五十肩について - アート鍼灸マッサージ
説明
五十肩は通称で、正式な名称を「肩関節周囲炎」といいます。
いつか必ず痛みはなくなる、という意味では治ることが約束されている疾患と標準的なテキストでは説明されることもありますが、実際にはかなり長引いたり、再発することも多いことが報告されています。
一般的に、安静時痛(じっとしていても痛みが)が出る急性期、
安静時痛は改善するが、動作時痛(肩や腕を動かしたときに痛み)が出る慢性期、
痛みやなくなったが、可動域制限が残る拘縮期
に分けられます。
*痛み(痛いから動かないというのではなく)だけでなく、明らかな筋力低下がみられる場合は、単なる肩関節の周囲炎を通り越して腱板の断裂が疑われるので注意が必要です。
肩は解剖学的な特徴として、股関節と異なり、前後左右に大きく動く仕組みとなっています。
つまり、股関節は体重を支えるために進化してきたため、動きよりも頑丈さ(可動性よりも耐荷重性)に焦点が当てらた構造になっています。大腿骨の関節頭は骨盤にがっちりはまっている構造です(このはまり具合が甘い構造になっていると脱臼しやすくなります。例:先天性臼蓋形成不全など)
一方、肩関節は、機能性が重視された作りになっているので骨同士の連結は浅く、筋肉を始めとする軟部組織で吊っている状態です。
五十肩の原因は完全に解明されているわけではありませんが、名称のとおり肩関節周囲の組織の加齢的変化が基礎にあるのは間違いないと考えられます。
治療の方向
本当の急性期で炎症・痛みがかなり強い時は患部(図1:赤丸)に下手に刺激を入れるのは避けた方が良い場合と思われます。
そのような場合は、 周囲の肩関節や肩峰下の第2肩関節に腱を提供している棘下筋や小円筋、棘上筋、肩甲下筋などの 筋腹〜逆方向の付着部まで(図1:青丸)の筋硬結の解消が効果的です。
棘下筋の上縁部や小円筋はたいていの人で数ミリの幅(お蕎麦、一本分くらいの幅)のコリが触知されますが、軽く圧迫しただけでも無茶苦茶痛い場合が多く、まずそれらを柔らかくするだけで五十肩の患部の痛みが軽減する場合が多いです。
徐々に本丸に近づけるような状態になってきましたら図2のような内部に治療対象が移っていきます。
炎症が長引き、それに伴って不動の時期が長くなると、周囲の組織の癒着が起こってしまったり、軟部組織が短縮し、関節硬縮に至ってしまいます。
初期・軽度の癒着であれば鍼で組織の間を通して直接はがすことや、低周波パルスを工夫して利用することで改善することも可能ですが、癒着がある程度進んでしまった場合はより確実に結果を得るには整形外科でのリリースの注射などが必要になります。
また、関節硬縮に至ってしまった場合は本当に厄介で、そこから可動域を広げたり元に戻すのは相当大変です(*1)。
(図1)
(図2)
(図3)参考:患部エコー画像
(*1)事実上、通常の手技療法(けがや脱臼を覚悟のかなり乱暴なことをするなら別ですが)では無理で、日常生活に支障をきたしているときは、関節包切離などの手術を検討する必要が出てくる場合があります。
ただし、切開したことによって再度、周囲組織と癒着を起こすことがあるので、とにかく最初の段階で拘縮に至らないように最大限の注意が必要です。