能見さんのデータは「サンプリングがなっていない」というのがほとんどの否定論者のコメントです。しかし本当にそうなのでしょうか?
私には、肯定・否定のデータをいろいろと分析しているうちに、だんだん事実が分かってきました。結果は読んでのお楽しみです(笑)。では、行ってみましょう! --
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まず、否定論者の長谷川さんからです。『現代のエスプリ〜血液型と性格』の中で、長谷川さんはこういう主張をしています。(125ページ 『目分量統計の心理と血液型人間「学」』 長谷川芳典)。
標本の無作為抽出
統計的検定の基本は、研究の対象となる集団(母集団)全体から何の作為もなく標本を抜き出し、その標本からもどの集団の特徴を推測することにある。標本の選び方に何らかの偏りがある場合は、いくらたくさんのデータを集めても公正な推測をすることはできない。血液型人間「学」の愛読者アンケートのような形で何万人ものデータを集めていかなる「偏り」を発見したとしても、そこから日本人あるいは人間一般の「血液型と性格」を云々できないことは明白である。
これは、統計学的には「常識的」な主張といってもいいでしょう。確かに、能見さんのサンプリングにはそう言われてもしょうがない部分があります。完全なランダムサンプリングじゃなくて、読者アンケートが主ですからね。(^^;; -- H10.7.1
つぎは、否定論者の代表として大村さんに登場していただきます。(『血液型と性格』 222〜223ページ)
このようなアンケートをする場合は、 サンプルの中の血液型の分布が日本人における血液型分布と適合していなければならない。(中略)
サンプルの中の血液型分布が問題なのである。ある型が極端に多く、ある型が極度に少なかったらどうだろう。「科学」を標傍(ひょうぼう)しながらそのような基本的なレベルが守られていなければなんにもならない。
このような誤謬は能見正比古も犯している。彼は次のような科学的事実といわれるものを明らかにしているが本当にそうだろうか。食事の仕方 能見は「人と一緒にする食事について、おいしく感じる最高は」という質問に対して、(イ)多数の仲間とにぎやかに、(ロ)親しい友人2、3人と、(ハ)家族そろってが最高、(ニ)1人よりはましという程度、(ホ)1人で食べてもうまいものはうまい、という5個の選択アイテムを置いて調査している。 これらのアイテムもよくないが、どうにもらならないのはサンプリングである。彼は、O型者1,414人、A型者1,642人、B型者1,283人、AB型者947人、合計5,286人というサンプルをとっているが、血液型者のサンプリングがどうしようもない歪みを持っているのである。データは多量でもこのようなものはなんの役にも立たない代物といえる。
表60 「食事の仕方と血液型」研究に用いられたサンプル(男女)の歪み
性別 血液型 能見のサンプリング 期待値
(サンプルとして採るべき人数)χ20 男性 2,403人
O型者 636人(26.4)% 737.7人(30.7)% 239.9 A型者 739人(30.8)% 915.5人(38.1)% B型者 600人(25.0)% 523.9人(21.8)% AB型者 428人(17.8)% 225.9人( 9.4)% 女性 2,883人
O型者 778人(27.0)% 885.1人(30.7)% 279.4 A型者 903人(31.3)% 1098.4人(38.1)% B型者 683人(23.7)% 628.5人(21.8)% AB型者 519人(18.0)% 271.0人( 9.4)%
χ20の値を見ると分かりますが、非常に高い値を示しています。どう考えても、これは偶然ではありませんね、これは困った…。とにかく、サンプルが「歪んでいる」ことは確かですね。長谷川さんともほぼ同じ主張であることも分かります。 -- H10.7.1
そこで、能見さんの『血液型愛情学』の記述に当たってみましょう。 -- H10.7.1
1 5,904人が答える50問
殺到した愛読者カード
本書執筆に際し、新しいアンケートを計画したが それを集める方法について頭を悩ませた。
B型の実証性とヤジウマ気質のせいか、私は何でも足で書きたがる傾向がある。まして人間学分野の要求する資料は多く、大量の取材が望まれる。アンケートは、それを補完する有用な一方法である。
拙著『新・血液型人間学』で紹介したアンケートは、時日をかけコツコツ依頼した知人関係、若干の企業の従業員、講演会の聴衆などが対象で、約2千人弱、他に中学校数校に依頼した2千人強、その他というところだった。設問の一貫性も不十分、集めた地域も、おのずから制限される。有益な結果も多く得たが、全体として意に満たないところも多い。
今回は、より統一的で広汎な地域にわたるアンケートを実現したかった。テーマは愛情。といって目下恋愛中の人を探し歩くわけにいかないから、夫婦が中心となり、アンケート用紙はお茶の間に参上せねばならぬ。大きな予算や人員を動員すれば、いろんなプロジェクトも組めよう。しかし、私個人の微力では、予算的にいっても制限がある。
迷っているうちに気がついたのは、前著の愛読者カードだった。本にはハガキがはさみこんであって、読者の感想や購入の動機などをたずねている。この愛読者カードを、異例なほどたくさんいただいた。それも、ハガキがまっ黒に見えるほど、細かく意見、感想をつづって来られる方が多いのである。
私には、この上ない有難い指針である。繰り返し拝読するうち、この読者の方々にアンケートをお願いしようと思いついた。本を買っていただいた上に、アンケートまで頼む。考えてみれば、図々しい話であるのだが……。
アンケートの大量返送
愛読者カードは、今は8千枚にも達しているが、アンケート作成の時点で、手もとにお預かりしていた分が3,500、その半数に依頼するつもりが、結局2,160人の方を選んでお願いすることになった。といって選ぶ基準が大してあるわけはなく、ランダム抽出に近い。
郵送方式で、アンケート用紙と返信用の切手、封筒を同封する。アンケートは用紙の裏表にギッシリ、約50間。必ずしも手軽なアンケートとはいえない。そのうえ住所氏名、生年月日に職業、電話番号までご記入を願う。アンケート調査の経験者ならご存じであろうが、記名の場合の回収率は、一般にうんと低くなる。が、私は前から、あえて記名でお願いを続けている。いろいろ理由もあるが、新しい分野だけに、できるだけ厳密にしたいという意味もある。アンケート用紙は9,500枚発送した。1人平均4.4枚。家族や知人にも記入してもらおうというさらに厚かましい依頼なのである。
私は冷々(ひやひや)しながら結果を待った。何とか3割は返ってほしかった。人に見通しを聞くと「1割も返るかねェ」などと心細い返事をしたりする。1,000人に達しなかったら、出版計画を変更しなければならない。
1週間後、私は呆然とした。予想はとんでもなく狂い、わが家は封書で見る見る山をなしたのである。アンケートを記入、返送してくれた読者が判明分だけで1,538人(どなたの返送か不明のものも数十通ある)。71パーセント強の回収率だ。私は、かつて郵送によるアンケートで、このように高い回収率の例を聞いたことがない。回答者総数は5,430人。予定した枚数をはるかに越えた。“北海道から沖縄まで”を目標にしたが、沖縄から7人の方のアンケートが届き、目標達成である。回答のない県は1つもない。
3つ比べてみると、奇妙なことに気が付きます。というのは、能見さんは読者カードからほぼ「ランダム抽出」でサンプリングをしていますから、返送率に血液型による差がないとすると、表60はほぼ能見さんの読者の血液型分布と一致するはずです。しかし、データを見ると分かりますが、AB型が圧倒的に高い比率(赤太字→平均のほぼ2倍)になっています。となると、どう考えても、これはAB型の読者が多いか、AB型の返送率が高いとしか説明しようがありません(つまり、血液型と性格は「関係ある」ことに…)。
ですから、血液型と性格は「関係ない」ということであれば、このデータは説明できません。無理に説明するとなると、能見さんの本によっぽどAB型に有利なことが書いてあるのか(私はAB型ですが、それはないと思います…)、あるいは全くの偶然なのだということになります。でも、χ20がこれだけ大きいとなれば、偶然ということは絶対にありえません!(ウソだと思う人は、統計学の教科書を見てくださいね。偶然でこんなデータが出ることは、宇宙開闢以来、何回もないはずですから…)
能見さんのサンプリングが「どうにもらならない」、そして「血液型者のサンプリングがどうしようもない歪みを持っている」という指摘こそが、血液型と性格は「関係ある」ということなのです。あまりにも不思議なので、これに関する記述がないかどうか探したのですが、残念ながら見つけることはできませんでした。はて?
皆さんはどう思いますか? -- H10.7.1
実は、これだけのサンプルの偏りがあっても、アンケート結果には影響しません([血液型と性格]の謎を推理するにもありますが、他のデータの傾向と一致しています)。なぜなら、アンケートの回答は、本人が血液型別の特徴を知っていようがいまいがほとんど変わらないからです。ま、当然といえば当然ですが…。詳しくは、渡邊席子さんの論文を読んでみてください。
それを証明するかのように、大村さんが示している他の「血液型者のサンプリングがどうしようもない歪みを持っている」データでも、AB型の率がかなり高くなっています(表61〜62)。
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表61 「精神的疲れのいやし方と血液型」研究に用いられたサンプル(男女)の歪み
性別 血液型 能見のサンプリング 期待値
(サンプルとして採るべき人数)χ20 男性 994人
O型者 298人(30.0)% 305.2人(30.7)% 28.2 A型者 341人(34.3)% 378.7人(38.1)% B型者 214人(21.5)% 216.7人(21.8)% AB型者 141人(14.2)% 93.4人( 9.4)% 女性 661人
O型者 198人(30.0)% 202.9人(30.7)% 8.4 A型者 230人(34.8)% 251.9人(38.1)% B型者 148人(22.4)% 144.1人(21.8)% AB型者 85人(12.8)% 62.1人( 9.4)%
表62 「寝つきの良さ・悪さと血液型」研究に用いられたサンプルの歪み
血液型 能見のサンプリング 期待値
(サンプルとして採るべき人数)χ20 O型者 429人(29.6)% 445.1人(30.7)% 30.15 A型者 517人(35.6)% 552.5人(38.1)% B型者 307人(21.2)% 316.1人(21.8)% AB型者 197人(13.6)% 136.3人( 9.4)%
ところで、心理学者にデータは本当にランダムサンプリングしてあるのでしょうか?
下のリストは、私のチェックしたもの一部です。学部の記載がないものも多いので確定的なことは言えませんが、人数や性別、論文の記述から受ける印象では、ほとんどが心理学専攻、あるいは文系の学生だと思われます。この中で、完全なランダムサンプリングは、松井さんの論文と坂元さんの論文ぐらいです。
次に、松井豊さんの発言を『血液型と性格』(現代のエスプリ No.324 分析手法から見た「血液型性格学」 119〜120ページ)から引用しておきます。
心理学者の反省
しかし、方法論上の問題を抱えているのは、「血液型性格学」支持者だけではない。「血液型性格学」を否定する立場の多くの心理学者にも、先の批判を甘受しなければならないものが多い。詫摩・松井だけでなく、多くの研究は、学生を対象にしたアンケート調査に基づいて、「血液型性格学」を支持しないデータを提出している。それらの多くは、厳密な心理検査を利用しており、先の批判の第1(項目の不備)を改善している。しかし、これらの研究においても、回答者は講義や授業を受けている1つか2つの学校の生徒や学生に偏っており、ランダムサンプリングによるものはみられない。血液型は自己報告によっており、第二の批判(血液型の測定)にも対処されていない。
残念ながら、血液型ステレオタイプに戦いを挑んでいる良心的な研究者たちも、方法論という面からみると、「血液型性格学」支持者と同様に批判を受けざるを得ないのである。
次に、血液型に興味がある人の割合のデータです。下の表の赤枠の中が心理学専攻の学生です。平均を計算すると「興味ある」が53%になるので、@の中学生グループを除けば、他のいずれの被験者グループよりも低いことがわかります(佐藤達哉 1995 血液型性格判断、星占いを信じやすい性格があるか 児童心理,649,112-121.)。
これだけでは不十分でしょうから、別のデータも書いておきます。
1.血液型と人の性格は関係ありそうだ(無作為抽出の首都圏15〜69歳の住民1,102名)
回 答
回答率
そう思う 75.0% そう思わない 18.4% どちらともいえない 5.9% わからない・無回答 0.6% 出典:昭和61年NHK世論調査資料
2.あなたは、血液型と人の性格や相性と関係あると思いますか?(無作為抽出の全国20歳以上の男女2,320名)
回 答
回答率
関係あると思う 18% 多少関係あると思う 46% 関係ないと思う 21% わからない 14% 無回答 1% 出典:昭和62年毎日新聞「こころの時代」全国世論調査
3.血液型と性格・相性の関係は?(500名)
回 答
回答率 ある 72% ない 18% わからない 10% 出典:関西テレビ『発掘!あるある大事典』(平成9年6月15日放送)
4.血液型ステレオタイプに対する態度 →太字は50%以上 (都内の女子大生318人)
変数名
肯定率(%) 血液型によって性格は異なる
* 血液型性格判断は信用できる
37.5 血液型性格判断は当たっている
53.8 血液型性格判断は楽しい
83.6 血液型性格判断が好き
61.5 コミュニケーションに役立つ
40.4 初対面時に役立つ
26.0 血液型を考えてから対人行動 5.8 血液型によって行動を変える
4.9 他者行動の理解に役立つ
14.4 血液型でまず相性を考える
26.7 血液型に関する記事をよく読む
57.7 自分を知るのに役立つ 26.0 知らない自分がわかる
12.5 自己について新しい発見をする
16.4 自分を客観的に見られる
26.0 A型の人はきらい 5.8 B型の人はきらい 10.6 O型の人はきらい 1.0 AB型の人はきらい 10.6
* 本回答のみ、回答は以下の5件法で求めている。
「血液型によって性格は非常に異なる」(0%)、「かなり異なる」(10.5%)、「やや異なる」(61.1%)、「あまり異ならない」(16.8%)、「全く関係ない」(11.6%)出典:上瀬由美子・松井豊 1996 血液型ステレオタイプ変容の形 ―ステレオタイプ変容モデルの検証― 社会心理学研究,11,3,170-179.
調査費用の関係でしょうが、心理学者のデータは自分の講義に出席した学生というケースが多いようです。しかし、それなら能見さんの愛読者のデータはダメ(?)というのには少々驚きます。なぜなら、心理学者のデータをチェックしてみると、血液型と性格の関係を肯定する率がかなり低く(10パーセント程度以上)、明らかにバイアスがかかっていると推測できるからです。
本気でそう主張するなら、明らかにダブルスタンダードということになりますが…。はて?
皆さんはどう思いますか? -- H14.1.13
[ランダムサンプリングについてもっと詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ! -- H17.8.21]