Ver.1は平成10年に、Ver.2は平成11年に書いたのですが、その後にあちこちから情報をいたただいたり(ありがとうございます)、いろいろな調査をしたり したので、かなり書き直す必要が出てきました。とは言っても、なかなか書き直すきっかけがなく、ず〜とそのままになっていたのですが、ここ最近、少し時間の余裕ができたので、思い切って書き直してみることにしました。
ですから、このページは、いわばABOFAN10年の集大成です。(ちょっと恥ずかしい・苦笑)
では、本題に入りましょう。
血液型と性格については、再現性がある結果が得られなかったり、生化学的なメカニズムがまだまだ不明など、さんざん研究者を悩まし続けてきました。そこで、私も「血液型と性格」の関係があるとは具体的にはどういうことか、ABO式血液型を中心に現在までにわかったことをまとめてみました。それが、この『[血液型と性格]の謎を推理する』です!
私は「謎はほとんど解けた!」のではないかと自負しています。金田一少年じゃないので、「謎はすべて解けた!」わけじゃありませんが(笑)。
なお、何人かからこういうようなご指摘を受けています。
この意見は、性格心理学の否定とも取れますが、私は基本的に賛成です。ただ、アンケート内容は主観的なものではありますが、ある特定の質問については、血液型別の回答率の差が一貫してある(性格の差とは言えないにしても…)のではないでしょうか? しかし、その内容が主観的なものであり、客観的な基準はないということは確かです。この点についてはABO MLの参加者からも同様の指摘を受けています。 しかし、他の情報によると、(驚いたことに!)心と脳の関係の研究はほとんどされていないようです。心理学では、割と最近まではそんなことを無視するのが普通だったようですね。 そういえば、最近大きく注目を浴びている「クオリア」の研究にも、日本の心理学者はほとんど沈黙しています(単に私が知らないだけなのかもしれませんが…)。詳しい理由はわからないのですが、世界中で学際的な研究がどんどん進んでいるのですから、本当に沈黙しているとすると残念というしかありません…。 また、最近では、ゆっくりではありますが、生化学的なメカニズムについても解明が進んでいるようです。そういうことも含め、現在私がわかっている情報を、なるべくわかりやすく整理して公開しておくことにします。 |
本当に謎が解けたのかどうか判断するのはあなたです! では、ゆっくり楽しんでいってください。 -- H19.2.10
このタイトルを見てピンときた人は、かなりの血液型マニアですね(笑)。「血液型と性格」という言葉は、その最初の研究者である古川竹二さんからずっと使われてきました。これを意識しているかどうかは知りませんが、大村政男さんの『血液型と性格』、松田薫さんの『「血液型と性格」の社会史』 というように有名な本が出版されています。 |
数年前まで、血液型と性格に「関係がある」というデータは、「関係がない」という人から次のような問題があると指摘されてきました。
1.ランダムサンプリング(無作為抽出)が行われていないので、データの信頼性がない
2.血液型で差が出ても、アンケートによって傾向が違うのでデータの再現性がない
3.血液型で差が出ても、必ずしもその血液型の特徴と一致しない
逆に、この3つの問題点をきちんと解決できれば、統計的には文句なく血液型と性格は「関係がある」ということができ るはずです。しかし、こんな反論は全く過去のものになってしまいました!
なぜなら、どんなデータでも血液型による差が出るし、もし出なければそのデータがおかしいからです!
もっと率直に言いましょう。
つまり、今までの心理学の研究で、否定的な結果が得られたものは、すべてウソということです。
残念なことですし、ちょっと信じられないことですが、これは事実です!
では、なぜそう言えるのか、順を追って説明していきましょう。
繰り返しになりますが、以前の否定論者の論理では、「関係がある」といえる条件として、「完全なランダムサンプリング」「複数回安定したデータ」「多くのサンプル」が必要だとしつこく言われてきました。そんなデータは 全くない、というのが否定陣営の一致した見解です。
しかし、ランダムサンプリングしたかどうかや、サンプルが多いか少ないかには全く関係なく、すべてのデータに再現性があるとしたらどうでしょう? こうなると、否定論者の論理はすべて否定されてしまいます…。
最初からあ〜だ、こ〜だ言ってもしょうがないので、早速計算してみましょう。
ここでは、○型と○型以外で計算することにします。
さて、血液型による回答率の差は、最大で20%程度です。計算を簡単にするため、「あなたは××ですか?」については20%の差が出ると仮定します。すると、仮に○型の否定論者や○型以外の人を40%の肯定率とすると、○型の肯定論者はそれより20%高い60%になるはずです。結局、下の表のようになります。
「××ですか?」の回答率(%)
××ですか?
○型の
肯定論者○型の
否定論者○型以外 はい 60
40
40
いいえ 40
60
60
では、○型と○型以外の回答率はどうなるでしょうか? ここでは、計算を簡単にするために、肯定論者と否定論者は同数であるとします。○型以外は40%ですが、○型については60%と40%の平均である50%になるはずです(下の表)。
「××ですか?」の回答率(%)
××ですか?
○型の平均
○型以外 はい 50
40
いいえ 50
60
つまり、○型と○型以外に10%の差が出ることになります。数字や割合を変えたとしても、基本的に差が出ることには違いありません。あれれ…
これは最初に説明した否定論者の一致した見解と矛盾します!
つまり、サンプルに少しでも肯定論者(実際は70%程度)がいるとするなら、本当に血液型と性格に関係があるかどうかには関係なく、必ず差が出ることになります。 そして、ランダムサンプリングしたかどうかや、サンプルが多いか少ないかに全く関係なく、すべてのデータに再現性があることになります。
これにはピックリ。(@_@) なんでこんな簡単なことに今まで誰も気が付かなかったのでしょうか…。
【参考1】肯定論者の割合は? ここ 20年来、70%以上の人々が「血液型と性格の関係はありそうだ」と考えていて、その比率は変わっていません。しかし、強い関係があると思っている人は20%弱で、多少関係があるという人が50%弱と大部分を占めています。
なお、このデータは、草野直樹さんの『「血液型性格判断」の虚実』から引用させていただきました。どうもありがとうございます。それから、3.については、NTVの『特命リサーチ200X』 (平成9年放送)でも、関係があると思う人の回答率が75%とほぼ同じ傾向を示していました。 【参考2】具体的なデータで検証 実は、心理学者のデータで、バッチリ差が出ているものがあったのです。今度はそれを紹介しておきましょう。 1つは、渡邊席子(わたなべよりこ)さんの論文です。随分差が出ているデータだと思っていたのですが、ふと気がついてχ2検定をしてみることにしました。結果は…
当然のことですが、これらの性格特性は、性格テストから抜き出したものではなく、能見さんの本などを参考にして作ったものです! 性格テストを使わないと、こんなに見事に差が出るものなのですね。(笑) もう一つは、大村さんのデータで、(あまりポピュラーではない?)クロニンジャーのパーソナリティ理論(細かいことを いうと、新しいTCIの4因子モデルではなく、当初発表されたTPQの3因子モデル)を使ったものです。これらの内容は、平成16年10月7日の『スパスパ人間学!』と、平成16年12月28日 の『ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント!本当の自分&相性探し来年こそは開運SP!』で放映されました。ここでは、わかりやすい後者のデータを引用しておきます。
慎重なA型、好奇心旺盛なB型、人間関係に気を遣うO型と、それぞれ血液型別の傾向がよく現れているといっていいでしょう。 また、日本語だけではなく、ダダモさんのアンケートによる英語のデータもあります。この結果も日本語の結果とほぼ一致していると考えて いいでしょう。 なお、不思議なことに(私の知る限り)この結果について心理学者は全く沈黙しています。追試や反論は、少なくとも私が知る限り全くありません。こんなに画期的な結果が得られたなら(たとえ、テレビで最初に発表されたとしても)、アカデミックな立場から何らかのリアクションがあってもいいと思うのですが…。
ここは、訳すのが面倒なのでこのままにします。(^^;; でも、なんか少し違うような…。気のせいかな??
念のため、ダダモさんのアンケートのサンプルを出しておきました。男性とA型が少ないような気もします…。
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→もっと詳しく知りたい方は否定論者の自己矛盾をどうぞ!
第1部を読んで、なぁ〜るほど、と納得した人もいると思います。しかし、本当かなぁ、それなら心理学者の論文でデータに差が出なかったのはおかしいじゃないか、と思う人もいるかもしれません。
そういう疑問はもっともです。誰もが認める統計的な差が出ていれば、日本の心理学者だって素直に「関係ある」と認めていたはずですから…。しかも、血液型と性格の研究は、日本だけではなく世界的にもされていて、やはり明確に再現性のある差は(あまり)出ていなかったのです。もちろん、差が出ているケースもいくつかありますが、再現性があるとなると、松井さんや坂元さんのように、何千人、何万人のサンプルが必要でした。
ここらへんの事情は、いみじくも池田裕二さんが『脳は何かと言い訳する』(H18.9 祥伝社)に書いているとおりです。202ページから引用します。
「血液型が性格や病気の発症率に関係する」という論文もあれば、「ない」という論文もあります。科学的な論文は、一般に、差がないという結論するネガティブなデータより、差があるというポジティブなデータの方が発表しやすいので、血液型に関しても、「関係がある」という論文の方が多いのが現状です。
確かにこれはそのとおりだと思います。「血液型と性格」の部外者だからクールに客観的に書けたのかもしれませんね。(笑)
また、続いてこうもあります。
ただ、仮に関係があったとして、その差は劇的ではないようです。たとえば、身長であれば、20〜30人ほどの成人をランダムに選んできて測定すれば、男性の方が女性より身長が高いという結果が出るでしょうが、血液型の場合は、何千人とか何万人とか、かなりの数の集団を集めなくてはおそらく差は出ないでしょう。また、出たとしても、身長ほどには劇的な差は出ないと思います。ですから、もし差があったとしても、それを差別的に使うよりは、楽しみとして使ったほうがよいだろうと私は考えています。
これも一理あります。
平成17年度のデータを使って試算してみると、高校3年生(17歳)の場合では、男子が170.8cm(標準偏差は5.81cm)、女子が158.0cm(標準偏差は5.28cm) だそうですから、t 検定をしてみると確かにサンプルが20〜30人いれば十分有意差が出ることがわかります。
【参考】t 検定の試算 平均(男性と女性の差)と標準偏差(安全のために大きい男性の数値を採用します)は、面倒なので補正せずにそのまま使うと、t 値は(170.8−158.0)÷5.81=2.2になります。片側検定で危険率5%とすると、帰無仮説が棄却できる自由度(サンプル数−2)は4以上となりますから、結局サンプル 数は6人以上であれぱいいことになります。 |
ただし、病気や血液型については、数百人のサンプルで差が出ているケースもあります。ですから、必ずしも何千人、何万人のサンプルはいらないと思うんですが…。
さてさて…。
そこで、誰もが認める統計的な差はなぜ出なかったのか、私オリジナルの推理をしてみました。自己採点では、ほぼ80点(=合格点)は行っているのではないかと思っていますが、皆さんの採点はどうでしょうか? 合格点をもらえるといいのですが…
1.回答者が均質でないといけない(つまり、同じ大学の大学生なんかがいちばんいい)
2.回答者総数が数百人以上でないといけない(できれば千人以上で血液型別の人数が同じならなおよい)
3.能見さんの本の血液型別の特徴を質問項目にすること(一般の性格テストではダメ)
更に条件があって、
4.能見さんの本の血液型別特徴と回答結果は必ずしも一致しない(とにかく差が出ればよい)
5.統計的な誤差をきちんと計算すること
では、順を追って説明していきましょう!
血液型による性格の差は案外少なく、質問の内容にもよりますが、せいぜい10〜20%程度しかありません。しかも、同じ血液型でも、年齢、地域、性別、社会的地位などによって傾向が違ってくるものがかなり多いのです。だから、「ランダムサンプリング」をするとほとんどの場合は差が出ません。つまり、ポピュラーな心理学的手法である「ランダムサンプリング」をしてはいけないのです!
逆に、大学生のデータを見ると、どのデータでもはっきりとした差が出ています。これは、年齢、地域、社会的地位などの差が少なく、非常に均質な集団であるからです。だから、血液型による差がどのデータでもはっきりと現れているといえます。
これは、決して私の想像ではなく、現実のデータでも裏付けられているようです。
→もっと詳しく知りたい方は大村政男さんの論文へどうぞ
【H17.6.4 追記 H17.6.11 修正】 「ほとんどの場合は差が出ない」というのは、「ほとんどの場合は数百人のサンプルでは統計的な有意差が出ない」という意味です。 たとえば、物性の研究をするのなら、比較する以外の条件はできるだけコントロールして揃えようとします。つまり、「ランダムサンプリング」はしません。なぜなら、その方が正確に差が測定できるからです。 当然のことながら、サンプル数を増やせば有意差が出ることになります。その具体例はこちらです。 |
その1でも説明しましたが、血液型による性格の差は案外少なく、せいぜい10〜20%程度しかありません。普通に使われる統計的手法(χ2検定)では、この程度の差の場合は、最低でも数百人、通常は千人以上のデータでないと意味のある差は出ません。この場合、普通に回答者を選ぶより、血液型別に同じ人数にした方が差が出やすくなります。これは、計算してみればすぐわかることです。なお、具体的な計算の方法は、長くなるのでここでは省略します。
日本の心理学者のデータでは、自分の教えている学生を使っている場合が多いせいか、サンプル数が数百人以上のものは意外と少ないのです。もちろん、100人、200人のデータで絶対に差が出ないとは言い切れませんが、安定した差が出るには最低でも数百人 (できれば1000人以上)のサンプルが必要なことは明らかです。
【参考】サンプル数の例 手持ちの日本の論文のデータで、サンプル数が500人以上のものを赤字、1000人以上のものを赤太字で示しておきます。 意外に少ないことがわかります。
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これは当然ですね。もともとポピュラーな心理学の性格テストでは差が出にくいようなのですから…。つまり、性格テストの質問項目自体が血液型による差を測定するようにできていないと考えるしかありません。これは、性格テストでは1つの性格とされる複数の質問に、血液型によっては違う傾向の回答が出る可能性があるからだと思います。もっとも、性格テストの質問は公開されていないので断定はできませんが、いくつかのデータを見ている限り確実にそう 言えます。
大村政男さんの論文の『VII
血液型と矢田部ギルフォード性格検査(YG検査)』からの抜粋です。YG検査では、ズバリ神経質という特性がありますので、ここだけ集中的に攻めることしますv(^^)。
なお、被験者は、日本大学文理学部の学生です。
この研究の被験者 単位:人
性別
O型者 A型者 B型者 AB型者 全体 男子 35 53 23 11 122 女子 32 41 28 8 109
YG検査の12尺度のkey answerに対する血液型者別肯定回答数(%) →最高値が赤 →最低値が青
N(神経質) O
A
B
AB
男子
45.7
53.6
39.1
50.9
女子 43.1
50.2
35.0
45.0
合計 44.1
52.0
37.2
48.1
では、その1で紹介した松井豊さんの論文(論文1)ではどうでしょうか。神経質のデータだけ抜き出しておきます。
表4 血液型別の性格尺度得点の平均 注1) →最高値が赤 →最低値が青
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)神経質
5.47 5.69 5.65 5.66 F=<1
注1)各尺度得点は1点から11点まで分布し、得点が大きいほどその性質が強いことを表している。
確かに、A型の性格尺度得点は、他の血液型と比べて少しは高いものの、サンプル数が613人と多いにもかかわらず、統計的に有意な差は出ていません。ちなみに、その1で紹介したように、他人から見たA型のイメージとしては、「几帳面」「神経質」「真面目」が多いことがわかります。
表1 各血液型のイメージ(N=197) →A型の回答が多いものだけを抜粋
回答\血液型
A O B AB 合計 几帳面
111 0 0 0 111 神経質 77 1 1 3 80 真面目 54 0 0 3 57 佐藤達哉さんの論文、「プラットタイプ・ハラスメント」からです(『現代のエスプリ〜血液型と性格』 No.324 至文堂 H6 なお、元のデータは上瀬由美子さんのもの)。
その1で紹介したように、70%程度の人が血液型と性格は関係あると思っているのですから、本当に血液型と性格に関係があるかどうかには関係なく、必ずデータに差が出ることになります。しかし、現実には、心理学の性格テストでは、傾向としては現れているものの、統計的に有意な差は出ていないのです。
やはり、ポピュラーな心理学の性格テストでは差が出にくいと考えるしかありません。
ただ、今まで調べたのは日本国内の事例だけです。多くの性格テストで何か国も調べないと、確定的なことは言えないのではないか、と反論されるとグッと詰まってしまいます。(*_*) 困ったなぁ〜、と思っていたところ、最近になって台湾のデータをゲットすることができました。v(^^)
結論から言うと、台湾でも日本と全く同じ傾向になりました。やっぱり、ポピュラーな心理学の性格テストでは差が出にくいようなのです。
このデータもなかなか面白いので、少し詳しく説明しておきましょう。
台湾では、日本と同じく血液型がポピュラーなので、高校生の約2/3が血液型と性格に関係があると思っています。
そこで、英語圏ではもっとも有名で、国際的にも標準化されているNEO−PI−Rという性格テストの中国語版(もちろん日本語版もあります)を使って、呉坤和さんが3000人以上(!)の高校生のデータを集めたところ、AB型女子を除いてほとんど有意な差は出ませんでした。
では、肝心の結果について書いておきましょう。
Personality and Individual Differences 38 (2005) 797–808
Blood type and the five factors of personality in Asia
Kunher Wu, Kristian D. Lindsted, Jerry W. LeeTable 2
Unstandardized regression coefficients with 95% CI for the blood types by gender on each of the five NEO-PI-R domains using the final multiple regression model [信頼性区間は省略]
Blood types [血液型]
A B AB Males Neuroticism 0.9 -1.3 4.1 Extraversion b Belief c (Yes) 3.2 1.3 -2.9 Belief c (No) 3.8 -0.8 1.8 Openness 0.1 -0.6 0.2 Agreeableness b Belief c (Yes) -0.6 2.6 -4.4 Belief c (No) 2.4 1.0 5.9 Conscientiousness 0.2 -1.8 -0.1 Females Neuroticism -1.1 -0.5 1.8 Extraversion -0.2 -0.0 0.3 Openness -0.9 0.2 0.6 Agreeableness 0.1 0.5 -0.9 Conscientiousness 0.2 -0.6 -5.2* * P < 0.05.
a With blood type O as reference.[O型を標準とする]
b The model included the interaction term between blood type and belief.[このモデルは血液型と信念の交互作用を含む]
c Reponses to "Do you believe there is a relationship between blood type and personality?"[血液型と性格は関係あると思うか]
見たとおり、AB型女子で勤勉さ(Conscientiousness = 赤字)がO型から有意に低い(危険率5%)だけで、他は差が出ていません。
しかし、この性格テストでは、虚構性尺度(つまり本人がウソをついているかどうか)はありませんから、本人の自覚している性格(つまり本人の血液型の性格)と、性格テストの結果が一致しなければおかしいのです。
NEO−PI−Rという性格検査は、言語を超えた普遍性があるとされているので、これで従来の結果(あまり有意差が出ない)を英語版を含めて矛盾なく説明できることになります。
【参考】 この性格テストでも、個別の質問(あるいは30あるファセット)ではかなり有意差が出ているものと予想されます。それを、5つの性格特性にまとめたとたんに有意差が出なくなるのだから 、従来のデータを矛盾なく説明するためには、NEO−PI−R自体が血液型による差をうまく検出できないと考えるしかありません。まさに、能見正比古さんが言っていたとおり 、性格テストでは血液型による差を正しく測定できないのです! また、もともとNEO−PI−Rで定義する性格特性は、一般の人が使うものとは違う(因子分析で直交変換や斜交変換をしたものなので当然!)のだから、これまた従来のデータとは矛盾しません。 たぶん、まともな心理学者が主張すれば、血液型関係者では大騒ぎになることは違いないでしょう(少々大げさですが・笑)。 残念ながら、私ではまだまだ力不足です。(^^;; |
→詳しくは台湾での血液型研究へどうぞ!
以上のことを整理すると、性格テストで血液型による差を正しく測定できない理由は、大きく次の3つによるものだと思われます。
1.血液型による差が大きく出る質問項目がカットされてしまっている。
2.性格テストで定義する性格特性は、一般の人が使うものとは違っている。
3.現在の性格心理学は線型のモデルしか扱えないため、血液型による非線形の影響がうまく検出できない。
これで、血液型と性格の謎がまた一つ解けたことになる…はずです。
ここまで読んできて、確かに差は出ているけど、それは「思い込み」のせいじゃないの?と疑問に思う人がいるかもしれません。でも、心配はありません。ぜひ第3部の「血液型ステレオタイプ」は存在するか? を読んでみてください。
その1でも説明しましたが、同じ血液型でも、年齢、地域、性別、社会的地位などによって傾向が違ってくるものがかなり多いのです。能見さんもいっていますが、性格に関する言葉は必ずしも性格を表していないのです。例えば、O型は基本的に独立心が強いのですが、弱い立場におかれると、逆に依存心が強くなります。で、大村さんの大学生のデータを見てみると、B型が一番独立心が強いと回答しています。だから、別にこんな回答になっても不思議じゃありません。とにかく、血液型によって性格に違いがあるなら、回答率に必ず差が出るはずですからね。
【H17.6.12 追記】 私の推理の最初の部分で、「とにかく差が出ればよい」というのは、差が出たらなんでホイホイ認めるという意味ではありません。 能見さんの本で、「△型は○○な傾向がある」と書いてあっても、必ずしも「あなたは○○な性格ですか」という質問に△型の回答が多くなるとは限らないという意味です。 これは矛盾でもなんでもありません。例えば、性格テストでよくある尺度に「神経質」があります。では、ある人が神経質かどうかを調べるのに、単純に「あなたは神経質ですか」と聞くでしょうか? 本当にこれでいいなら性格テストは不要になってしまいます(笑)。 どう考えても、直接的に「あなたは神経質ですか」と聞くよりは、「××が気になりますか」といった別な質問をした方が信頼性が高そうです。性格テストも、たぶんそうやって尺度を作っているはずです。能見さんの場合も同じでしょう。もちろん、安定して差が出るかどうかチェックする必要がありますが。 |
どういうわけか、統計的な誤差をキチンと計算していない否定論者の論文が多いのです。それらのほとんどは、統計的な誤差を再計算してみると、明確に「関係がある」という結論になります。
この点については、血液型統計トリビア(その3)で詳しく説明します。興味があるひとはどうぞ!
否定論者のいう「血液型ステレオタイプ」(血液型によって性格に差があるという「信念」や「思い込み」)が存在するかどうかは、否定論者の間でさえ長い間論争になってきました。私の読んだ文献では、確定的な結論はまだ出ていないというのが大方の結論のようです。実は、データを見て行く限りそうではないはずなのですが…。
では、代表的なデータを見てみましょう。
このデータは、松井さんの論文での論文1からのものです。
原題: 血液型ステレオタイプについて 東京都立大学人文学報 第44号 15〜30ページ S60
血液型ステレオタイプの存在
血液型によって性格が異なると考えるか否かの回答は表5(省略)のように分布している。「非常に異なる」「かなり異なる」を合わせて48%の被験者が血液型ステレオタイプをもっていると考えられる。 またこのステレオタイプをもつ者は男性より女性に多い。(χ2=31.90, d. f. =3, p<0.001)
以下の分析では被験者を「非常に異なる」や「かなり異なる」と回答した者と、「あまり異ならない」や「全く関係がない」と回答した者とに分け、前者をステレオタイプ群、後者を非ステレオタイプ群と呼ぶことにする。
ステレオタイプ群において、A型の人やO型の人がどのような性格とイメージされているかを調べたのが図1である。図中の項目番号は表2と同一である。能見(1984)に基づいて「A型」と記述された項目(番号1〜5)が、A型の人の性格とされた比率は21〜69%で、「B型」と記述された項目(番号6〜10)は12〜21%、「AB型」と記述された項目(番号11〜15)は15〜45%、「O型」と記述された項目(番号16〜20)は13〜61%であった。平均比率でみると、「A型」項目は50%、「B型」項目は15%、「AB型」項目は27%、「O型」項目は35%であり、「A型」と記述された項目の比率が高くなっている。つまり血液型ステレオタイプ群がA型の人にもつイメージは、能見(1984)の記述する「A型」性格にほぼ一致している。
O型の人の性格イメージを平均比率でみると、「A型」項目は25%、「B型」項目は49%、「AB型」項目は27%、「O型」項目は46%となっている。「O型」より「B型」の方が高率になっている。O型の人にイメージされる性格は、能見の記述とは一致していない。
血液型ステレオタイプをもつ人は本調査の被験者の約半数になるが、彼らの血液型別性格イメージは、能見の提唱する性格像と必ずしも一致していないのである。
実は、この質問項目は少々アヤしいのです。特に、11.は明らかにO型の特徴で、図1を見ると確かにO型の性格イメージであることがわかります。また、16.は、たぶんAB型だと思うのですが…。ということは、松井さんはO型やAB型ではないのでしょうか? 細かくてすみません>ALL |
つまり、A型以外はステレオタイプがないことを示しています。他の文献にも当たってみるとわかりますが、これまたほとんどが同じ傾向を示しています。だから…
ということになります。詳しい分析については、次のページを読んでみてください。 -- H10.7.16
しかし、A型やO型のように「血液型ステレオタイプ」が存在する血液型の回答は、それによって影響を受けないのでしょうか? もし、影響を受けるとすると、私の仮説は訂正せざるを得ないことになります。う〜ん、これは困った…。
でも、これまた幸いなことに、影響はないという論文が存在します。
原題: 渡邊席子 血液型ステレオタイプ形成におけるプロトタイプとイグゼンブラの役割 社会心理学研究 第10巻第2号 77〜86ページ H6
「自分の血液型に当てはまるもの」 と判断した性格特性については、その特性が通説によって本人のものとされているか否かに関係なく、調査対象者はその特性がよりよく自分に当てはまっていると思っていることになる。
例えば、A型が「礼儀正しい」ということをそのA型の回答者が知っていようがいまいが、「礼儀正しい」と答える率が高いのです。つまり、差が出た場合は本当の差ということですから、肯定論者には画期的な内容です。ただ、残念なことに血液型による性格の差について知っている人と知っていない人の回答の対比のデータがないのです(もちろん、差がないことが予測できます)。これがあれば全く文句なかったのですが…。非常に残念です。
血液型と性格に関する知識と性格の決めつけ方との関係(表Cより)
区 分
知識問題の正答率
自分の血液型のものと
判断した性格特性の確信度
→大きいほど自分にあてはまる
正確な知識がある人 ≧.75 (n=38)
.90 (SD=.96) ≧.72 (n=46)
1.05 (SD=.93) 正確な知識がない人 <.75 (n=56)
1.32 (SD=.91) <.72 (n=48)
1.34 (SD=.94) <.65 (n=35)
1.48 (SD=.84)
このデータも面白いですね。(^^)
もし、血液型による差が「信念」や「思い込み」によるものならば、正確な知識がある人ほど「自分の血液型のものと判断した性格特性の確信度 」は高くなるはずです。しかし、実際は逆で、正確な知識がない人ほど「自分の血液型のものと判断した性格特性の確信度」は高くなっています。
これは、血液型による差は「信念」や「思い込み」でないことの傍証になります。
なお、他にも英語の論文があるようなのですが、まだチェックはしていません。そして、私が知る限り、日本語ではこれ以外には直接的にステレオタイプによる影響についてデータを分析した論文はありません。ですから、当分の間は安心できるはずなのですが…。 -- H19.3.25
完全には確認していないのですが、「血液型ステレオタイプ」による影響はやはり存在するようです。というのは、坂元章さんの論文で最近のデータを見ると、血液型による差が以前より大きくなっているのです。本当の原因は、時代の変化によるものか、対象者によるものか、あるいは単なる偶然なのかわかりませんが…。 私は、血液型と性格の知識が日本で定着したのも一つの原因と判断しています。もっとも、元々の差がゼロから生じたものではないことは確かでしょう。血液型と性格の知識が広まって、単に差がよく認識されるようになったのではないかと…。 |
一応、渡邊さんの論文の別なデータも示しておきます。赤字のところ注目してください。
正確な知識とその人の知識との相関(表Cを一部改変)
区 分
知識問題の正答率
→大きいほど知識がある通説−通説判断の相関
→正確な知識と
その人の知識との相関正確な知識がある人 ≧.75 (n=38)
.82 ≧.72 (n=46)
.73 正確な知識がない人 <.75 (n=56)
-.06 <.72 (n=48)
-.10 <.65 (n=35)
-.25
血液型と性格の正確な知識(=通説)がある人(=通説受容群)は、正確な知識とその人の知識とはほぼ一致しています。つまり、青字のように通説−通説判断には強い正の相関があります。逆に、正確な知識のない人(=通説非受容群)は、通説とは「全く関係ない知識」か「反対の知識」を持っているはずです。ですから、血液型と性格の関係があるのなら、通説と「反対の知識」とは負の相関があることになります。赤字のデータを見ればわかるように、「反対の知識」が増えるほど負の相関が強くなることがわかります。つまり、血液型と性格は関係がありそうだという可能性を示唆しているのです。ただ、統計的に有意な差があるわけではないので、あくまでも可能性を示唆しているだけで、断定はできません。 -- H11.2.13
ここまで読んできた人なら、よしよし、統計的にはわかった、と思う人が多いことでしょう。しかし、科学的にメカニズムが解明されているのでしょうか?
現在の時点では、血液型と性格に関係については一部のHLA(白血球の"血液型"です)は別として、科学的(遺伝子レベル、医学的、大脳生理学的あるいは生化学的)には因果関係が実証されていません。もっとはっきりいうと、性格と遺伝子の関係のメカニズムそのものがよくわかっていないのです。つまり、性格テスト以外の方法では関係が「ある」とも「ない」ともいえません。ですから、一部の否定的なページのように、血液型の性格に関係は否定されているということはいえませんし、逆に間違いなく関係があるともいえません。
血液型と性格に関係がないと思っている人の中には、なぜABO式血液型だけなんだ?という疑問を持つ人もいます。また、ABO式血液型で4つに分類できるというのはおかしいのではないかという人もまだまだいるようです。FAQにも書いておいたのですが、ここでもちょっと書いておきましょう。
現在までに明らかになっているデータでは、HLAと性格が一番強く関係があり(遺伝子レベルで証明されているそうです)、赤血球の血液型(ABO式血液型など)ではP式血液型が性格と一番強い関係があるようです。ABO式血液型は、輸血の際には重要であるとしても、体質や性格にはあまり強い影響は及ぼしていないと考えられます。現に、病気との関係では、HLAでは数倍のオーダーで違いがあるのに対して、ABO式血液型ではせいぜい数割程度の差しかありません。免疫機構に直接関連しているHLAの方が体質により強く関係があることから、性格にも強い影響を及ぼしていることは十分に考えられます。余談になりますが、私に能力があればHLAと性格との関係を調査してみたいですね。強い関係があることはまず間違いないと思います。と書いたのですが、血液型人間学メーリングリスト[ABO
ML]の主催者である板倉さんからこういう意見をいただきました。
■免疫力のあるO型が有利?? 番組(作者注:平成9年11月2日放映の『特命リサーチ200X』)では、たしか、A型物質と同じ抗原性を持った、つまりA型物質になりすましたものが体内に進入すると、A型の人は抵抗できない、というような説明がありましたね。 これは、もしそうならそうなんですが、現実的には、以下のことを頭において聞くと、ナンセンスであることがわかります。
つまり、「(A、B型物質に対して)免疫力をもっているO型」が特別有利であるとは、あんまり考えられない、ということです。 ■超優性淘汰? A型遺伝子が壊れてO型遺伝子ができ、それは現在の分布状況まで増えてきたようです。でも、増え続けているわけではないようです。 これについて、静岡にある国立遺伝学研究所の斉藤研究室では「超優性淘汰」によるものではないか、という仮説のもとに研究されているようです。 米国在住の山本文一郎氏との共同研究で、文献は Saitou N. and Yamamoto F. (1997) Evolution of primate ABO blood group genes and their homologous genes. Molecular Biology and Evolution, Vol. 14, No.4, pp.399-411 です。 あと、斉藤成也 (1997) 遺伝子は35億年の夢を見る〜バクテリアから人間の進化まで〜大和書房 という本も書かれています。
超優性とは、2つの対立遺伝子の相互作用です。上の仮説は、わかりやすく言うと、A,B、O型の遺伝子を2種類持っていた方が有利なのではないか、という仮説です(2倍体なので2種類までしか持てません)。 このとき、AA型の人とAO型の人で、体内のO型物質の濃度がどう異なるかは、代謝系のバランスの問題ですね。 久留米大の先生の話では、ABO式の血液型遺伝子が、腸でよく発現していることから、生体防御に関係がある可能性があるということが頭に浮かぶ、ということでした。そういうことを聞けば、だれでもそう思うでしょう。 この場合、免疫力云々ではなく、細胞表面の糖鎖と侵入者(バクテリアやウィルスなど)の相互作用が考えられそうです。 斉藤研究室のデータでは、Rh式血液型遺伝子は、正の自然淘汰を受けている可能性が高いそうです。その糖鎖を持っていた方が有利だっていう例になるわけですね。 ■学習したことは遺伝しない あと、『特命リサーチ200X』については、学習したことが形質として遺伝する、というような、とんでもない誤解を与えかねない部分がありました。 ま、わたしの専門でもないので、まちがったことを言ってるかもしれません。できるだけ調べて書きましたが。 |
血液型ってなかなか奥が深いようですね。
なお、別のABO式血液型の研究者から、こういう意見をいただいています。
ですから、脳の発生の時期(性格?)に何らかの影響を与えていることは完全には否定できないと思います。 |
■ダダモさんの情報
また、ダダモさんの“Live Right for Your Type”には、いくつかの科学的な根拠が示されています。私はさっぱり詳しくないので、紹介だけにしておきます。f(^^;;
最初は、遺伝子についてです。
解説は不要でしょう。つまり、ABO式血液型を決定する遺伝子と同じ場所に「ドーパミンベータハイドキシラーゼ」(DBH)というストレス(性格?)に関係する遺伝子があるのです。つまり、血液型と性格の関係があっても不思議ではないことになります。なお、元の論文はこちらです。
次は、血液型別に行きましょう。まずはO型です。
なお、元の論文はこちらです。
では、O型はどういう性格になるかというと(南博編著『読みこなし 使いこなし 自由自在 心理学がわかる事典』 日本実業出版社 H6.2 126ページ)、
モノアミンは性格に何らかの影響を与えているようです。例えば、A型物質は、A遺伝子の支配するA型転移酵素(α-N-acetylgalactosaminyltransferase)の働きにより、O型物質にN-アセチルガラクトサミンが付加されて生成されます。もちろん、N-アセチルガラクトサミンはモノアミンです。血小板MAOとに何らかの関係があっても別に不思議ではないでしょう、たぶん。 ただし、最後の「しかし脳MAOと血小板MAOの間には複雑な関係が存在し、同一に論じられるものではありません」というのは疑問です。なぜなら、ダダモさんの本には、血小板MAOが低値の人も、「アルコール依存性にかかりやすく、スリルと冒険を求める傾向が強く、外向性で、攻撃行動・喫煙傾向が高い」と書いてあるからです(ついでに言うと、ギャンブルも好きなようです)。となると、ここの部分の執筆者はこの論文の存在を知っているようですね…。なぜ、こんな妙な記述にしないといけないのでしょうか? 他の血液型は翻訳は省略します。(^^;;
なお、元の論文はこちらです。
次は、B型とAB型です。
なお、元の論文は日本(東京医科歯科大?)のもののようです。
以上をまとめると、次のようになります。
2.については、大村政男さんの論文のデータがあるので、ここで再現性をチェックしてみましょう。 男性だけ計算してみると、確かにO型がタイプA的な性格であることがわかります。見事に当てはまっているようですね。念のために、χ2値を計算してみましょう。これは5.76という値が得られるので、2%以下で有意となります。つまり、確かにO型はタイプA的な性格であることが証明できたことになります。やった!
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■脳波の測定結果
瞬発力運動 持久力運動 A型 ストレス大 ストレス小 B型 ストレス小 ストレス大 AB型 人により違う 人により違う O型 ストレス小 ストレス小
随分違うものですね。
参考までに、平成16年10月3日に放映された『発掘!あるある大事典』の研究内容も紹介しておきます。
なお、平成19年1月7日に放送された『あるある大事典』の捏造が明らかになりました。現時点では血液型番組が捏造されたという証拠は発表されていませんが、テレビの全般的な信頼性が低下したことは否定できません。失われた信頼を取り戻すよう、調査委員会で徹底的に真相を究明し、詳細に調査結果を発表して制作方法を改善してほしいものです。 |
ところで、『あるある』で取り上げていた東海大の実験は、別の人から内容を聞く機会があったのですが、至ってまじめな研究だそうで(少なくとも東海大では)再現性が確認されているそうです。他の研究機関で追試がされれば、メカニズムはともかく、少なくとも科学的な証明はされることになるでしょう。
さて、私がビックリしたのは、今回もやはり脳波の実験です(東海大学医学部基礎医学系医学教育・情報学 灰田宗孝さん)。相性を脳波で測定できるというのは面白いですね。番組では、日立メディコ製の機器を使って、脳から出る光子を測定していました。これで脳のどの部分が活性化しているかわかるので、相性の善し悪しが判断できるんでしょうかね。ウソ発見器を高級にしたようなものでしょうか?
そうえいえば、日立製作所がそんな発表をどっかでしていたような気がします。やはりテレビ局だとやることが違うなぁ、と感心してしまいました。 また、時間は短かったのですが、番組の最後に広島国際大学人間環境学部の吉田倫幸教授の実験が紹介されていました。こちらも非常に興味深い内容で、血液型別に男女5人ずつ計40人の被験者の脳波の違いを測定するというものです。 ポイント1 光刺激に脳波がの程度反応するのか 結果は見事でした! 脳波興奮度を【β帯域量/(α帯域量+β帯域量)】とすると、大きい順にA型>O型>AB型>B型でした。つまり、この順に外界の刺激に敏感に反応する、ということになります。脳波の興奮度に違いがあるということは、視神経and/or脳の働きに違いがあるということですから、血液型により神経and/or脳の反応が違ってくることになります。大脳生理学レベルで(メカニズムはともかくとして)血液型により反応に差があることが初めて実証されたことになります!やったぁ!! 吉田さんは、A型とO型は、光に強く反応し、消えた後も更に強く脳波に反応が残ることから、「何か事が起きると影響されやすい」「そしてそれが気になってしまう」と解説していました。直後に「常に状況を把握しようとアンテナをはりめぐらせている」「細かいことを気にする」「人に気配りができる」とナレーションが入りました。 B型は、反応が小さくすぐに元に戻ることから、吉田さんは「気持ちをすぐに切り替えられる」「ケンカしていてもすぐに食事に行こうと言える」とのこと。ナレーターは「周囲の状況に左右されず自分のペースを貫く」「自己中心的と思われる」「物事に動じない」と言っていました。 AB型は、B型よりは反応が大きく(とは言ってもA型やO型よりはずっと小さいのですが…)、すぐに元に戻ることから「気を使って刺激を受けたり後処理をすることができる」と吉田さんの弁。「周囲の状況に反応は示すがすぐに自分のペースに戻る」「二面性があると言われる」「物事に冷静に対処する」とナレーター。 これだけきちんと結果が出れば、真面目な研究としてきちんと評価されるかもしれませんね。そうなれば、研究者や大学もほってはおきませんから、ポジティブフィードバック(良循環)が起きて、今後は血液型の研究がどんどん進むかもしれません。 |
■顆粒球とリンパ球の比率による仮説
安保(あぼ)さんは、世界的に活躍する免疫学者です。
彼の著書である『医療が病をつくる』では、血液型と性格について正面から取り上げています(17〜19ページ)。
交感神経優位のタイプでは活動的で「顆粒球人間」となり、副交感神経優位のタイプではゆったりした「リンパ球人間」となることを述べた。しかし、この法則と関連して、血液型と人の性格の間にも関係があることが分かってきたのである。
長い間、血液型と性格のつながりが指摘されてきたが、その謎を科学的に明らかにした研究はこれまでなかったように思う。
ではその根拠は何かというと、
人間ドックで測定した成人の末梢血のリンパ球のレベルを血液型ごとにまとめると次のようになる。O型39%、B型37%、A型36%、AB型34%である(対象者5000人)。この鋭い観察は畏友の福田稔医師が明らかにしたものである…
これはかなり衝撃的な文章ですね。(@_@)
さらに、ABO式血液型と体質の関係について、(竹内久美子さんの説を裏付ける?)こういう意見もあります。もっとも、まだまだ仮説の段階のようですが…。
ABO式血液型の遺伝子は、
通常の遺伝子がしたがっている進化パターンにはあてはまらないようである。第一に、糖転移酵素の働きがなくなっているのにもかかわらず、O対立遺伝子の頻度がかなり高い。重要な物質交代を担っている酵素遺伝子の場合、酵素の働きがなくなってしまう突然変異が生じると、普通はその個体の生存にきわめて不利なので、子孫を残しにくくなるはずである。したがって、
ABO式血液型に関与する糖転移酵素は、人間がとりあえず生きてゆくのには絶対必要であるわけではない。ところが、
私たちの推定によると、ABO式血液型の遺伝子は脊椎動物が出現した三億年以上前頃から延々と偽遺伝子にもならずに生き残ってきたのである。このことから、弱いながらもこの遺伝子にはなんらかの存在意義があると思われる。このように、絶対に必要というわけではないが、あったら少しは役に立つという遺伝子が、ヒトゲノム中にはたくさんあると私は考えている。 また、A型とB型の対立遺伝子の共存が霊長類のあちこちの種でみられることも不思議である。この遺伝子がなぜこのような変異パターンを示すのか、まだよくわかっていないが、バクテリアやウイルスなどの感染を防ぐのに、ある程度の効果があるのではないかと考えられている。実際、胃潰傷や胃癌の原因のひとつであるヘリコバクター・ピロリというバクテリアは、胃壁にもぐりこむ際に、ABO式血液型物質の前駆体であるH型物質を足場にしている。するとH型物質しか持っていないO型の人間は、胃潰蕩などになりやすいため、多少は生存に不利となるだろう。しかし、まだまだこれらは仮説にすぎない。わからないことが多すぎるのである。私の研究室では、ABO式血液型のこの不思議な進化パターンを解明するため、山本文一郎氏らと共同でさらに研究を進めている。 『遺伝子は35億年の夢を見る』〜バクテリアからヒトの進化まで〜 斉藤成也 H9.3 大和書房 98〜101ページ |
わかりにくいかもしれませんので、ちょっと解説しておきます。まず、人間の祖先の血液型はA型の可能性が高いようです。そこに、突然変異によってO型が発生しましたが、他の血液型と比べると、生存にほんのちょっと有利だったので、だんだんO型(の遺伝子)が増えていきます。しかし、AとO(AO型→A型)とかBとO(BO型→B型)といったような違う2つ以上の遺伝子を持っていた方が有利なので(超優勢淘汰)、すべての人間がO型(=OO型)になってしまうわけではありません。B型も突然変異によって発生しましたが、やはりA型より生存にほんのちょっと有利だったので、だんだんに増えていきます。しかし、O型は霊長類の分化前に発生しましたが、B型は霊長類の種が分化した以降に少なくとも3回は別に発生したようです。
詳しくは斉藤成也さんの論文のページをどうぞ!
もちろん、以上は仮説ですが、竹内さんの説とも一致するように思えるのですが…。
そういえば、なぜ性格と関係があまりないはずのABO式血液型ばかりが調べられているのでしょうか? 理由は簡単で、他の血液型を調べるにはかなりの労力と時間、そして費用がかかるからです。ABO式血液型なら、ほとんどの人が自分の血液型を知っているので、検査の手間が省けますからね。また、最初に発見された血液型なので、歴史が古いからということもあります。他の理由はありません!もちろん、ABO式血液型以外について調査したものはあるようですが、そういう理由で数としては非常に少ないのです。
次に、ABO式血液型って4種類しかないのに、4種類に性格が分類できるわけがない!というのもよくある質問です。では、こういう人に質問しますが、性別(じゃなくともいいのですが)で性格を分類することはできないのでしょうか? 性別はたった2つしかありません。2つで性格が分けられるわけがないのではありませんか? これでも納得しない人にはもう一つ質問します。では、一体何種類だったら分けられるのですか? となると、人間は一人一人違うのですから、人間の性格そのものが分類不能なのでしょうか? ま、それでもいいのですが、そうすると心理学の性格テストは全く意味はなくなります。性格テストこそ人間を何種類かに分類するものなのですから…。これでも納得しない人もいると思います(実はかなり多いのではないかと思います)。実は、こういう人にはこれ以上論理的に説明してもムダなのです(失礼!)。あなたはこまで読んでいるのだから、そういう人はこれ以上読まないだろうという仮定の下に次に進むことにします(笑)。 -- H10.3.13
では、性格テストで性格の違いを調べる場合、どんな方法があるのでしょうか? 普通は、その手軽さから質問紙法が多く使われています。質問紙法は手軽でいいのですが、欠点もたくさんあります。一番の欠点は、回答者が本当にその性格であるかどうか判定ができないことでしょう(例えば、本当に真面目な人が真面目という回答を選ぶでしょうか?) これは、自己申告制なのだから当然です! また、ランダムサンプリング、ステレオタイプなどの問題点も心理学者から提起されています。しかし、現実には労力や費用や時間の問題から、他の方法を使うのは不可能ではありませんが非常に困難です。また、データも極端に少ない(私はほとんど見たことはありません)ので、質問紙法による調査結果(=アンケート)をどう解釈するかという次の議論に進むことにします。
例えば、血液型と性格の関係を否定する『現代のエスプリ〜血液型と性格』にも、こう書いてあります(188〜189ページ 『性格心理学は血液型性格関連説を否定できるか〜性格心理学から見た血液型と性格の関係への疑義』 渡辺芳之)。 -- H10.3.27
心理学者が血液型性格関連説に対して行う反証は二つのタイプに分かれる。一つは「性格検査」など「性格」を測定しているとされる外的基準と血液型との間に関連がないことをデータで示して、血液型と性格には関係がないと結論するものである。たとえば長谷川は、YG性格検査の類型分布が血液型によって変化しないことを示しているし、その他にもEPPS、SPIなどどの関係を調べた多くの研究が、それらの検査結果と血液型とに関係がないことを示して、血液型と性格との関係を否定している。性格検査の妥当性を前提とする限り、こうした論理は正当なものに思える。
しかし、多くの性格検査はそれぞれ人の性格のごく一部を測っているにすぎず、ある検査と血液型とに関係がなくても、他の検査とは関係しているかもしれない。実際、性格検査の得点と血液型との関連が、ごくわずかとはいえ統計的に有意なかたちで見出されたという報告もある。
また、すべての性格検査について検討して血液型と関係するものがひとつもなかったとしても、人の性格というのは非常に複雑なものであるから、これまでどの検査でも測られていない非常に重要な要素が存在して、 それが血液型と関連している可能性が残る。
次のような反論がありました。私が都合のよいデータだけを恣意的に選んでいるのではないのかというものです。確かに、そういう疑問は当然ですので、ちょっと書いておきましょう。この反論は、あまり(?)正しくありません。
まず、私が「都合のよいデータだけを恣意的に選んでいる」というのは(語弊を恐れずにいえば)本当です。これは、私だけがそうなのではなく、すべての科学的な実証はそうやって成り立っています。都合のよいデータだけ選んで例外を切り捨てるのは科学の常道です。そもそも、「関係がある」ことを証明するのに都合のよいデータばかりを選ばなければ、「関係がある」ことなんか証明できる訳がありませんから…。
では、都合のよいデータばかりを選んで、都合の悪いデータは全く無視しているいるのかというと、それは違います。この『[血液型と性格]の謎を推理する』には、(否定論者の)日本の心理学者のデータもかなり登場しています。実は、このデータは元々は全部「関係がない」という証明に使われているデータなのです。その「関係がない」はずのデータさえも、再分析すると、やっぱり血液型による一貫した傾向が見られるということで、あえて引用しています。そういう意味では、「都合の悪いデータ」も全く無視しているということではありません。
そもそも、「都合のよいデータ」だけを使うなら、別に否定論者のデータを時間をかけて分析するまでもなく、能見さんや他の研究者のデータを再分析するだけの方がずっと簡単で手間もかかりません。否定論者のデータをわざわざ引用しているのはそういう意味があるのです。更に、『[血液型と性格]の謎を推理する』では、否定論者のデータの中でも、一番手強そうなデータを「恣意的に」選んでいます。他のデータなら、もっと簡単に差が出る(失礼!)のはいうまでもありません。:-p
#こういう反論を持つ方は、ぜひ私に「都合の悪いデータ」を紹介していただければ幸いです。
詳しくは、読んだ資料と判断基準・論理構成のページをどうぞ! かなりの資料を(否定論者の論文も含めて)検討していることtが分かってもらえると思います。 -- H10.8.18
余談になりますが、「血液型と性格は関係がない」という人もこのホームページを読んでもらっているようで大変うれしいのですが、中にはかなり誤解をしている方もいるようです。私がやりたいのは、今までに明らかになっているデータを相互に矛盾なく説明できる仮説を皆さんに評価してもらうことです。それは、このページに書いたように、ほぼ満足できるものができたと考えています。つまり、
さらに、データの再現性がはっきりしました。だから、
ということです。これで誤解が少しは解けるといいのですが…。なお、私は占いはあまり信じない方ですので付記しておきます。
誤解している人が多いようなので、ちょっとしつこいですが書いておきます。私は別に血液型と性格に関係があるということを「信じている」のではありません。肯定論者と否定論者、それも日本だけでなく海外のデータをできる限り集め(このホームページに公開しているのはそれらの一部に過ぎません)、それらについて私なりに再分析をして、「血液型と性格に関係がある」と判断しています。とはいっても、素人である私以上にデータを集めるのは簡単だと思いますので、それらから総合的に判断して「血液型と性格に関係ない」という人がいれば、もちろん私の主張は取り下げます。ただ、いまだにそういう人にお目にかかっていないということだけです。:-p -- H10.8.18
#そういう人がいればぜひ紹介していただければ幸いです。
具体的なデータの分析や、トリビアが好きな方は、次からも読んでみてくださいね。
血液型による性格の差は一般に思われているほどはないのです! では、具体的な数字を見てみましょう。これは、血液型と性格の関係を否定する人の代表である大村さんのデータです(大村政男 「血の商人」の餌食になるなデタラメぶりは立証された 『朝日ジャーナル』 昭和60年3月8日号 89〜92ページ) 。データはどれでもいいのですが、肯定する人の代表である能見さんのものよりも納得してもらえそうというので出しているだけです。
彼は、当時の勤務先である日本大学の学生480人に、O型の性格としてあげられている8つの特徴を、各血液型の人に自分に当てはまるかどうか質問してみたそうです。
O型の特徴といえるものがあるのか(%)
項 目
O型
115人A型
216人B型
104人AB型
45人1.現実的な考え方が目立つ 54.8 57.4 63.5 55.6 2.ロマンチストである
65.2 68.5 66.3 75.6 3.集団的な結束力が強い
60.6 50.0 51.9 53.3 4.独立心旺盛
49.0 51.9 60.6 55.6 5.仲間内では開放的
82.6 75.5 79.8 68.9 6.初対面では警戒する
58.7 58.3 58.7 62.2 7.論理を好む
39.4 34.7 36.5 33.3 8.直感で判断しやすい
61.3 64.4 71.2 60.0
赤が一番高い比率です。これも、結論として、3.5.7.の3項目だけが他の血液型より高い値を示しているが統計的には意味がないと締めくくっています。どうもこの表はO型の数字にミスがあるらしく、人数がちゃんと出ないのですが、これはとりあえずそのままの数字です。
このデータを見て、「なるほど差がある」という人と「全然差がないじゃないか」という人の2通りに分かれると思います。ではというので、念のために統計的に分析してみると、このデータでは差があるとはいえません。こういう場合には、普通はカイ自乗検定という統計手法を使います。危険率(=偶然でこれ以上の差が生じる確率)が5%以下の場合は、「差がある」ということになるのですが、このデータはどう分析しても危険率は20%以上ですから、偶然という可能性も否定できません。じゃあ、やっぱり差がないんだ!と思う人もいるかもしれませんね。ま、とにかく次に進みましょう。
■私の分析 私の分析をちょっとだけ書いておきます。 |
それではというので、県民性でどのくらいの回答率の違いがあるのか調べてみたのが次の表です。データはどの県でもいいのですが、日本の代表ということで東京にしてみました(他の県でも同じような傾向です)。このデータにより、NHK放送文化研究所では、東京都の人は「家族や近隣との結びつきに重きを置かない」「あっさりとした金銭感覚」と結論づけています。
差のある代表的な質問項目 全 国 東京 検定 東京都の人びとの考え方には、ほかの県の人びととは違った特徴がある 44.4% 51.9% ++ 地元の行事や祭りには積極的に参加したいと思う 46.7% 37.9% −− 日ごろつき合っている親戚は多い 54.3% 49.7% − お互いのことに深入りしないつき合いが望ましい 31.0% 36.9% ++ ふだんの生活はできるだけ切りつめてお金や財産を残したい 42.1% 33.3% −− サンプル数 29,620人 580人 注意:++は危険率1%以下で多い、+は5%以下で多い、−は5%以下で少ない、−−は1%以下で少ない
出典:NHK放送文化研究所・編『現代の県民気質−全国県民意識調査−』NHK出版 H9.11 127ページ
なるほど、今でも県民性はやっぱりあるんだ!と思った人は多いのではないでしょうか? でも、データをもう一度よく見てください。血液型による差と同じぐらいの差じゃないかとは思いませんか? でも、なぜこちらは「統計的に差がある」ことになったのでしょうか?
数字が好きでない人には面白くなかったかもしれませんね。本当はちゃんと計算の経過を出せばいいのですが、数字が好きでない人も多いと思います。というので、簡単に結論だけ書いておきます。実は、県民性のアンケートの方が回答者数が多いのです! 本当にただそれだけです! 統計的手法の欠点ともいえるのでしょうが、回答者数が多ければ偶然に差が出る確率は低くなるのです。ですから、血液型だって、回答者数を多くすれば統計的に差が出るのです。
数字が好きな方は次のコラムをどうぞ! 好きじゃない人は、次へ進みましょう。
■血液型のデータの分析 なぜカイ自乗検定で有意差が出ないのでしょうか? 実はその理由は簡単で、計算するとわかりますがこの程度の差だと数百人のデータでは有意差は出ないのです。では、いったい何人ぐらいだったら差が出るのかなぁと思い試算してみたところ、回答者の人数を2倍(960人)にすると、5.のデータの危険率が5%以下になります。3倍(1,440人)にすると、5.の危険率が1%以下になり更に3.4.8.の危険率が5%以下になります。つまり、差を統計的に実証するにはアンケートの人数が足りないのです。 ■県民性のデータの分析 総質問数72(質問数は37ですが1問中に複数の質問があります)の中で、単純回答以外の質問(第14、18、26、27、28、29、30、32、33、35、36問、ルーツ以外の質問)について、40問は全国平均との有意差はありませんでした。5%以下の危険率では10問、1%以下では22問が有意差を示しました。 |
へ〜、本当にそれだけなの?という人もいるかもしれません。本当にそれだけなのです! 否定する人(≒日本の心理学者)のデータを見るとわかりますが(たぶん労力、時間、経費の問題なのでしょうが)、回答者が千人以上というデータはほとんどないのです。これで、日本の心理学者のデータで差が出ない理由がはっきりしました。回答者数が少ないのだから、どう頑張っても差が出るわけがないのです。
これでほとんどの謎が解けました。なぜ心理学者のデータで差が出ないのか?という問題はクリアしたはずです。ということで、次の問題を解くことにします。それは、血液型で性格が違うなら、なぜ人の血液型を当てることができないのか?という問題です。これは比較的簡単でした。経験的に、この程度の差では人がどのタイプに当てはまるかを判断するのは無理だからです。
県民性から出身地を当てることは普通はできません(できる人はいるのかな?)。都道府県は47ありますから無理だとしても、関東、関西、東北、四国、九州ぐらいは当てられてもよさそうです。しかし、そんな話は聞いたことはありません。やっぱり、血液型による差は思ったより微妙なものなのです。
例えば、私はよく知った人なら50%程度の確率?で血液型を当てることができます。だから、血液型と性格の関係はある程度あるといえます。ただし、初対面の人ではほとんど当たりません(笑)。 |
これについては、実際に計算してみるとよく分かります。といっても、計算がイヤな人も多いと思うので、とりあえず結果だけ書いておきましょう。ということで、次のような仮定をすることにします。
この場合はどうすれば一番よく血液型を当てることができるでしょうか? 30%も違う特徴があるのだから、簡単に当たりそうに見えるのですが、実はそうでもないのです。普通は、このようにすればいいと思うでしょう。
黙っていてもA型というだけで38.1%は当たるのだから、それよりもかなり高い確率で血液型を当てないとしょうがないのですが、実際には正解率はたったの?41.7%です。つまり、3.6%しか多く当たらないのです。これじゃぁしょうがありませんね。
実は、該当率が30%も違うなんていう特徴はほとんどありません。この仮定はかなり甘いのです。では、最初の該当率を80%から75%に下げたらどうなるでしょうか? 計算すると、正解率は40.6%です。つまり、たったの2.5%しか違わないのです。これじゃあ、黙っていてもA型というだけの人と違わないといってもいいでしょう。念のため、最初の該当率を70%に下げてみると、なんと39.5%しか当たりません! いやぁ、血液型を当てるのはなかなか難しいようです(苦笑)。
では、特徴の数をもう少し増やしたらどうでしょうか? という訳で、試しに2つにして計算してみました。血液型の当て方は次のようにするとします(細かくいうちょっと違うのですが…)。
この場合の正解率は49.4%です。まだまだですが、とりあえずよしとしましょう(笑)。念のため、最初の該当率を75%と70%の場合も計算してみると、正解率はそれぞれ46.1%と44.1%です。ん〜、ちょっと不満ですね。念のために、特徴を3つにして計算してみることにします。血液型の当て方は次のようにします(これも、細かくいうちょっと違うのですが…)。
この場合の正解率は、最初の該当率を80%、75%、70%とした場合、それぞれ56.0%、50.2%、45.3%です。まあ、こんなものでしょう。(笑)。特徴の数を増やせばどんどん当たるということになります。これは当然ですね!
以上のことから、次のようなことが言えます。血液型の特徴が1つしか区別できなければ、血液型を当てるのは非常に難しい。しかし、2つ以上あれば、まずまずの確率(偶然より10%程度以上の確率)で当てることができる。これは私の経験と全く一致します。だから、初対面の人では特徴がつかみにくいので全然当たらないのですが、よく知った人なら50%程度の確率(本当に?実はあまり自信はありません…f(^^;;)で当てることができるという訳です。これですべてが円くおさまりました(笑)。具体的な計算方法はこちらです。 -- H10.2.1
PART1には、こんな反論がありました。30%も違いがあるなら当たるのは当たり前だというのです。確かに、そんなに差がある特徴というのは聞いたことがありません。困ったなぁと思っていたところ、実はうまい方法があるのです。
PART1の計算は、特徴に当てはまるかどうかを「はい」「いいえ」の2つに分けるデジタル的な方法でしたが、当てはまる率を0〜1までアナログ的に評価するという方法に変えるともっと当たるのです! この場合、PART1のように1つの特徴をそのまま使うのではなく、いくつかの特徴を組み合わせて新たな特徴を計算するという方法も可能です。もちろん、血液型の当て方は、一番当てはまる率が高い血液型と断定することとします。この場合、PART1でのある血液型の該当率(他の血液型の該当率は50%)が80%、75%、70%と同じ正解率にするには、当てはまる率はそれぞれ0.67(67%)、0.63(63%)、0.60(60%)でOKです(他の血液型の当てはまる率は0.5=50%とします)。つまり、差は10〜17%程度でいいことになります。
10〜20%程度の差がある特徴なんてゴロゴロしていますから、うまく使えばかなりの人の血液型を当てることも可能なようです。ただ、私は人の血液型を当てるのはかなり苦手です。それに、この計算はあくまで理論値ですので、誰でも簡単にこんなに当たるというわけではありません(笑)。
なお、具体的な計算方法はこちらです。 -- H10.2.4
実は、特徴が2種類以上ある場合も、それほど難しく考える必要はなかったのです!
話を単純にするために、特徴が2種類の場合で説明します(2つの特徴は、ほぼ同一の分布をすると仮定します)。
下の図を見てください。ここで、赤がA型の分布、青がB型の分布とします。特徴が1つしかわからない場合は、X方向、あるいはY方向の違いだけで当てるわけです。つまり、特徴を見分けるには、距離1の差しかありません。ところが、特徴を2つ知っている場合は距離2の差で見分けることになります。計算すると、距離2は距離1の1.4倍(2の平方根倍)になります。
これを一般に拡張すると、特徴がN個の場合は、距離の差はNの平方根倍になることになります。つまり、原理的にいくらでも大きくなるわけです。(^^) これで、特徴を知れば知るほど、人の血液型を簡単に当てることが説明できます。わかってみれば、な〜んだということなのですが(笑)。 -- H10.2.23
私の知る限り、否定する人が調査した千人以上のデータが1つだけあります。それはここで紹介する松井章さんの論文(論文2)です!
#その後、坂元章さんの論文では、更に年数を増やして再分析を行っています。
JNNデータバンクの調査で、2年おき4回のデータが分析され、それぞれ約3,100人ずつ、合計で12,418人のデータが分析されているそうです(松井豊 1991 血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 第24巻 51〜54ページ)。で、「4.ものごとにこだわらない」と回答した比率を調べた結果、次のようなデータが得られたそうです。
年度 O A B AB S55 34.3 30.6 37.8 31.8 S57 36.1 33.0 35.6 39.1 S59 39.9 32.0 38.8 39.5 S61 37.1 35.9 45.1 42.9
水色が一番比率が低いデータです。確かにA型の比率が少ないですね。で、4年間の平均で表を作り直してみました。
O A B AB 36.7 32.9 39.3 38.3
このデータは危険率は0.1%以下です。要するに、偶然で差が生じる確率は1000分の1以下ということですから、A型とその他の血液型は明らかに差があるといえます。もっとも、違いは高々数パーセントですから、それほど大きな差ではありませんね。ま、これはこれでいいのですが、質問は実はこれだけではなかったのです!
■質問項目 1.誰とでも気軽につきあう
2.目標を決めて努力する
3.先頭に立つのがすき
4.物事にこだわらない
5.気晴らしの仕方を知らない
6.ものごとにけじめをつける
7.冗談を言いよく人を笑わす
8.言い出したら後へ引かない
9.人に言われたことを長く気にかけない
10.友達は多い
11.くよくよ心配する
12.空想にふける
13.人づきあいが苦手
14.家にお客を呼びパーティをするのが好き
15.何かをするときは準備して慎重にやる
16.よくほろりとする
17.気がかわりやすい
18.あきらめがよい
19.しんぼう強い
20.うれしくなるとついはしゃいでしまう
21.引っ込み思案
22.がまん強いが時には爆発する
23.話をするよりだまって考え込む
24.人を訪問するのにてぶらではかっこうが悪い
質問の24項目のうち、差が出たのはたったの1項目(4.物事にこだわらない)だけだったのです。私は、このアンケートの生データを持っていないのでなんともいえないのですが、わずかながら差が出ているかもしれませんし、全く差がないかもしれません(苦笑)。とにかく、24項目のうち(危険率5%以下で)差があったのは毎年3〜4項目だったそうですから、私にとっては「ちょっとした」宿題でした。
考えられるのは、血液型以外の要因がかなり大きく影響しているのではないかということです。年齢差、地域差、男女差、社会的地位の差も考慮すれば、血液型でも差が出るのかもしれません。これが私の推理です。とにかく、大学生だったらあんなに差が出たのに不思議ですね!
そこで、大学生(東京都と神奈川県)のデータをもう一度調べることにしました。同じく松井さんのデータです。「4.ルールや慣習や秩序を重視する」と回答した人の比率です (詫摩武俊・松井豊 S60 血液型ステレオタイプについて 東京都立大学人文学報 第172巻 15〜30ページ)。
血液型 回答者数 比 率 O 29.7% 57.7% A 36.7% 54.7% B 22.5% 50.7% AB 11.1% 41.2% 合計 613人 −
このデータは、回答者数が613人と少ないにもかかわらず、危険率はなんと0.1%以下です! しかも、「10.未来に対して楽観的である」についても危険率は5%以下でちゃんと差が出ているのです。
■質問項目 1.ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
2.周囲の人に細かく気を使う
3.感情や欲求はおさえる方である
4.ルールや慣習や秩序を重視する
5.生きがいを求めている
6.周囲の影響はうけにくい
7.人にしばられ,抑制されたりするのはきらいである
8.柔軟な考えや新しいことには理解がある方だ
9.人には心を開く方である
10.未来に対して楽観的である
11.考え方がストレートである
12.情緒の安定した面と不安定な面がはっきりわかれている
13.人とのつきあいに距離をおいている
14.ものごとに没頭できず,根気がない方だ
15.分析力や批判力がある方だ
16.人との応対はニコヤカでソツがない
17.ロマンチックな面と現実的面をどちらももっている
18.人間関係を大事にし,とくに人の信頼を重視する
19.バイタリティがある
20.目的が決まれば直進して、がんばってやりとげる
ということで、なんとか難問はクリアしたようです! 血液型による差はわずかなので、他の要因が強く影響するようなデータでははっきりとした差は出ないのです。対して、この回答者である大学生のような(年齢的・地域的・社会的地位的にも)比較的均質な集団では、血液型による差がはっきり現れると考えていいでしょう。
データの分析がいっぱい出てきたので、ちょっと別なことを調べてみましょう。
データの再現性はあるのかどうか、ちょっと調べてみました。といっても、全部調べるのは大変なので1つだけです。理論!?のところにも書いたのですが、案の定大村さんのデータでも同じ傾向を示しています。それは、O型とA型とは集団や組織への帰属意識が一番強く、AB型は一番弱く、B型はその中間というのものです。
能見さんの「新・血液型人間学」からのデータです(P71第18表)。陸上競技の一流選手へのアンケートで国際競技の場合に、「日本のためだ頑張ろう!」という人の比率です。調査時期は不明ですが、昭和50年代でしょう。今だったら、もっと比率は低くなると思いますが…
血液型 人数 比 率 O 58人 13.8% A 73人 13.7% B 51人 9.8% AB 22人 0.0%
ま、予想どおりというか、O≒A>B>ABの順になっています。AB型は日本への帰属意識は非常に低いようですね。
次に、同じく能見さんの「新・血液型人間学」からのデータです(P211第24表)。質問は、「人と一緒にする食事について、おいしく感ずる最高は?」という問いで、「ホ、一人で食べてもウマいものはウマい」と回答した比率です。調査時期は「血液型愛情学」のアンケートの時期とあるので、昭和50年前後でしょう。
血液型 人数 比 率 O 636人 20.1% A 739人 19.6% B 600人 23.2% AB 428人 27.1%
ま、これも予想どおりというか、O≒A<B<ABの順になっています。
次は、外国のデータです(R.B.キャッテルの研究)。
次は、「大学生のデータの分析」からのものです(大村政男 「血の商人」の餌食になるなデタラメぶりは立証された 『朝日ジャーナル』 昭和60年3月8日号 89〜92ページ) 。
O型の特徴といえるものがあるのか(%)
項 目
O型
115人A型
216人B型
104人AB型
45人5.仲間内では開放的
82.6 75.5 79.8 68.9
グループへの帰属心が強いという質問ではないのでやや違う傾向(A型がB型より低い)を示しています。しかし、ここでもO型の回答率が一番高く、AB型が一番低くなっています。A型が低いのは、「仲間内」という言葉があるからだと思います。A型は、仲間というよりは抽象的な組織そのものへの帰属心が強いからです。
最後に、「大学生のデータふたたび」から「ルールや慣習や秩序を重視する」と回答した人の比率です (詫摩武俊・松井豊 1985 血液型ステレオタイプについて 人文学報,172,15-30.)。
血液型 回答者数 比 率 O 29.7% 57.7% A 36.7% 54.7% B 22.5% 50.7% AB 11.1% 41.2% 合計 613人 −
これも、ほぼ予想どおり、O≒A>B>ABの順になっています。
ここ10年来、70%以上の人々が「血液型と性格の関係はありそうだ」と考えていて、その比率は変わっていません。しかし、強い関係があると思っている人は20%弱で、多少関係があるという人が50%弱と大部分を占めています。このデータは、私の推理と完全に一致しますね!
つまり、「血液型と性格」は強い関係ではないとしても、多少の関係はあるということです。また、「血液型によって性格は異なる」ことと「性格は血液型よりも環境によって作られると思う」「人の性格は血液型による4タイプには分けられないと思う」「人の性格は血液型で判断できるほど単純ではない」「同じ血液型でも違う性格の人がいる」というのは矛盾しないことがわかると思います。
1.血液型と人の性格は関係ありそうだ(無作為抽出の首都圏15〜69歳の住民1,102名)
回 答
回答率
そう思う 75.0% そう思わない 18.4% どちらともいえない 5.9% わからない・無回答 0.6% 出典:昭和61年NHK世論調査資料
2.あなたは、血液型と人の性格や相性と関係あると思いますか?(無作為抽出の全国20歳以上の男女2,320名)
回 答
回答率
関係あると思う 18% 多少関係あると思う 46% 関係ないと思う 21% わからない 14% 無回答 1% 出典:昭和62年毎日新聞「こころの時代」全国世論調査
3.血液型と性格・相性の関係は?(500名)
回 答
回答率 ある 72% ない 18% わからない 10% 出典:関西テレビ『発掘!あるある大事典』(平成9年6月15日放送)
4.血液型ステレオタイプに対する態度 →太字は50%以上 (都内の女子大生318人)
変数名
肯定率(%) 血液型によって性格は異なる
* 血液型性格判断は信用できる
37.5 血液型性格判断は当たっている
53.8 血液型性格判断は楽しい
83.6 血液型性格判断が好き
61.5 コミュニケーションに役立つ
40.4 初対面時に役立つ
26.0 血液型を考えてから対人行動 5.8 血液型によって行動を変える
4.9 他者行動の理解に役立つ
14.4 血液型でまず相性を考える
26.7 血液型に関する記事をよく読む
57.7 自分を知るのに役立つ 26.0 知らない自分がわかる
12.5 自己について新しい発見をする
16.4 自分を客観的に見られる
26.0 A型の人はきらい 5.8 B型の人はきらい 10.6 O型の人はきらい 1.0 AB型の人はきらい 10.6
* 本回答のみ、回答は以下の5件法で求めている。
「血液型によって性格は非常に異なる」(0%)、「かなり異なる」(10.5%)、「やや異なる」(61.1%)、「あまり異ならない」(16.8%)、「全く関係ない」(11.6%)出典:上瀬由美子・松井豊 1996 血液型ステレオタイプ変容の形 ―ステレオタイプ変容モデルの検証― 社会心理学研究,11,3,170-179.
5.血液型ステレオタイプを肯定・否定する理由 →太字は50%以上 (都内の女子大生318人)
変数名
肯定率(%)*1 1. 血液型性格判断は科学的だと思う
11.6 2. 血液中の成分が異なれば性格にも影響を与えるはずだ
26.4 3. 血液型性格判断は雑誌によく載っているので本当だと思う
15.3 4. 自分の周りの人は血液型性格判断の結果がよくあてはまる
54.4 5. 他人の血液型がなんとなくわかる
55.3 6. 自分と同じ血液型の人は、自分と性格が似ている
45.9 7. 性格は血液型よりも環境によって作られると思う
93.1 8. 人の性格は血液型による4タイプには分けられないと思う 93.1 9. 人の性格は血液型で判断できるほど単純ではない
92.5 10. 同じ血液型でも違う性格の人がいる
98.1 11. 自分の身の回りには血液型性格判断のあてはまらない人がいる
78.3 12. 血液型性格判断の内容は自分には当てはまらない
21.3
注: *1 肯定率は、その項目に「そう思う」「ややそう思う」と回答した者の割合。
出典:松井豊・上瀬由美子 1994 血液型ステレオタイプの構造と機能 聖心女子大学論叢,82,90-111.
なお、1.2のデータは、草野直樹さんの『「血液型性格判断」の虚実』から引用させていただきました。どうもありがとうございます。それから、3.については、NTVの『特命リサーチ200X』でも、関係があると思う人の回答率が75%とほぼ同じ傾向を示していました。 -- H10.9.19
念のため、データの再分析をしてみることにしましょう。
その後、「大学生のデータふたたび」「難問登場!」の原典を入手することができました。その分析の結果…前者では、20項目中の次の5つが他のデータと同じ傾向を示しています。ここでは、結果だけ書いておきます。
1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
4. ルールや慣習や秩序を重視する
9. 人には心を開く方である
13. 人とのつきあいに距離をおいている
18. 人間関係を大事にし、とくに人の信頼を重視する
更に、同時に行われた性格テストでも血液型による明らかな差が見られます。また、後者では、24項目中の次の6つが4回とも同じ傾向を示しています。
2. 目標を決めて努力する →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
26.7 27.1 23.8 30.4 6.6 1982
27.7 30.7 26.8 28.5 3.9 1986
28.3 26.8 23.7 29.0 5.3 1988
27.8 28.2 27.8 28.6 0.8 平均
27.6 28.2 25.5 29.1 3.6 4. 物事にこだわらない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
31.8 30.6 37.8 34.3 7.2 1982
39.1 33.0 35.6 36.1 6.1 1986
39.5 32.4 38.8 39.9 7.9 1988
42.9 35.9 45.1 37.1 9.2 平均
38.3 33.0 39.3 36.7 6.3 6. ものごとにけじめをつける →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
38.2 39.2 36.6 42.7 6.1 1982
41.6 41.2 37.0 44.9 7.9 1986
36.5 38.9 35.6 37.4 3.3 1988
39.3 39.5 35.0 39.0 4.5 平均
38.9 39.7 36.1 41.0 4.9 9. 人に言われたことを長く気にかけない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
23.5 22.2 26.7 23.3 4.5 1982
28.2 24.3 24.4 25.0 3.9 1986
25.6 23.7 26.1 26.9 3.2 1988
27.6 24.2 27.2 28.3 4.1 平均
26.2 23.6 26.1 25.9 3.6
15. 何かをする時は準備して慎重にやる →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
32.1 29.8 25.9 29.1 6.2 1982
32.7 32.3 29.8 31.6 2.9 1986
29.3 33.6 28.7 33.6 4.9 1988
28.3 32.3 26.4 30.1 5.9 平均
30.6 32.0 27.7 31.1 4.3
22. がまん強いが時には爆発する →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
33.4 35.2 30.8 34.0 4.4 1982
34.2 34.1 28.4 33.5 5.8 1986
36.1 35.9 30.1 35.0 6.0 1988
36.0 35.0 34.7 34.9 1.3 平均
34.9 35.1 31.1 34.4 4.0
全くの偶然で、ある血液型だけが一番少ない肯定率になる確率は、0.253ですから1.6%以下です。それが6つもあるのですから、偶然でないことは確かですね。また、平均に対してχ2検定を行うとすべての質問項目で有意差が認められます(もっとも、項目2と9は危険率10%以下)。
更にびっくりしたのは、「大学生のデータふたたび」で同時に行われた性格テストと、「難問登場!」のデータが(誤差の範囲内で)見事にピッタリ一致することです。正直、あまりにも話がうますぎますね。
松井さんの論文について、もっと詳しく知りたい人はここをクリック! -- H10.5.9
「難問登場!」の松井さんのデータ(すぐ上にもありますが…)は、私が入手した中で一番手ごわいものでした。しかし、実はこれよりもサンプル数が多いデータが存在したのです。それは、前にもちょっと書いた坂元章さんの論文です。
坂元章さんには、お忙しい中いくつかの論文をお送りいただきしました。いろいろな本やホームページで取り上げられている有名な論文です。この場をお借りして感謝申し上げます。それと、JNNデータバンクのデータ量はすごいですね。 誤解のないように書いておきますが、坂元さんは血液型と性格の関係に否定的ですので、念のため。 |
このデータは、総数3万人以上、年数も11年間という私が知る限り最大規模のデータで、単独の調査では能見さんをも上回るというすごいものです。また、完全なランダムサンプリングもされているので、信頼性も文句なしです。では、このデータではどうでしょうか?
原題: 山崎賢治・坂元章 血液型ステレオタイプによる自己成就現象−全国調査の時系列分析− 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 288〜291ページ H3
分析の素材 JNNのデータで1978年から1988年までの11年分
尺度の作成 「A型得点を例にとって」
JNNのデータにサンプルについて、「A型らしい」特徴があてはまると答えたなら(赤字)1を与える、3つの特徴があてはまるので、それらの平均値を求める。「A型らしくない」特徴があてはまると答えたなら(青字)、−1を与える。これも3つの項目があるので、平均値を算出する。両平均値を差をとれば、そのサンプルがどれくらいA型らしいか・A型らしくないかが算出される。これをA型得点と呼ぶことにする。
同様にして、B型得点、O型得点、AB型得点も計算する。分析された質問項目
1. 誰とでも気軽につきあう
2. 目標を決めて努力する
3. 先頭に立つのが好き
4. 物事にこだわらない
5. 気晴らしの仕方を知らない
6. ものごとにけじめをつける
7. 冗談を言いよく人を笑わす
8. 言い出したら後へ引かない
9. 人に言われたことを長く気にかけない
10. 友達は多い
11. くよくよ心配する
12. 空想にふける
13. 人づきあいが苦手
14. 家にお客を呼びパーティするのが好き
15. 何かをする時は準備して慎重にやる
16. よくほろりとする
17. 気がかわりやすい
18. あきらめがよい
19. しんぼう強い
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう
21. 引っ込み思案
22. がまん強いが時には爆発する
23. 話をするよりだまって考え込む
24. 人を訪問するのにてぶらではかっこうが悪い
この論文で面白いのは、年齢別や血液型別の「A−B」得点を計算していることです。結論をちょっと引用しておきましょう。
1.年齢/Fig.5
高年齢であるほど「A−B」得点が高い。すなわち、「A型的」特徴があてはまることがわかる。
2.血液型/Fig.6
A型の人の「A−B」得点(0.082)は、B型の人の「A−B」得点(0.027)よりも、有意に高い
3.調査年次/Fig.7
1978年から1988年までの11年間において、次第に「A−B」得点は低下している。すなわち、日本人は「B型的」性格になりつつある。
4.血液型と調査年との交互作用/Fig.8
血液型と調査年との交互作用が検出された。A型は相対的により「A型的」に、B型は相対的により「B型的」にという変化を示した。これは、血液型ステレオタイプによる自己成就現象を意味する結果である。
血液型とは直接関係ないので、ここでは詳しくは触れませんが、「日本人は『B型的』性格になりつつある」というのは興味深い点です。 これは、NHK世論調査等で以前から指摘されていること(趣味・レジャー指向、のんびりと生きる、ゆとり重視など)とも一致しますから、この点も分析結果の信頼性の高さを示しているといっていいでしょう。 これらの分析については、他の多くの文献で見ることができますので、ここでは省略します。 |
Fig.7では、明らかにA型とB型では差が出ています。それも、完全なランダムサンプリングによる3万人のデータで、11年間も安定して差が出ているのです。どうです、これなら全く文句ないでしょう?
しかし、Fig.7をもう一度よく見てみると、6つの質問を組み合わせた割には差が小さいことに気が付きます。24もの質問項目の中で、最も差が大きい6つを組みあせても、せいぜい10%の違いしかありません。つまり、1つの質問項目に対しては平均して(たった)2%以下の差しかないことになります。これじゃあ、実際には意味がないんじゃないの?という疑問を持つ人もいるでしょう。 -- H10.7.16
この「A−B」得点の差は「血液型ステレオタイプ」によるものとのコメントが付いています。実際の計算は、難しすぎて私には正直にいって解らないのですが、とにかく時間を追うごとに性格が血液型ステレオタイプに近づいてゆくという結論が示されています。「難問登場!」でも書いたとおり、ちゃんと分析すれば性格に差があるデータが得られることが証明されました。 実は、この論文のデータは、「難問登場!」での松井さんのデータと同じなのですが、少し年数が多いのです。具体的には昭和53年から昭和63年までの1年ごとのデータが使われています。松井さんは、昭和55年から昭和61年までの2年ごとのデータです。グラフを見るとわかりますが、ちゃんとはっきりとした傾向が現れています。ですから、常識的に判断すると、「ステレオタイプ」のせいかどうかはわかりませんが、「安定して一貫した傾向が見られる」ということになります。ただし、この傾向が見られるのはA型とB型のみのようで、他の血液型はないようです。いずれにせよ、「ランダムサンプリング」と「複数回」という条件は満たしています。更に、松井さんのデータでもA型についてははっきりした差が出たことから、このデータはA型に差が出やすいデータだといえるでしょう。 |
しかし、幸いなことに、実はそうではないのです。
私の仮説では、血液型による影響は、性別・年齢・国籍等によって違ってくるということになっています。つまり、ランダムサンプリングをしてサンプルを「偏りがない」方法で抽出すると、逆に性別・年齢・国籍等の影響が強くなり、血液型による影響が出にくくなります(そのサンプル集団内において血液型別の回答を比較します)。ですから、坂元さんが分析したJNNデータバンクのようなランダムサンプリングによるデータでは差が出にくくなるのです。
これは、私が分析したほとんどすべてのデータで実証されている(はず)です。つまり、差を出やすくするためには、(ランダムサンプリングではダメで)同じ大学の学生などのような均質な集団の方がいいのです。
次に、本当にそうかどうかチェックするために、JNNデータバンクのデータを再分析しようと考えたのですが、残念ながらこのデータは個人では使わせてもらえません。会員企業でないとダメということなので…非常に残念ですがあきらめるしかありませんでした。
そこで、数は坂元さんのデータよりは1/3の約1万人と少ないものの、データが公開されている松井豊さんの論文のデータをもう一度分析してみたのが下の表です(血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 第24巻 H3 51〜54ページ)。
血液型別にみた質問の肯定率(%)
6. ものごとにけじめをつける →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差S55
38.2 39.2 36.6 42.7 6.1 S57
41.6 41.2 37.0 44.9 7.9 S61
36.5 38.9 35.6 37.4 3.3 S63
39.3 39.5 35.0 39.0 4.5 平均
38.9 39.7 36.1 41.0 4.9
なお、B型以外の順位が入れ替わっているのは、計算してみると誤差の範囲内ですから特に問題ありません。では、次に松井さんの別なデータについてです。
原題: 血液型ステレオタイプについて 東京都立大学人文学報 第44号 15〜30ページ S60
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
55.5 53.3 47.1 55.9 8.8
前者はJNNデータバンクによる完全なランダムサンプリング、後者は首都圏の大学生のみのデータです。見事に私の仮説が当てはまっていることがわかります。
いや、そんなのは単なる偶然だという人もいると思います。確かにそういう疑問はもっともですね。しかし、坂元さんや松井さんだけでなく、代表的な否定論者である大村政男さんのデータでもほとんど同じ傾向が表れているのです。なお、詳しい分析は次のページを見てくださいね。いくつかの例外もありますが、ほとんど私の仮説が当てはまっていることがわかると思います。
-- H10.7.16
ところで、実際にはどんなメカニズムによって血液型によって性格の差が生じているのでしょうか? 残念ながら、性格に大きく関係すると思われる、脳と性格については科学的にはほとんど未解明なのです。しかし、この分野の研究はどんどん進んでいるので、近い将来に結果が明らかになるかもしれません。そうすれば、ABO式血液型だけでなく、他の血液型やHLAと性格の関係も明らかになるでしょう。
否定論者の高田和明さんは、次のようなことを書いています(『現代のエスプリ〜血液型と性格』 血液型学から見た血液型と性格の関係への疑問−血液型…発見から最新知識まで 165〜166ページ)。
型物質と脳
性格をきめるものは脳であるとすることに異存をはさむ人は多くはないであろう。もしそうとするなら、脳に型物質が存在するか、脳に血液中の型物質が接触するかがこの議論の中核をなすものと考えられる。
前述したように神経細胞、神経膠細胞など脳を構成する細胞にはA、Bトランスフェラーゼ[注:糖転移酵素のことで、A・B型物質をつくる働きをします]は発現しておらず、膜上にA・B・Hの糖鎖は存在していない。しかし注意すべきことはタイプ3から6までの型様の糖鎖[注:オリゴ糖鎖]が若干発現することは否定出来ない(これを示している人はいない)。しかしこのようなことがおこってもこれは人により脳の場所により発現の程度は異なり、とても性格とは関係づけられない。
一方脳の血管のまわりには膠細胞の突起がすき間ないように附着しており、脳機能に関係する酸素、ブドー糖、アミノ酸の一部、水などごく少数の物質しか通過させないことが知られている。これを血液・脳関門と呼んでいる。当然型物質のような糖脂質、糖タンパクは血液・脳関門を通過しない。
つまり脳細胞が自己の血液型を知ることはないのである。
しかし、「脳細胞が自己の血液型を知ることはない」にしても、脳には血液型類似物質が存在して、抗原抗体反応を示すことは間違いないようです。念のため、別の文献に当たってみましょう。
山本茂著 『知っておきたい血液型の科学』 48〜49ページ
表3・3 ABO式血液型物質のヒト体内における分布
(1)臓器や組織
ア 非常に多い(赤血球よりも) 胃、十二指腸、唾液腺、食道など イ 中程度から少ない 筋肉、肝臓、肺臓、白血球、血小板、骨、歯、毛、爪、皮膚など ウ 極めて少ない
脳、脂肪組織、眼のガラス体や水晶体など (2)分泌液や体液など
ア 非常に多い 唾液、精液、胃液、胎便*(特殊なものでは卵巣のう腫液)など イ 中程度から少ない 羊水、膣液、母乳、血清、尿、汗、涙など ウ 極めて少ない 脳脊髄液など
*とくに生後まもない赤ちゃんの便
大久保康人著 『血液型と輸血検査(第2版)』 6〜7ページ
表I−5 各臓器中のABH抗原
臓 器
反応(%) 胃
100 十二指腸 90 …
… 脳
8
やはり、脳にABO血液型物質(あるいは類似物質)があるのは(量は少ないにしても)確かなようです。
次に、能見さんの記述に当たってみましょう(『新・血液型人間学』 80ページ)。
私は人間の“性格”とは、脳を含めた人間の神経系を、1つの電気回路とみなしたとき、その回路特性であると定義している。事実神経の刺激伝達は、電気的に行われる。その回路を構成する材料が血液型で異なるのだ。回路特性にもひびくわけである。
中で私が有力な犯人とニラんでいるのは、シナップスである。これは神経細胞のターミナルのようなもので、八方から情報が入って来ては出て行く。その伝達方式は電気化学的に行われる。つまりシナップス1個は1つの電池のようなものである。その電解液の化学性が血液型によって通っている。1つ 1つのシナップスの特性差は小さくても、脳の中だけで何億というシナップスがあるのだ。積算すれば、大変な差になることも考えられる。
私も基本的に能見さんの意見に賛成で、脳に存在するABO血液型物質(あるいは類似物質)がシナプスあるいは神経系に何らかの影響を与えているのではないかと思います。詳しくはここをクリック! -- H10.7.16
それを裏付ける証拠も、ポツポツ出てきています。
平成16年10月7日に放映された『超スパスパ人間学!』では、血液型別に運動が続かない理由を解明するという目的で、瞬発力運動(ダンベル運動)、持久力運動(自転車マシン)によるストレスの調査を行いました。運動中の脳波を血液型別に測定したところ、次の結果が得られたそうです。
瞬発力運動 持久力運動 A型 ストレス大 ストレス小 B型 ストレス小 ストレス大 AB型 人により違う 人により違う O型 ストレス小 ストレス小
随分違うものですね。
平成16年10月3日に放映された『発掘!あるある大事典II』でも、2つほど研究成果が公開されています。
『発掘!あるある大事典II』は、捏造が発覚して打ちきりになってしまった番組ですが、血液型の部分に捏造があったという話は聞きませんので、そのまま経緯しておきます。東海大の実験は、別の人から内容を聞く機会があったのですが、至ってまじめな研究だそうで(少なくとも東海大では)再現性が確認されているそうです。 |
私がビックリしたのは、今回もやはり脳波の実験です(東海大学医学部基礎医学系医学教育・情報学 灰田宗孝さん)。相性を脳波で測定できるというのは面白いですね。番組では、日立メディコ製の機器を使って、脳から出る光子を測定していました。これで脳のどの部分が活性化しているかわかるので、相性の善し悪しが判断できるんでしょうかね。ウソ発見器を高級にしたようなものでしょうか? そうえいえば、日立製作所がそんな発表をどっかでしていたような気がします。やはりテレビ局だとやることが違うなぁ、と感心してしまいました。
また、時間は短かったのですが、番組の最後に広島国際大学人間環境学部の吉田倫幸教授の実験が紹介されていました。こちらも非常に興味深い内容で、血液型別に男女5人ずつ計40人の被験者の脳波の違いを測定するというものです。
具体的には、目を閉じた状態で、ランプがついたらボタンを押し、消えたらボタンを放す。この間の脳波の変化を調べます。
ポイント1 光刺激に脳波がの程度反応するのか
ポイント2 光刺激後、脳波がどのぐらいで元の状態に戻るのか
結果は見事でした!
脳波興奮度を【β帯域量/(α帯域量+β帯域量)】とすると、大きい順にA型>O型>AB型>B型でした。つまり、この順に外界の刺激に敏感に反応する、ということになります。脳波の興奮度に違いがあるということは、視神経and/or脳の働きに違いがあるということですから、血液型により神経and/or脳の反応が違ってくることになります。大脳生理学レベルで(メカニズムはともかくとして)血液型により反応に差があることが初めて実証されたことになります!やったぁ!!
吉田さんは、A型とO型は、光に強く反応し、消えた後も更に強く脳波に反応が残ることから、「何か事が起きると影響されやすい」「そしてそれが気になってしまう」と解説していました。直後に「常に状況を把握しようとアンテナをはりめぐらせている」「細かいことを気にする」「人に気配りができる」とナレーションが入りました。
B型は、反応が小さくすぐに元に戻ることから、吉田さんは「気持ちをすぐに切り替えられる」「ケンカしていてもすぐに食事に行こうと言える」とのこと。ナレーターは「周囲の状況に左右されず自分のペースを貫く」「自己中心的と思われる」「物事に動じない」と言っていました。
AB型は、B型よりは反応が大きく(とは言ってもA型やO型よりはずっと小さいのですが…)、すぐに元に戻ることから「気を使って刺激を受けたり後処理をすることができる」と吉田さんの弁。「周囲の状況に反応は示すがすぐに自分のペースに戻る」「二面性があると言われる」「物事に冷静に対処する」とナレーター。
これだけきちんと結果が出れば、真面目な研究としてきちんと評価されるかもしれませんね。そうなれば、研究者や大学もほってはおきませんから、ポジティブフィードバック(良循環)が起きて、今後は血液型の研究がどんどん進むかもしれません。 -- H19.2.12
ここまで読んでくれば、私の論理はわかってもらえたことと思います。最後まで読んでいただいてどうもありがとうございました。m(._.)m
そこで、最後まで読んでもらえた方へのプレゼントとして、松井さんの分析ミスについて書いておきましょう。これで、「大学生のデータふたたび」「難問登場!」での松井さんのデータについては、完全に説明ができたことになります。ついでに、「渡邊席子さんの秘密?」もどうぞ!
最近になって、松井さんのはっきりした分析ミス(失礼!)に気が付きました(実は別のページにそれとは気が付かずに書いていたのでした…う〜ん)。それは松井豊さんの論文の論文2−表8の分析です。分かりやすいように、もう一度引用しておきます。
表8 項目4「物事ごとにこだわらない」の肯定率(単位%) →最高値が赤 →最低値が青
O A B AB 80年
31.8 30.6 37.8 34.3 82年
39.1 33.0 35.6 36.1 86年
39.5 32.4 38.8 39.9 88年
42.9 35.9 45.1 37.1
4つの年度で共通して差が見られた項目4について、4年度の肯定率を一覧したのが表8である。(中略)4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた。(中略)以上の結果は、ABO式血液型による性格の差には、年度を越えた一貫性がみられないことを明らかにしている。本資料のデータから見る限り、血液型ステレオタイプは妥当性を欠くと結論される。(以下略)
(注3)視点をかえれば、A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる。(以下略)
太字の文章に注目してください。この場合、「最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた」のはなぜでしょうか? これは、本当に「一貫性を欠いた結果」なのでしょうか? 私も松井さんのいうとおりだと思っていたのですが、「一貫性を欠いた結果」でもおかしくないのだとつい最近気が付きました。実は、ほぼ同じ内容をこのページに書いていたのですが、やっと気がついたのです。思い込みとは恐ろしいものですね(単に私が間抜けなだけ?)。では、これからその理由を説明しましょう。計算が苦手な人は、下のコラムの計算はパスして次にいきましょう。
このデータの誤差を計算してみましょう。サンプル数が1回につき約3,000ですから、1つの血液型ではその1/4となって約750になります。このデータは、0と1との2つの値を取る2項分布ですから、平均を0.5と仮定して計算してみると、標準偏差は概算でSQRT(0.5×0.5÷750)=0.0183です。ですから、データの誤差は信頼度95%では0.0183×1.96≒0.0359になりますね。となると、平均すると3.6%程度の誤差があることに…。ただ、これはあくまで平均からの誤差ですから、実際にはプラス側とマイナス側で倍の7.2%程度という結果を得ることができました。あれ?、これだけサンプル数が多くても、結構な誤差があるものですね。 ちなみに、比較するのはたった4年分ですから、信頼度を年数の逆数である75%(=1/4)にまで下げてみると、同様の計算で誤差は0.0183×1.15≒0.0210となります。これまた同様にプラス側とマイナス側では倍の4.2%程度ということになりますね。 |
上に書いたとおり、このデータの誤差はだいたい7.2%程度になります。そこで、各年度の平均に対してどの程度の誤差があるのかちょっと計算してみましょう。その前に、4年度の平均を書いておきます。
4. 物事にこだわらない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
31.8 30.6 37.8 34.3 7.2 1982
39.1 33.0 35.6 36.1 6.1 1986
39.5 32.4 38.8 39.9 7.9 1988
42.9 35.9 45.1 37.1 9.2 平均
38.3 33.0 39.3 36.7 6.3
なるほど、結構バラツキがありますね。そこで、統計的な誤差が分かりやすくなるように、各年度の平均に対して血液型別の差を計算してみたのが次の表です。
4. 物事にこだわらない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
-1.8
-3.0
4.2 0.7
7.2 1982
3.2 -3.0
-0.3
0.2
6.1 1986
1.9
-5.3
1.2
2.3 7.9 1988
2.7
-4.4
4.9
-3.2
9.2 平均
1.5
-3.8
2.5
-0.1
6.3 最大と
最小の差5.0
2.3 5.2
5.4 - 平均での
A型との差5.3
0.0
6.3 3.7
- 平均での
B型との差-1.0
-6.3 0.0
-2.6
-
なるほど、松井さんのいうように、年度・血液型によってかなりバラツキがあるようですね。実際に計算してみると、これらのデータの誤差は上にも書いたように、だいたい7%程度(信頼度95%)になります。誤差って結構大きいものですねぇ。
細かいことをいうと、O・A型では7%より小さく、B・AB型で7%より大きくなり、結局はA<O<B<ABの順になります。確かに、バラツキ(下から3番目の行→太字)が見事にA<O<B<ABの順になっていることが分かります。
A型と他の血液型の差は、4年分の平均で3.7〜6.3%(ちなみに、この平均値の誤差は信頼度95%で3.6%程度です)ですから、(最大で)7%程度の誤差があっても順位は(たまたま)逆転しませんでしたが、O・B・AB型の間では同じ差は1.0〜2.6%ですから、7%程度の誤差があれば順位の逆転は割と簡単に起こるはずです。
つまり、「A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる」としても、もともと大した差がないO・B・AB型の間では「4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた」のは当然というのが私の結論です。論文2の他のデータについても全く同じことがいえますね。
ということで、統計的な差が出るには次の5つの条件が必要です。(^^) -- H10.9.14
1.回答者が均質でないといけない(つまり、同じ大学の大学生なんかがいちばんいい)
2.回答者総数が数百人以上でないといけない(できれば千人以上で血液型別の人数が同じならなおよい)
3.能見さんの本の血液型別の特徴を質問項目にすること(一般の性格テストではダメ)
4.能見さんの本の血液型別特徴と回答結果は必ずしも一致しない(とにかく差が出ればよい)
5.統計的な誤差をきちんと計算すること(誤差は思っているよりずっと大きい)
更に別のデータが加わりました。それは、今までの常識をひっくり返すものです。
血液型と性格に関する知識と性格の決めつけ方との関係(表Cより)
区 分
知識問題の正答率
→大きいほど知識がある自分の血液型のものと
判断した性格特性の確信度
→大きいほど自分にあてはまる
→血液型で性格を決めつける正確な知識がある人 ≧.75 (n=38)
.90 (SD=.96) ≧.72 (n=46)
1.05 (SD=.93) 正確な知識がない人 <.75 (n=56)
1.32 (SD=.91) <.72 (n=48)
1.34 (SD=.94) <.65 (n=35)
1.48 (SD=.84)
以上の分析結果は、否定論者だけではなく、肯定論者も含めての「常識」をひっくり返すものです。これらのことから、血液型と性格についての知識を普及すればするほど「偏見」や「差別」が減るはずだという結論が得られます。つまり、否定論者の「血液型と性格は関係あるはずがない」といった主張は、本来の意図に反して「差別」や「偏見」を増やすことになり、全く逆効果であることになるのです。う〜ん、なんと言っていいのかわかりませんが、否定論者には皮肉な結論というしかありません。
実は、「血液型と性格の正確な知識がある人ほど、血液型だけでは性格が決まらないと思っている」というのは、私の実感とぴったり一致します。また、「血液型と性格の正確な知識がない人ほど、血液型だけで性格が決まると思っている」というのは、否定論者がよくいう「血液型で性格を決めつける」からよくないという主張ともぴったり一致します。そういう否定論者には、ぜひ正確な知識を持っていただきたいと思います。これで、「差別」や「偏見」が少しは減るはずですから…。 -- H10.11.11
最後に(なるかどうかは知りませんが…)極めつけのデータを紹介します。日本人に一番多いA型のデータで行きましょう。題して、「本当にA型は神経質か?」です(笑)。では、スタート!
まずは、佐藤達哉さんの論文、「プラットタイプ・ハラスメント」からです(『現代のエスプリ〜血液型と性格』 No.324 至文堂 H6 なお、元のデータは上瀬由美子さんのもの)。他人から見たA型のイメージとしては、「几帳面」「神経質」「真面目」が多いことがわかります。
表1 各血液型のイメージ(N=197) →A型の回答が多いものだけを抜粋
回答\血液型
A O B AB 合計 几帳面
111 0 0 0 111 神経質 77 1 1 3 80 真面目 54 0 0 3 57
他者評定のお次は、当然ながら性格テストです。
下の表は、大村政男さんの論文の『VII
血液型と矢田部ギルフォード性格検査(YG検査)』からの抜粋です。YG検査では、ズバリ神経質という特性がありますので、ここだけ集中的に攻めることしますv(^^)。
なお、被験者は、日本大学文理学部の学生です。
この研究の被験者 単位:人
性別
O型者 A型者 B型者 AB型者 全体 男子 35 53 23 11 122 女子 32 41 28 8 109
YG検査の12尺度のkey answerに対する血液型者別肯定回答数(%) →最高値が赤 →最低値が青
N(神経質) O
A
B
AB
男子
45.7
53.6
39.1
50.9
女子 43.1
50.2
35.0
45.0
合計 44.1
52.0
37.2
48.1
では、松井豊さんの論文(論文1)ではどうでしょうか。神経質のデータだけ抜き出しておきます。
表4 血液型別の性格尺度得点の平均 注1) →最高値が赤 →最低値が青
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)神経質
5.47 5.69 5.65 5.66 F=<1
注1)各尺度得点は1点から11点まで分布し、得点が大きいほどその性質が強いことを表している。
また、長谷川芳典さんのデータではどうでしょうか( 血液型と性格 ―公開講座受講生が収集したデータに基づく俗説の検討 長崎大学医療技術短期大学部紀要 第1巻 82ページ S63)。ここでも、神経質のところだけを引用します。
#合計については掲載されていないのですが、私がサービスして計算しておきました(^^)。
Table 3 YG性格検査の因子得点平均値 →最高値が赤 →最低値が青
N O
A
B
AB
男性(45名)
6.0
8.6
7.3
6.7
女性(84名) 7.9
7.6
4.9
8.4
合計 7.3
7.9
5.8
7.4
実は、このデータは男女で傾向が違うので、私にはちょっと都合が悪いのです。(^^;; しかし、私の手持ちのYG性格検査のデータはこの3種類ですので、あえて正直に書いておきました(エヘン)。
もっとも、このデータはサンプル数が少ないので、男女別より合計の方が確からしいということは言えますが…。また、この程度の差なら誤差の範囲内という解釈も可能です。なにしろ「異常値」を示したAB型女性は5人と一番少なかったのですから…(ちなみに、AB型男性はこれより多くて7人)。 |
YG性格検査ではありませんが、医師である志賀貢さんは、その著書『科学的血液型「相性」診断』(光文社 H8.3)の中で、銀行員約7,000人のデータを分析しています(18〜19ページ)。この銀行の人事部長は、血液型が好きだったのでしょうか? はて?
某銀行の男女1万1451人にアンケートを求め、回答のあった7千人余りを集計…質問した32の項目に対して、好きなだけ○印をつけてもらった結果をまとめたものである。それぞれの数字は、血液型別、体型別で○印を付けた人が何パーセントいたかを示している。
実際のデータは20ページに書かれています。ここでは、血液型の神経質の数字だけ抜粋しておきます。
血液型別・体型別 性格特徴(1) →最高値が赤 →最低値が青
O
A
B
AB
神経質
28.2
36.8
30.2
33.1
つまり、A型は自己評定でも神経質ということになります。
おまけとして、大村さんのデータを松井豊さんの論文の論文2と比較してみましょう。同じ条件にするためには、男女の合計で比較すればいいでしょう。結果は…
→最高値が赤 →最低値が青 太字→逆転項目(値を負にして計算)
N(神経質)
項目 O
A
B
AB
N(神経質)
44.1
52.0 37.2 48.1
9. 人に言われたことを長く気にかけない 26.2 23.6 26.1 25.9
もはや、わざわざ解説するまでもないでしょう! 他者評定(佐藤論文)、自己評定(志賀貢さんのデータ)、3種類のYG性格検査の結果のいずれもが一致しています!
あまりにも都合のいい結果なので、ひょっとしてデータの信頼性を疑う人もいるかもしれませんね。しつこいようですが、これらのデータは恣意的に選んだものではありません! 私の手持ちのデータで「神経質」に関係するもの全部です。
#正直、ここまで一致するとはうれしい誤算でした。わ〜い! v(^^) -- H12.7.14
【H16.9.23追記】 もう一つの再現性があるデータが加わりました。 あなたの行動や思考と対人関係に関するアンケート提供元とデータ、そしてプレス発表の説明文は次のとおりです。 提 供:DIMSDRIVE
「アンケートの設問終了後に血液型を尋ねた」というのがミソですかね。とにかく、このアンケートは使いでがあります。相性までデータがあるんですから…。とにかくすばらしいですね! A型の傾向は?この、「あなたの行動や思考と対人関係に関するアンケート」では、プレス発表の説明文では次のようになっています。
確かに、A型は自己評定で「神経質」のようです。そこで、表にしてみました。
やはり、A型が一番「神経質」のようですね。 #なお、5番目は「和菓子・洋菓子など甘いものはよく食べる」なので省略しています(笑)。 |
どうですか? 「謎はほとんど解けた!」でしょうか? それとも「謎はすべて解けた!」でしょうか? 楽しんでもらえましたか?
とりあえず、今のところはこれでおしまいです。新しいデータを入手したら、次の更新があるかもしれません。
ではバイバイ。(^^)/~