最新刊


ABO FAN


Live Right for Your Type (2001.1)

 いやぁ、実に画期的な本が出版されたものです! これで「血液型と性格」論争は決着したも同然ですから…。その本とは、

 著者が日本人でないのが少し残念です…。

 でも、とにかく画期的ですから、英語が読める人も読めない人もぜひ買いましょう!

【H16.3.27&4.18追記】Live Right For Your Type の邦訳が出版されました!

ダダモ博士のNEW血液型健康ダイエット H16.3 集英社文庫 900円

 ダダモさんの本の邦訳第2弾が遂に登場! あの"Live Right For Your Type"が日本語で読めます!
 やはり日本語で読めるのはいいですね。(^^)
 血液型が性格に影響を与える根拠が詳しく書かれています。医学的なメカニズムを知りたい人には必読書です! 

 ただ、残念なことに、この本は前作の「ダダモ博士のNEW血液型健康ダイエット」と同様、能見正比古さんの記述部分にいくつかの誤訳(?)が見受けられます。例えば、31ページの記述ですが、

訳文 能見の著作『血液型人間学』は日本でベストセラーとなり、その後も版を重ね続けている。

原文 Nomi's book, What Blood Types Reveal about Compatibility (Ketsueki de wakaru aisho) was a huge success in Japan, and remains so -- it's now its 240th printing.

 この訳文は明らかに間違っています。能見さんの最初の本は『血液型人間学』ではありません。ちなみに、原文でも『血液でわかる相性』と間違えています。正しくは、『血液でわかる相性』ですので、皆さんも間違えないようにしてくださいね! また、原文では240刷(本当かどうかは知りませんが、私の手元にあるのが140刷ですから全くの間違いとも思えません)とある記述が省略されてしまいました(なぜ?)。

 もっとも、日本で人口に膾炙しているのは『血液型でわかる相性』よりは『血液型人間学』ですから、事情を知っていてあえて変更したのかもしれません。ただ、血液型人間学が日本で爆発的に広まったのは『血液型でわかる相性』によるものですから、いずれにせよこの記述は適切であるとは言えないと思います。

 それから、コストを考えるとしょうがないのでしょうが、オリジナルにはある膨大な(かつ貴重な)文献リストがそっくり削除されています。もっと詳しく勉強したい人は、ぜひ英語版を買って読んでみてください。

  もう一つ気になったのが、訳者後書き(472ページ)です。

血液型と病気、あるいは血液型と性格に関係がある、という説は、どうも非科学的と考えられがちです。ある種の病気になりやすい血液型があるという話は、ときどき耳にしますが、残念ながら、その因果関係はまだきちんと立証されていないようです。また、血液型と性格に関係があるなどといえば、研究者からはまったく相手にされないことも少なくありません。

 この中にはいくつかの不適切な記述が見受けられるようです。

 まず、血液型と病気は明らかに関係があり、一部ですが因果関係もきちんと立証されています。例えば、O型は他の血液型に比べてピロリ菌に弱いため、胃がんになりやすいのです(この本の140ページには、A型が胃がんになりやすいと書いてあります)。また、血液型と性格を相手にしないのは日本(の心理学者と一部の医師)だけであり、世界的にはそんなことはない…はずです。

 それと、10ページには、人類最初の血液型はO型とありますが、最近の分子生物学の研究ではA型とされています。詳しくは斉藤さんの論文のページをどうぞ!

 とはいっても、この本は文句なくオススメです。ぜひ皆さんも買って読んでみてくださいね。(^^)

 血液型と性格に関係する主なところを抜粋しておきます。

Japanese believe there is a direct relationship between blood type and personality. Talk shows, cartoon characters and Web sites often carry references to blood type. In 1997, four of five major private television stations in Japan broadcast blood type-related programs...

日本人は、血液型と性格の間に直接的な関係があると信じています。トークショー、マンガのキャラクターやウェブサイトには、しばしば血液型が登場します。1997年には、日本の5つの主要な民放テレビ局のうちの4つが、血液型関連のプログラムを放送しました…

 なんか、これはABOFAN英語版からの情報のような…。ウェブサイトって、たぶんABOFANでしょうし、「1997年…」は明らかにABOFANからの引用です。まぁ、いっか…。

The internationally renowned Japanese cartoon Sailor Moon, by Naoko Takeuchi, mentioned the blood types...

国際的に有名な日本マンガ、竹内直子による「美少女戦士セーラームーン」も血液型に言及しています…。

 へ〜、セーラームーンって世界的に有名だったんですね。アジアやフランスで放送しているという話は聞いたけど、どうやらアメリカでも放送しているようです。

When the Japanese author Masahiko Nomi and his detailed characterization of blood type personalities, it seemed that much of the material belonged more to the world of pop culture than in the hallowed halls of science...

日本人の著者である能見正比古と、彼の詳細な血液型別性格の類型化は、神聖化された科学の殿堂というよりは大衆文化の世界に属するように思われます…

 この記述は非常に残念です。「神聖化された科学の殿堂というよりは大衆文化の世界に属する」ではなくて「科学と大衆文化の両方に属する」というのが妥当(?)な解釈でしょう。実は、タダモさんは日本の心理学者の文献を読んだらしく、前著(Eat Right for(4) Your Type)とは違ってこういう表現になっています。ん〜、あまり好ましい状態ではないですね…。もっとも、彼は正比古さんを評価していないという訳ではありません(後述)。

 もっとも、この部分は、皮肉を込めて「神聖化された科学の殿堂」と言っているのだ、という解釈もあります。となると、「大衆文化の世界に属する」というのは逆にほめ言葉になりますね。どちらが本当なんでしょうか? 私の怪しい英語力では??

Many of Nomi's characterizations are based on the simple observation of thousands of individuals, often for days at a time. While this method may not be sufficient to meet strict scientific standards, it is certainly meaningful...

能見の説明の多くは、数千人の人々に対する、しかも1度にたった数日間の行動観察に基づいています。この方法は、厳密な科学的な基準を満たしていないかもしれませんが、確かに有意義です…

 彼は正比古さんを評価していないという訳ではありません。どこかの国の心理学者とは違うようです…。それは、彼の父も同じような観察をしている、というのも大きな理由のようです。

 次は、血液型別の性格の比較です。

Blood Type-Personality Characterizations

  TYPE O TYPE A TYPE B TYPE AB
Masahiko Nomi Extroverted
Strong
Expressive
Introverted
Perfectionist
Restrained
Free-thinking
Independent
Lacking
ambition
Sensitive
Distant
Passive
Peter Constantine Extroverted
Outspoken
Introverted
Reserved
Calm
Pragmatic
Organized
Balance of extroversion and introversion
Raymond Cattell Stable Prone to anxiety Self-sufficient Alienated
Hans Eysenck Extroverted Calm Highly emotional Introverted
Blood Type-Personality Test as www.dadamo.com Extroverted
Practical
Decisive
Lives in the present
Introverted
Sensitive to the needs of others
Feeling
Flexible
Spontaneous
Subjective
Feeling
Intuitive

 ここは、訳すのが面倒なのでこのままにします。(^^;; でも、なんか少し違うような…。気のせいかな??

The testing group demographics of www.dadamo.com

Total(合計) 20,635
Total Female(女性) 15,255
Total Male(男性) 5,380

The demographics by blood type

A AB B O
7187 1473 2809 9166
34.83% 7.14% 13.61% 44.42%

 念のため、ダダモさんのアンケートのサンプルを出しておきます。男性とA型が少ないような気もしますが、気のせいでしょうか?

A Fairly reliable synthesis of personality characteristics by blood type

TYPE O TYPE A TYPE B TYPE AB
Extroverted(外向的)
Strong(強い)
Leader(リーダー)
Confident(自信のある)
Pragmatic(実用的)
Strategic(戦略的)
Patient(辛抱強い)
Logical(論理的)
Introverted(内向的)
Intense(緊張している)
Demanding(要求する)
Perfectionist(完全主義者)
Sensitive(敏感)
Cooperative(協力的)
Creative(創造的)
Independent(独立心旺盛)
Free Thinking(自由に考える)
Resilient(柔軟)
Creative(創造的)
Original(独創的)
Subjective(主観的)
Inveterate organizer(組織者)
Intuitive(直感的)
Emotional(感情的)
Passionate(情感的)
Friendly(親切な)
Trusting(信頼できる)
Empathetic(共感的)

 これは、「信頼できる合成」とのことですが、なんか少しも違うような気がしますね。まあ、いいか…。

Type O's difficultly eliminating the catecholamines, noradrenaline and adrenaline in conditions of stress has direct implications of mental disorders. Current research suggests that the problem is related to the activity of an enzyme called dopamine beta hydoroxylase (DBH), which converts dopamine to noradrenaline. Remarkably, the gene for DBH is located at 9q34. It's literally sitting on top of the gene for blood type....

O型は、ストレスを受けているときに、カテコールアミン、ノルアドレナリン、そしてアドレナリンを取り除くことが困難なので、精神障害に密接な関係があります。現在の研究は、問題が、ドーパミンからノルアドレナリンを変換するドーパミンベータハイドキシラーゼ(DBH)と呼ばれる酵素の活動と関連することを示唆しています。DBHの遺伝子は、明らかに遺伝子座9q34に存在しています。それは文字どおり[ABO]血液型の遺伝子座の最初にあります…。

 解説は不要でしょう。つまり、ABO式血液型を決定する遺伝子と同じ場所に「ドーパミンベータハイドキシラーゼ」(DBH)というストレス(性格?)に関係する遺伝子があるのです。つまり、血液型と性格の関係があっても不思議ではないことになります。なお、元の論文はこちらです。

Cytogenet Cell Genet 1988;48(1):48-50
Localization of the human dopamine beta hydroxylase (DBH) gene to chromosome 9q34.
Craig SP, Buckle VJ, Lamouroux A, Mallet J, Craig IW

【H16.7.19追記】 デザイナー・チャイルドと胎児期の脳

 最近、平成16年6月19日付の『日本経済新聞』で面白いコラムを見つけました(早稲田大学教授 池田清彦さん「生物進化考(16)」)。

 ひところ、デザイナー・チャイルドなるコトバがはやった。ヒトの形質に関与する全ての遺伝子が判明したあかつきに、遺伝子を自由に組み合わせて、理想的な子供をつくろうという話だ。今は絵空事だが、技術が進歩したら本当に可能になるのだろうか。
 デザイナー・チャイルドをつくるには、個々の遺伝子たちが、それぞれ別々の形質に1対1で対応していることが前提となる。すべての形質は特定の発生システムのなかで遺伝子たちと環境の共同作業の結果作られる。中にはひとつの遺伝子でひとつの形質を決めているように見える場合もあるが、その形質発現に関与する他の遺伝子たちや体内環境が安定しているのでそう見えるのだ。ひとつの遺伝子がそれぞれ独立に形質を決定したわけではない。

 また、ある研究者からは、こんなようなことも言われました。

 ABO式血液型を決定する遺伝子は、胎児期には神経[注:脳を含む]にも大量に発現している。だから、成人の脳に血液型物質がないから血液型と性格に関係がないなんていうのは、まるっきり素人の意見だ。医者は発生[注:胎児期]の専門家ではないし、そんなことは知らないから平気で発言をしているのであきれている。ABO式血液型の研究者でも、こんなことを知っているのは一部の人だけだろう。ABO式血液型が、発生のとき[注:胎児期]に神経細胞に影響を与える可能はあるので、血液型と性格が関係ないとはいえないのではないか。

 ということですから、「脳内物質であるドーパミンに関係する遺伝子がABO遺伝子(第9染色体)の近くにある」という根拠は、あまりにも素人的発想のようです。
 もともとは、ある否定論者が「性格を決定する遺伝子と血液型の遺伝子の連鎖が発見されていないし、その可能性も低い」と言っていたので、反論として用意したのですが、今となっては撤回した方がよさそうです。(^^;;

 結論としては、

  • 性格を決定する遺伝子と血液型の遺伝子の連鎖が発見されていないし、その可能性も低い
  • 成人の脳には血液型物質がないから血液型と性格に関係がない

 などという否定的な根拠は信用しない方がよさそうです。

 科学は日進月歩ですから、最新の知識をどんどん吸収して「常識」を変えなければいけませんね。反省反省。

 なお、この部分の訂正は、NATROMさんからの示唆も受けています。ご指摘ありがとうございます。m(._.)m

 次は、血液型別に行きましょう。まずはO型です。

Blood Type O and MAO

MAO levels show some variability according to blood type, and again the consequences seem much more significant for Type Os. A 1983 study of seventy healthy young males showed that the platelet MAO activity of Type O subjects was substantially lower than that of other blood types-having the effect of making the control of catecholamines more difficult for Type Os.

MAO(モノアミン酸化酵素)のレベルは血液型によりいくらかの変動を示し、O型により顕著に影響が現れる。1983年に行われた、70人の健康な若い男性に対する研究により、O型は他の血液型よりも血小板MAOの活動が大幅に低いことが示された。O型は、カテコールアミンのコントロールが他の血液型よりも困難なのである。

 なお、元の論文はこちらです。

Arato, M., G. Bagdy, Z. Rihmer, Z. Kulcsar. "Reduced platelet MAO activity in healthy male students with blood group O." Acta Psychiatr Scand, February 1983; 67(2): pp. 130-34.

 では、O型はどういう性格になるかというと(南博編著『読みこなし 使いこなし 自由自在 心理学がわかる事典』 日本実業出版社 H6.2 126ページ)、

■血液型で何がわかるか

 最近、血液中にある血小板MAO(モノアミン酸化酵素)の活性が、脳の神経伝達物質の活動に影響を与え、それによって行動や性格に影響してくることが知られるようになってきました。MAOが低値の人は、アルコール依存性にかかりやすく、スリルと冒険を求める傾向が強く、外向性で、攻撃行動・喫煙傾向が高いそうです。しかし脳MAOと血小板MAOの間には複雑な関係が存在し、同一に論じられるものではありません。

 モノアミンは性格に何らかの影響を与えているようです。例えば、A型物質は、A遺伝子の支配するA型転移酵素(α-N-acetylgalactosaminyltransferase)の働きにより、O型物質にN-アセチルガラクトサミンが付加されて生成されます。もちろん、N-アセチルガラクトサミンはモノアミンです。血小板MAOとに何らかの関係があっても別に不思議ではないでしょう、たぶん。
 結局、血液型と性格の関係は、モノアミンを中心に調べてみると、状況証拠は限りなく「クロ」に近いようです…。

 ただし、最後の「しかし脳MAOと血小板MAOの間には複雑な関係が存在し、同一に論じられるものではありません」というのは疑問です。なぜなら、ダダモさんの本には、血小板MAOが低値の人も、「アルコール依存性にかかりやすく、スリルと冒険を求める傾向が強く、外向性で、攻撃行動・喫煙傾向が高い」と書いてあるからです(ついでに言うと、ギャンブルも好きなようです)。となると、ここの部分の執筆者はこの論文の存在を知っているようですね…。なぜ、こんな妙な記述にしないといけないのでしょうか?

 他の血液型は翻訳は省略します。(^^;;

Type A: The Cortisol Factor

In one imaginative study, the researchers decided to study the levels of cortisol made by the different blood types in response to a stress. The "stress" they chose was economical and imaginative-having blood drawn. Since getting blood drawn is stressful for most people, they figured they could stress subjects and test their blood levels in one step. The result: serum cortisol concentration was the highest in Type As (average 455 nmol/L), as opposed to Type Os (297 nmol/L). As we might expect, Types B and AB were somewhat in the middle, with Type B (364 nmol/L) closer to Type A, and Type AB (325 nmol/L) closer to Type O.

 なお、元の論文はこちらです。

Glaser, R., J. K. Kiecolt-Glaser, W. B. Malarkey, and J. F. Sheridan. "The influence of psychological stress on the immune response to vaccinens." Ann NY Acad Sci, May 1, 1998; 840: pp. 649-55

Sapse, A. T. "Stress, cortisol, interferon and stress diseases. I. Cortisol as the cause of stress diseases." Med Hypotheses, January 1984; 13(1): pp. 31-44. [H16.7.19訂正]

次は、B型とAB型です。

Type B and Type AB:
The Nitric Oxide Factor

New research suggests that the mental processes of those who carry the B antigen may also be influenced by the nitric oxide molecule...
Recently, two notations in the medical journal Lancet reported that patients who possessed a B antigen (Type B and Type AB) appeared to clear nitric oxide more rapidly than the other blood types when it was administered through inhalation therapy for certain pulmonary conditions. 25
The authors or the Lancet pieces had no clue as to why there might be a relationship between the B gene and the activity of nitric oxide, yet one of the possible answers lies right next to the ABO gene on 9q34. It is a gene for the enzyme arigonosuccinate synthetate (ASS), which is critically responsible for the recycling or arginine.

 なお、元の論文は日本(東京医科歯科大?)のもののようです。

Expression of a blood group B antigen-related glycoepitope in human dorsal root ganglion cells. Yamada M, N. Yuki, T. Kamata, Y. Itoh, T. Miyatake, Department of Neulogy, Faculty of Medicine, Tokyo Medical and Dental University, Japan.

 以上をまとめると、次のようになります。

  1. ダダモさんのサイトで性格のアンケート(英語)を行ったところ、他の文献とほぼ一致する結果が得られた。
  2. ABO式血液型の遺伝子座(9q34)には、脳内物質に関係する他の遺伝子が乗っている。
  3. 脳内物質に関係する血小板MAOの量は、O型(男性)は他の血液型に比べて少ないため、タイプA(=ストレスがたまりやすい性格)の傾向がある。

 これで、否定論者の根拠はほとんど覆ったことになります。やった! v(^^)

 3.については、いくつか手持ちのデータがあるので、ここで再現性をチェックしてみましょう。

 まず大村政男さんの論文からです。男性だけ計算してみると、確かにO型がタイプA的な性格であることがわかります。見事に当てはまっているようですね。念のために、χ2値を計算してみましょう。これは5.76という値が得られるので、2%以下で有意となります。つまり、確かにO型はタイプA的な性格であることが証明できたことになります。やった!

Type A行動と血液型との関連(肯定率の平均%・男性)

O型
183人

A型
227人

B型
153人

AB型
65人

46.6

43.3

43.0

41.6

【H15.8.11&H15.9.8追記】

 念のため、別な方法で計算してみます。

 全体の分布を2項分布と仮定して計算してみました。

 まず、血液型ごとの平均については、

Type A行動と血液型との関連(肯定率の平均%・男性) →太字は最高

O型
183人

A型
227人

B型
153人

AB型
65人

46.6

43.3

43.0

41.6

 となります。計算を簡単にするために、O型とO型以外について計算してみます。

Type A行動と血液型との関連(肯定回答・男性) →太字は最高

区分

O型
183人

O型以外
445人

肯定率

46.6%

43.0%

延肯定数

1,193人

2,677人

延回答者数

2,562人

6,230人

 O型の標準偏差については、SQRT(0.5×0.5÷2562)=0.0099となります。
 信頼区間を5%とすると、0.0099×1.96=0.019ですから、O型とO型以外の差0.036より小さくなります。

 従って、2項分布を仮定する限り、危険率5%で有意ということになるはずです。

 また別な方法です。O型は14項目中10項目で最高の肯定率を示しています。この確率は、

(1/4)^14+14C1*(3/4)^1*(1/4)^13+14C2*(3/4)^2*(1/4)^12+14C3*(3/4)^3*(1/4)^11+14C4*(3/4)^4*(1/4)^10=0.00034

 ですから、危険率は5%以下になるので、いずれにせよ帰無仮説は棄却できるはずです。 

 さて、大村さんの論文を再度読んでみたところ、CR検定では、アイテム1(O>A)、アイテム10(A<AB)、アイテム11(O>AB)、アイテム12(O>A、O>B、O>AB)が5%または1%(太字)で有意です。やはり、O型がタイプA的な傾向は否定できないようです…。

Table IV-3は、男子におけるType A行動と血液型との関連を示したものである。84対の比較のうち、 有意な差を表わしていたのはわずかに6対にすぎない。すなわち、アイテム1(O>A)、アイテム10(A<AB)、アイテム11(O>AB)、アイテム12(O>A、O>B、O>AB)である。O型者の優位が見られるが、O型者が関与する42対の比較のうち、わずか5対にすぎないのである。

02.gif (288 バイト)論文1

 原題: 大村政男 1993 「血液型気質相関説」と「血液型人間学」の心理学的研究II 研究紀要,46,115-155.

Green_Ball9.gif (257 バイト) 血液型とType A行動

 次からは、『IV 血液型とType A行動』からの引用です。

 目的と方法 ストレス社会に生きなければならない人間の行動パターンが、性格にも重要な累積的影響を与えることはよく知られている。この研究の目的は、冠状動脈性心臓病(Coronary Heart Disease, CHD)を発病しやすい行動パターンを意味するType A行動が血液型と関連しているかどうかを検証してみようとするものである。
 Type A行動の特徴は、Table IV-1に掲げた14個のアイテムを見ればいちおう理解されると思うが、橋本宰の解説を付加しておこうと思う。
 a. 極端ともいえる精力的活動性:Type A者は、つねに「より少ない時間でより多くの仕事を!」というモットォを掲げている。この努力は休むことなく、しかも過度に続けられる。それは期限の有無とも関係しないのである。Type B者は期限が迫るにつれて仕事量を増加させるが、Type A者はつねに、なのである。Type A者は体力の限界に近い状態で活動を続けながら、疲労や不安を訴えることが少ない。 それらは妨害要因として抑圧されているのかもしれない。このことは、自分の体力を過信する結果となり、CHDを予防するうえで危険なメカニズムといえる。
 b. 時間的切迫感:「より少ない時間でより多くの仕事を!」という過度の活動性は、Type A者に慢性的な時間的切迫感を生み出す。性急な行動はかれらの代表的な行動になってくる。
 c. 攻撃性:性急な行動は、Type A者にしばしば欲求不満を起こさせ、苛立ちや攻撃反応を引き出す準備状態を醸成する。特に、他人から仕事を妨害されたり、批判的な評価を受けるとかれらは猛然と反撃してくる。
 d. エネルギッシュな話し方:いままで述べた3つの基本的な特徴は、ある意味でType A者の話し方に最もよく集約されている。大きな声、強いイントネーション、早い口調、そして断定的でエネルギッシュな演説調の話し方のスタイルは、Type A者に顕著に認められるところである。
 Type A行動をCHDに結びつける過程には、多くの生物的要因と生理的メカニズムが関与するものと考えられるが、この行動がもたらす過度の交感神経の興奮と副腎髄質ホノレモン、特にノルエピネフリンがこの過程を媒介する重要な役割を担っているものと推測され、いっそうの追究が望まれるところである。それでは、血液型とはどうであろうか。
 この研究で使われたType A行動に関するアイテムはTable IV-1に載せたとおりである。
 被験者は、これら14個のアイテムにyes-noの2件法で回答していくことになる。得点は0点から14点に分布するが、ここでは14個のアイテムごとの肯定回答を、血液型別に検討していくことにする。
 Type A行動の診断については、これだけのアイテムではもちろん不適当で、さらに多くのアイテムを必要する。がんらい、質問紙、あるいは問診表はアイテムが多くなくては効果がない。しかし、ここでは14個のアイテムに依存することにしよう。

Table IV-1 Type A行動に関する14個のアイテム

1. 約束した時刻に決して遅れない。
2. 競争意識が非常に旺盛である。
3. 人が話をしているところに口を出して話を取ってしまう。
4. いつも急いでいる(性急である)。
5. 待つべきときに待てない。
6. 目標達成のためには、あらゆる手段を使う。
7. ―度にいくつもの仕事をし、やっているうちに次の仕事を考える。
8. 行動がいつも敏速である。
9. 厳しいダイナミックな生き方をする。
10. 感情を顔や動作に出しがちである。
11. いろいろなことに興味を持つ。
12. 社会的にもつともつと伸びたいと思う。
13. 話し方がエネルギッシュである。
14. 「仕事のやり手」だということを他人に認めてもらいたいと思う。

 被験者は、日本大学文理学部の学生と通信教育部の学生である。Table IV-2には、被験者の血液型別人数が示されている。

Table IV-2 この研究の被験者 単位:人

性別

O型者 A型者 B型者 AB型者 全体
男子 183 227 153 65 628
女子 52 73 44 20 189

 結果 すでに触れているように、ここではTable IV-1掲げられた14個のアイテムについての各血液型者の肯定回答をまとめていくことにする。

Table IV-3 Type A行動と血液型との関連(男子) → 一部省略

アイ
テム

O型者
183人

A型者
227人

B型者
153人

AB型者
65人

1

57.9

45.4

51.0

49.2

2

56.8

48.0

46.4

44.6

3

20.2

15.9

13.1

13.8

4

23.0

25.6

21.6

27.7

5

23.5

20.3

19.0

16.9

6

44.8

44.5

41.8

36.9

7

33.9

31.3

32.7

24.6

8

39.3

41.0

43.1

40.0

9

25.1

19.8

23.5

16.9

10

43.7

39.2

43.8

53.8

11

92.9

89.4

87.6

84.6

12

95.6

87.7

90.2

81.5

13

30.6

35.7

31.4

32.3

14

64.5

63.0

56.9

60.0

 Table IV-3は、男子におけるType A行動と血液型との関連を示したものである。84対の比較のうち、 有意な差を表わしていたのはわずかに6対にすぎない。すなわち、アイテム1(O>A)、アイテム10(A<AB)、アイテム11(O>AB)、アイテム12(O>A、O>B、O>AB)である。O型者の優位が見られるが、O型者が関与する42対の比較のうち、わずか5対にすぎないのである。しかも、Table IV-4の女子のデータにおいてはこれらがほとんど逆転してしまっている。

Table IV-4 Type A行動と血液型との関連(女子) → 一部省略

アイ
テム

O型者
52人

A型者
73人

B型者
44人

AB型者
20人

1

30.8

45.2

36.4

25.0

2

30.8

37.0

34.1

30.0

3

19.2

19.2

11.4

30.0

4

9.6

30.1

22.7

30.0

5

15.4

16.4

13.6

20.0

6

34.6

27.4

31.8

35.0

7

38.5

24.7

34.1

40.0

8

40.4

31.5

29.5

40.0

9

13.5

11.0

20.5

10.0

10

36.5

31.5

45.5

35.0

11

84.6

75.3

97.7

80.0

12

82.7

86.3

90.9

95.0

13

30.8

24.7

34.1

25.0

14

59.6

58.9

70.5

75.0

 Table IV-4を見ると、84対の比較のうち、有意な差を表わしていたのはわずか5対にすぎない。すなわち、アイテム4(O<A、O<AB)、アイテム11(O<B、A<B、B>AB)である。ここでもO型者が関与しているのが目にとまるが、これも42対の比較のうち、わずか3対で、しかもO型者の肯定反応が他の血液型者よりも優れて低位になってしまっている。
 これはどうしたことだろうか。

 次に、アメリカの例を紹介します。

 アメリカでの研究(対象は男性のみ)では、多い順にO、B、Aということになっているようです。つまり、A型が一番タイプAらしくないと…(笑)。AB型は数が少ないせいか、書いてありませんでした。

South Med J 1991 Feb;84(2):214-8
Relationship between blood groups and behavior patterns in men who have had myocardial infraction.
Neumann JK, Chi DS, Arbogast BW, Kostrzewa RM, Harvill LM

 なお、中国では血液型とは特に関係ないという結果が得られているようです。この論文は中国語なので、残念ながら詳しい内容はわかりません。

Hua Hsi I Ko Ta Hsueh Hsueh Pao 1991 Mar;22(1):93-6
[Study on relationship between human ABO blood groups and type A behavior pattern].
[Article in Chinese]
Mao X, Xu M, Mu S, Ma Y, He M

【H16.2.21追記】

 その後、原典を入手することができました。

 原題:『華西医学大学報』 毛新他 精神病学教究室 人類ABO血型与A型行為模式連系的初歩探討 (原文は簡体字)

 その中でサンプルについては、「本学の学生と家族129人のうち、有効な121人を使用。男59人、女62人、年齢は20〜65歳、平均年齢は27.9歳」と書かれています。つまり、男女がほぼ同数ということになりますから、有意差がなくとも今までのデータとは矛盾しないようです。

 残念ながら、男女別のデータはありませんでした。念のために調査結果を次に示します。

表1 人類ABO血型与A型行為的連系

Behavior
pattern

Blood Type

Total

A

B

O

AB

A

9

21

14

5

49

B

19

22

28

3

72

Total

28

43

42

8

121

 確かに、有意差はないようです。

 ところで、ここで面白いことがわかりました。大村政男さんの論文でも、女性では全く違う傾向が現れているのです!

Type A行動と血液型との関連(肯定率の平均%・男性) →太字は最高

O型
183人

A型
227人

B型
153人

AB型
65人

46.6

43.3

43.0

41.6

Type A行動と血液型との関連(肯定率の平均%・女性) →太字は最高

O型
52人

A型
73人

B型
44人

AB型
20人

37.6

37.1

40.9

40.7

 こうなると、同じ血液型でも性別により全く逆の結果が現れると結論づけるしかありません。つまり、ちゃんとした差を出すには、男女別に集計しないといけないのです。

【H15.9.8追記】

 なお、女性ではO型が最もタイプAでないという男性とは逆の結果が出ているようです。ただ、論文を入手していないため、血液型分布がわからないのであくまで参考です。

J Am Med Assoc. 1978 December 1;240(23):2548-52
Myocardial infarction and other vascular diseases in young women.
Jick H, Dinan B, Herman R, Rothman KJ.

 大村さんの論文を再度読んでみたところ、CR検定では、アイテム4(O<A、O<AB)、アイテム11(O<B、A<B、B>AB)が5%または1%(太字)で有意です。やはり、男性とは逆の結果が出ているようです。

 Table IV-4を見ると、84対の比較のうち、有意な差を表わしていたのはわずか5対にすぎない。すなわち、アイテム4(O<A、O<AB)、アイテム11(O<B、A<B、B>AB)である。ここでもO型者が関与しているのが目にとまるが、これも42対の比較のうち、わずか3対で、しかもO型者の肯定反応が他の血液型者よりも優れて低位になってしまっている。
 これはどうしたことだろうか。

 実際に、大村さんのデータをO型とO型以外に分けて計算してみると次のようになります。

Type A行動と血液型との関連(肯定率の平均%・女性) →太字は最高

O型
52人

O型以外
137人

37.6

38.8

 念のため、アメリカ人の血液型分布で補正してみましたが、同じような傾向は出ています。

Type A行動と血液型との関連(肯定率の平均%・女性) →太字は最高

O型
46%

O型以外
54%

37.6

38.1

 そこで、私の仮説を思い出してみてください。え、覚えていないって? では、再度書いておきましょう。

1.回答者が均質でないといけない(つまり、同じ大学の大学生なんかがいちばんいい)
2.回答者総数が数百人以上でないといけない(できれば千人以上で血液型別の人数が同じならなおよい)
3.能見さんの本の血液型別の特徴を質問項目にすること(一般の性格テストではダメ)
4.能見さんの本の血液型別特徴と回答結果は必ずしも一致しない(とにかく差が出ればよい)

 男性と女性とでは、血液型による回答の傾向が違うので、回答者を均質にしないと差が出にくくなるということですね。こんなに簡単に実証できるとは…私自身も驚いています。(^^)

 更に面白いのは、

Type A行動と血液型との関連(男性−女性) →太字は最高

O型

A型

B型

AB型

9.0

6.2

2.9

0.9

 つまり、性差は、O型>A型>B型>AB型となります。これも能見さんの観察と一致します。実に驚きました!

 その他に、白血球の顆粒球とリンパ球の比率を調べることにより、交感神経・副交感神経の活動がわかるという研究もあるようです。残念ながら、詳細を確認していないため公表は控えさせていただきます。 -- H13.4.8

【H19.3.18追記】

18.gif (350 バイト)顆粒球とリンパ球の比率による仮説

安保徹さん 医療が病をつくる〜免疫からの警鐘〜 岩波書店 H13.11 1,800円+税

 安保(あぼ)さんは、世界的に活躍する免疫学者です。
 最近の著書である、この『医療が病をつくる』では、血液型と性格について正面から取り上げています(17〜19ページ)。

 交感神経優位のタイプでは活動的で「顆粒球人間」となり、副交感神経優位のタイプではゆったりした「リンパ球人間」となることを述べた。しかし、この法則と関連して、血液型と人の性格の間にも関係があることが分かってきたのである。
 長い間、血液型と性格のつながりが指摘されてきたが、その謎を科学的に明らかにした研究はこれまでなかったように思う。

 ではその根拠は何かというと、

 人間ドックで測定した成人の末梢血のリンパ球のレベルを血液型ごとにまとめると次のようになる。O型39%、B型37%、A型36%、AB型34%である(対象者5000人)。この鋭い観察は畏友の福田稔医師が明らかにしたものである…

 これはかなり衝撃的な文章ですね。(@_@)

 そこで、O型>B型>A型>AB型となるデータをチェックしてみました。松井さんの論文1からよさそうなものを選んだのがこれです。なお、データの出典と詳細については松井豊さんの論文のページを見てください。

血液型別肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青

項目の内容

O(182) A(225) B(138) AB(68)

9. 人には心を開く方である

54.4 49.3 52.9 47.1

 でも、顆粒球が多く活動的な方が「人には心を開く」ような気もしますが、本当はどうなのでしょうか? ちょっと気になります。ただ、O型が情緒安定型とするなら、普通の状態ではそうですから確かにあてはまります。たぶん、もう少し詳細に分析する必要があるのでしょう。

 ここで注意すべき点は、必ずしもすべてのデータでO型>B型>A型>AB型(あるいはO型<B型<A型<AB型)となるのではないことです。従って、顆粒球とリンパ球の割合だけで血液型と性格についてのすべてが説明できる訳ではありません(残念!)。

 しかし、血液型と性格について、説得力がある医学的な仮説がまた一つ増えたことになります。やった〜、パチパチ。(^^)

 ちなみに、安保さんの名前はローマ字で書くと「ABO」さんです(笑)。お後がよろしいようで…。

 

■補足

 念のため、誤解をしないように書いておきます。性格に影響を与えるのはMAOだけではありませんし、MAOが脳内物質に影響を与える場合も、受容体の種類・働きが多いので、そのままストレートに影響が出るとは限らないはずです。従って、今回のように簡単に結論が出るとは到底思えません。いずれにせよ、結果として能見さんの観察は当たっていたわけですが、すべての性格特性を科学的に説明できるのは、MAOの例から見て、非常に時間がかかるものと思われます。

ダダモ博士の血液型健康ダイエット 集英社文庫 H10.5

 ダダモ博士の"Eat Right 4 Your Type"の日本語版が発売になりました。

ダダモ博士の血液型健康ダイエット 集英社文庫 濱田陽子[訳] 729円+税

 血液型別の性格のところだけちょっと紹介しておきましょう。

 次に、表紙から引用しておきましょう。

 O型が動物性、A型が植物性食品を多くとりましょうということです。

 では、帯からです。

日米で話題沸騰。TVワイドショーで大反響。
あなたは何型?血液型にあった食事療法で健康に痩せられる。全米でベストセラーのダイエットブック。
全米35万部、いまアメリカで一番読まれているダイエットの本。

 これは、O型が胃酸が多く、A型が少ないことから来ているようです。では、ちょっと長いのですが、本文中の血液型と性格についてから引用しておきます(78〜81ページ)。

 人類が進化していく過程で免疫系と消化管が変化を遂げ、その結果として新しい皿液型が誕生した。精神や感情の反応もまた進化にともなって変化し、まったく新しい精神活動や行動様式が現われた。
 4つの血液型はずっと昔にそれぞれ異なる難関を闘い抜いて生き残ってきた。血液型の歴史のなかで最初の大きな変革であるA型の秩序ある共同社会が出現したとき、 一匹狼タイプのO型は追い詰められ、惨めな敗北で苦い思いをかみしめていたとしてもおかしくない。
 わたしたちの心の奥深くにそのような大昔の祖先の性質が潜んでいると考えるのは突拍子もないことだろうか?
 血液型によって人の性格が決まるという考え方は日本では広く受け入れられている。日本では血液型による人間研究が真面目におこなわれているのだ。企業のなかには新しい人材を雇うときに応募者の血液型を参考にするところがあったり、市場調査員は人々の購買傾向を予想するのに血液型を考慮に入れ、多くの人が友人や恋人を選ぶときに血液型を気にしている。自動販売機型の血液型占いは、駅やデパート、レストランなど人の多く集まる場所でよくみられる(注:私は見たことはありませんが…)。日本には血液型を研究する団体もあり(英語版では能見さん主催の「ABOの会」となっていますが、現在はありません)、血液型をもとに個人や企業が正しい判断を下せるように活動をおこなっている(注:ここも少々疑問です)。
 血液型による性格判断を中心になっておこなっているのは能見俊賢氏で、その理論はまず彼の父親によって打ち立てられた。能見氏とアレグザンダー・ベシャーは1980年(注:正しくは1988年)にYou Are Your Blood Typeという本をアメリカで出版した。彼の著作物は、日本では600万部以上も売れている。その本には、各血液型別の性格とアドバイスがのっており、どんな職業を選ぶべきかということから、どういう人と結婚するべきかまで事細かく指示されている。さらに、そのアドバイスを無視した場合、どんなに悲惨な結末が待っているかといとまで書いてあるのだ(注:You Are Your Blood Typeという本は読んでいませんが、「どんなに悲惨な結末まで」というのは能見さんの日本語の本を読んでいる限り信じられません…)。
 彼の本は、占星術や数占いなどの本と同じで、読んでいる分には楽しめる。しかし、そのアドバイスをあまり真面目に受け取るのはどうかとわたしは思う。結婚相手や恋人を血液型で選ぶべきではない。 わたしはA型だが、O型の妻マーサを深く愛している。血液型の相性が悪いからといって彼女と結婚できなかったとしたら、などとは考えたくない(注:能見さんは血液型の相性の良し悪しはないと主張しています)。食事の準備だけは少し手間がかかるものの、わたしたちの結婚生活はとてもうまくいっているのだ。
 また、人々を型どおりに分類しようとするのは怖いことでもある。「A型の人はこう」とか「B型の人はこう」と決めつけてしまえば、その次には「B型は、ほかの血液型より優れている」とか「大統領になれるのはO型の人だけだ」(注:日本の首相はO型が多いですが、アメリカの大統領はそんなことはありません)というふうに理論が飛躍していくことは避けられない。このようなことが日本では日常的に起こっている。たとえば、企業が中間管理職を募集する広告で、B型の人材を求むと明記することもある(注:頻繁ということはないはずなのですが…ニュースになるぐらいですからね)。
 それでは、血液型と性格の関係を研究する価値はどこにあり、わたしはなぜ、本書でこの問題を取り上げたのか? 日本のような血液型性格判断は極端に過ぎると思うが、わたしは細胞と性格に何か関係があるという考え方は基本的に正しいのではないかという思いを捨てることができないからだ。
 現在、科学者や医者などは肉体と精神が互いに影響を及ぼしあっていることをはっきり認めているし、本書でも前の項で血液型とストレス反応の関係についてお話しした。血液型が性格に関係しているという考え方はそれぱどおかしなものではない。実際、ひとつひとつの血液型をよく観察してみれば、それぞれ異なった性格を持っていることがわかるはずだ。
 わたしたちは皆、祖先の長所を受け継いでいる。自分の性格を知ることは、祖先の足跡をしのぶためのもうひとつの方法かもしれない。
 この本でわたしが述べる血液型別の性格の分析とアドバイスは、わたしが何年もかけて何千人もの人々を観察してきた経験に基づいたものだ。生命を司る血液型の力について、理解をより深めていただくのに役立つことだろう。ただ、これを否定的な意味合いで受け取るとだけはしないでほしい。前向きに人生を進むための参考にしていただければ幸いである。
 自分の血液型の持つ長所を存分に生かせば、仕事の能率や精度を上げることができるし、入生においても幸せで不安のない日々送れるようななる。
 性格に血液型が関係しているのかについては、まだはっきりと判断が下せる証拠は見つかっていないが、血液型遺伝子はいつかその秘密が解明される日を待ち続けている(注:1990年にすでに解読されています)。わたしたちの体が持つ独特の設計図を完全に理解するためには、さらに綿密な調査を待たなくてならない。
 21世紀に入れば、わたしたちの体のなかに隠されている情報を解読することができるようになるかもしれない。だが、所詮、わたしたちには解読など無理なのかもしれないという気もする。わからないことは山ほどあり、わたしたちには理解の及ばないような情報もたくさんあるかもしれないからだ。それでもなお、様々な可能性について考えてみることができるはずだ。こういう考察は、高い知能を誇る人間にしかできないことなのだから。

 面白い記述はまだまだあるのですが、それは読んでのお楽しみです!

 この本の中のほとんどは妥当な記述なのですが、残念ながら最近の分子生物学の成果についてはあまり反映されているとはいえません。これは、ABO式血液型遺伝子の研究が主に日本でしかされていないことが原因かもしれません…。詳しくは斉藤さんの論文のページをどうぞ!

Molecular Biology and Evolution Volume 14, Number 4, April 1997, Evolution of Primate ABO Blood Group Genes and Their Homologous Genes, Naruya Saitou and Fumi-ichiro Yamamoto pp. 399-411

 なお、日本語での要約は、次の論文、あるいは斉藤さんの著書で読むことが可能です。

斉藤成也 (1997) 遺伝子の進化とは 〜ABO式血液型を中心に〜
BIO Clinica 12(11), pp. 830-834.

斉藤成也 (1998) ABO式血液型遺伝子の系統ネットワーク間解析
遺伝 52(3), pp. 9-10.

 これらの中では、圧倒的に最初の英語の論文がオススメです。面白いので一気に全部読んでしまいました。時間はかかったのですが…。
 また、日本語では、BIO Clinicaの方がオススメです。しかし、これらの2つよりは、斉藤さんの著書の『遺伝子は35億年の夢を見る』(大和書房)がより詳しいです。興味がある方は、ぜひ全部ゲットしましょう! 面白いですよ。(^^)  -- H10.6.22

【H27.10.11追記】

 最近、医学的根拠に関する論文が発表されましたので、タイトルだけ紹介しておきます。

  • Shoko Tsuchimine, Junji Saruwatari, Ayako Kaneda, Norio Yasui-Furukori (2015), ABO Blood Type and Personality Traits in Healthy Japanese Subjects
    [http://journals.plos.org/...]
  • Donna K. Hobgood (2011), Personality traits of aggression-submissiveness and perfectionism associate with ABO blood groups through catecholamine activities
    Medical Hypotheses, Volume 77, Issue 2, Pages 294-300.
    [http://www.sciencedirect.com/...]

 前者は血液型の表現型[A,B,O,AB]ではなく遺伝子型[AA,AO,BO,BB,O,AB]との関連、後者はホルモンとの関連を論じています。
 なお、後者は無料でフルテキストが読めます。また、参考文献が100以上と充実しているので、英語に抵抗がない人は読んでも損はしないでしょう。


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最終更新日:平成16年7月19日 [h28.10.2モバイル用に微修正]