昔から、私の主張がわかりにくい、という意見を少なからずいただいていました*1*2。
意外に思われる方もいるかと思いますが、本当は私自身の主張というべきものはありません!
ただ、心理学者が血液型と性格は「関係ある」というデータやロジックを地道に調査し、その結果を皆さんに公開してきただけです。
要するに、心理学者の否定論の否定です。
ただ、これじゃわかりませんよね。(笑)
そこで、読者サービスとして、最重要なポイントを書いておきましょう。
私の主張は、強いて言うなら次のことです。
1.血液型は性格に「ある程度」の影響を与える。
2.それは、数パーセント〜10パーセント程度以上(新奇性追求傾向と関係がある遺伝子D4DRと同程度以上)である。
3.質問の回答率の差ということなら、10〜20パーセント程度以上となる。
次に、なぜこのページをリニューアルしたのか、簡単に理由を説明しておきます。
私のサイトを一読すればわかると思いますが、別に血液型で有名になろうと思っているわけではありません。
ですので、それでいいやとず〜っと思っていたのですが、つい最近、ショッキングな事実を知ることになりました。(*_*)
実は、「血液型と性格」について、ある程度正確に理解している人は、予想外に少ないのです。
もちろん、全部を正確に理解している人なんてほとんどいませんし、そんなことは期待していません。そうではなく、基本的な考え方や、ポイントを理解している人が、予想外に少ないのです。
もう1つショックだったのは、能見正比古さんを知ってる人が、どんどん少なくなってきているということです。
能見正比古さんといえば、誰もが知っている「血液型と性格」のパイオニア、と思っていたのですが、どうも最近はそうでもないようです。
というのは、彼が亡くなったのは昭和56年なので、既に20年以上が経っているからです。
20代以下や30代前半の読者は、リアルタイムで読んでいないのですから、彼を知っている人の方が少ないと考える方が自然でしょう。
これではいけない、と思って入門用に作ったのがこのページ(そして「血液型と性格」の原点、FAQ、大きな差?小さな差?)です。
そこで、特に心理学や統計の予備知識がなくとも読める(?)基本編と、少しマニアックな応用編の2部構成にしてみました。
では、ABOFAN10年の集大成を楽しんでいってください。(ちょっと恥ずかしい・苦笑)
*1 Special Thanks to 新・血液型性格診断のO型管理人さん
m(._.)m
*2 最近では、kikulogでの議論
【各国の本の紹介】 |
続金健(xu
jinjian)さん ABO在中国 百年血型再発見 黒龍江人民出版社 中国初の血液型人間学の本らしいです。 中国・香港・台湾では、何十冊も血液型と性格の本が出版されています。 2002年 |
ダダモ博士のNEW血液型健康ダイエット H16.3 集英社文庫 血液型が性格に影響を与える医学的な根拠が詳しく書かれています。 この本は間違いなくオススメですから、ぜひ買って読んでみましょう! 惜しいことに、この本にはちょっとした間違いがあります。 人類最初の血液型はO型ではなくA型なのです! |
||
ドイツの「血液型と性格」の本で中国語にも翻訳されています von Jörg Eikmann Was die Blutgruppe verrät(血液型は、何を裏切るのか) 2002年 |
フランスの女性心理学者が出版した「血液型と性格」の本 Leone Bourdel Les Temperaments Psychobiologiques. Paris, Librairie Maloine S.A., 1961 in-8 |
H20.8.31作成 H21.1.25更新 |
【内容の要約】 時間がない人のために、内容を要約しておきます。 《私の主張》 私の主張は実に単純です!
〔ご注意〕心理学的に「血液型と性格に関係がある」といっても、まだ科学的な根拠
(医学的・生理学的なメカニズム)は発見されてはいません! 《基礎編》
《応用編》
|
一番はじめに、「血液型と性格に関係がある」とはなにか、定義を明確にしないといけませんよね。実は、この定義で引っかかるケースが意外と多いのです。肝心なところですので、かなり面倒ですがある程度詳しく説明しておきましょう。 少しガマンして読んでみてくださいね。
ここで一番のポイントは、私がホームページを開設しているのは、「心理学者に正しいと認めてもらう」のが最大の目的だということです。従って、いくら私自身が正しいと思う方法や データでも、心理学者に認められないものは、(少なくとも議論の材料としては)不採用としています。
さて、「血液型と性格」では、心理学者もいろいろな手法を使っていますが、ここでは、正確を期すために、心理学者の説明を引用しておきます。定番の本からの引用です。
白佐俊憲・井口拓自さん 『血液型性格研究入門』 151〜152ページ
「血液型によって性格は異なる」という血液型性格関連説の妥当性を検証・確認する方法には、次のようなものが考えられる。
1)血液型性格関連説の特徴を検証する方法
この方法は、血液型関連説の主張者があげている各血液型の性格特徴を項目とした調査票(尺度)を作成し、これがそれぞれの血液型者に、他の血液型者と区別する形で該当することを確認するものである。
私も最初は、このように、能見正比古さんに代表される『血液型人間学』の研究結果をそのまま使おうと思いました。多くのデータが公開されていることもありますし、また、追試をするというのが一番ポピュラーな検証方法ですからね。しかし、いくつかの心理学の文献を読んでみたところ、少なくとも、心理学者との議論では、残念ながら、これらのデータが全く使えないことが判明します。
なぜなら、心理学者からは『血液型人間学』のデータの信頼性が問題だと指摘されているからです*1。私は、応用編で後述するように特に問題ないと考えているのですが、 議論の相手が認めない以上、『血液型人間学』のデータに固執しては「心理学者に正しいと認めてもらう」という目的が達成できません。
ですので、この方法は、涙を飲んで断念しました。返す返すも残念です。(T_T)
他の方法としては、心理学の性格検査を使うという方法があります。
同書 153ページ
2)性格検査によって差異を検証する方法
この方法は、既存の性格検査(その多くは標準化がなされている)を適用し、血液型によって性格に違いがあることを検証・確認しようとするものである。
この方法は、データが心理学者だけで完結するので、特に問題がなくOKです。v(^^)
ですので、私は、主にこの方法を採用しています。
実は、もう1つ方法があって、
同書 153ページ
3)既存の説にとらわれないで探索的に調べる方法
この方法は、血液型性格関連説の主張者が最初に行った研究と同じ水準に立ち戻って白紙の状態から出発する、いわば探索的・基礎的研究である。
この方法を採用してもいいのですが、他との比較が難しい、つまり再現性のチェックに難がありますので、私は採用していません。
*1 読者のアンケート結果では、データが信用できないからというのが主な理由ですが、それなら心理学者のデータだって、その多くは心理学の授業に出席した学生のデータなのだから、似たり寄ったりだと思うんですが…。
H20.8.31作成 |
【参考】別な説明 別な心理学者、例えば、渡邊芳之さん[帯広畜産大学]は血液型と性格の関係を否定する『現代のエスプリ〜血液型と性格』に、こう書いて います(188〜189ページ 『性格心理学は血液型性格関連説を否定できるか〜性格心理学から見た血液型と性格の関係への疑義』 太字は私)。
ですから、心理学では、「血液型と性格」の研究に「性格検査」を使うのが一般的だと言っていいでしょう。 なお、渡邊芳之さんが危惧している、性格検査の妥当性についてですが、応用編を読めばわかると思いますので、どうぞお楽しみに。(^^) |
ではまず、基本編から行きましょう。これだけで、私の基本的な考え方がわかるように書いたつもりです。
興味がある方は、ちょっとマニアックですが、応用編もどうぞ!
次に、これまた少々面倒なのですが、血液型について説明をしておきましょう。「血液型と性格」の定義ですからガマンしてください。
私がメインに使っているABO式血液型は、皆さんもよく知っているように、O型、A型、B型、AB型の4種類があります。
ABO式血液型は、赤血球の血液型なのに対して、骨髄移植のときに問題になるHLAは白血球の血液型です。
血液型は何十種類も発見されていて、赤血球の血液型では、ABO式の他にRh式、P式、MN式、Q式、Lewis式などが有名です。
ABO式血液型は、赤血球の中にある物質ではなくて、赤血球の表面にある糖鎖*1で決まります。
赤血球の表面の写真を見ると――お見せできないのが残念ですが――びっしり毛のような形の糖鎖が生えています。これらの糖鎖の最末端の糖は、血液型によって違うため、抗原としての働きをしているのです。
血液型というから、てっきり赤血球に含まれる物質が違うと思うかもしれませんが、実はそうではありません。要するに、赤血球の生化学的性質(抗原抗体反応)が違うということ なのです。
また、A型の赤血球表面にはA型とO型の糖鎖がほぼ同数、B型ならB型とO型の糖鎖が同数、AB型ならA型とB型とO型の糖鎖がそれぞれ同数、O型のみO型の糖鎖が存在 しているのだそうです。
つまり、どの血液型でもO型の糖鎖は存在する*1ことになります。なお、学術的には、O型の抗原はH抗原と言います。つまり、ABO式血液型は、A型、B型、H型の糖鎖による抗原があることになります。
ところで、ABO式血液型物質は、一番最初に見つかったのは血液中ですが、実際には体中のほとんどの組織に存在しますから、血液型というよりは体質型といった方がいいのかもしれません。
なお、私のホームページで「血液型」と言った場合、特に断りがない限りABO式血液型のことです。この理由も簡単で、一番文献が多い*2からです。
*1 ごくまれに、O型の糖鎖さえ存在しない血液型があります。インドに多いので、ボンベイO型(Bombay
O)と呼ばれていますが、どんな性格なのかはわかりません。(笑)
*2 例は少ないですが、他の血液型でも研究はされています。例えば、R.B.キャッテルの研究では、P式などに有意な差が出ています。
■血液型物質(糖鎖)を構成する糖
D-ガラクトース − N-アセチルグルコサミン − D-ガラクトース − N-アセチルガラクトサミン | L-フコース
N-アセチルガラクトサミン − D-ガラクトース − N-アセチルグルコサミン − D-ガラクトース − N-アセチルガラクトサミン | L-フコース
D-ガラクトース − D-ガラクトース − N-アセチルグルコサミン − D-ガラクトース − N-アセチルガラクトサミン | L-フコース
H20.8.31作成 |
実は、性格の定義は一番の難問です。
なぜなら、「性格」は、血液型とは違い、科学的な実体が解明されていないからです。
しかし、そんなことを言ってもはじまりませんし、心理学者との共通の前提がないと全然議論になりません。
ですので、私のホームページでは、性格心理学*1の定義する性格を、一応正しいものとして扱うことにします。
実は、性格心理学での性格の定義もいろいろあるのですが、はじめに書いたように、ここでは心理学の性格検査(心理テスト)のデータをメインに扱う*2ことにしましょう。 つまり、もっとも一般的な心理学の手法をそのままそっくり使う、ということです。
日本では、YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)、世界的にはNEO−PI−Rという性格検査が有名ですので、基本的にこれらのデータをそっくりそのまま使うことにします。これで、数値化もバッチリですので、統計的検定のためのデータとしても申し分ありません。
しつこいようですが、これらは「心理学者に正しいと認めてもらう」というのが最大の目的なので、そのために私が便宜的に採用した方法です。決して、性格検査が万能だ とか、性格検査は絶対正しい、と考えているわけではありませんので、念のため。
以上で、性格の定義は終了です。
*1 最近は「パーソナリティ心理学」というらしいですが…
*2 その理由は簡単で、血液型と性格について、一番文献が多いことと、比較的結果が数値化しやすいからです。
H20.8.31作成 |
「血液型」「性格」の定義がやっと終わりました。ふぅ。
意外と面倒だと思った人も多いかもしれません。そう、一見簡単なものでも、きちんと定義するのは意外と面倒なのです。
では、最後の定義ですので、ぜひ頑張って読んでみてください。
「関係のあるなし」を議論するためには、普通は統計的検定を使います。これはどういうものかというと、何かが偶然で起こる確率が5%以下*1なら、それは 「まぐれや偶然じゃない」、と判定するという「お約束」です。
血液型の場合も、単なる偶然で、性格検査データの差が生じる確率が5%以下なら、「関係がある」と判断する*2よ、ということになります。
ということは、本当は関係がないのに、5%の確率で「関係がある」と間違うんじゃないの、という質問があるかもしれません。
確かにそのとおりです!*3
しかし、全く逆のことも言えます。本当は「関係ある」のに、偶然で差が小さくなってしまい「関係ない」と判断されることもあるのです*4。
なんかヘンだと思う人もいるかもしれませんが、統計的検定では、このように、習慣として5%で「関係のあるなし」を判断することになっています。 多くの心理学の研究でも、この「5%ルール」を採用しています。
当然のことですが、私もこの5%のルールを採用することにします。
*1 普通は慣習的に5%を使いますが、場合によっては1%にする場合もあります
*2
じゃあ、5%以上なら、「全く関係ない」のかというと、そうではありません。あくまでも「関係あるとは言えない」です。「全く関係ない」を証明するのは、すべての性格特性について「
関係ない」ことを証明しないといけないので、事実上不可能だからです。
*3 これをタイプ1エラーといいます
*4 これをタイプ2エラーといいます
H20.8.31作成 |
【参考】もう少し詳しい説明 偶然でない差を、統計では有意差(意味のある差)といいます。また、このように「関係のあるなし」を間違う確率は5%ですから、この5%を危険率、または有意水準と言います。 ところで、統計的検定では、普通とはちょっと違った考え方をします。 最初から差があるかどうか調べることはしないのです。 統計的検定をする場合は、まず「差がない」という仮説を立てます。この仮説は、望まれてない仮説のため、「帰無仮説」(なくしたい仮説という意味)と言います。そして、実際に差が出る確率を計算したところ、偶然ではない確率が5%以下の場合は、めでたくこの仮説は間違っていることがわかったので、「差がある」といえることになります。これを、帰無仮説が棄却されたと言います。 念のため、5%は「お約束」ですので、これだけに頼ってすべてを判断するということは普通はしません。あくまで、他のデータなど併せて、判断の参考にするというのが本来の使い方です。 それと、統計的検定を使う場合、2つほど注意点があります。 〔注意点1〕 サンプル数 血液型による性格の差は案外少なく、せいぜい10〜20%程度しかありません。普通に使われる統計的手法(χ2検定)では、この程度の差の場合、最低でも数百人、通常は千人以上のデータでないと意味のある差は出ません。χ2検定を使っている研究報告の場合、サンプル数が100〜200人では、はじめから差が出ないのが当然なのですから要注意です。 〔注意点2〕 ランダムサンプリング 統計学の理論では、サンプルがランダムサンプリング(無作為抽出)でないといけないことになっています。しかし、現実には、厳密な意味で、ランダムサンプリングのデータというのは、心理学者のデータでもごくごく例外です。というのは、ランダムサンプリングを行うと、膨大な予算が必要になるからです。そのせいかどうか、現実の心理学者のデータは、その多くが自分の心理学の授業に出席した学生をサンプルとして使っています。どう考えたって、こういうデータはランダムサンプリングではありません。しかし、私は、この手のデータは、心理学者に認めてもらえそうだと判断し、そのまま採用しています。逆に、血液型本の読者のデータは、心理学者に認めてもらえそうもないので採用していません。(^^;; |
以上の定義を総合すると、「血液型と性格に関係がある」とは、結局、次のようなことです。
心理学者の研究で得られた、性格検査のデータに統計的検定を行い、有意差があれば「血液型と性格に関係がある」と判定する、ということになります。
いやいや、どうもお疲れ様でした。
繰り返しになりますが、これらは「心理学者に正しいと認めてもらう」という目的のため、私が便宜的に編み出した方法です。決して最善の方法だと考えているわけではありませんので、念のため。
そのため、厳密に言うと、「性格検査」とはいえないものまで、データに含めていることもあります。
しつこいようですが、私の判断基準は「性格検査」かどうかではありません。あくまで、「心理学者に正しいと認めてもらう」こと が基準になります。従って、性格検査でなくとも、心理学者に認めてもらえそうなデータは使ってますし、逆に認められそうもないデータは不採用としています。
H20.8.31作成 |
例えば、「関係がある」という判定方法です。
普通は、有意差があった→関係ある、ということになります。
すると、危険率5%なら、タイプ1エラー(本当は関係がないのに、関係があると判定する間違い)は当然5%あるわけです。
ということは、何十項目もの結果を検定すれば、1つや2つはタイプ1エラーで、偶然に有意差が出ることはあるわけですね。
だから、否定論者は、有意差が出た項目は、すべてタイプ1エラーだと主張します。
しかし、これは間違いです。
血液型別の性格特性と照合すればいいのです。
その結果、どのぐらいが一致した(当たった)かどうかチェックすれば、結果は一目瞭然です。
もし、血液型別の性格特性と一致するのであれば、それは偶然ではありません。“正しい差”が検出されたことになります。しかし、一致しなければ、単なる偶然ということです。
現実には、多くは血液型別の性格特性と一致するはずです。理由は、その3を読んでみてください。
H20.8.31作成 |
もう1つ、バーナム効果の話があります。
バーナム効果とは、その質問項目が「誰にでもよく当てはまる」から、当たったように見えるという効果です。
否定論者は、よく「だから血液型は当たったように見えるのだ」と主張します。
しかし、考えるまでもなく、これはおかしいのです。
例えば、よくいわれる「A型は神経質」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は二重人格」…というのがあります。
(もっとも、私はこれらの性格特性が必ずしも正しいとは思っていません)
では、これらは、「誰にでもよく当てはまる」から当たったように見えるのか?
まさか、いくらなんでも、真面目にそう考えている人はいないでしょう!
H20.8.31作成 |
もう1つの典型が、自己暗示*1*2*3です。
その2にも書いた「A型は神経質」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は二重人格」…というのがあります。
否定論者は、当たったように見えるのは、自己暗示のせいだと主張します。
(この時点で、既に「バーナム効果」とは矛盾するのですが、なぜか彼らは矛盾とは考えていないようです。説明するまでもありませんが、「誰にでもよく当てはまる」性格特性なら、自己暗示なんか意味がありませんから不要です)
ところで、普通の性格検査(例えばYG性格検査)では、「自己暗示」の効果を排除することができません。
つまり、「A型は神経質」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は二重人格」…と思っている人の性格検査の結果は、そのとおりの結果になるはずということです。
実際、データを調べてみると、まさしくそのとおりになっています*4(当然ですね)。
しかし、彼らは、なぜかこの結果も認めようとしません。
以上3つほど代表例を書きました。
考えてみれば、特別難しいことではなく、単純なことですよね。
*1 最近のアイシェアの調査結果によると、だいたい 日本人の7割が「血液型と性格は関係している」と考えています(2008.6.5付)。なお、この割合は、昔からほとんど変わっていません。
*2 2007年12月30日付「中央日報」 国民の48% 「血液型と性格関係ある」
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=94321&servcode=400§code=400
韓国国民は、「血液型が性格に影響を及ぼす」という意見が「及ぼさない」という意見に比べ多いことが明らかになった。
SBS(ソウル放送)ラジオは29日、世論調査機関であるリアルメーター(イ・テクス代表)に依頼し、血液型と性格の相関関係について調査した結果、回答者の半分近くの48.2%は「関係がある」と答え、「関係がない」と答えた回答者は、33.4%だったと明らかにした。…
この調査は18日、全国の19歳以上の男女500人を対象に電話で調査された。
*3 呉坤和さん(台湾高雄県)による研究結果(2005年)
調査の対象者は、台湾第2の都市である高雄市の高校2年生から約3000人が選ばれました。
血液型の本を読んだことがある人が75%、血液型と性格が関係あると思っている人が66%ですから、日本とだいたい同じような状況と考えていいでしょう。
元のデータは次の通りです。
Table 1 [抜粋]
Books b Yes 2489 No 851 Belief c(信念) Yes 2175 No 1137 a [省略]
b Reponses to "Have you read any books about blood type and personality?"[血液型の本を読んだことがあるか]
c Reponses to "Do you believe there is a relationship between blood type and personality?"[血液型と性格は関係あると思うか]
*4 ただし、種々の理由で、必ずしも有意差があるデータばかりではありません。その理由はこれから説明します。
H20.8.31作成 |
詳しくはDIMSDRIVEの血液型アンケートをどうぞ!
〔注意点1〕のくり返しになりますが、血液型による性格の差は案外少なく、せいぜい10〜20%程度しかありません。
普通に使われる統計的検定(χ2検定)では、この程度の差の場合、最低でも数百人、通常は千人以上のデータでないと意味のある差は出ません。つまり、χ2検定を使っている研究報告の場合、サンプル数が100〜200人 程度では、はじめから差が出るはずがないのですから要注意です。有意差が出ていないという研究報告を読む場合は、その結果を信じる前に、検定方法とサンプル数に十分注意する必要があります。
実際、数百人以上のサンプルのデータは、意外と少ないのです。つまり、大半の研究報告で、有意差が出ないのは“正常”なことなのです。ただし、有意差が出ていなくとも、注意深く見るとある程度の傾向はつかめるので、興味がある人は要チェックです。
ところで、差が出ないのは別な理由もあります。
が、少々難しくなるので、応用編で説明しようと思います。
興味がある方は、ぜひ応用編にトライしてみてくださいね。(^^)
H20.8.31作成 |
以上、心理学者が認める手法とデータのみを使って、血液型と性格に関係があることを検証してみました。
基礎編の結論は、よくある間違い〔その3〕にも書きましたが、繰り返して書いておきましょう。要するに、こういうことです。
普通の性格検査(例えばYG性格検査)では、「自己暗示」の効果を排除することができません*1。
つまり、「A型は神経質」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は二重人格」…と思っている人の性格検査の結果は、そのとおりの結果になるはずということです。実際に、データを調べてみると、まさしくそのとおりです。
もっとも、サンプル数が少ないなどの理由で、有意差が出ていない場合も少なくありません。ただ、注意深く観察してみると、傾向が現れているのは事実です。単なる誤差ではありません。
(となると、今までの心理学の研究で、否定的な結果が得られたものは、どうなるのかなぁ…)
今まで読んできておわかりのように、少なくとも基礎編に関する限り、決して私独自の分析やデータがあるわけではありません。というか、それではおかしいのです。私自身は、極めてオーソドックスな心理学の手法を使っただけだと信じています。
感想はいかがですか?
*1 実は、「A型は神経質」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は二重人格」…は必ずしも「自己暗示」のせいだけではありません
H20.8.31作成 |
そこで、基礎編のまとめとして、実際のデータを見てみることにしましょう。
割と最近、といっても2004年12月のことですが、有名な否定論者の大村政男さん [日本大学名誉教授]が、テレビ*1で研究成果を発表し「血液型と性格は関係ある」と 明言してから、心理学の“定説”がすっかり変わってしまいました。血液型と性格に関係があるかどうかはともかくとして、統計データでは血液型によって差があるという報告が主流(12件中6件…2005年以降の国内の主な心理学会)になってきています。*2*3
つまり、私の主張と同じになったということです。v(^^)
代表的なものを、海外の論文も含めて4つほど紹介しておきます。
*1
平成16年12月28日 TBS 19:00〜20:54 ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント!本当の自分&相性探し来年こそは開運SP!
*2 もっと詳しい情報は、心理学者の反応にありますので、興味がある方はどうぞ。
*3 実際には、それ以前のデータでも、次のデータ編にあるように差が出ています。
H21.11.14作成 |
念のため、実際のデータも調べてみましょう。
ここで注意しなければならないのは、必ずしも差は「統計的に有意ではない」ことです。
その理由としては、
従来の研究は(1)サンプル数が少なかった[(2)(3)は略]、などにより血液型と性格との関係を見いだせなかったのかもしれない。
山崎賢治・坂元章 1991 血液型ステレオタイプによる自己成就現象−全国調査の時系列分析− 日本社会心理学会第32回大会発表論文集
とあるように、たぶんサンプルが少ないからでしょう。
試しに調べてみた「A型は神経質」「B型はマイペース」「B型はけじめをつけない」は、予想どおりの結果となりました。v(^^)
■A型は神経質?
1. 大村政男 1993 *1
YG検査の12尺度のkey answerに対する血液型者別肯定回答数(%) →最高値が赤 →最低値が青
N(神経質) O
A
B
AB
男子(122)
45.7
53.6
39.1
50.9
女子(109) 43.1
50.2
35.0
45.0
合計(231) 44.1
52.0
37.2
48.1
2. 松井豊 1985 *2
表4 血液型別の性格尺度得点の平均 注1) →最高値が赤 →最低値が青
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)神経質
5.47 5.69 5.65 5.66 F=<1
注1)各尺度得点は1点から11点まで分布し、得点が大きいほどその性質が強いことを表している。
■B型はマイペース?
1. 松井豊 1985 *2
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 7. 人にしばられ、抑制されたりするのはきらいである
86.8 86.2 92.0 88.2
2. 白佐俊憲 1999 *3 【サンプルは約2,000人】
35. 束縛を嫌うマイペース型である。
有意差の検定結果 1%, B型>A型
■B型はけじめをつけない?
1. 松井豊 1985 *2
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
55.5 53.3 47.1 55.9
2 .松井豊 1991 *4 【サンプルは毎年約3,000人】
6. ものごとにけじめをつける →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差S55
38.2 39.2 36.6 42.7 6.1 S57
41.6 41.2 37.0 44.9 7.9 S61
36.5 38.9 35.6 37.4 3.3 S63
39.3 39.5 35.0 39.0 4.5 平均
38.9 39.7 36.1 41.0 4.9
*1 大村政男 1993 「血液型気質相関説」と「血液型人間学」の心理学的研究II 日本大学研究紀要 第46号 pp115〜155
*2 松井豊 1985 血液型ステレオタイプについて 東京都立大学人文学報 第44号 pp15〜30
*3 白佐俊憲 1999 血液型性格判断の妥当性の検討(2) 北海道女子大学短期大学部研究紀要 第36巻 pp1〜18
(浅井学園大学)
*4 松井豊 1991 血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 第24巻 pp51〜54
H21.11.14作成 |
では、早速応用編に行きましょう。基礎編と違って、いよいよABO FANの本領発揮というところです。v(^^)
ある程度マニアックな説明になりますので、少々覚悟していてください。(笑)
結論を先に書いておくと、心理学者の主張は、「小さな差」*1でよい「血液型と性格」は黙認か肯定、「大きな差」*2が必要な「血液型性格判断」は否定、という のが現在の基本スタンスです。
念のため、心理学者の主張を引用しておきます。ここでは、信州大学准教授[心理学]の菊池聡さんに登場していただきましょう。
菊池聡さん 「自分だまし」の心理学 祥伝社新書121 H20.8
これまでも、多くの心理学者が、比較的きちんとした性格テスト手法に基づいて、血液型によって人や適性や行動に、血液型性格論者が言うような診断力のある差異が見いだせるかどうかを研究しています。しかし、そこには、信頼性と再現性がある差異は見つかっていません。いわば、血液型で人を見分けることができるというのは、ただの「錯覚」だということなのです。(86ページ 太字は私)
岐阜県産業技術センター(2007/4/19)資料(太字は私)
3.血液型を考える
実のところ、原理的には血液型と性格に関連があってもいいし、性格が大きく四つに分類されてもかまわないのです。血液型性格判断が誤りである理由は、あくまでも血液型から性格が判断できるほどの強い関係は発見されていないからです。性格「判断」に使えない程度の弱い関係はあってもよい。いや、原理的には強い関連があってもよかったのですが、それは心理学者の研究によって否定されたということなのです。
*1 「小さな差」とは、延3万人のランダムサンプリングのデータで差が出た坂元データのことを指しているものと思われますが、今回紹介した両・菊池さんが具体的な文献を示していないため、詳細は不明です
*2 「大きな差」の具体的な定義、例えば○パーセントの差とか、私が調べた限りどこにもないので、現時点では不明です
H20.8.31作成 H20.9.4変更 |
【参考】 ただ、このように「小さな差」「大きな差」を区別するのは、かなり例外的な話のようです。心理学統計の教科書では、こうあります。
ですから、普通の心理学統計では、「小さな差」というのは、「関係ある」ということになるはずなのですが…ちょっと不思議です。(?_?) |
しかし、最近の研究報告を読んでみると、なぜ「大きな差」が出ないのか、徐々にその理由が明らかになってきたようです。
やや専門的な話になりますので、以下の「参考」の部分は、読みたくない人は読みとばして構いません。実は、検査のデータを統計的検定でどう扱うかに関係するので、少し詳しく書いています。 ポイントは、多くの性格検査の性格因子(尺度)は、性格に関する言葉を因子分析して得られた結果、ということです。
柏木繁男さん 性格の評価と表現 特性5因子論からのアプローチ
【参考】性格検査の説明(太字は私) ■YG検査 矢田部ギルフォード性格検査(YG検査)は、日本で最もポピュラーな性格検査の1つです。 この性格検査は、アメリカのギルフォードらが作成した3種の性格検査を下敷きに、矢田部達郎らが作成した性格検査で、測定可能な全12尺度は、性格に関係する単語をピックアップし、因子分析を使って導出しています。 12尺度は、各10項目(ですから全部で120問)から構成されています。この12尺度は、D(抑うつ性)、C(回帰性)、I(劣等感)、N(神経質)、O(主観性)、Co(協調性)、Ag(攻撃性)、G(活動性)、R(衝動性・のんきさ)、T(思考的外向)、A(支配性)、S(社会的外向)です。質問の回答は、「はい」「いいえ」「どちらともいえない」の3つから選択します。 また、この12尺度を分析することで、A型(平凡型)、B型(非行型)、C型(沈静型)、D型(適応者型)、E型(ノイローゼ型)の5タイプに性格を分類することができます。 日本では歴史がある検査であるため、信頼性、妥当性については定評があります。が、質問が120問しかないので、調査時間を短くできる反面、回答者の主観を排除できないという欠点があると言われています。最近 になって、世界的にビッグファイブ理論が主流になるにつれ、12尺度の妥当性に疑問が持たれています。 まあ、この検査は、昔ながらのものですし、受けたこともある人も多いと思いますので、説明はこのぐらいで。 ■NEO−PI−R 次に、日本では、なぜかあまり有名ではない(?)ビッグファイブ、そして世界的に使われているNEO−PI−Rについてちょっと説明しておきます。 ビッグファイブ理論というのは、人間の性格というのは大きく分けて5つの性格因子で説明できるという性格心理学の理論です。手元の丸善の『心理学辞典』ではこうなっています。
この因子分析というのがミソで、ビッグファイブは言語や民族を超えた普遍性があるとされています。実際に、因子分析の結果は安定しているらしいです。もっとも、全く同じではなく、軸は少しずれているらしいのですが、安定していることはどうやら間違いないようです。なんか面白いですね。(^^) ちなみに、ビッグファイブの内容は研究者によって少しずつ違います。というのは、性格因子を決めるのが因子分析なので、演繹的に因子の導出をしているからです。これは、実際に何かの因子分析をやったことがある人ならすぐ納得できるでしょう。
NEOというのは、もちろん英語の3つの性格因子の頭文字を取ったものです。もともとのNEO Five-Factor Inventory(NEO-FFI)は60項目だったのものを240項目に拡張したのがNEO−PI−R(NEO Personal Inventory Revised)です。この場合、ビックファイブの1つの因子に対して6つのファセットが定義されており、2階層構造をつくっています。つまり、全部で5×6=30の特性が存在しているのです。 では、NEO−PI−Rの特性5因子と30のファセットを掲載しておきます(柏木繁男さん 性格の評価と表現 特性5因子論からのアプローチ H9.3 有斐閣 114ページ)。
■性格特性の違い 因子分析による性格特性は、一般の人が考えているものとは違います。 単刀直入に言えば、一般の「神経質」と性格検査の「神経質」は違うのです。細かい説明は省力しますが、因子分析を使って性格尺度を作成した性格検査(直交変換や斜交変換をしたもの)は、すべてそう なのです。 性格検査の説明をよく読まないと間違いがちですので、「血液型と性格」で取り扱う場合も要注意です。 |
では、性格検査作成に因子分析を使うと、どういう問題が生じるのでしょうか?
H20.8.31作成 |
性格検査を使って血液型による差をチェックする場合の問題点は、大きく言って2つあります。
1つは、因子分析を使って作成された性格検査では、結果として、血液型により大きな差が出る(と思われる)質問項目が“異常値”としてカットされてしまう(可能性がある)という問題です。
誰が考えても、血液型により大きな差が出るのは、「極端な感情表現の印象語や評価語」に決まっています(笑)。血液型は、極端な状況ほど差が大きく出ますからね。しかし、それらが(根こそぎ?)カットされてしまったようですから、思っているほど差が出ないのは当然ということになります。
H20.8.31作成 |
【参考】『性格の評価と表現』からの引用@(太字は私) 140ページですが、
はぁ、なるほどねぇ。因子分析だから簡単と思ったら、そうでもないのですね。 しかし、これで血液型で差が出ない理由の一端がわかったようです。
血液型により大きい差が出るのは、「極端な感情表現の印象語や評価語」に決まっています(笑)。それがカットされてしまったのですから、思っているほど差が出ないのは当然です。 |
それだけではなく、2007年には、性格検査の1つ1つの質問項目では差が出ていたものが、いくつかの性格特性に集約すると差が相殺されて消滅する現象が存在することが明らかになりました。具体的には、ビックファイブに基づく性格検査であるNEO−PI−Rのファセットを5因子に集約する段階で、差が相殺されて小さくなる、あるいはほとんどなくなってしまうという現象が存在することが明らかになったのです。これでは、「診断力のある差異」なんか問題外ですね。
実は、この現象は、私もある程度の予想はしていました。
経験者ならわかると思いますが、血液型による性格の影響は、意外と複雑ですから一筋縄ではいきません。はたして、心理学の5因子だけで正確に分析できるものか、私はかなり危惧していました(渡邊芳之 さん[帯広畜産大学]も同様です)。しかし、残念ながらデータがありません。データがなければ、当然のことながら、私は何も言えません。(*_*)
ところが、1年ほど前に、(なんと!韓国から!)この現象が存在するという研究結果が発表されたのです[原文は韓国語]。
韓国・延世大学教授の孫さんの研究論文
まさに、孫マジックですね!
H20.8.31作成 H20.9.4更新 H26.8.10更新 |
【参考】韓国・延世大学教授の孫さんの研究論文から引用(太字は私) A Review of Sociocultural, Behavioral,
Biochemical Analyses on ABO Blood-Groups Typology 【日本語に翻訳後の文章】…太字は私 一方,Big-Five Factor モデルを活用した研究では皆血液型と性格は関係がないという結論が下された(So Hyun Cho, 2005; Cramer, 2002;
Rogers, 2003; Kunher, 2005).一方 MBTIを基盤とした研究では一部血液型と性格類型の関係を見せてくれた(Kim Beom
Jun, 2006; D'Adamo, 2001).
まさに、孫マジックですね! また、日本の心理学者、例えば、渡邊芳之さん[帯広畜産大学]は血液型と性格の関係を否定する『現代のエスプリ〜血液型と性格』に、こう書いて います(188〜189ページ 『性格心理学は血液型性格関連説を否定できるか〜性格心理学から見た血液型と性格の関係への疑義』 太字は私)。 【H26.8.10追記】日本での追試でも差が出なかった その後、ビッグファイブでは日本でも追試が行われましたが、予想どおり差が出なかったのです!
この文献のポイントは、
です。特に3.は予想していたこととはいえ新発見です! *1
注釈に「本研究は,吉備国際大学社会福祉学部臨床心理学科の2009年度卒業論文として三宅由起子氏が執筆した論文に加筆・修正したものである。」とあります。卒論のデータを再分析して紀要に載せちゃうというのは、なかなか大胆という感じがします。(^^;; |
見ればわかるとおり、因子的妥当性を高めるため、つまり因子分析によって、きれいな性格モデルにしてしまうと、臨床的妥当性に欠けることがわかります。NEO−PIが、具体的にどの語彙をどう選択しているのかまではわかりませんが、この表を眺めてみると、やはりビッグファイブモデルは、血液型による性格の差を判断するのに向いていないようです。
表2 各人格検査の信頼性・妥当性のまとめ
尺度名 背景・モデル 尺度構成の方法 信頼性(α係数等) 臨床的妥当性 因子的妥当性 MMPI なし 臨床群との弁別 概ね○(一部△) ○ △ NEO−PI 語彙研究 因子分析 ○ △ ○ MCMI−II パーソナリティスタイル理論 因子分析 △ ○ △ TCI(Cloninger) 人格の7次元モデル 項目内内部相関 △(一部○) ○ △ ○は肯定的、△は否定的もしくは未確認を表す
*1 木島伸彦 Cloningerのパーソナリティ理論の基礎 季刊精神科診断学 11(4):387-396 [2000年12月号]
H20.9.6作成 |
それだけではなく、思い込み、または自己暗示の問題もあります。基礎編でも取り上げましたが、心理学の「血液型と性格」の研究によく使う性格検査は、「思い込み」あるいは「自己暗示」の影響を排除することはできません。
つまり、「自己暗示」だろうが何だろうが、自分が自覚している性格(つまり、「A型は神経質」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は二重人格」…)がそのまま結果として現れることになります。
H20.8.31作成 |
【参考】『性格の評価と表現』からの引用A(太字は私) さて、もう一つは、「思い込み」の問題です。 日本の心理学者は、血液型による(不当な?)思い込みが性格テストで排除できる、と考えている人が多いようです。だから、性格テストで血液型による差がない→血液型と性格は関係ない、という結論になっています。しかし、それには「ウソ」や「思い 込み」が排除できるという触れ込み(?)の性格テストを使えることが前提です。例えば、日本で有名なYG検査は、自己評定がそのまま結果に出るので「思い込み」は排除はできません。では、NEO−PI−Rではどうでしょうか?(『性格の評価と表現』 152ページ 太字は私)
虚構性尺度や強制選択は、被験者のウソを測定するものですから、それがないということは「自己暗示」や「思い込み」はYGと同じく排除できません。つまり、「思い込み」だろうが何だろうが、自分が自覚している性格(つまり、「A型は神経質」「B型はマイペース」「O型はおおらか」「AB型は二重人格」…)がそのまま結果として現れることになります。 逆に、それらの結果が現れないのは、性格検査自体か、調査方法か、分析方法 etc. に問題がある(?)ということになります。 |
ちなみに、日本で有名なYG性格検査は、ビッグファイブ理論から見ると、非常に不正確な性格検査のようです。前出の『性格の評価と表現』では、このようにあります。
YGについては、既に、第2章で簡単に解説したが、120の質問項目単位の因子分析的研究では、辻岡による特性12因子の存在は確証されていない。また、後述のBig Five以後における、辻の性格特性テストFFMPIとYGとのジョイント因子分析の結果では、YGは特性NおよびEのみで構成されている。
へ〜、これにはびっくりです。つまり、5つの因子のうち2つしか測定していないのだから、必ずしもYG検査で血液型別の差が出なくとも不思議ではないことになります(苦笑)。
H20.8.31作成 |
各血液型の血液型傾向の平均値
回答\血液型 A O B AB 損害回避傾向(慎重さ) 48.7 27.7 30.7 54.0 新規性追求傾向(好奇心) 32.4 41.8 31.7 59.0 報酬依存傾向(人付き合い) 37.2 34.1 54 67.5 《番組ホームページのデータ》
慎重なA型、好奇心旺盛なB型、人間関係に気を遣うO型と、それぞれ血液型別の傾向がよく現れているといっていいでしょう。
しかし、この後はなぜか追試されることもなく、心理学者からの批判も私が知る限りサトウタツヤさんの1件*2だけで、貴重な実験結果もウヤムヤになってしまったようです。
ところで、不思議なことに、他の性格テストでは、意外というか、さっぱり差が出ていません。血液型七不思議(笑)に数えられるぐらいの謎だったのですが、この理由の一端が見えてきました。というのは、差が出ていないものは、最近流行の
ビッグファイブモデルを使った性格検査のようだからです。
知っている人もいるかもしれませんが、ビッグファイブモデルというのは、性格因子の導出に「因子分析」を使っています。
Cloningerの気質・性格モデルとBig Fiveモデルとの関連性 国里 愛彦, 山口 陽弘, 鈴木 伸一 パーソナリティ研究 Vol. 16 (2007) , No. 3 (2008) pp.324-334 Big Five モデルは,辞書などから得られるパーソナリティ特性語の分類研究(語彙アプローチ)やパーソナリティ尺度の再分析あるいは複数の尺度から項目を収集し,因子分析によって因子を抽出する研究(質問紙アプローチ)などを経て,5 因子が抽出された結果生まれたものである(John, 1990; 和田,1998)。 |
で、どういうわけか、因子分析をベースにした性格検査では差が出ていません。
どうやら、この因子分析ベースの性格検査では、〔その2〕で書いたように、血液型で差が出そうな質問項目が(根こそぎ?)カットされてしまうらしいのです。
これに対して、大村政男さんが使った、血液型で見事に差が出たTPQという性格検査はどうなのかというと、予想どおり因子分析を使っていないのです!
同論文より 一方,トップダウン的なパーソナリティモデルも存在する。Eysenck(1952, 1967
梅津・祐宗他訳1973)は因子分析や脳波実験から,生理学的基盤を背景に持った気質に関するモデルを構築している。…これらの気質モデルは3
因子から構成されることから,Big Threeモデルとよばれ(Clark & Watson, 1999),Big
Fiveモデルよりも,モデルを構成する因子の生理学的な基盤を重視している。… |
このCloninger (1987) による気質モデルが、実はTPQなのです!
なるほどねぇ。
なぜ、誰もこんな簡単なことを指摘しなかったのでしょうか?
心理学の素人の私でもわかるぐらいなんだから、性格心理学の大家である大村さんだったら、間違いなくわかっていると思うんですが…。
心理学業界内の公然の秘密なのかな?
はて?
*1
平成16年12月28日 TBS 19:00〜20:54 ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント!本当の自分&相性探し来年こそは開運SP!
*2 上村 晃弘, サトウ タツヤ, 疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性, パーソナリティ研究, Vol. 15 (2006) No.
1 pp.33-47
→この批判は、なぜかデータの分析をしていないようですので、意味不明としか言いいようがありません
H20.9.2作成 |
というのは、好奇心に影響を与える遺伝子D4DRの予測力(決定係数)は数パーセントと言われているからです。もちろん、D4DRが好奇心に影響を与えることは、一般的に(心理学を含めて)認められています。 血液型も同程度でしょう、たぶん。
ここでは、心理学者の研究報告で「ルールや慣習や秩序を重視する」と回答した人の比率で考えることにします。
最初にデータ*1を示しておきます。
血液型 回答者数 比 率 O 29.7% 57.7% A 36.7% 54.7% B 22.5% 50.7% AB 11.1% 41.2% 合計 613人 −
ほぼ予想どおり、O≒A>B>ABの順になっています。
普通は、ここで分散分析をして相関係数を計算するのですが、「はい」「いいえ」だけの質問では分散分析はできません。そこで、普通は次のようにして相関係数に相当する「ユールのQ」を計算します。
は い
いいえ
×型
a
b
□型
c
d
では、実際にAB型とAB型以外に分けて、ユールのQの値を計算してみることにしましょう。
AB型とAB型以外の2×2分割表
は い
いいえ
AB型
40 28 AB型以外
251
298
ユールのQ=(40×298−28×251)/(40×298+28×251)=0.258
まぁ、相関係数が0.258というと、確かにそれほど強い相関とは言えません。ついでに、決定係数に相当する予測力を計算してみると、7%程度(ユールのQの2乗)になるので、これまたそれほど大きいとは言えません。
が、好奇心に影響を与える遺伝子のD4DRと同程度ですから、決して「小さな差」ではないと思うんですが?
なお、能見さんの結果も、データを見ると10〜20%の差ですから、だいたいこんなものです。
ただ、このデータは、AB型とそれ以外の血液型を比較しているため、実感より差が小さく出ているような感じがします。現実に、私たちが差を感じる場合は、一番差が大きいAB型とO型を比較しているはずですよね? そこで、AB型とO型だけ取り出して、ユールのQを計算してみましょう。
AB型とO型の2×2分割表
は い
いいえ
AB型
40 28 AB型以外
77
105
ユールのQ=(40×105−28×77)/(40×28+28×77)=0.322
相関係数が0.322ということは、強い関係と弱い関係のちょうど中間といったところでしょうか。決定係数に相当する予測力を計算してみると、10%程度 となりますから、与える影響は遺伝子全体の「4分の1」程度になります。
ひょっとして、このような血液型同士の比較のし方が、実感とデータが違ってしまう原因なのかもしれませんね。
*1 詫摩武俊・松井豊 S60 血液型ステレオタイプについて 東京都立大学人文学報 第172巻 15〜30ページ
H20.9.6作成 H20.9.21追記 |
詳しくは大きな差?小さな差?をどうぞ!
基本編でも書きましたが、統計学の理論では、サンプルがランダムサンプリング(無作為抽出)でないといけないことになっています。しかし、現実には、どんなデータでも差が出ることになりますから、極論すればランダムサンプリングなんか不要です。
ところで、現実のデータを見てみると、ランダムサンプリングよりは、心理学者のデータ(自分の授業に出席した学生)のように、比較的均質なサンプルの方が差が出ています。これは、血液型による性格特性が、年齢・性別・社会的地位などによって微妙に違っているせいだと私は推測しています。
H20.8.31作成 |
基礎論・応用編の両方を読んでいただき、大変ありがとうございました。m(._.)m
最後に結論をまとめておきましょう。
一般的な性格検査でも、個別の質問(あるいは、NEO−PI−Rならファセット)ではかなり有意差が出ているものと予想されます。それを、5つの性格因子にまとめたとたんに有意差が出なくなるのだから 、従来のデータを矛盾なく説明するためには、性格検査自体が血液型による差をうまく検出できないと考えるしかありません。
まさに、能見正比古さんが言っていたとおり 、性格テストでは血液型による差を正しく測定できないようです!
また、もともとNEO−PI−Rなどの性格検査で定義する性格特性は、一般の人が使うものとは違う(因子分析で直交変換や斜交変換をしたものなので当然!)のだから、これまた従来のデータとは矛盾しません。
ただ、TPQでは大きな差が出ていることから、性格因子の導入に「因子分析」を使った性格検査は小さな差しか出ないが、使わなかった性格検査では大きな差が出る、と考えてもよさそうです。
皆さんの感想はいかがですか?
H20.8.31作成 H20.9.2更新 |
素朴な疑問です。 これらの論文が公表されてしばらくたちますが、性格検査の信頼性が特に問題になったという話は聞きません。意外と知られていないのでしょうか? それとも、何か別の理由があるのでしょうか? あるいは、性格心理学者なら「性格検査自体が血液型による差をうまく検出できない」とは口が裂けても言えないから、無視しているのかな? ちょっと気になります。 |
2日間で一気に書き上げたので、ここで力尽きてしまいました。
既にお気付きの人もいると思いますが、有意差が出たデータは「自己暗示」や「思いこみ」によるものかどうか、という問題が残っています。また、『血液型人間学』のデータとの整合性のチェック、人の血液型を当てることができな理由 etc. とまだまだ課題は山積していますが、読者の皆さんにこれだけは理解してもらえるとうれしい、という最低限の部分だけは書いたつもりです。
どうですか? 少しは理解していただけましたか?
細かいことや、ちょっと難しいと感じることはパスしても全然構いません。
私の考え方のポイントさえ理解していただければ、これほどうれしいことはありません。
面白かったら、次の更新を楽しみにしていてくださいね。
ではまた。(^^)/~
H20.8.31作成 |
【オススメの本の紹介】 「血液型と性格」について、もっと詳く知りたい人に、オススメの本があります。
この本のポイントは、14ページにあり、「人の性格は、ある程度血液型が影響を与えている」です。 |