誤解している人がいますが、彼の血液型関係の処女作は、『血液型人間学』ではなく、昭和46年(1971年)に発売になった青春出版社の『血液型でわかる相性』です。ただ、このときはそれほど評判にはならなかったようです。

 しかし、この後の昭和48年に、サンケイ出版から、『血液型人間学』を皮切りとして、『血液型愛情学』『血液型活用学』の血液型三部作を次々と出版したところ、いずれもベストセラーとなりました。これで、血液型人間学はすっかり日本に定着することになります。

 実際に読んでみると、『血液型人間学』は、『血液型でわかる相性』と比べて、大幅に内容がバージョンアップしていることがわかります。彼は、この間の2年間に、猛烈に血液型を研究したのでしょう。

 さて、彼の本の大きな特徴は、主に男性ビジネスマンを対象としているため、占い的な内容のものはほとんどないことです。現在のような女性中心、占い的な内容とは好対照ですね。

【参考】サンケイ出版の血液型シリーズ

書名 サブタイトル

内  容

出版年月
血液型人間学 あなたを幸せにする性格分析 実質的な処女作
アンケート、観察、取材などによる実証
昭和48年8月
258P
血液型愛情学 愛と性のドラマ・20,000人の証言 約2万人のデータに基づく愛情レポート 昭和49年5月
278P
血液型活用学 自分を生かし、人間関係をよくする本 自己管理や人間間関係改善のための活用方法 昭和51年5月
288P
血液型エッセンス 性格と人間関係の実用百科 調査研究をコンパクトにまとめた保存版 昭和52年6月
240P
血液型政治学 政治を動かす衝撃の事実! 国会議員・知事・市長約2,000人のデータに基づく分析結果 昭和53年6月
318P

 また、旺盛な執筆活動とあわせて、全国各地で講演活動*1を精力的に行います。このため、昭和54年には、読者の交流・情報交換や、幅広い研究を目指して『ABOの会』を創設*1しました。

 しかし、過労がたたっせいか、講演中の昭和56年、壇上に倒れ急死することなります。56歳の早過ぎる死でした。これからまたまだ活躍できただろうに、と惜しまれます。

*1 講演活動は多かったのですが、なぜかテレビにはほとんど出演しませんでした[H20.8.24付Wikipediaの記述は間違いです]
*2 ちなみに、私も『ABOの会』の会員でした

代表作の『血液型人間学』『血液型愛情学』 『血液型活用学』について

H20.8.24作成

前川輝光さんってどんな人?

 前川輝光さんは、1954年熊本県生まれで、東京大学大学院で博士号を取得し、現職は亜細亜大学国際関係学部教授です。専門は、インド宗教・文化論、比較文化論、宗教学ですが、河合隼雄さんのユング心理学と心理療法にも造詣が深いとのことです。
 前川さんは、1998年に『血液型人間学〜運命との対話』を出版し、血液型と性格の関係者に、一躍その名前を知られることになりました。この本のポイントは、帯にもあるように「アカデミックな血液型人間学の集大成」ということです。

 『血液型人間学』 運命との対話 1998年

 では、内容の紹介に移りましょう。著者による前書きで全体の内容が紹介されていますので、ちょっと長いのですが引用させてもらいます(「…」は省略を示します)。

 「血液型人間学」というと読者の皆さんはどのようなイメージを持たれるであろうか。現在それは一方で、ほとんど占いまがいのものとしてではあるが熱心に受け入れられているかと思うと、学問的にはまったく何の根拠もないとする強硬な反対派にもこと欠かない。…血液型人間学への態度は、これまで、この占い的肯定派とでも呼ぶべきものと、学的反対派とでも呼ぶべきものに二分されていた。本書は、そのどちらとも異なる第三の道「学的肯定派」の立湯に立って、血液型人間学の歴史と展望を語ることを目標としている。
 本書の主人公は、1971年の「血液型でわかる相性」以来1981年10月30日の心臓破裂による突然の死まで、血液型人間学にかかわる発言を続けた能見正比古という人物である。…
 血液型人聞学をめぐる近年の多少とも意味ある議論−残念ながら、それはほとんど学的反対派によるものであるが−は、その大半が、昭和初年度の「第一次血液型ブーム」の中心人物古川竹二(1891−1940年)に主力を注いでいる。本来古川よりずっと重要であるはずの本書の主人公能見正比古についての議論は、古川に比し手薄であるばかりでなく、さまざまな点で問題をはらんでいる。
 もっとはっきり言ってしまえば、ずさんかつ偏見に満ちたものであった。…
 というわけで、「学的肯定派の立嚇で血液型人間学の歴史と展望ととりくむ」本書は、より具体的には、能見正比古を正確に評価しなおし、彼の仕事を真に継承し、血液型人間学の発展に資することを目標としている。

 内容は次のとおりです。

第1章 古川竹二と目黒夫妻
第2章 能見正比古(1925−81)の生涯
第3章 能見正比古の作品−血液型人間学以外
第4章 能見血液型人間学作品史
第5章 能見血液型人間学−体系的考察
第6章 運命との対話−血液型人間学と心理療法
第7章 能見俊賢とABOの会
第8章 血液型人間学への批判と反批判、新たな胎動

 私が一番問題だと思っている、能見正比古さんが「在野」の「ポピュラー・サイコロジスト」である[だから信用できない]という点には、前川さんはこう述べています。

能見をめぐる議論には彼の肩書をめぐる発言があいつぎ、そうした非本質的問題が、あたかも主要な問題の1つであるかのごとく、喧伝されてきている。筆者は本書でそのことの不当さをも論じているが…

 これには全く同感です。いくらなんでも、論者の所属で“差別”するのはルール違反でしょう!

 さて、この本で非常に印象的だったのは、第2章の能見さんの生涯のところと、第5章の血液型人間学の体系的考察です。意外なことに、能見さんの生涯は一般にはあまり知られていません。この本を読んで、能見さんの思いがけない一面をいろいろと知ることができました。第5章は、血液型人間学の体系的考察についてです。これまた意外なことに、いまだに一般には正確には知られていないのです。血液型人間学が世の中に知られるようになってから、既に四半世紀以上はたっていますが、いまだに多くの誤解があるのは非常に残念です。一番大きな誤解は、血液型人間学は血液型による性格の類型を作るというものであるというものです。これこそ全くの誤解なのですが…。

 さて、『血液型人間学』の出版から10年が経ちました。前川さんの次の著書に期待したいと思います。

代表作の『血液型人間学 〜運命との対話』について

 余談ですが、この本は心理学者からはほとんど黙殺されています。しかし、不思議なことに、大村さんの某論文には、ちゃんと文献リストに載っているのです…。はて?

H20.9.21作成

古川竹二さんってどんな人?

 古川竹二さん[A型]は、昭和初期の心理学者、教育学者で、戦前の東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)の教授でした。明治24年(1891年)に生まれ、昭和15年(1940年)に亡くなりました。当時の東京帝国大学を卒業していますので、正真正銘のエリートです。

 彼が一躍世の中に知られるようになったのは、「血液型と性格」の研究です。
 「血液型と性格」の研究は、たとえ古川さんのオリジナルでないとしても、研究実績や影響力の点で、実質的な提唱者であるといっても過言ではありません。

 彼の最初の論文は、昭和2年8月の『心理学研究』に掲載された「血液型による気質の研究」です。
 昭和7年には、研究の集大成とも言える『血液型と気質』が三省堂から発行されています。

 古川説は、一時は旧軍部にまで研究される有力な説だったのですが、結局学会*1で支持を得られず消え去っていきます。この経過については、松田薫さん[AB型]の『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』に詳しく書かれています。非常に詳しく書いてありますので、興味がある方は読んでみるといいでしょう。

 彼の「血液型と性格」についての論文は、国内や日本語のものだけではなく、海外でのドイツ語*2、英語*3のものまであり、2005年の海外の論文でも、いまだに参考文献になってたりします*4ので、国内外ともに有名な研究だとされていることは確かです。すごいですね。(@_@)

 また、戦後の血液型ブームの中心となった能見正比古さんですが、1歳年上のお姉さんの幽香里さんが、東京女子高等師範学校に在籍していたことがあります。ですので、間接的に古川さんの影響を受けていたことも考えられますが、詳細は不明です。

■古川説の紹介

 ではここで、改めて古川説の紹介をしておきましょう。能見正比古さんの解説が一番わかりやすいので引用させていただきます(『新・血液型人間学』角川文庫版110ページ)。

 古川氏の中心的調査方法は、まず質問項目を能動的(アクティブ)と受動的(パッシブ)の2組にわけ、それぞれの組に、たとえば「陽性のほう」とか「おとなしいほう」など10項目ずつ列記する。回答者に、自分の該当すると思われる項目にマルをつけてもらい、さらに全体として、自分が、どっちの組に属するか、決めるのである。

 このようなアクティブ(O型とB型)とパッシブ(A型とAB型)との2つにわける方法もありますが、血液型別の質問項目も存在します。また、職業別の血液型分布を調べて、性格との関連を考えることも行われました。

 当然のことながら、血液型別の性格もあります。ここでは彼の代表作である『血液型と気質』のものを取り上げることにします*5

『血液型と気質』での血液型別の気質(構成とかな遣いを一部改変)

O型

A型

B型

AB型
落付いている人
(非暗示性の少ない人)
感情に駆られない人
物に動じない人
きかぬ気の人
人に余り左右されない人
精神力の強い人
事を決したら迷わない人
意志の強い人(根気のよい人)
おとなし相でも自信の強い人
遠慮深い人
内気な人
温厚な人
物事が気にかかる人
事を決する時迷う人
用心深い人
深く感動する人
人と余り争わない人
自分を犠牲にする人
気軽で、あっさりした人
物事を長くは気にしない人
基ごとに執着する事が少ない人
快活にしてよく談ずる人
刺激が来ると直ぐに之に応ずる人
直ぐに感ずる人(敏感)
気軽に人と交る人
人の世話などを心好くする人
物事によく気のつく人
事をなすに派手な人
内省はA型
外面はB型

内と外とが異なって居って、
判断しにくい人

 この質問項目(自省表)を被験者に見せて、自分にあてはまるかどうか内省して決めてもらいます。まあ、ここまではいいのですが、古川竹二さんは、この表の項目は80%程度以上、本来は90%以上は当てはまると思っていたようなのです。

 しかし、どう考えても10項目程度の質問項目で80%も当たるはずがありません! 能見正比古さんも「果たして、古川氏の分析に対し、例外が多すぎると、反対論が続発した。」(『新・血液型人間学』角川文庫版109ページ)と書いていますが、あまりにも当然というべきでしょう*1

 この時点で、古川説はアカデミックの立場からは否定されてしまった*6ことになります。

 ただ、よくある誤解があります。それは、

 前者の「自説を撤回した」は完全に誤解です。彼は、亡くなるまで自説を撤回しませんでした。
 また、後者の「心理学でも否定された」というのも、必ずしも正しくはありません。確かに「法医学」では否定されたのは事実ですが、心理学では必ずしも否定されていないのです*7

*1 意外なことに、主な議論は法医学会などで行われ、心理学会では正味4件の論文しかありません。 →歴史的に決着済みなの?
*2 Furuhata, T. (1928): Die Erforschung der Temperamente mittels der experimentellen Blutgruppenundtersuchung, Zeitschrift für angewandte Psychologie, Bd. 31, H. 2/4, S. 271-299, 1928
*3 Furuhata, T. (1930): A study of temperament and blood groups. The Journal of Social Psychology, 1, 494–509.
*4 残念なことに、日本の心理学者の研究では、かなり珍しい例です。 →例えば2005年の台湾の論文では参考文献のリストにあります
*5 困ったことに、古川竹二さんの血液型別の質問項目は、年代ごとに何パターンも存在します。
*6 当時は統計学が確立していませんでした。改めてχ2検定をしてみると有意差が出ているデータもあります。
*7 例えば、昭和43年発行の佐藤幸治さん『人格心理学』(東京創元新社)でも、血液型と性格に好意的な記述があります。

詳しくは古川説の再検討をどうぞ!

H20.9.27作成

原来復さんってどんな人?

 世界で初めて、血液型と性格の関係を示唆した論文は、大正5年(1916年)に日赤長野支部の医師である原来復さん[A型]と小林栄さんが発表した「血液ノ類属的構造ニ就イテ」(『医事新報』954号)とされています。
 原さんは、東京帝国大学[当時]を卒業し、ドイツ留学から帰国後、この論文[3200字程度]を発表しました。

 内容をちょっと紹介しておきましょう。

類属[血液型]ノ差異ニ依リ人ノ性質[気質]又其他ニ何カ得長ノ存在スルヤ否ヤニ就テハ未ダ全ク不明ナルモ、……Aノ方ハ柔順ニテ成積優等級ノ首席ヲ占ヌルニ、Bノ方ハ粗暴ニシテ級ノ最下等ノ成積ヲ有セリ、以上ノ如キハ恐ク偶然ノ事柄ナランモ、然レドモ特ニ斯ノ如キ點ニ就テ調査セバ興味多キコトト信ズ

 とあります。

 ただし、この論文は、元々「血液型と性格」についてではありませんので、この程度のごく簡単な記述となっています。また、その後、彼が「血液型と性格」について研究を進めた形跡もないようです。ですので、本格的な研究は、10年ほど後の古川竹二さんの登場を待たなければなりませんでした。

H20.9.27作成

目黒夫妻ってどんな人?

 能見正比古さんの『血液型でわかる相性』が出版されたのは昭和46年です。
 一般にはあまり知られていませんが、目黒宏次・澄子夫妻がその1年前の昭和45年に、『気質と血液型』という本を出版しています。

目黒宏次・澄子夫妻 気質と血液型 S45.10 現代心理研究会 3,200円

 当時の値段が3,200円ですから、相当高かったことになります。 
 目黒宏次さんは、東洋大学卒業後、都立大学大学院を修了し、このときは都立高校の先生をしていたそうです。

 箱の表には次のように書いてあります。

 東京女子高等師範学校教援古川竹二氏は昭和2年8月の「心理学研究」(岩波書店)に「血液型による気質の研究」を発表した。古川竹二氏の血液型による気質説は時代の好尚に投じたちまち一世を風靡した。昭和7年同氏の「血液型と気質」三省堂発行はその頂点に立つものであった。しかし学会の保守性と次第に深まりゆく、研究の自由に対する弾圧によって、古川竹二氏の気質説は昭和10年を境として学会より抹殺され姿を消すのである。
 筆者らは20余年心血を注ぎ、古川学説の絶対を克服し関係的にとらえることによって新しく理論構成すると共に、古川学説を再び、世に問うことを企図した。

 箱の裏には、

 日本人によって発見され、日本人によって理論づけられた気質と血液型との相関関係を本書によってたしかめられたい。
 気質説はしかし鋭利な両刃の剣でもあるので心ある人々によってのみ善用されることを心から願うものである。
  気質は対人関係を決定する!?
   
心理学者に新しい研究の視点を
   教育家に生徒把握の基準を
   裁判官に犯罪心理の背景を
   外交官に民族気質の理解を
   会社員に人とうまくつきあう法を
   セールス・マンに客を見抜く法を
   管理職者に人事関係のコツを
   夫婦に正確な人間理解を
   恋人に相手を判断する方法を
   商取引に相手に勝つ方法を
   スポーツマンに負けない精神力を
  どんな人間関係にも応用できる本!!

 惜しいことに、この本は市販されず、関係者のみへ頒布という形を取っていたため、あまり世の中に知られることはありませんでした。また、その1年後に、能見正比古さんの『血液型でわかる相性』が出版されたこともあり、歴史の中に埋もれてしまった感があります。

 なお、鈴木芳正さんは、目黒夫妻の教え子だそうです。

H20.10.13作成

古畑種基さんってどんな人?

 古畑種基さんはAB型で、1891年(明治24年)三重県生まれ、東京帝国大学卒業後、1924年(大正13年)に金沢医大教授、1936年〜52年(昭和11年〜27年)には東大教授、その後は東京医科歯科大教授、科学警察研究所長を歴任し、1975年(昭和50年)に亡くなりました。
 彼は法医学の権威で、ABO式血液型の遺伝について世界的にも大きな業績を上げます(三対立遺伝子説)。しかし、死後には、いくつかの有名な鑑定結果*1が覆され、その権威は大きく失墜します。これを受けて、岩波書店は彼の著書を絶版としました*2

 血液型と性格に話を戻すと、古川竹二さんの学説が広まったのは、古畑種基さんのバックアップがあったようです。古畑さんは、大坂中央放送局で1929年(昭和4年)1月19日に放送された「血液型による親子の鑑別」についての番組で、古川竹二さんの「血液型と気質」を積極的に宣伝したのです*3

 しかし、なぜかその後、古畑さんは「血液型と気質」を批判する側に回ります。その理由は、派閥抗争なのか、あるいは学術的な面なのかは、私にはわかりません。結果的に、昭和8年3月28日の法医学会では、厳しく古川説批判が行われ、血液型と性格は実質的に否定される(少なくともアカデミックな面では)ことになります*3。もっとも、この否定の論拠は、現在では必ずしも正しいとは思えませんが…。

 ところで、亡くなった方を批判するのは大変心苦しいのですが、古畑さんはかなり毀誉褒貶の激しい人のようです。井沢元彦さん(B型)の『逆説の日本史1』の43ページにはこんな記述もあります。

 一つは、法医学の権威で、東大名誉教授をはじめとする数々の肩書きを持つ古畑種基博士(故人)のことである。
 私もこの人の本で法医学を勉強したのだが、最近になって、この古畑博士がかつて行った、弘前事件、松山事件、財田川事件などについて、この血痕鑑定が、すべて間違っていた、ということが明らかになったのである。
 これは事実だ。いずれも公式に再審鑑定が行われ、古畑鑑定はすべてをくつがえされている。ところが、これらのケースは素人の私が見ても、「どうしてこんな明白なミスが今までわからなかったのだろう」という気がするのである。
 この件についても、事情通は言う。
 「これも博士が生きているうちは言いにくかったのでしょう。医学界では先輩や恩師の説を批判することはできませんからね」

 血痕鑑定が間違った話は、松田薫さんの『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』にも書かれています。ウラを取ってないので判断はできませんが、もし上の記述が正しいとすると、能見さんの最初の著書である『血液型と相性』が1971年(昭和46年)に出版されたのは偶然ではありません。この時期は、古畑さんの影響はほとんどなくなった時期に一致するからです。

 とにかく、血液型と性格に多大の影響を与えた人であることは間違いありません。

*1 当時の下山国鉄総裁が死体で見つかった下山事件、弘前大教授夫人殺人事件、財田川事件など
*2 例えば、私も持っている岩波新書『血液型の話』
*3 松田薫さん『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』による

H20.11.16作成

大村政男さんってどんな人?

 大村政男さん(A型)は1925年東京生まれ、1948年に日本大学法文学部文学科(心理学専攻)卒業、文学博士、専攻は性格心理学で、現在は日本大学名誉教授です。

 大村さんといえば、性格心理学の専門家というのはもちろんですが、「血液型と性格」の否定論者、といった方が有名でしょう。そして、FBI効果(フリーサイズのF、ラベリングのB、インプリンティングのI)の提唱者としても知られています。

 代表作は、1990年に出版された『血液型と性格』(福村出版)で、この本が好評だったせいか、新訂『血液型と性格』(同)が1998年に出版されます。

  

 この『血液型と性格』のほかに、私がすぐ思い出すのは――かなり古いのですが――NHKの番組*1と『朝日ジャーナル』の記事*2です。
 また、応用心理学会では、『「血液型性格学」は信頼できるか』として、毎年のように発表を行っています。

第1報:「血液型性格学」は信頼できるか
第2報:「血液型性格学」は信頼できるか:第2報
第3報:「血液型性格学」は信頼できるか:第3報
第4報:「血液型性格学」は信頼できるか:第4報
第5報:「血液型性格学」は信頼できるか:第5報
第6報a:科学と偽科学の対決−血液型性格学の虚構性−(小講演)
第6報b:「血液型性格学」は信頼できるか:第6報
第7報:「血液型性格学」は信頼できるか:第7報
第8報:「血液型性格学」は信頼できるか:第8報 血液型気質説の創始者:古川竹二生誕100年を記念する
第9報:「血液型性格学」は信頼できるか:第9報 プロ野球の選手や大相撲の力士に血液型の特徴があるか
第10報:歴史的人物の血液型の認知過程
第11報:キャテルの16PFとの関連
第12報:高校生の血液型性格判断におけるFBI効果
第13報:24血液型との関連を探る
第14報:B型者についての偏見史を尋ねる
第15報:男性度・女性度と血液型
第16報:紅白歌合戦と血液型
第17報:野球選手の血液型
第18報:ソープランドの女性と血液型
第19報:能見正比古生誕77年記念‐血液型性格学を信じた心理学者たち‐
第20報:星座性格診断・血液型性格診断にみられるFBI効果・認知的適合感
第21報:埋もれた心理学史を尋ねて 第2報−目黒宏次・澄子の「人間関係学」を評論する
第22報-I: 城田明子の調査を基礎として『ドラえもん』の血液型を推定する
第22報-U: 『ドラえもん』から「ホリエモン」まで9人のキャラクタの血液型を推定する
第23報-I :林春男(1985)・卓地圭子(1990)の「サザエさん研究」をまとめる
第23報-U 磯野家・フグ田家7人の家族の血液型を追求する

 その他にも、日本大学の紀要に多くの研究報告が掲載されています。
 ここまでやるのは、よほど血液型に興味があるとしか考えられません。

 大村さん本人によると、彼の「血液型と性格」の原点は、1945年(昭和20年)に遡るのだそうです。『常識はウソだらけ』(日垣隆さん との対談 WAC出版 88ページ)では、

私はもともと血液型には興味がありませんでした。ところが昭和20年に古川さんの論文を読み、とても感動したのです。私はA型なのですけど、A型の項目を読むと「温厚従順」とか「心配性」とか「自分をまげやすい」とか [中略] まさに私にぴったりのことが書いてあったのですよ(笑)。

 実は以前に、人づてにそんなことを聞いていたのですが、やっぱりウワサは本当だったのですね。
 しかし、そこから先は順調には行きませんでした。

当時の心理学会では血液型やフロイトの精神分析など研究しようと思ったら「そんなのものはいかん!」と研究室を追い出されてしまいますよ。(88〜89ページ)

 ですので、血液型の研究は心の中にしまったまま、ず〜っと封印されていたそうです。ところが、30年近くたったある日のこと、転機が訪れます。

1982年の春、ある女子学生が卒論のテーマとして血液型を研究したいと言ってきた。その女子学生はあちこちの教授から「そんな非科学的なものは指導できない」と断られ、とうとう父親の知己(ちき)だった私のところに駆けこんできたわけです。(89ページ)

 残念ながら、そのときの結果は「関係がない」だったそうで、

その学生さんは残念無念で卒業していきました。しかしその後、私はなんと血液型性格研究にやみつきになってしまいまして、学会発表までしたりして、かれこれ20年以上も血液型性格の研究をしています(笑)。

 なるほど、これで謎が1つ解けました。以前人づてに聞いていたのは、こういうことです。

 大村さんは、昔、古川さんの本当読んで感動して、血液型と性格の関係がないのか、ず〜っと研究していた。残念ながら、心理学の研究では関係は見いだされなかったが、それでもなんとか関係があるという結果が出ないかと、今まで研究を続けていた、というものです。

 そういえば、2004年に大村さんがTV番組*3*4で話していたクロニンジャーのTPQ(Tridimensional Personality Questionnaire)では、見事に関係があると結果が出ていたためか、本当に晴れ晴れとした表情だった*5のが、極めて鮮明な印象として残っています。

*1 1984年2月7日 NHK おはよう広場 どこまでホント血液型人間学
*2 1985年3月8日 朝日ジャーナル 「血の商人」の餌食になるな デタラメぶりは立証された
*3 2004年10月7日 TBS 超スパスパ人間学! 血液型ダイエット
*4 2004年12月28日 TBS ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント!本当の自分&相性探し来年こそは開運SP!
*5 その後は「血液型と性格」の否定論者に戻ってしまったようですが、その理由は明らかにされていません

H20.12.16作成

首相にO型が多いってホント?

 日本の首相はO型が多いといわれています。では、というので戦後の首相の血液型を調べてみたのが下の表です。

 敬称略 H21.8現在

O型(15) A型(8) B型(3) AB型(2)
幣原喜重郎
東久爾宮稔彦
吉田茂
石橋湛山
岸信介
池田勇人
福田赳夫
大平正芳
鈴木善幸
中曽根康弘

細川護煕
羽田牧
村山富市
森喜朗
鳩山由紀夫
佐藤栄作
三木赳夫

海部俊樹
宇野宗佑
小渕恵三
小泉純一郎
福田康夫
麻生太郎
田中角栄
竹下登
安倍晋三
宮沢喜一
橋本龍太郎

 

 やっぱりO型が多いのはホントのようですね(笑)。日本人平均では、O型30.7%、A型38.1%、B型21.8%、AB型9.4%ですから、O型の多さが際立っています。O型は首相になりやすいのでしょうか?
 答えは、半分イエスで半分ノーです。というのは、戦後の首相は、ほとんどが自民党(鳩山由紀夫さんは民主党)の派閥のトップがなっているからです(太字)。このシステムが続く限りO型の比率が下がることはないでしょう。自民党の派閥のトップはO型が多いですからね。しかし、最近では派閥のトップよりは、国民に人気がある政治家がなるようにシステムが変わりつつあるようです。現在の 鳩山首相、麻生前首相は派閥のトップですが、以前の福田、安倍、小泉の3人はそうではありません。となると、O型の率がだんだん下がる可能性があるのですが…。いずれにせよ、非常に興味深いデータであることは確かです。

H20.8.24作成 H21.10.4更新

詳しいデータは政治と血液型をどうぞ!

血液型に向いたスポーツってあるの?

 ちょっと古いのですが、平成13年現在のデータということで、下の表を見てください。これはホームラン王のデータです。

順位 選手氏名 本塁打数 血液型
王 貞治 868
野村克也 657
門田博光 567
山本浩二 536
落合博光 510
張本 勲 504
衣笠祥雄 504
大杉勝男 486
田淵幸一 474
10 土井正博 465

 見ればわかるとおり、圧倒的にO型とB型が多く、AB型が1人いないことがわかります。しかし、プロ野球の選手全体の血液型は、ほぼ日本人の血液型に一致しているそうです(否定論者も含めて何回か調査がされています)。しかし、本当にO型とB型はホームラン王になりやすいのでしょうか?

 本当にそんなに違うなら、私の身近なO型やB型は抜群に野球が上手なはずですが、そんなことはありません。(笑)

 おかしいですよね?

 しかし、実はおかしくないのです!

 性格分布のイメージ図を思い出してみてください。ホームラン王の場合も同じになるはずです。→差があるといっても小さすぎるのでは?

 運動神経は、それほど血液型で差があるとは思えません(厳密にデータで確認したわけではありませんが…)。しかし、ホームラン王は、日本人の血液型分布を考慮しても、O型が一番多くAB型が一番少ないのです。やはり、ホームラン王を獲得するといった、特定の(非常に特殊な)条件がある場合は、極めて強い偏りが現れるようです。

詳しいデータはスポーツと血液型をどうぞ!

血液型って何?

 ABO式血液型は、赤血球の血液型なのに対して、骨髄移植のときに問題になるHLAは白血球の血液型です。
 血液型は何十種類も発見されていて、赤血球の血液型では、ABO式の他にRh式、P式、MN式、Q式、Lewis式などが有名です。

 ABO式血液型は、赤血球の中にある物質ではなくて、赤血球の表面にある糖鎖*1で決まります。

 赤血球の表面の写真を見ると――お見せできないのが残念ですが――びっしり毛のような形の糖鎖が生えています。これらの糖鎖の最末端の糖は、血液型によって 違うため、抗原としての働きをしているのです。

 血液型というから、てっきり赤血球に含まれる物質が違うと思うかもしれませんが、実はそうではありません。要するに、赤血球の生化学的性質(抗原抗体反応)が違うということです。

 また、A型の赤血球表面にはA型とO型の糖鎖がほぼ同数、B型ならB型とO型の糖鎖が同数、AB型ならA型とB型とO型の糖鎖がそれぞれ同数、O型のみO型の糖鎖が存在 しているのだそうです。

 つまり、どの血液型でもO型の糖鎖は存在する*1ことになります。なお、学術的には、O型の抗原はH抗原と言います。つまり、ABO式血液型は、A型、B型、H型の糖鎖による抗原があることになります。

 ところで、ABO式血液型物質は、一番最初に見つかったのは血液中ですが、実際には体中のほとんどの組織に存在しますから、血液型というよりは体質型といった方がいいのかもしれません。

*1 ごくまれに、O型の糖鎖さえ存在しない血液型があります。インドに多いので、ボンベイO型(Bombay O)と呼ばれていますが、どんな性格なのかはわかりません。(笑)

■血液型物質(糖鎖)を構成する糖

galactose.gif (2619 バイト)

acetyl.gif (3119 バイト)

D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン
L-フコース
N-アセチルガラクトサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン
L-フコース
D-ガラクトース −  D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン
L-フコース

■血液型と遺伝

 旧厚生省発行『ホップ・ステップ・ジャンプで変わる血液事業』からの抜粋です。

 ABO式血液型はメンデルの遺伝の法則に従って遺伝します。 A、B、O、AB型の4つの血液型を遺伝子型からみると、A型にはAAAOがあり、B型にはBBBOとがありますが、O型はOO、AB型はABです。
 両親の一方がAB型であれば、例外はありますが、他方が何型であっても原則としてはO型の子どもは生まれません。なぜならその子どもはAB型の親からAかBのいずれかの遺伝子を受けていますから、OOの遺伝子型にはなり得ないからです。
 A型同士の両親からでも、遺伝子型がAAAAなら、子どもはA型しか生まれませんが、遺伝子型がAOAOなら、子どもはA型かO型の子どもが生まれます。AAAOの両親からは、遺伝子型AAAOのA型の子供が生まれることになります。これはB型の場合もまったく同じことがいえます。
 O型とAB型の両親からは、AOBOの子ども、つまりA型かB型しか生まれません。O型同士の両親の場合は、OOのO型の子が、AB型同士の両親からはAAのA型とBBのB型およびABのAB型の子どもが生まれます*2

母親\父親 A型 B型 AB型 O型
A型 AまたはO型 すべて O型以外 AまたはO型
B型 すべて BまたはO型 O型以外 BまたはO型
AB型 O型以外 O型以外 O型以外 AまたはB型
O型 AまたはO型 BまたはO型 AまたはB型 O型のみ

*1 正確には、「ラクト系スフィンゴ糖脂質」
*2 ただし、cis-AB型や突然変異などの例外もあります。

H20.8.21作成

血液型って何のためにあるの?

 ABO式血液型式血液型に限らず、血液型はなんのために存在するのかはよくわかっていません*1。(^^;;
 実際、血液型の教科書を読むと、「ABO血液型物質の存在理由は不明」などと書いてあります。

 ところで、赤血球が外界と接する場合は、ほとんど糖鎖を経由しています。なにしろ、赤血球の表面はびっしりと糖鎖で覆われているのですから…。例えば、細菌やウイルスは、直接赤血球を構成するタンパク質に感染するのではなくて、ほとんどが赤血球表面にある糖鎖を標的にして取り付きます。その糖鎖の構造、つまり赤血球の血液型の違いは、細菌やウイルスの感染の仕方と密接に関わっていることが、最近の研究で明らかになってきました。

 例えば、胃がんや胃潰瘍の主因とされているヘリコバクター・ピロリ菌は、O型やLewis B型の糖鎖に感染しやすいのです。この他に、ウイルスではインフルエンザやエイズ、細菌ではコレラ、破傷風、ボツリヌスなどもそのようです。研究が進めば、これらのメカニズムがどんどん明らかになってくるに違いありません。つまり、竹内久美子さんの『小さな悪魔の背中の窪み』にあるように、血液型によって感染症への抵抗力には差があることが、感染のメカニズムの面からもわかってきたのです。

 ですので、現在では感染症と何か関係があるのではないか、と考えられています。

 さて、糖鎖はなぜ重要なのでしょうか? 実は、生命現象で重要な役割を果たしているタンパク質は、そのままでは水に溶けません。だから、体内では糖鎖と結合して機能を発揮する例が多いのです。だから、糖鎖は生命にとって非常に重要な物質であることは確かです。ややオーバーな言い方かもしれませんが、糖鎖はタンパク質と同じぐらい重要であると言ってもいいでしょう。

 では、なぜこんな重要な物質の研究がなかなか進まなかったのでしょうか?

 糖鎖は、単純な糖が直線に連なるのだけなく、途中で複数分岐するなど(一直線であるDNAなどに比べると)非常に構造が複雑です。だから、分析するのが大変で、今まではあまり研究が進んでいなかったようです。

 つまり、血液型物質の研究は、主に分析技術の問題から、今まではあまり進んでいなかったということです。

 現在の科学でも、結構わからないことが多いようですね。

 成松久さん他 ゲノム情報を超えた生命のふしぎ 糖鎖 第16回「大学と科学」公開シンポジウム講演収録集

*1 もっとも、ダフィー式血液型とマラリアには密接に関係があることがわかっています。

H20.8.21作成

詳しくは血液型の基礎知識糖鎖の基礎知識をどうぞ!

人類最初の血液型はA型だった?

 いままで、ABO式血液型は、O型が一番最初に発生したと思われてきました。これは、20世紀初頭にヨーロッパで広まっていた説で、最近でもそう考えている人もいます。松田薫さんの『改訂第二版「血液型と性格」の社会史』の66ページには、こうあります。

オッテンベルクの系統発生論は、原始人はすべて「O」である、それから先史時代にインド高原あたりで「B」の赤血球ができる変種か変異の現象がおきて、ヨーロッパへ向かうとちゅうで「A」が発生する突然変異がおきたというものだった。

 それとは別に、B型の方がA型より新しいという説もありましたが、いずれにせよO型が最初で、AB型が最後*1ということになります。

 能見正比古さんやダタモさんも、この説を採っていますが、最近の分子生物学の研究成果では、つまり遺伝子を解析した結果では、人類最初の血液型はA型だと考えられています。国立遺伝子研究所の斉藤成也さんは、10年ほど前にこんな研究結果を発表しています。

ABO式血液型物質は、遺伝子の解析による研究によれば、人類がまだ中央アフリカにいる10万年前ぐらいにA型からB型が発生した。ヒトとゴリラやチンパンジーなどの類人猿は同じ血液型物質を持っている場合もあるが、それらは遺伝子的にはおのおの別に発生したものである。従って、ヒトのABO式血液型は10万年前ぐらいに発生したと言ってよい。

 斉藤成也さん 遺伝子は35億年の夢を見る  ←面白いです

 斉藤さんによると、A型→B型→O型という順番に発生したことになり、AB型はA型とB型がいれば発生するのだそうです。

 余談ですが、イエス・キリストの聖布からはAB型の血液が検出されたそうですが、そのころ(2千年前)はAB型は存在しないはずだということで、ヨーロッパではず〜っと論争になっていたようです。はたして、分子生物学はこの論争にピリオドを打つことになるのでしょうか?

*1 O型→A型→B型→AB型の順に進化したという説もありました。

H20.8.21作成

詳しくは斉藤成也さんの論文をどうぞ!

骨髄移植をすると血液型は変わるの?

 骨髄移植は、HLA(白血球の血液型)が一致すれば、ABO式血液型が一致しなくともすることができます。
 もし、違うABO式血液型の人から骨髄移植を受けた場合、血液型はどうなるのでしょうか?

 赤血球を造るのは骨髄ですから、骨髄のゲノムが変われば、当然の赤血球の血液型は変わることになります。つまり、血液のABO式血液型は変わってしまいます。となると、性格も変わるのでしょうか?

 答えは、YES&NOです。

 まず、骨髄移植をしても脳や神経の血液型は変わりません。というのは、骨髄のゲノムが変わっても、脳や神経のゲノムは変わらないからです。脳にもわずかながら血液型物質は存在していて、そのゲノムが変わらないので、当然のことながら血液型も変わりません。

 専門家*1はそう言っています。

骨髄由来以外の圧倒的多数の細胞のゲノムは、移植前後で変わりません。したがって、血液型を決定している遺伝子も元のまま変わっていませんから、骨髄由来以外の「血液型」は変化していません。

 では、性格は変わるのでしょうか? 脳や神経の血液型が変わらないなら、性格も変わらないという考え方もあります。しかし、骨髄移植のような大手術をすれば、その人の身体への影響も大きいでしょうし、ホルモンバランスも変わってくると考える方が自然でしょう。そして、ホルモンバランスが変わると、性格も多少は影響を受けるとされているので、性格が変わる可能性があります。

 つまり、こういうことです。

 骨髄移植をすると血液の血液型は変わりますが、脳や神経の血液型は変わりません。ただし、性格は変わる可能性がある、と…。

*1 芦田嘉之さん やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る ソフトバンククリエイティブ H19.1 ←面白いです

H20.8.21作成

血液型って変わることがあるの?

 実はあるのです。ある種の細菌に感染すると、B型抗原が発生して、O型だったらB型、A型だったらAB型になる場合があります。これを後天性B型(aquired B)と言います。

 能見さんの本にも書いてあったのですが、現在ではそのメカニズムが解明されていますので、説明を引用しておきます(大久保康人著 『血液型と輸血検査(第2版)』 29ページ 下線は私が追加)。

 1959年、CameronらはA型にB型様抗原が現れAB型になった患者に遭遇した。同年、StrattonらはB-like antigen(B型様抗原)として、その成因はB型類似の細菌のpolysaccharideが赤血球表面に吸着されて、一時的なB型抗原特異性を呈していると想像した。その後Gerbalらは、acquired B(後天性B型)の原因は細菌に由来するdeacetylaseがA型抗原決定基のN-acetylgalactosamineに作用してacetyl基を切り、B型様に変性させ、またacetyl化することで元に復することを証明した。

 なるほど、そういうことだったのですね。となると、そういう細菌が脳やシナプス内の血液型(類似)物質に作用するかどうか知りたいところです。もし作用すれば、性格も変わらないといけないことになります。もっとも、細菌に感染している病気の人に、普通の性格テストをやっても、まともな結果が出るとは思えません…。となると、結局、aquired Bによって性格が変わるかどうか研究してもあまり意味がないのでしょうか? はて?

H20.11.16作成

脳に血液型はないの?

 専門家はこう言っています。

血液型と性格について否定する一部の研究者に、脳に血液型物質が存在しないと主張する人がいるが、それは全くのウソである。血液型物質は、たまたま血液中から発見されたので「血液型」と名前が付いたが、脳も含めて体中に存在している。

 確かに、血液・脳関門というものがあって、脳には血液型物質のような高分子は直接入り込まないようになっています。しかし、脳細胞にも血液型の遺伝子はあるのですから、それが発現して型物質を作っているということでしょう。

 念のため、専門書*1からデータを引用しておきます。

ABO型物質は赤血球に存在するだけではなく、表I−5表I−6に示すごとく各種臓器、各分泌液中にも認められる。特に、胃液や唾液には多量に分泌している。そのため唾液を血液型物質の検査に利用することが多い。

表I−5 各臓器中のABH抗原

臓 器

反応(%)

100
十二指腸 90

空 腸

80

胆 嚢

78
顎下腺 76
食 道 70

膵 臓

66

回 腸

56

腎上体副腎

40

膀 胱

40
耳下腺 40
リンパ節 37

腎 臓

37

前立腺

34

肝 臓

34

精 嚢

29
肺 臓 29
結 腸 23

副睾丸

22

脾 臓

18

睾 丸

16

8

表I−6 各分泌液中のABH抗原

分泌液

反応(%)

胃 液

100

唾 液

82

胆 液

74

精 液

69
尿 16

*1 大久保康人さん 血液型と輸血検査(第2版) 6〜7ページ

H20.8.21作成

歴史上の人物の血液型ってどう調べるの?

 現在の技術では、ごく小さな血痕や、数本の髪の毛でも血液型の鑑定ができるようです。ですので、血判や遺髪がきちんと残っていれば大丈夫らしいです。

 例えば、豊臣秀吉(O型)と上杉謙信(AB型)は血判から、北条政子(O型)は遺髪から、伊達政宗(B型)は遺骨からといった具合です。

 変わったところでいえば、イエス・キリストの聖布からAB型の血液が検出されたそうです。が、本当なんでしょうかね?

 余談ですが、中南米のミイラからも血液型が鑑定されています。それによると、現在はO型が多い中南米では、昔のミイラからはA型やB型も検出されているそうです。現在O型が多いのは、感染症(梅毒?)の影響なのではないかという説も有力です*1

 *1 ゲノムが語る23の物語

 この本は少々前のもの(2000年)ですが、今でも気になる記述があります(ゲノムは過去の病理の記録 185ページ)。

北アメリカで見つかったコロンブス以前の自体のミイラには、A型やB型の血液の物がかなり多いのだ。まるで、A型やB型の遺伝子が、西半球に固有の淘汰圧によりあっという間に激減したかのように見える。その原因が梅毒と思わせるヒントもいくつかある。梅毒は、どうやら南北アメリカ大陸を出自とする病気らしいのだ。…そして、O型の人は、ほかの血液型の人に比べ、梅毒に罹りにくいようなのである。

 まぁ、真相はタイムマシンがないのでわかりませんが、興味ある仮説であることは確かですね。

H20.8.21作成

詳しくは歴史上の人物の血液型をどうぞ!

珍しい血液型ってどんなのがあるの?

 いろいろあるようですが、ここでは代表的なもの2つを紹介しておきます。

cis−AB型

 以前によく来た質問で、本当の親子なのにO型(AB型)の親からAB型(O型)の子供が生れる場合があるのか?というのがあります。確率としてはかなり低いのですが、まれに起こる場合があります。それは…

 原因の1つは検査ミスです。人によっては抗原抗体反応が弱い場合があり、本当はA型やB型なのに誤ってO型と判定される場合があります。

 もう1つの原因は、親がcis−AB型である場合です。普通の人は血液型の遺伝子は2つしか持てません。だから、普通はA型とB型とO型の全ての遺伝子(抗原)を持つことはありません。しかし、cis−AB型の人の場合は、A型とB型とO型とすべての遺伝子を持っています。このcis−AB型の人は抗原抗体反応が弱く、普通の血液型検査では、誤ってO型と判定される場合があるそうです。

#cis−AB型の人って、どんな性格なんでしょうね。興味津々です。(^^)

Bombay−O型

 もう1つ紹介しておきましょう。

 O型、A型、B型、AB型の人全員が持っている抗原があります。それは、人間(Human)のHという意味でH抗原といい、A型・B型抗原の基の物質となっています。しかし、まれにこのH抗原を持っていない人もいるのです。この血液型は、インドのボンベイ(現:ムンバイ)地方に多いことから、Bombay−O型と名付けられました。

 

 Bombay−O型の人は、H抗原を持っていないため、H抗原に対する抗体を持っています。これはどういうことかというと、O型、A型、B型、AB型のどの血液を輸血しても、赤血球が凝集してしまうため輸血不可能ということです。ちょっと大変ですね。

 では、どんな性格かというと…残念ながらデータがないのでわかりません。(^^;;

 なお、Bombay−O型の人でも、ABO血液型の遺伝子型は、必ずしもO型とは限らないため、A型やB型の子供が生まれることもあるそうです。

H20.11.3作成

血液型で体型が違う?

 血液型で体型が違うという話は出ているようですが、残念ながら手元にデータがあまりありません。
 例えば、B型は腰骨が高いとか、血液型によって骨格が違うらしいのですが…。
 キチンとしたデータはどっかにあるのかな?

 さて、能見正比古さんによると、顔かたちは差があるようで、『血液型エッセンス』にはこうあります(107ページ…元は『血液型愛情学』)。

☆O型と見たい特徴……おデコが丸い。生えぎわが丸い。三白眼の系統、鼻が丸っこい。唇が薄い、顔が何となく動的(ダイナミック)。
お断りしておく。たとえば、O型で唇の厚い人も多い。これは唇の薄い人の中にO型が多いという意味にすぎない。以下も同様である。
☆A型と見たい特徴……アゴが長細く反りトガる。眉と目が鼻筋に向い接近進行中の感じ。目尻が長い。眉根に2本のタテじわが鮮やかに寄る。眉が貧弱。鼻の穴タテ細。生え際が富士額かギザギザ、肉づきがサラッとした感じ。
☆B型と見たい特徴……正確な三角眉。ほお骨が出るなどデコボコ感。小鼻が左右へフン張る。眉と眼が鼻筋からサヨナラをして離れつつある感じ。鼻稜(びりょう)が角(かど)ばって盛り上がる。アゴが貧弱で後退気味。線太く、厚く脂(あぶら)っぽい肉づき。
☆AB型と見たい特徴……顔の部品が端正に行儀よく並ぶか、逆に四方八方デララメに散乱。眼が黒めがち。鼻稜が高く隆起。全体に静的(スタティック)な感。なおAB型には、A寄り、B寄りの感じが、それぞれに出る。

  

[図は『血液型愛情学』より]

 そのほかにも、O型は左利きが多いとか、のデータもありますが、ここで省略します(『血液型でわかる体とココロの関係』13ページ)。

H21.1.1作成

血液型の比率って変わることがあるの?

 血液型の遺伝子は、メンデルの法則に従って遺伝するので、普通の状態で比率が変わるということはありません。
 しかし、現実には国や地域によって比率は違いますよね? なぜでしょうか?
 実は、いろいろな説がありますが、誰も実証したことはないので、すべて仮説に過ぎません。(笑)
 例えば、

 遺伝学な視点で考えると、人類の祖先はA型ということですから、O型やB型は後で発生したことになります。それが、これだけ増えたのだから、何かしら生存に有利であると考えることもできます。ただ、これまた実証されているわけではないので、あくまで仮説です。

 国立遺伝学研究所のサイトでは、こう説明があります。

 ABO式血液型の遺伝子は、通常の遺伝子がしたがっている進化パターンにはあてはまらないようである。第一に、糖転移酵素の働きがなくなっているのにもかかわらず、O対立遺伝子の頻度がかなり高い。重要な物質交代を担っている酵素遺伝子の場合、酵素の働きがなくなってしまう突然変異が生じると、普通はその個体の生存にきわめて不利なので、子孫を残しにくくなるはずである。したがって、ABO式血液型に関与する糖転移酵素は、人間がとりあえず生きてゆくのには絶対必要であるわけではない。ところが私たちの推定によると、後述するように、ABO式血液型の遺伝子は脊椎動物が出現した5億年以上前ごろから、延々と生き残ってきたのである。このことから、弱いながらもこの遺伝子にはなんらかの存在意義があると考えられる。このように、絶対に必要というわけではないが、あったら少しは役に立つという遺伝子が、ヒトゲノム中にはたくさんあると筆者は考えている。

 また、A型とB型の対立遺伝子の共存が霊長類のあちこちの種でみられることも不思議である。この遺伝子がなぜこのような変異パターンを示すのか、まだよくわかっていないが、バクテリアやウイルスなどの感染を防ぐのに、ある程度の効果があるのではないかと考えられている。実際、胃潰瘍や胃癌の原因のひとつであるヘリコバクター=ピロリというバクテリアは、胃壁にもぐりこむ際に、ABO式血液型物質の前駆体であるH型物質を足場にしている。するとH型物質しか持っていないO型の人間は、胃潰瘍などになりやすいため、多少は生存に不利となるだろう。同様のことが、A型やB型の糖抗原と別のバクテリアの組み合わせについても成り立つかもしれない。しかし、まだこれらは仮説にすぎず、将来の検証が待たれるところである。

 なお、最近では、感染症説を裏付けるように、東北大学の齋籐忠夫さんが血液型別ヨーグルトの研究を進めています。将来が楽しみですね。

H21.4.19作成

B型はノロウイルスに強いってホント?

 以前、カキの食中毒で問題となったノロウイルスですが、血液型により感染のしやすさが違う可能性が指摘されています。
 カキで有名な広島市では、今までの研究がわかりやすく、コンパクトに紹介されていて、オススメです。

各種ノロウイルスの組織・血液型抗原との結合性

 

ウイルス株名

遺伝子

グループ

非分泌型

(O型,A型,B型)

分泌型

O型

A型

B型

VA387(ロードスデイル類似株)

GrV(ロードスデイル類似株)

G2 +++ ++++ ++++

ノーウォークウイルス(NV/68)

G1 +++ +++

MOH(スノーマウンテン類似株)

メキシコウイルス

G2 +++ +++

VA207(アムステルダム類似株)

G2 +++ ++ +/− +/−

補足:各唾液中に含まれる組織・血液型抗原は次のとおり。非分泌型(O型,A型,B型):Lewis(Le)a前駆体。分泌型のO型:Lea前駆体、H1型Leb。分泌型のA型:Lea前駆体、H1型、A1型ALeb。分泌型 のB型:Lea前駆体、H1型、B1型BLeb

(文献2から引用、一部改変)

【出典】広島市衛生研究所 カキにあたる人、あたらない人

 ノロウイルスといっても、いろいろあるのですが、日本で多いとされるウイルスは B型の人には感染しにくい可能性があるそうです。
 では、B型の人は絶対に大丈夫かというと、上の表にあるように、逆にB型に感染しやすいウイルスもあるのです。

 冬はカキがおいしい季節ですが、やはりどの血液型でも気をつける必要があるようですね。(笑)

 【参考】ALL ABOUT ノロウイルスに感染しない血液型!

H21.1.25作成

人間以外の動物の血液型は?

 実は、人間以外の動物にも血液と血液型があります。

 人間の血液は、赤血球に存在する、酸素を運ぶヘモグロビンという物質のせいで赤い色をしています。この赤い色は、鉄イオンの色に由来します。タコやイカでは、ヘモシアニンという物質があり、銅イオンで青い色になっています。ちなみに、ホヤは、ヘモバナジン(バナジウム)で緑といったように、動物によって違いがあります。

#青い血液というと、思わず『宇宙戦艦ヤマト』のガミラス人を思い出す私って…。f(^^;;

 両生類にも血液型がありますが、ヒトとは違い種ごとに決まっていて、胃と血液で型が違うことがあるそうです。
 細菌にも血液型があることが明らかになっています。例えば、結核菌はB型です。

 ほ乳類の血液型は、

 また、霊長類の血液型は

 といった調子で、種によってかなりの違いがあるようです。

《参考文献》

 斉藤成也さん 遺伝子は35億年の夢を見る  ←面白いです

植物にも血液型ってあるの?

 血液型物質は、人間だけではなく、動物や植物からも発見されています。
 ただ、植物には血液がないので、血液型物質を持っているということだけですが…。
 山本茂さん『知っておきたい血液型の科学』によると、調査された植物の約1割が血液型物質を持っていたそうです。
 それによると、

O型
ゴボウ、スイカズラ、ネズミモチ、ナツハゼ、ツバキ、ブドウ、ダイコン、
タカオカエデ、マユミ、エンジュ、コブシ、サトイモ、サルトリイバラ、
エノキタケ、マンネンタケ
A型 アオキ、ヒサカキ、キブシ、ウバメガシ
B型 ツルマサキ、イヌツゲ
AB型
ガマヅミ、アセビ、ソバ、スモモ、ウリカエデ、イチイ、コンブ、ヒバマタ

 ちなみに、殺人事件でAB型の血液が発見されたのですが、その原因はソバ殻の枕だった、ということがあったそうです。

H20.11.3作成

 

心理学でちゃんと研究されてるの?

 う〜ん、これは一言では言えない難しい問題ですね。

 外国の文献を読んだ限りでは、たまには頭ごなしに否定*1しているものもありますが、全体としては、自らの実験や調査で得られたデータに基づき、きちんと分析・考察しているものが大部分です。 そして、結論も、「血液型と性格」を肯定しているもの、否定しているものといろいろです。

*1 例えば、Kenneth M. Cramera, Eiko Imaike, Personality, blood type, and the five-factor model, Personality and Individual Differences 32 (2002) 621–626 →論文の概要はこちら

 しかし、日本では年代によって様子が違うというのが、私の実感です。

■2000年まで…非科学的俗信

 例えば、15年ほど前の1993年には、こんな感想を述べている心理学者*2がいました。

日本の心理学者が血液型性格関連説に対して持っているイメージは、 「言うまでもなく、否定されるべき非科学的俗信であるが、それが流行すること自体は興味深い研究対象である。しかし、そういうものを信じることは理性的ではなく、国辱的でさえある」といったようなものらしい。われわれの印象では、このようなイメージはそれほど外れたものではないように思われる。

 *2 白佐俊憲[北海道大学教授]・井口拓自さん 『血液型性格研究入門』 1993年

 普通の人、つまり血液型を面白がっている多くの人には、少々信じがたいことかもしれません。しかし、現実に昔の心理学の文献を読んでみると、この印象はあながち的外れともいえないようです。現在はインターネットで公開されている文献もありますので、疑問に思ったら気軽に自分で調べることもできますから、興味がある方は調べてみてもいいでしょう。

 例えば、心理学者の大村政男さん[日本大学名誉教授、「血液型と性格」を否定する第一人者]は、1985年の『朝日ジャーナル』に、『「血の商人」の餌食になるな デタラメぶりは立証された』という記事を執筆*3しています。このタイトルから連想するのは、まさに「非科学的俗信」「国辱的」というイメージですし、実際に読んでみても、内容はこのイメージどおりというしかありません。

 もっとも、15年ほど前(1994年)ですが、別な感想を述べている心理学者*4もいます。

これまで何人かの心理学者が、 血液型と性格との関連を実証的方法で反証し、血液型性格関連説を否定しようとしてきた。ここで注目されるのは、彼らが血液型性格関連説を「科学的方法によって反証可能な理論」、すなわち科学的理論とみなしていることである。この点でそれを「非科学的な迷信」とみなして無視した従来の心理学者とは異なる。

 *4 渡邊芳之さん[帯広畜産大学]も書いている 『現代のエスプリ〜血液型と性格』 1994年

 たしかに、「科学的方法によって反証可能な理論」とするなら一歩前進でしょう。しかし、そういう人たちでさえ、渡邊さんによれば「血液型性格関連説は間違っている」というアプリオリな立場を持っているということですから、どっちにしろ「頭ごなしに否定」というのは変わりません。

 私が一番問題だと思っているのは、能見正比古さんが「在野」の「ポピュラー・サイコロジスト」である[だから信用できない]という点で、能見さんの支持者*5はこう述べています。

能見をめぐる議論には彼の肩書をめぐる発言があいつぎ、そうした非本質的問題が、あたかも主要な問題の1つであるかのごとく、喧伝されてきている。筆者は本書でそのことの不当さをも論じているが…

 *5 前川輝光さん[亜細亜大学教授] 『血液型人間学』 運命との対話 1998年

 これまた同感です。いくらなんでも、論者の所属で“差別”するのはルール違反でしょう!

 こうなると、「血液型と性格」論争は、まさに“神学論争”といった色彩を帯びていることがわかります。論争の形態だけ見ていると、カトリック vs プロテスタント、進化論 vs 創造論、超能力・宇宙人・UFO論争などなど、思わずいろんな論争を連想してしまいそうですね。(^^;;

*2 白佐俊憲[北海道大学教授]・井口拓自[東大卒]さん 『血液型性格研究入門』 1993年 89〜90ページ
*3 大村政男[日本大学名誉教授] 『朝日ジャーナル』 「血の商人」の餌食になるな デタラメぶりは立証された 1985年 第27号9巻 89〜91ページ
*4 渡邊芳之さん[帯広畜産大学] 『現代のエスプリ〜血液型と性格』 188ページ  性格心理学は血液型性格関連説を否定できるか〜性格心理学から見た血液型と性格の関係への疑義 1994年
*5 前川輝光さん[亜細亜大学教授] 『血液型人間学』 運命との対話 1998年 →要約はこちら

H20.8.24作成

文献リストはこちら

■2000年〜2005年…沈黙

 しかし、2000年代に入ると、「頭ごなしの否定」だった心理学の態度も変わってきたようです。

 一番わかりやすい例として、アエラムックの「心理学がわかる」シリーズを取り上げます。
 私は、このシリーズは、1994(平成6)年版、2000(平成12)年版、2003(平成15)年版の3冊を持っています。
 血液型に否定的な記述は、1994年版では3ページもあったのですが、2000年版ではたったの300字に縮小され、そして2003年版では全くなくなってしまた っ のです! おかしい、と思って2003年版を何回も読み直したのですが、やはり全く見つけることができませんでした。
 執筆陣が大幅に変わったわけでもないようなので、執筆者グループ、あるいは編集者が血液型を書く必要がない(あるいは書いては不都合?)と判断したのでしょうか?

 
1994年版
血液型の記述は
3ページ
(67〜69ページ)
2000年版
血液型の記述は
300字
(139ページ)
2003年版
血液型の記述は
なし

 さらに進んで、データの差があると明記している『心理学論の誕生』(佐藤達哉他著 北大路書房 H12.6)のような本も出版されるようになりました。出版社名でもおわかりのように、この本はちゃんとした学術書です、念のため。

渡邊[芳之さん 帯広畜産大学] そんなことだから、血液型性格判断のデータが統計的に有意★50だったりするとアタフタするんだよ。

★50 一部の心理学者が統計的手法で血液型性格判断を否定しようとしたため、血液型性格判断賛成陣営も統計を勉強し始め、最近では実際に有意差の出る(つまり血液型と性格に関連があるという)データを提出しはじめている。…最初のうちは積極的に批判の論陣を張っていた心理学者たちの多くは沈黙している。

 以前だったら到底考えられないことです。

 ただ、不思議なことに、日本の学会誌を読んでみても、議論が戦わされた形跡はありません。また、ごく一部の例外を除いて、「有意差の出る」データが発表されたということもないようです*6。となると、いつのまにか血液型と性格の研究が下火になった(?)ということなのでしょうか?

 あるいは、別な可能性も考えられます。

 この時期は、インターネット上で、活発に「血液型と性格」論争が展開された時期です*7。わざわざインターネット上で“素人”と論争するつもりはない(心理学者にとって有益ではない ?)、ということだったのかもしれませんが、真相は不明です。

*6 大村政男さんの調査でクロニンジャーのパーソナリティ理論を使ったもの(2004年)
*7 恥ずかしながら、私も論争の参加者の一人です。当時の論争の一部は、私のサイトで読むことができます。

H20.8.24作成

■2005年から…「血液型と性格」は肯定、「血液型性格判断」は否定

 その後、ほとんど沈黙していた心理学者や否定論者は、どうやら実質的に主張を変えてしまった?ようです*7*8

 一言で言うと、「小さな差」でよい「血液型と性格」は黙認か肯定、「大きな差」が必要な「血液型性格判断」は否定、というスタンスです。
 ただ、これまた不思議なことに、日本の学会誌を読んでみても、議論が戦わされた形跡はありません。また、「小さな差」の出るデータが発表されたということもないようです。

 ですから、ここで私が、最近の心理学の主流は、「小さな差」は肯定、「大きな差」は否定だといっても、普通の人には信じられないかもしれません。しかし、現実に、私が最近読 んだ文献の大部分がそうなのです!

 ここでは、心理学者ではありませんが、大阪大学教授の菊池誠さん[物理学、コンピュータサイエンス]の主張が一番わかりやすいので、引用しておきます。

岐阜県産業技術センター(2007/4/19)資料太字は私)

3.血液型を考える

 実のところ、原理的には血液型と性格に関連があってもいいし、性格が大きく四つに分類されてもかまわないのです。血液型性格判断が誤りである理由は、あくまでも血液型から性格が判断できるほどの強い関係は発見されていないからです。性格「判断」に使えない程度の弱い関係はあってもよい。いや、原理的には強い関連があってもよかったのですが、それは心理学者の研究によって否定されたということなのです。

 つまり、かつての否定・懐疑論者や心理学者の大部分が“プチ肯定論者”になってしまった、ということになります!
 念のため、菊池さん自身は、能見説や古川説には賛成していないと主張しています。あくまで、「弱い関係」を否定していないだけ、というのが彼のスタンスです。

 菊池誠さんよりはわかりにくいのですが、心理学者の菊池聡さん[信州大学准教授]も、実質的に同じことを言っているので、念のために引用しておきましょう。

  *8 菊池聡さん[信州大学准教授] 「自分だまし」の心理学 2008年

 これまでも、多くの心理学者が、比較的きちんとした性格テスト手法に基づいて、血液型によって人や適性や行動に、血液型性格論者が言うような診断力のある差異が見いだせるかどうかを研究しています。しかし、そこには、信頼性と再現性がある差異は見つかっていません。いわば、血液型で人を見分けることができるというのは、ただの「錯覚」だということなのです。(86ページ 太字は私)

 もっとも、最近でも否定的な見解を発表している心理学者*9もいますし、インターネット上では、意外と単純な否定論が多いような印象を受けます*10
 ただ、確実に言えるのは、昔のように「非科学的俗信」や「頭ごなしの否定」と主張する心理学者が、ほとんどいなくなってしまったということです。

 なお、2007年には、世界中のデータを分析した韓国・延世大学の孫栄宇教授の論文が発表され、「血液型と性格」の関係を裏付ける結果が得られています。 統計論争は、これでほぼ決着したといえるのではないでしょうか?

*7 長谷川芳典さん[岡山大学准教授] 批判的思考のための「血液型性格判断」(PDF形式) 2005年発表
*8 菊池聡さん[信州大学准教授] 「自分だまし」の心理学 2008年
*9 村上宣寛さん[富山大学教授] 心理テストはウソでした 2008年
*10 インターネット上では、昔の文献を参照している記事も少なくないからかもしれません

H20.8.24作成
 
 ところで、両・菊池さんは惜しいことをしましたね。
 私が逆の立場だったら、「小さい差」を「新・古川説」や「ネオ・古川説」として学会に発表します。
 まじめに、在野の能見「血液型人間学」が正しいなんて言わなければいいのです。

 心理学の先輩の説の復活ですから、心理学者も文句は言わないでしょう。
 これで、昔の法医学会にリベンジできますし、その年の学会賞はいただきです(笑)。

 誤解のないように書いておくと、「新・古川説」や「ネオ・古川説」、半分冗談で、半分は真面目な話です。
 ダメもとでやってみる価値はあると思うんですが…。
 もっとも、「大きな差」があるという大村政男さんの発表*6もいつのまにかウヤムヤになってしまったようですから、何か部外者にはわからない事情があるのでしょうかね?

■心理学者がデータの差を認めた証拠?

@週刊文春 平成17年2月10日号 「血液型占い」どこまで根拠があるの?

 広島修道大学人文学部の中西大輔助教授(当時・心理学)は、インタビューでは、こう述べています。

「…人の血液型と性格を実証データだけで調べただけでは、その差が本当に血液型によって生じたかどうかは分かりません。というのは、『疑似相関』や『予言の自己成就』が関係するからです。
 前者は本来関係のない事柄が見かけ上、[注:統計的に]関係があるように見えてしまうことで、…後者は、刷り込まれた通り行動することによって、実際にその通りの現象[注:血液型どおりの行動]を引き起こすこと。『A型は几帳面』と言われ続けたために『自分はA型だから几帳面なんだ』と思い込み、結果的に几帳面な行動が増える。…」

 要するに、データの差があることを事実上認めてしまったということのようです。

A大坊郁夫さん編著 わたし そして われわれ ミレニアムバージョン H16.1 北大路書房

 本当に血液型と性格に関係があろうがなかろうが、データを取れば必ず血液型と性格には関係ある結果が得られる…はずです。

 93ページのコラムを読んでみましょう(抜粋)。

 <パーソナリティ研究とステレオタイプな認知>
 欧米では,生年月日による星座とパーソナリティ間の結びつきについて広く信じられているようです。そのことが,パーソナリティの判断について歪みをもたらしてしまうことを示したアイゼンクの研究を取り上げてみましょう。…
 「知識なし群」は,自分のパーソナリティの判断で,星占いの予想とは全く一致していないが,「知識あり群」は,星占いの予想と偶然以上に一致した判断をしてしまうことがわかります。
 日本ではABO式血液型とパーソナリティとの結びつきが広く信じられていますが,そのことが自分のパーソナリティの判断に歪んだ結果をもたらす可能性が予想されます。また,いったん信念ができあがると,それに一致する情報にのみ注意が向くことで,その信念(血液型ステレオタイプ)が変化しづらいことも明らかにされています。

 本当に星占い性格に関係があろうがなかろうが、欧米の一般の人(=星占いを信じている人と信じていない人の両方を合わせたグループ)のデータを取れば必ず星占いと性格には関係ある結果が得られることになります。日本人の血液型も同じことだと…。

 要するに、データの差はあるということです。

 念のため、旧版もチェックしてみました。初版(1988年)の77ページとVer.2(1993年)を調べてみましたが、ではこんな内容でした(抜粋)。

<血液型とパーソナリティ>
 心理学の領域からみた血液型とパーソナリティとの関係はどのようなものでしょうか。“Psychological Abstract”という,毎年各国で発表された心理学関係の論文を網羅している雑誌で‘Blood Groups’という項目を調べてみると,ABO式血液型と,精神病の診断名や心理検査の結果との対応などについて,毎年2〜3の報告がなされていますが,それぞれの特性と血液型との統計的有意な関係は見出されなかったというものがほとんどです。
 大村政男は,特定の血液型に多いとされるそれぞれの性格特徴が,実は誰にでもみられるものであることを統計的に示しました。たいていの人がもっているような,パーソナリティ特徴を示して,これがA 型だとか,これがB型だとかいわれると,なるほど確かにそれが自分にもあてはまるために,そのラべルづけが正しいような気がすることがあります。

 要するに、データの差はなかったということです。

 ということは、データの差がない(初版とVer.2)→データの差がある(ミレニアムバージョン)と主張が180度変わってしまったことになります。
 なんで?

H21.4.27作成

■心理学の定説が180度変わった!

 なんと、2004年の血液型ブーム後には、心理学の定説が「データに差がある」になってしまいました!!
 「データに差がない」という従来の「定説」は、完全にひっくり返ってしまったと言っていいでしょう。
 結果的に、心理学の定説が「データに差がある」という私の主張に一致することになったのです。
 少なくとも、性格の自己評定では…。
 バンザ〜〜〜イ! v(^^)
 しかし、本当にこんなに簡単に変わっちゃっていいのかな?

念のため、代表的な論文を4つほど引用しておきます。
  1. 自分の性格の評価に血液型ステレオタイプが与える影響 工藤 恵理子(東京女子大学) 日本心理学会第73回大会発表論文集 2008年
     全体として、血液型ステレオタイプに合致するような自己評価が認められた
  2. 血液型性格項目の自己認知に及ぼすTV番組視聴の影響 山岡 重行(聖徳大学) 日本社会心理学会大会第47回大会発表論文集 2006年
     高受容群では11項目で血液型の主効果が認められ、低受容群でも2項目で血液型の主効果が認められた
  3. 潜在的な血液型ステレオタイプ信念と自己情報処理 久保田健市(名古屋市立大学) 日本社会心理学会大会第48回発表論文集 2007年
     特性語の種類の主効果(F(1,32)=9.80, p<.01)と特性語の種類×参加者の血液型の交互作用(F(3,32)=3.22, p<.05)が有意だった…定義づけ課題の結果についても,同様の2要因分散分析を行ったところ,特性語×参加者の血液型の交互作用が有意だった.
  4. Blood-type distribution; Beom Jun Kim, Dong Myeong Lee, Sung Hun Lee and Wan-Suk Gim; Physica A: Statistical and Theoretical Physics Volume 373, 1, January 2007, Pages 533-540
    A psychological implication for the case of B-type males is also suggested as an effect of a distorted implicit personality theory affected by recent popularity of characterizing a human personality by blood types.
    [大意] MBTI検査では、ただ1つB型男性を除いては血液型による差がなかった。これは、血液型ブームによる歪みが現れたものと考えられる。
 
H21.11.14作成

FBI効果ってどんなもの?

 最近はあまり聞きませんが、以前は「血液型と性格」を否定するのに、FBI効果という言葉が使われました。それは、「フリーサイズ効果(Freesize)」「ラベリング効果(Labeling)」 「インプリンティング効果(Imprinting)」の3つのことです。

 フリーサイズ効果というのは、[血液型の性格特性が]何にでも合ってしまうことをいう。B型の特徴は看板さえ換えれば、ただちにAB型になってしまうのである。 (大村政男さん  「血の商人」 の餌食になるな 『朝日ジャーナル』1985年3月8日号 91ページ)

 例えば、本来(?)の性格である「O型は大らか」「A型は注意深い」「B型は好奇心が強い」「AB型は合理的」というような内容を印刷し、それを入れる封筒のラベルには別の血液型を書き、本当に自分と合っているかどうか回答してもらうというものです。変える順番はなんでもいいですが、例えば、O型とAB型を交換し、更にA型とB型を交換するというものです(表II)。あるいは、各血液型からランダムに性格の記述を拾ってくるというものです(表III)。 (同)

表II おかしな一致(その1)57人

本人\ラベル O型
(実はAB)
A型
(実はB)
B型
(実はA)
AB型
(実はO)
O型 13
A型 19
B型 12
AB型

表III おかしな一致(その2)63人

本人\ラベル O型
実はO1・A3・
AB6で構成
A型
実はO5・B5
で構成
B型
実はO1・A6・
AB3で構成
AB型
実はO3・A1・B5・
AB1で構成
O型 21
A型 18
B型 11
AB型

 結論としては、大村さんいう「フリーサイズ効果」(性格の特徴があいまいで何にでもあってしまう)が実証されているように思えます。

 なお、心理学では「バーナム効果」*1のことですが、なぜ大村さんがこの言葉を使ったのか分かりません。

 他の効果は、

 ラベリング効果というのは、ラベル(レッテル)によって内容が規定されてしまうことである。これがO型の特徴だと書いてあれば、内容が何であってもO型だと思い込んでしまう。
 インプリンティング効果というのは、最初の接触で強い印象が人の心のなかに刷り込まれることをいう。…このインプリンティング効果が利用されているのである。これがA型の特徴だと書いてあれば、A型の人の心にそれが刷り込まれ、ずっと消去しないで存続する。(同  90〜91ページ)

 要するに、「思い込み」ということになります。

 ただし、これらの効果については、何人かから批判が提出されています。

 最近聞かないのは、そのせいなんでしょうか?

*1 誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう心理学の現象。(Wikipedia)

H20.12.6作成

詳しくは、FBI効果は存在するか?をどうぞ!

性格検査を血液型でチェックすると?

 性格検査の問題点はいろいろあります。知っている人は知っているでしょう。

 血液型と性格のパイオニアである能見正比古さんは、性格検査で血液型と性格の関連を調べるというアドバイスを一蹴し、逆に血液型で性格検査をチェックすべきだと主張しています。
 まあ、そのときは、私もどうやってチェックしたらいいのかわからなかったし、正比古さんが実際に調査したという話も聞いたことはないので、そのままになっていました。

 しかし、現実のデータを調べていくうちに、こんなことがわかりました。

 ちなみに、心理学者の渡邊芳之さん[帯広畜産大学]さんも、こんなことを言っています。

【参考】渡邊芳之さんの説明

 渡邊芳之さん[帯広畜産大学]は血液型と性格の関係を否定する『現代のエスプリ〜血液型と性格』に、こう書いて います(188〜189ページ 『性格心理学は血液型性格関連説を否定できるか〜性格心理学から見た血液型と性格の関係への疑義』 太字は私)。

 多くの性格検査はそれぞれ人の性格のごく一部を測っているにすぎず、ある検査と血液型とに関係がなくても、他の検査とは関係しているかもしれない。実際、性格検査の得点と血液型との関連が、ごくわずかとはいえ統計的に有意なかたちで見出されたという報告もある。
 また、すべての性格検査について検討して血液型と関係するものがひとつもなかったとしても、人の性格というのは非常に複雑なものであるから、これまでどの検査でも測られていない非常に重要な要素が存在して、 それが血液型と関連している可能性が残る。

 確認していないのでわかりませんが、彼は実際にデータをチェックしていたのかもしれません。なにしろ、あまりにも私の調べた結果と一致するものですから…。

 やはり、血液型と性格は一筋縄では行かないようです。

 それだけではなく、2007年には、性格検査の1つ1つの質問項目では差が出ていたものが、いくつかの性格特性に集約すると差が相殺されて消滅する現象が存在することが明らかになりました。具体的には、ビックファイブに基づく性格検査であるNEO−PI−Rのファセットを5因子に集約する段階で、差が相殺されて小さくなる、あるいはほとんどなくなってしまうという現象が存在することが明らかになったのです*1。これでは、「診断力のある差異」なんか問題外ですね。

詳しくは、血液型と性格の新・常識!?&入門性格検査の問題点どうぞ!

*1 So Hyun Cho, 2005; Cramer, 2002; Rogers, 2003; Kunher, 2005; Wu, 2005; 久保義郎他 2011

H21.1.1作成 H26.8.10追記

ランダムサンプリングしないでいいの?

 ランダムサンプリングは、日本語では無作為抽出と言います。ここでは、ランダムサンプリングの方がポピュラーのようなので、カタカナを使うことにします。

 さて、統計ではランダムサンプリングが重視されていることは間違いありません。
 多くの心理学者は、能見さんのデータは、ランダムサンプリングでないから信用できない、言っています。

 例えば、村上宣寛さん(富山大学教育学部教授)の『「心理テスト」はウソでした。』の38ページにはこうあります。

 調査ではサンプリングが大事である。母集団(日本人全体、あるいは、人類全体)の性質をできるだけよく代表するようにサンプルを選ぶ。それがランダム・サンプリングである。…統計学は、すべてランダム・サンプリング(無作為抽出)されたデータを前提としている。この前提が満たされないと統計学を使っても意味がない。 能見正比古の統計的検定はトリックに過ぎない。

 しかし、意外なことに(?)、こう言っている村上さんを初めとする心理学者のデータは、自分の教えている学生がほとんど(予算の関係?)ですから、ランダムサンプリングなんて、ほとんどありません。

 実は、この点を村上さんに質問してみたのですが、明確な回答はないようです。

 ちなみに、私が調べた範囲では、心理学者のデータでは「血液型と性格に興味がある」と回答する率が、他のデータより10〜20%低いことがわかっています。言い換えれば、ある程度先生に遠慮している(単位がほしいから?)ということですから、明らかにバイアスがかかっているようなのです。これでは、どう考えても、ランダムサンプリングとは言えないでしょう。

 下の表は、血液型に興味がある人の割合のデータです。赤枠の中が心理学専攻の学生です。平均を計算すると「興味ある」が53%になるので、@の中学生グループを除けば、他のいずれの被験者グループよりも低いことがわかります(佐藤達哉 1995 血液型性格判断、星占いを信じやすい性格があるか 児童心理,649,112-121.)。

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 では、能見さんのデータも含めて、ランダムサンプリングでないデータはすべて信用できないのでしょうか?

 私は、そうは思いません。というのは、物理学の実験のように、どこでも誰がやっても結果が同じという仮定(斉一性原理)をしてもいい、と考えます。
 なぜなら「血液型と性格」は、社会調査と違って1回きりしか実験ができない、というものではないからです。
 ということで、多くのデータで、能見さんのいう性格特性、あるいは一般的にその血液型の特性と思われている結果と一致すればいいのではないでしょうか?

詳しくは、次のページをどうぞ!

ABO式以外の血液型でも性格が違うの?

 個人的な経験だと、Rh−の人はRh+の人よりおとなしい感じがしますが、なにしろ数が少ないので…。

 実は、ABO式血液型以外は、ほとんど研究がされていません。
 血液型を調べるのが大変だからですかね?
 
日本国内ではほとんどなく、海外では、R. B. Cattellの研究*1が有名です。
 この研究では、P式血液型(P1型とP2型があります)で、P2型はP1型に比べると心配性という結果が得られています。

 ちなみに、日本人はP2型が多く、欧米人はP1型が多いので、日本人は欧米人より心配性が多いのかもしれません…って、ホントかな?

*1 "The relation of blood types to primary and secondary personality traits." The Mankind Quarterly, pp35-51, Vol. 21, 1980.

面白い仮説がありますので、興味がある方は次のページをどうぞ!

H22.2.27作成

ABO式血液型が発見されたのって1900年?1901年?

 ABO式血液型は、1900年にオーストリア[ウィーン大学]の病理免疫学者、カール・ランドシュタイナー(O型)によって発見されました*1。それは、人間の血液を混ぜ合わせる場合、組み合わせによって、赤血球が凝集したり、しなかったりするというものです。
 翌1901年には、発見された現象が整理され、医学誌に掲載されました*2。ただし、当時はAB型は発見されておらず(AB型は、彼の同僚により1902年に発見)、ABO型ではなく、ABC型(当時O型はC型と呼ばれていた)でした。

 ランドシュタイナーは、血液型を発見した業績が評価され、1930年にノーベル医学生理学賞を受賞することになります。

 ですから、現象そのものが発見されたのは1900年ですが、実質的な発見は1901年ということになります。人によって、血液型の発見年が1900年と1901年と違うのは、どうもこのせいのようです。

*1 Landsteinter, K. (1900),  Zur Kenntnis der antifermentativen, lytischen und agglutinierenden Wirkungen des Blutserums und der Lymphe. Zentbl. Bakt. Orig. 27:357-36
*2 Landsteinter, K. (1901), Ueber Agglutinationserscheinungen normalen menschlichen Blutes. Wien. Klin. Wochenschr. 14: 1132–1134

H20.11.3作成

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最終更新日:平成22年2月27日 [H28.10.2 モバイル用に微修正]