Prof. Sakamoto


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28.gif (298 バイト)坂元章さんの論文

 坂元章さん(現・御茶の水女子大助教授)には、お忙しい中いくつかの論文をお送りいただきしました。いろいろな本やホームページで取り上げられている有名な論文です。この場をお借りして感謝申し上げます。それと、JNNデータバンクのデータ量はすごいですね。
 誤解のないように書いておきますが、坂元さんは血液型と性格の関係に否定的ですので、念のため。 -- H10.5.13

12.gif (321 バイト)論文1

原題: 山崎賢治・坂元章 血液型ステレオタイプによる自己成就現象−全国調査の時系列分析− 日本社会心理学会第33回大会発表論文集 342〜345ページ H4

 この論文のデータは、松井さんの論文での論文2(血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 第24巻 51〜54ページ H3)とほぼ同じなのですが、松井さんが4年分のデータなのに対して、11年分と年数が多く信頼性が高いのです。私が知る限り、日本では最大規模のデータで、総数は3万人以上となります。引用しておくと、

 分析の素材 JNNのデータ。1978年から1988年までの11年分。24個の性格特徴のうち、前調査で選ばれた、6つないし7つを求めた。

 尺度の作成 「A型得点を例にとって」

JNNのデータにサンプルについて、「A型らしい」特徴があてはまると答えたなら(赤字)100を与える、3つの特徴があてはまるので、それらの平均値を求める。「A型らしくない」特徴があてはまると答えたなら(青字)、−100を与える。これも3つの項目があるので、平均値を算出する。両平均値を差をとれば、そのサンプルがどれくらいA型らしいか・A型らしくないかが算出される。これをA型得点と呼ぶことにする。
同様にして、B型得点、O型得点、AB型得点も計算する。

分析された質問項目

1. 誰とでも気軽につきあう
2. 目標を決めて努力する
3. 先頭に立つのが好き
4. 物事にこだわらない
5. 気晴らしの仕方を知らない
6. ものごとにけじめをつける
7. 冗談を言いよく人を笑わす
8. 言い出したら後へ引かない
9. 人に言われたことを長く気にかけない
10. 友達は多い
11. くよくよ心配する
12. 空想にふける
13. 人づきあいが苦手
14. 家にお客を呼びパーティするのが好き
15. 何かをする時は準備して慎重にやる
16. よくほろりとする
17. 気がかわりやすい
18. あきらめがよい
19. しんぼう強い
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう
21. 引っ込み思案
22. がまん強いが時には爆発する
23. 話をするよりだまって考え込む
24. 人を訪問するのにてぶらではかっこうが悪い
【H16.10.25追記】

このページを読んで、「A型らしい」特徴の選び方の質問があったので、原典から引用します。

前調査

 自己成就現象を検討するにあたり、血液型ステレオタイプを明らかとするため前調査を実施した。
 JNNデータの性格に関する質問項目は、最高27個である。ただし、調査年により一部項目に変化が見られる。そこで、項目の整合性を鑑み、1978年〜1988年の11年の、24個に共通な特徴を検討対象とした。
 女子大学生を対象に前調査を行い、JNNデータの24の特徴が、それぞれA型(B型、O型、AB型)典型的と思われるかどうかについて177名の回答を得た。各血液型の特徴としてそれぞれ上位・下位3項目ずつを選んだ。これをTable1に示す。

Table 1: 各血液型別、性格特徴外該当率判定結果

該当するという人の割合

A型上位3項目

.932 何かする時には準備をして慎重にやる
.903 ものごとにけじめをつける
.898 くよくよ心配する

A型下位3項目

.265 目標を決めて努力する
.163 物事にこだわらない
.141 人に言われたことを長く気にかけない

 つまり、JNNのデータとは独立していることがわかります。

 なお、年度によって微妙に質問項目が違っているため、ここでは松井さんの論文のものに統一しました。

 結果として、

tokuten.gif (107062 バイト)

 そこで、重回帰分析を行った結果、

 という結果が得られました。また考察として、

A型の人々の評定は、女子大生のステレオタイプの方向へと偏って来ていることが示された。ここでは、A型の人は年々他の型の人よりも「A型的」になるという形の交互作用として自己成就現象を検出した。交互作用はA型かどうかという変数と年次による合成された。しがって、例えば、A型得点において交互作用があると言うことは、A型の人とそれ以外の型の人の間では実際の性格は差がないと従来は言われており、それを受け入れるならば、ステレオタイプの自己成就現象がおきている可能性がある。
ただし、A型の人以外は自己成就現象は認められず、今後、いっそうの検討を要するだろう。

 要するに、A型だけが明確なステレオタイプを持っているわけです。 -- H10.5.13

12.gif (321 バイト)論文2

原題: 山崎賢治・坂元章 血液型ステレオタイプによる自己成就現象−全国調査の時系列分析− 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 288〜291ページ H3

 この論文のデータは、論文1と同じです。ただ、論文1より1年前に発表されたので、血液型別による重回帰分析は行っていません。この論文で面白いのは、年齢別や血液型別の「A−B」得点を計算していることです(ただし、論文1のように100をかけていないので−1〜1の間の値を取る)。結論をちょっと引用しておきます。

1.年齢/Fig.5

高年齢であるほど「A−B」得点が高い。すなわち、「A型的」特徴があてはまることがわかる。

2.血液型/Fig.6

A型の人の「A−B」得点(0.082)は、B型の人の「A−B」得点(0.027)よりも、有意に高い 

3.調査年次/Fig.7

1978年から1988年までの11年間において、次第に「A−B」得点は低下している。すなわち、日本人は「B型的」性格になりつつある。

4.血液型と調査年との交互作用/Fig.8

血液型と調査年との交互作用が検出された。A型は相対的により「A型的」に、B型は相対的により「B型的」にという変化を示した。これは、血液型ステレオタイプによる自己成就現象を意味する結果である。

stereo1.gif (48556 バイト)

 なるほど、すばらしい分析ですね!

【H16.9.25追記】

このページを読んでも、統計的な検証がされていないのではないか、と一部の人が思っているようなので、坂元さん自身による結論を書いておきます(太字は私)。

考察

@大学生は明確な血液型ステレオタイプを有する。
A血液型と性格の自己報告との間の相関は、弱いが認められた。さらに、一般の人々の性格の自己報告は、大学生の血液型ステレオタイプに合致していることがわかった。
B年々、人々が「B型的」(物事にこだわらず、気がかわりやすい、等)になっていることが示された。
CBA型は相対的により「A型的」に、B型は相対的により「B型的」にという変化を示した。それは血液型ステレオタイプによる自己成就現象を示している。これは、「血液型性格学」のマスコミ活動に原因を求められるのかもしれない。
D従来の研究は(1)サンプル数が少なかった、(2)単独の特徴毎に分析していた、(3)A型とB型だけではなく、O型とAB型をも含めていた、などにより血液型と性格との関係を見いだせなかったのかもしれない。
Eただし、血液型と性格の自己報告との間の関連は小さいものであり、その差を統計的に検出するには数千人単位のデータを要するのであり、個々人単位に「▽型の人は△△だ」といった主張はできないと思われる。
F本研究では性格の自己報告を分析対象としたので、いくつかの未解決の問題が残った。それは、(1)血液型と性格との間に関係があるのか、それとも、認知の歪みなのか、(2)自己成就現象に関しても、性格が実際に変化したのか、認知が変わっただけなのか、というものである。

要するに、「弱いが(能見さんの指摘するとおりの)相関が認められた」と明確に結論づけているわけです。

12.gif (321 バイト)でも…

 でも、論文2のFig.7〜8を見ると、おかしなことに気が付くはずです。

 今までの多くの否定論者(≒日本の心理学者)は、血液型による性格の違いは存在しないと主張してきました。信頼できるアンケート(≒日本の心理学者)のデータでは安定した結果が得られないというのがその理由です。つまり、血液型による性格の違いは存在しないが、もしそのように見えるにしてもそれは「血液型ステレオタイプ」(特定の血液型はこういう性格だという思い込み)によるものというわけです。

 しかし、論文2のFig.7〜8では、明らかにA型とB型では差が出ています。それも、完全なランダムサンプリングによる3万人のデータで、11年間も安定して差が出ているのです(う〜ん、すごいデータ量!)。ですから、今までの主張の「信頼できるアンケート(≒日本の心理学者)のデータでは安定した結果が得られない」というのは明らかに間違いということになります。今までの主張は見事にひっくり返ったことになるのですが…。

 また、「A−B」得点しか差が出なかったのは、大村政男さんの論文のページの分析のとおり、本来の3者択一を2者択一にしてしまったのが原因かもしれません。そして、自己成就現象かどうかについては、渡邊席子(わたなべよりこ)さんの論文も面白いのでぜひ読んでみてください。 -- H10.5.13

32.gif (286 バイト)日本人はだんだんB型的になっている!?

 論文2の結論として、坂元さんは「日本人は『B型的』性格になりつつある」と述べています。この理由はなんでしょうか?

 準備として、「A−B」得点に関する上位・下位の各3項目を項目番号順にピックアップしておきます。

A型上位3項目

 6. ものごとにけじめをつける
11. くよくよ心配する
15. 何かをする時は準備して慎重にやる

B型下位3項目→A型的

 5. 気晴らしの仕方を知らない
11. くよくよ心配する
13. 人づきあいが苦手

B型上位3項目

 4. 物事にこだわらない
17. 気がかわりやすい
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう

A型下位3項目→B型的

 2. 目標を決めて努力する
 4. 物事にこだわらない
 9. 人に言われたことを長く気にかけない

 これらをA型得点とB型得点を増加させる方向で整理してみると、次のようになります。

A型得点を増加させる項目(は他項目の2倍の効果)

 5. 気晴らしの仕方を知らない
 6. ものごとにけじめをつける
11. くよくよ心配する

13. 人づきあいが苦手
15. 何かをする時は準備して慎重にやる

B型得点を増加させる項目(は他項目の2倍の効果)

 2. 目標を決めて努力する
 4. 物事にこだわらない
 9. 人に言われたことを長く気にかけない
17. 気がかわりやすい
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう

 結局、「日本人は『B型的』になりつつある」とは、B型得点を増加させる「目標を決めて努力する」を例外として除けば、次のようなことになります。

 まず、人に言われたことを気にかけず、くよくよと心配したりはしない。そして、物事にあまりこだわらず、気分の赴くとおり行動し、よく人付き合いをし、気晴らしをしてはしゃぐ。しかし、ものごとにけじめをつけたりはせず、何かをする時に慎重に準備したりもしない…。言葉を変えれば、「趣味に合った暮し」で「のんきに暮したい」ということになる…はずです。

  実は、これは日本の保守化現象らしいのです(となると、「自己成就現象」とは関係ないのでしょうか? はて?)。

 山本七平さんは、その著書の『これからの日本人』の中で、日本社会では伝統回帰と保守化現象が起きていると主張しています。彼の言う保守化とは、明治・大正・昭和への回帰のことではなく、江戸時代への伝統へ戻るということです。この行き方は、江戸時代末期の町人や下級武士、そして現在のの一般的サラリーマンの生き方なのだそうです。

 彼らは、明治が創作した武士道型人間でも志士タイプでもありません。そういうタイプは、高度成長時代の「企業戦士」に見られるというべきでしょう。つまり、テレビの時代劇でおなじみの「水戸黄門」や「遠山の金さん」や「暴れん坊将軍」ではなく、古典落語で長屋に住んでいる熊さん八っさんの世界ですね。(^^)

 山本さんによると、ぺリー来航の直前の嘉永11年に、ある下級武士が記した『三眼余考』には、次のように書いてあるそうです。以下は、『これからの日本人』からの抜粋です。

 すなわち「家に在りては父母に事(つか)え、妻子を養いて歓欣和楽することを教え、出ては君に事えて公事に黽勉(びんべん=精励)し、寵禄を荷い朋友に交りて談論をもし、相扶(たす)け相よろこび、民を治めてはその治教を施し、その租税を食(は)むの類、人なればこそこの楽しみもあるなれ。……飢えては食し、渇しては飲む。花に酔い月に歌い、衣服ありて寒暑にたえ、器財ありて用をなし、門戸ありて盗を防ぎ、堂室ありて雨露を避け、ここに寝(い)ね、ここに語りなどする類、楽にあらざるはなし」で、この状態で生涯を送り、ごく自然に死に至ることを理想としている。
 いわば「趣味に合った暮し」で「のんきに暮したい」であり、同時に「自然に従う」で「親孝行」「世間のしきたり」通りにすることであり、統計数理研究所国民性調査委員会の国民性調査では、以上の『三眼余考』的項目のすべてが支持増加になっている。

 となると、坂元章さんが主張している、「日本人は『B型的』性格になりつつある」ことは、起こるべくして起きた当然の現象であることになります。(^^) -- H11.11.27

【H16.10.25追記】

 念のため、心理学者の白佐俊憲・井口拓自著『血液型性格研究入門』から、坂元さん(この本では「山崎ら」)関係部分を引用します(太字は私)。
 この本は、心理学者にしては珍しく(?)、比較的中立的な立場に立った本です。

白佐俊憲・井口拓自さん 血液型性格研究入門 H5.5 川島書店 1,748円+税

最新刊ではありませんが、資料としてはベストの本です。平成5年までの文献や主張が丹念にまとめられています。

裏表紙からです。

「血液型と性格」はホットな論議の一つとしていまだ決着をみる気配はないが、「両者はほんとうに関係がないと言い切れるのか」という視点で二人の心理学者が共同して、これまでの研究や論述を丹念に見直してまとめたのが本書である。
血液型と性格をめぐる諸問題が、Q&A形式で45テーマに整理されわかりやすく解説されている。
血液型と性格の関係について関心をいだき、もっと深く知りたい、研究してみたいと思っている人々へのガイドブック。

 まず、165〜167ページからです。

Q.38 血液型性格関連説があげている特徴を検証した研究にはどのようなものがあるか

[中略]

 5)山崎らの妥当性検証の研究
 山崎賢治・坂元章は,1991年の日本社会心理学会第32回大会で,JNNデータバンクのデータを利用した分析について,「血液型ステレオタイプによる自己成就現象一全国調査の時系列的分析一」と題して発表している。
 JNNデータバンクのサンプルは全国の13歳から59歳までの男女から無作為抽出されたものであり,代表性のある信頼できるものである。JNNデータバンクの調査の中には,最高27個(年により変動)の性格特徴に関する質問項目が含まれている。これらは,特に血液型性格関連説の本から抜き出されたものではないようであるが,山崎らは大学生に対する予備調査で,その中から,次に示すような最もA型的と思われている3項目と最もB型的と思われている3項目を選び出した。
【A型的特徴】
 2.目標を決めて努力する。
 6.物事にけじめをつける。
 15.何かをする時には準備をして慎重にやる。
【B型的特徴】
 4.あまり物事にこだわらない。
 9.人に言われたことをあまりよく気にかけない。
 17.どちらかといえば気がかわりやすい。
 そして,これら6つの項目の1978〜1988年の11年間合計のデータに基づいて,A型者とB型者のみ(合計19,318人,A型者12,466人,B型者6,852人)を分析の対象としたところ,次のような結果となった。質問項目2以外の項目では,すべてχ2検定で有意な差がみられ,また差の方向も矛盾のないものだった。

項目 A型者 B型者 有意水準
28.0% 27.0%
40.6% 37.1% 1%水準
15 32.3% 28.6% 1%水準
32.9% 37.8% 1%水準
23.3% 25.3% 1%水準
17 18.1% 21.3% 1%水準

 (注:A型者,B型者の数字は肯定率を示す)
  これは,1980年代以降に日本の心理学者が行なった妥当性検証の研究の中では最も肯定派寄りの結果だといえるだろう。ただし,有意差がみられるといっても,上記の肯定率をみればわかるとおり,数千人のデータを集めなければ,検出できないほど微弱なものであり,「個々人単位に『▽型の人は△△だ』といった主張はできないと思われる」と,山崎らは述べている。また,このデータは自己報告によるものなので,ここで得られた有意差が本当に血液型と性格の間の関連を示すものなのか,あるいは認知の歪みなのか,という問題は未解決の問題として残されたとされている。(→Q43)
 JNNデータバンクのデータを用いた分析は松井豊(1991, →Q40)も行なっているが,分析方法が異なるため若干違った結果が得られている。

 200〜203ページでは、

Q.43 研究にあたって,既存の血液型性格関連説の影響をどのようにして避けるか

 既存の血液型」性格関連説の影響という問題は,おそらく日本特有の問題であるが,これは「血液型と性格の関係」を研究する場合に限らず,質問紙法による性格研究すべてに問題を投げかけているのではないだろうか。なぜならば,日本においては血液型性格関連説は広く浸透していると考えられるので,日本人を被験者として研究するとき,無視できないような数の人が,血液型,性格関連説の説くイメージに合わせて,自分の性格を認知しているおそれがあるからである(その影響の強さがどの程度のものなのかは必ずしも明確ではないが)。(→Q3)
 これをある程度裏づけるような研究も報告されている。山崎賢治・坂元章は,学会(1991, → p.165)において,「血液型ステレオタイプによる自己成就現象」を発表している。すなわち,11年間の全国調査データの性格項目の時系列的な分析から,相対的にみた場合,A型の人はよりA型的に,B型の人はよりB型的に変化していることが確認された。そして,「血液型性格学」のマスコミ活動に原因が求められるかもしれない,と述べている。つまり,マスコミなどを通じて,血液型性格判断に関する情報を繰り返し与えられているうちに,人々は,「自分は ○型だから△△という性格なのだ」と,いつのまにかそう思い 込んでしまって,血液型のステレオタイプ(血液型'性格関連説 のあげている特徴)に自分を合わせていったことが考えられる のである。
  山崎らの研究では,時系列的な変化の分析だけでなく,通常 行われるような各血液型者間の有意差を調べる形式の分析でも, 血液型性格関連説(実際には予備調査の被験者の各血液型者に 対するイメージ)の予想通りの方向に,A型者とB型者の間で 大きなものではないとはいえ,有意差が見いだされたことが報告されている(→Q38の5))。この有意差も「本当の血液型と 性格の関係」を表わしたものではなく,認知の歪みによっても たらされた可能性が指摘されている。
  ところで,性格は遣伝的な要素に環境的な要素が加わってで きあがるものだと考えるとき,日本において血液型性格関連説 が広く浸透していることは,まぎれもなく,日本人にとっての 環境的要素の一つとなっている,ということができる。
  また,自己報告型の質問紙調査の結果は,通常「その人の性 格そのもの」を表わすと受け取られている(「その人の性格」 ではなく,あくまで「その人の性格の認知」を表わすというふ うにもってまわった考え方は普通しない)。
 こうしたことから考えれば,山崎らの研究で得られたA型者 とB型者の間の有意差は,少なくとも日本においては「血液型 と性格は多少なりとも関係がある」という証拠として受けとってしまってもよいことになってしまうのではないだろうか。つまり,おかしな話ではあるが,日本においては,血液型は「遺伝的要因」としてよりも,むしろ「環境的要因」として強く働 いている,というわけである。
  しかし,これは血液型性格関連説が一般に広く広まってしま ったという特殊事情を持つ日本だけに起こったことであり,真 の血液型と性格の関係を調べるには,血液型性格関連説の影響 をできるだけ少なくするために,結果を血液型性格関連説の内 容を知っている者と知らない者とに分けて分析するなどの配慮 が必要であろう。
  そのためには,まず血液型性格関連説の影響度を測定する尺 度についての研究が必要だといえるかもしれない。例をあげれ ば,「あなたは,血液型性格判断(血液型`性格学・血液型人間学)を知っていますか」などと質問し,「よく知っている」, 「かなり知っている」,「少し知っている」,「ほとんど(まった く)知らない」の四つに分けて回答を求める。そして,「よく 知っている」と「かなり知っている」を合わせて「知っている 者」とし,「少し知っている」と「ほとんど(まったく)知らない」を合わせて「知らない者」として処理することなどが考 えられる。
  血液型性格判断(血液型性格学・血液型人間学)を「信じて いるか」と「信じていないか」で分ける方法も考えられるが, 単純に,信じていれば血液型,性格関連説の影響が大きい(血液 型性格判断を知っている), 信じていなければ影響が少ない (血液型性格判断を知らない), とみなせるかどうかはわからない。この場合,「わからない」という回答も併せて用意し, これを血液型性格関連説の影響が少ない(血液型性格判断を知らない)者とし,「信じている」も「信じていない」も影響が大きい(血液型性格判断を知っている)者とするのなら,ある程度妥当な分け方といえるかもしれない。

12.gif (321 バイト)論文3

 論文1と2のまとめ(英語)が公開されています。

 2月15日付の Scientific American の記事(個人のブログ)を読んでいたら、以前お世話になったお茶大の坂元章さんの論文が紹介されていたので読んでみました。

Sakamoto, A., & Yamazaki, K. (2004) Blood-typical personality stereotypes and self-fulfilling prophecy: A natural experiment with time-series data of 1978-1988. In Y. Kashima, Y. Endo, E. S. Kashima, C. Leung, & J. McClure (Eds.), Progress in Asian Social Psychology, Vol. 4. Seoul, Korea: Kyoyook-Kwahak-Sa. Pp. 239-262. (pdf)

 ここでも、自己成就現象と断り書きがあるのを割り引くとしても、統計的に差があると明確に結論付けていることです。

This indicates that blood-typical personality stereotypes actually influenced the personalities - self-reported personalities, at least - of individuals, and that they also operated as a self-fulfilling prophecy, although the greatness of that influence could be discussed.

 英語だから、日本では話題にならなかったのでしょうかね?

 以前にこの論文を読んでいれば、私も苦労しなかったのですが。
 いずれにせよ、統計的に差があるかどうかの論争は、既に決着済み(だった)と言っていいでしょう。

 ちなみに、このScientific American の記事には、私のサイトも(批判的に・苦笑)紹介されています。 -- H23.8.22


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最終更新日:平成23年8月22日