肩こりについて - アート鍼灸マッサージ
肩こりの原因については様々なところで様々挙げられていますが、どれも一理あると思われますので一つの原因に特定することは無理かと思われます。
解剖学的・運動学的に、常に頭の重さを支え、腕の重みがかかり…負担が大きい場所の一つです。
問題はどこの筋肉が主たる治療対象であるべきか?という点です。
肩こりについて常々不思議でならないのは、メディアでも書籍でもこういった手技療法の施術者やその道の専門家が言及する場でも、肩こりの説明で筆頭・メインの筋肉として挙げられるのが「僧帽筋」だという事です。
注: “頸部・肩部の深層の筋群”が大事だ、などの話は当たり前なのでここでは置いておきます。
また、“骨盤の歪み”などに根拠を求める人達の話は、最初から身体に対する根本的な考え方が違いすぎるので置いておきます。
ここでは あくまで「僧帽筋」か、「肩甲挙筋」か、の議論だと思ってお読みください(*図1)。
「僧帽筋」と「肩甲挙筋」
(図1)僧帽筋と肩甲挙筋
今までそれなりに多くの数の患者様に接してきましたが僧帽筋がメインの肩こりの方にお会いしたことはほとんど記憶にありません。
確かに、僧帽筋も上縁部などは強烈なトリガーポイントができやすい場所であることは事実です(*図2)のでもちろん重要ですが、(当院が考える)肩上部でのコリとしては決してメインではありません。
(*図2)僧帽筋におけるトリガーポイント多発領域
深部の頸部の筋群や後頭下筋群などはさておき、誰でも触れるような、割と表面でメインの凝り+痛みの主訴を生み出しているのはどう考えても肩甲挙筋です。
肩こりという半ば国民的関心ごとについて、現在の高度な情報化社会にもかかわらずこの乖離が継続していることについては非常に不思議な気がしております。
僧帽筋を推す施術者や専門家が本当に僧帽筋だと思って僧帽筋に対して治療をしているのが、僧帽筋だと思って実際は肩甲挙筋を治療しているのか分かりません。
エコーで確認していても、僧帽筋を抜けて、その下の肩甲挙筋の大きな凝りにまともに鍼がヒットした時(図3、4)(当院では、基本的に美容鍼で使うような極細の鍼を使用していますが、それでも)に失神しそうなほど響いてしまうことがあります。
(図3)僧帽筋と肩甲挙筋のエコー画像
(図4)僧帽筋と肩甲挙筋のエコー画像:解説
* 赤丸は鍼先 - 肩甲挙筋の筋膜に到達
以上のように、 当院の肩こり治療は肩甲挙筋を大事に取っていきます。
かなりの大きな硬結を作っている場合が多いですし、肩甲骨上角付近ではとても硬くなっている場合が多いですが、揉んでいく場所の順序と適切な刺激量に耐えられる患者様であれば間違えなければ硬さとその大きさの割には結構短時間でほぐれていきます。
響きすぎたりして刺激量にリミットがある場合は膜への刺激を小さなものから初めて、徐々に閾値を挙げていく必要があります。
いずれにしましても、肩こりは腰痛などに比べれば構造が単純なので、指であれ、鍼であれ、必要な処置をしてもなお「ほぐれない」という事は想像しにくいです。