Ms. Watanabe


ABO FAN


28.gif (298 バイト)渡邊席子(わたなべよりこ)さんの論文

 渡邊席子さん(現・北海道大学非常勤講師)の論文です。この論文は、読めばわかるのですが(当然か…)非常に画期的です(全くの推測ですが、この論文があまり有名ではないのは、否定論者の心理学者に都合が悪い?からかもしれません…)。
 一言でいうと、血液型による性格の差について知っていようがいまいが(=「血液型ステレオタイプ」があろうがなかろうが)、その回答者の回答には影響しないというものです。方法も画期的で、本人が頭がいいのか、指導教官がすばらしいのか…、たぶん両方なのでしょう。(^^)

#文章が非常に難解で、理解するのに3回ぐらい読み直しました。(^^;;

 例えば、A型が「礼儀正しい」ということをそのA型の回答者が知っていようがいまいが、「礼儀正しい」と答える率が高いのです。つまり、差が出た場合は本当の差ということですから、肯定論者には画期的な内容です。ただ、残念なことに血液型による性格の差について知っている人と知っていない人の回答の対比のデータがないのです(もちろん、差がないことが予測できます)。これがあれば全く文句なかったのですが…。非常に残念です。

 誤解のないように書いておきますが、渡邊さんは血液型と性格の関係に否定的ですので、念のため。 -- H10.5.21

 その後、あるメールをきっかけにして、次の要約に書いてあるデータを「発見」しました。論文の最後に少しだけ触れられていて、ほとんどは脚注の中に小さく書いてあるデータです。このデータを見れば、どう考えたって血液型と性格の関係に否定的なわけがないんですが(失礼!)。やはり、私には謎の女性です…。 -- H11.2.13

12.gif (321 バイト)要約

 この論文は非常に難解です(と思うのは私だけ?)。そこで、私の得た結論の要約を書いておきます。赤字のところに注目してください。

正確な知識とその人の知識との相関(表Cを一部改変)

区 分

知識問題の正答率
大きいほど知識がある

通説−通説判断の相関
→正確な知識と
その人の知識との相関
その血液型のものと
判断した性格特性の確信度
→大きいほど自分にあてはまる
血液型で性格を決めつける
正確な知識がある

≧.75 (n=38)

.82 .90 (SD=.96)

≧.72 (n=46)

.73 1.05 (SD=.93)
正確な知識がない

<.75 (n=56)

-.06 1.32 (SD=.91)

<.72 (n=48)

-.10 1.34 (SD=.94)

<.65 (n=35)

-.25 1.48 (SD=.84)

 血液型と性格の正確な知識(=通説)がある人(=通説受容群)は、正確な知識とその人の知識とはほぼ一致しています。つまり、青字のように通説−通説判断には強い正の相関があります。逆に、正確な知識のない人(=通説非受容群)は、通説とは「全く関係ない知識」か「反対の知識」を持っているはずです。ですから、血液型と性格の関係があるのなら、通説と「反対の知識」とは負の相関があることになります。赤字のデータを見ればわかるように、「反対の知識」が増えるほど負の相関が強くなることがわかります。つまり、血液型と性格は関係がありそうだという可能性を示唆しているのです。ただ、統計的に有意な差があるわけではないので、あくまでも可能性を示唆しているだけで、断定はできません。

 更に、

 以上の分析結果は、否定論者だけではなく、肯定論者も含めての「常識」をひっくり返すものです。これらのことから、血液型と性格についての知識を普及すればするほど「偏見」や「差別」が減るはずだという結論が得られます。つまり、否定論者の「血液型と性格は関係あるはずがない」といった主張は、本来の意図に反して「差別」や「偏見」を増やすことになり、全く逆効果であることになるのです。う〜ん、なんと言っていいのかわかりませんが、否定論者には皮肉な結論というしかありません。   -- H11.2.13

12.gif (321 バイト)プロトタイプとイグゼンプラ

 原題: 渡邊席子 血液型ステレオタイプ形成におけるプロトタイプとイグゼンブラの役割 社会心理学研究 第10巻第2号 77〜86ページ H6

 まず、用語からしてわかりにくいと思うので、簡単に説明しておきます。「血液型ステレオタイプ」というのは、「血液型によって性格に差がある」という「信念」のことです。信念ですから、実際に差があろうがなかろうが本人はそう思いこんでいる訳です(私に言わせれば「血液型によって性格に差がある」のは「信念」でなく「事実」なのですが、これは否定論者の心理学者の定義ですから…)。次に「プロトタイプ」と「イグゼンプラ」ですが、これについては論文から引用しておきます。 -- H10.5.21

血液型ステレオタイプ形成にあたって、プロトタイプ情報(一般に流布している、通説に基づく情報)と、イグゼンプラ情報(特定の個人の血液型と性格特性についての情報)の2種類の情報が関連しているという仮説が、本研究での基本仮説である。

12.gif (321 バイト)序論

 まず、序論から一部引用しておきます。  -- H10.5.21

 大学生を対象に行った著者らの予備調査結果によると、調査対象者全員(三重大学の学生94名)について算出した通説と信念内容との一致割合は.44(SD=.18, n=94)であった(この具体的方法については、本調査の分析法を参照されたい)。ただしこの数値は、血液型性格判断は信用できないと思っている人や、血液型性格判断に興味がない人の間では低く、血溌型性格判断に興味を持ち信用している人々の間ではもっと高くなっている可能性も考えられる。そこで、同時に行った血液型性格判断に対する意見調査の項目の中から、特に血液型性格判断に対する信用を示す項目(「雑誌などに載っている血液型性格判断で、いつも共通して指摘されている内容は、ある程度信用できると思う」、「人の性格の複雑性を考えれば、血液型性絡判断など全く信用できない」)、及び血液型性格判断に興味を持っているかどうかについての項目(「血液型性格判断についての特集や記事をよく読む」、「血液型性格判断の話をするのが好きである」、「血漉型体格判断には興味がある」)に対し、信用に関する2項目すべて、及び興味に関する3項目すべてについて、「信用する」あるいは「興味がある」方向に回答している調査対象者のデータのみを用い、通説との一致度の平均を算出したところ、信用性については.43(SD=.18, n=28)、興味・関心については.48(SD=.16, n=25)という平均値が得られた。これらの数値は、それ以外の対象者の平均値と比べて有意な差はなかった(信用性:t(92)<-.33, n.s.;興味・関心:t(92)=1.31, n.s.)。従って、全員の場合も、血液型性格判断について信用しているあるいは興味を持っている人の場合も、個人が持っている信念の内容のうち、通説と一致しているのは約4〜5割であり、残りの5〜6割は通説とは異なった内容で構成されていることが示されている。さらに、前記の予値調査回答者全員のうちある二人を抽出して、そのペアの信念内容を比較するという作業を、組み合わせ分だけ行い、重複している分を除いた一致度の平均を算出したところ、その数値は.36であった(具体的方法については、本調査の分析法を参照されたい)。また、通説との一致度と同様に、血液型性格判断を信用している者と興味・関心を持っている者だけをそれぞれ抜き出し、一致度の平均を計算したところ、信用性については.36、興味・関心については.39の平均値が得られた。これらの数値についても、否定的に答えた者の平均値と比べて差があるかどうかを調べたところ、信用性を持つ者についても(t(92)=.29, n.s.)、興味・関心を持つ者についても(t(92)=-0.69, n.s.)有意な差は見られず、いずれにせよ個人が持っている信念の内容のうち6割強は一致していないことがわかった。

 それでは何故、ステレオタイプにこのような個人差が現れるのであろう。プロトタイプを中心とする信念形成の見地からは、通説との不一致が生じるのは、もともとの情報の違いのため、つまり通説の内容そのものにすでにバリエーションが存在しているからだという説明が可能である。この観点からすれば、違う情報を受け入れるのだから、それを利用して形成された信念も人によって異なるのは当然である。ただしこの説明によって、上述の個人差のすべてが説明できるかどうかは疑問である。
 これに対して、プロトタイプ情報よりもむしろイグゼンプラ(exemplar)情報が血液型ステレオタイプ形成に大きな役割を果たしているという観点から、上述の個人差を説明することも可能であろう。イグゼンプラとは、個人が持っている個別例的情報と定義できる(Fiske & Taylor, 1991)。あくまでも個人の具体的な経験に基づくものであるから、イグゼンプラには当然個人差がある。プロトタイプ同様、イグゼンプラも信念形成時に利用されていると考えれば、プロトタイプの違いに頼らない、もう一つの信念形成過程の説明の可能性を与えることができるだろう。もう少し具体的にいえば、特定の血液型を持つ人が特定の性格を持っているという具体的情報(イグゼンプラ)を一般化して、その性格がその血液型の人々に一般的な性格であると考えてしまっている可能性を、ここではオグゼンプラに基づく信念形成と考える。
 プロトタイプとイグゼンプラを比べると、イグゼンプラはプロトタイプよりも情報内容が明確であり、かつ密度も濃い。そのイグゼンプラの中でも、 自分についての情報(自分が把握している自身の性格についての情報)は特に強い影響力を持つであろう。それ故、自分の血液型についての信念形成の際には、イグゼンプラがとりわけ重要な役割を果たすものと考えられる。さらに、通説に関して正確な知識を持っている人に比べると、通説をよく知らない人の方がイグゼンプラを重視して、血液型と性格との関連性についての信念を形成していると予想される。血液型ステレオタイプ形成にあたって、プロトタイプ情報(一般に流布している、通説に基づく情報)と、イグゼンプラ情報(特定の個人の血液型と性格特性についての情報)の2種類の情報が関連しているという仮説が、本研究での基本仮説である。この仮説を検討するために、本研究ではこれら2種類の情報の相対的重要度の個人差に注目した分析を行う。

「通説」→「通説判断」→「特性判断」
Fig. 1a プロトタイプ的信念形成過程のモデル図

「通説」→「通説判断」←「特性判断」
Fig. 1b イグゼンプラ的信念形成過程のモデル図

12.gif (321 バイト)目的

 次は、目的からです。  -- H10.5.21

 本研究の目的は、血液型ステレオタイプの形成に際し、プロトタイプとイグゼンプラの2種の情報処理形態の役割を明らかにすることにある。この目的を追求するにあたって、今回の研究では特に、自分自身の血液型についてのステレオタイプを取り上げ、自分自身の血液型についてのステレオタイプを中心に考えてゆくものとする。
 血液型と性格との関連性について形成される信念について考える場合には、それがプロトタイプに由来するかイグゼンプラに由釆するかにかかわらず、次の三つの要素を考感する必要がある。その三つの要素とは、@通説(公刊され、一般に流布している、ある血液型とある性格特性との組み合わせ)、A通説判断(ある性格特性が通説によって本人の血液型に当てはまるとされていると、本人が判断するかどうか)、B特性判断(ある性格特性が目分に当てはまっていると、本人が思うかどうか)である。この3要素を使って、特に自分自身についての、プロトタイプに由来する血液型ステレオタイプ形成過程を図示すると、Fig. 1aのようになると考えられる。
 Fig. 1aの矢印の流れは一方向的であり、通説の内容のうち、自分に当てはまると判断したもの(通説→通説判断)を自分の血液型に対応する性格特性であるとみなし(通説判断→特性判断)、その結果通説と特性判断が一致して信念が形成される。つまり、通説判断に合わせるように特性判断をするようになり、その結果、両者が一致するようになるので、血液型性格判断は当たっていると思うようになる。このような一方向的なプロセスをたどって信念が形成されている人は、通説についての正確な知識を持っているはずである。
 これに対して、イグゼンプラに由来する信念形成過程は、Fig. 1bのように表すことができる。この図における流れは一方向ではない。通説から通説判断へのプロセスは、イグゼンプラの場合にはほとんど想定されていない(つまり、通説をそのまま受け入れているわけではない)。また通説判断と特性判断との間の流れは、プロトタイプ的信念形成の場合とは逆のプロセスをたどり、矢印は特性判断から通説判断へという方向に向いている。
すなわち、 自分の性格についての特性判断に合わせるように通説判断をするようになり(通説特性←特性判断)、その結果、両者が一致することになるので、血液型性格判断が当たっていると思うようになるわけである。このようなプロセスで信念が形成されている人は、通説をよく知らないので、自分について自分が持っている情報を手がかりにする。つまり、ある性格特性が自分に当てはまっていると思えば、その特性は自分の血液型全般に当てはまるものだと判断しがちになる。
 以上の議論より、本研究では、上記の3要素(通説・通説判断・特性判断)について、以下の三つの仮説を検討する。

仮説1:それぞれの個人が持つ血液型と性格との関連性についての信念は、通説と必ずしも一致していない。
仮説2:個人が持つ血液型についての信念内容には、個人差がある。
仮説3:自分に当てはまるものと判断された性格特性は、本人の血液型に対応する特性として信念 内容(通説判断) に加えられやすくなる。

12.gif (321 バイト)方法

 方法についてです。  -- H10.5.21

 血液型性格判断についての調査と題して、質問紙に答えてもらう形式をとった。日時は1992年10月28日と30日、調査対象は大学生112名(北海道大学文学部学生55名、教養部学生57名、 うち男性62名、女性46名、不明4名)。
 質問紙は、2種類の質問項目(質問Aと質問B)から構成されている。質問Aは性格判断知識問題28問で構成されている。問題に用いた性格特性28個は、血液型性格判断についての数冊の本(略)から抽出したもので、複数の本(最低3冊)に共通して現われていた項目を使用した(A型問題7問、B型問題7問、AB型問題7問、O型問題7問)。
 手順は以下に述べるとおりである。

@通説判断:ある性格特性を与え、調査対象者に「一般に何型の血液型の人にこの性格の持ち主が多いといわれているか」を判断させ、その血液型を記入してもらう。
A通説判断の確信度:先に行った判断に対してどの程度自信を持っているのか(どのくらいの確率で判断が当たっている自信があるか)をパーセンテージで答えてもらう。
B特性判断:提示された性格特性が調査対象者自身にはどの程度当てはまっているかを1(全く当てはまらない)から7(よく当てはまる)までの7段階で答えてもらう。

 質問Bは、「血液型と性格との関連性に関する意見調査」で、全21問からなる。この意見調査は、血液型と性格との関係についてのいろいろな考え方を挙げ、それぞれの意見にどの程度同意するかを、 1(全く同意しない)から7(完全に同意する)までの7段階で答えてもらう方式をとっている。ここで用いた意見項目は、上瀬・松井(1991)を参考に作成した。質問紙の末尾では、調査対象者自身の血液型と性別を尋ねている。

12.gif (321 バイト)結果

 最後に結果についてです。

 目的で述べた三つの仮説の検証と二つの比較のため、以下の分析を行う。用いたデータは、調査対象者の血液型、通説判断、通説判断の確信度、特性判断である。なお、回答者112名のうち、自分の血液型を知らなかった、あるいは回答に誤りの多かった10名を除く、102名の回答が分析に用いられた。

仮説1について
与えられた性格特性に対して調査対象者が行った血液型の判断が、通説とどの程度まで一致しているかを調べる。この際、全特性に対する一致度(知識問題正答率)と、通説により本人の血液型のものとされている性格特性についての分析を合わせて行うものとする。
 知識問題として用いられた28問それぞれについて、全員の正答率の平均を算出し、これをその問題における全体の正答率とする。この正答率は、調査対象者が持っている血液型性格判断に対する信念が、どの程度通説と一致しているかの指標と考えられる。また、自分自身の血液型についての信念が通説と一致している程度をはかる指標として、通説によりA型に当てはまるとされている性格特性に関してはA型の人のみ(38名)による正答率を算出する。B型(25名)、AB型(12名)、O型(27名)についても同様に、その特性に対応する血液型の人のみによる正答率を算出する。こちらは、調査対象者自身の血液型に当てはまるとされている性格特性に対しての信念が、通説とどの程度一致しているのかの指標とすることができる(Table 1)。
 調査対象者全員について通説との一致度を調べたところ、その平均は.35(SD=.20, n=102)であり、 全体としてみると、個々人の持つ血液型性格判断についての信念は通説とはかなり異なっていることがわかる。これに対して本人の血液型についての信念が通説と一致している割合は全体で.46(SD=.30, n=102)であり、自分の血液型については通説を受け入れている程度がより強いといえる。いずれにせよこれらの結果から、血液型性格判断についての個々人の持つ信念が、かなり個別的なものであることがわかる。
 血液型別に一致度を見た場合、A型についての特性の一致度が他に比べて高いように思われる。この傾向は、本人の血液型での一致度にも見られ、A型に対するイメージの明確さを表す結果となっている。調査対象者の血液型を被験者間要因に、全問題の個人ごとの正答率と本人の血液型問題のみの正答率を被験者内要因にとり、分散分析を行ったところ、調査対象者の血液型の主効果(f(1,98)=5.30, p<.01)、正答率の主効果(f(1,98)=50.94,p<.01)、血液型と正答率の交互作用(f(1,98)=12.98, p<.01)のいずれもが有意であった。さらに上記の交互作用から、正答率の高さが、本人が何型であるかによって異なっていることがわかる(詳しい内容についてはTable 1を参照されたい)。また、各血液型問題において、いわゆる「有名な」性格特性(A型なら「思慮深い」、B型は「慎重さに欠けている」、AB型は「二重人格」、O型は「人がいい」)がかなり高い一致度を示しており、これらの特性が血液型性格判断における中心的特性となっていることがわかる。

仮説2について
 与えられた性格特性に対して調査対象者が行った血液型の判断が、調査対象者間ではどの程度一致しているか、つまり、血液型に対して持っている信念に個人間で共通する要素がどの程度あるかを調べる。この際、判断結果全般に対する一致度についての分析と、本人の血液型に当てはまる性格特性についての分析を合わせて行うものとする。
 予備調査と同様に、調査対象者全員のうち二人を取り出し、このペア間でどの程度判断が一致しているかを調べる作業を102人全員について行う。つまり、一人の調査対象者につき101回目分以外の人との比較を行い、それを調査対象者の人数分(102回)繰り返す。この作業を、重複している分を除いた回数(l02×101÷2=5151回)だけ行い、この平均をペア間の判断の一致度とする。この結果、 全員についての一致度の平均は.29(SD=.18)であった。これは、詫摩・松井(1985)の結果や予備調査の結集と一貫しており、個人によって信念内容がかなり大幅に異なっているという結果が得られている。
 次に、同様の作業を各血液型ごとに、「通説」によりその血液型に当てはまるとされている性格特性のみ(つまり、A型の人なら、A型問題7問についてのみ)を用いて行い(A型:38×37÷2=703, B型:25×24÷2=300, AB型:12x11÷2=66, 0型:27×26÷2=351, 計1420回)、それぞれの血液型群の中での一致度の平均を算出し、最後に全体での加重平均を算出した。その結果、自分の血液型についての判断の一致度の平均は.37(SD=.17)であった。つまり、同じ血液型の人同士であっても、その血液型についての信念の一致度は4割程度ということになる。従って、血液型性格判断に対する信念には、個人間で差があるものと結論することができる。

仮説3について
 自分に当てはまると思っている性格特性(特性判断)が、自分の血液型に当てはまると本人が思っている性格特性(通説判断)と関連しているのかについて分析を行う。
 この分析を行うにあたっては、まずそれぞれの個人ごとに、問題として与えられている28の性格特性を、次の二つに分ける作業を行う。

(1)それぞれの性格特性を、通説により調査対象者自身の血液型の性格特性であるとされているかどうかにより分類する。この分類を通説による分類と呼ぶ。
(2)それぞれの性格特性を、自分の血液型に当てはまると調査対象者本人が考えているかどうかにより分類する。この分類を通説判断による分類と呼ぶ。

 次に、通説による分類の2水準、通説判断による分類の2水準の組み合わせごとに、各個人の特性判断(与えられた性格特性が、本人にどのくらいよく当てはまっているか)の平均を求める(Table 2)。そして、この値を従属変数とし、二つの分類を被験者内要因として分散分析を行った。分散分析の結果は、通説判断の主効果のみが有意(f(1,76)=70.31, p<.01)であり、通説の主効果(f(1,76)=.20, n.s.)も交互作用効果(f(1,76)=1.00, n.s.)も有意ではなかった。つまり、「自分の血液型に当てはまるもの」 と判断した性格特性については、その特性が通説によって本人のものとされているか否かに関係なく、調査対象者はその特性がよりよく自分に当てはまっていると思っていることになる。

Table 1 個々の知識問題正答率と調査対象者の血液型との関連

性格特性

全体での正答率
(n=102)
本人の血液型
での正答率
A型特性

礼儀正しい

.569 .684 n=38

内向的で、問題を自分の中だけで解決する

.402 .658 n=38

協調性がある

.392 .474 n=38

思慮深く、物事に対して慎重な態度をとる

.667 .842 n=38

責任感がある

.441 .605 n=38

本音よりも建前を重視する方である

.510

.658 n=38

感情が豊かで、繊細である

.324

.368 n=38

mean=.472

mean=.613
B型特性

すぐに動揺してしまうことがある

.206 .440 n=25

人情もろい

.226 .360 n=25

友人関係が広く、気さくで社交性がある

.294 .400 n=25

マイペース型で、周囲の影響は受けにくい

.402 .640 n=25
楽観的である .363 .520 n=25

慎重さに欠けている

.471

.720 n=25

行動派であり、好奇心旺盛である

.402

.400 n=25

mean=.338

mean=.497
AB型特性 親密な人間関係を避けたがる傾向がある .412 .333 n=12
ソツがなく、意外と親切である .186 .333 n=12
妙にメルヘンチックな面がある .157 .333 n=12
合理的にものを考える傾向がある .245 .583 n=12
クールでドライな印象が強い .510 .750 n=12
飽きっぽい .108 .250 n=12
気分にムラがあって、ともすると2重人格のように見えることがある .608 .667 n=12
mean=.318 mean=.464
O型特性 人がよくて人間味がある .549 .593 n=27
積極的で、かつ実行力がある .294 .333 n=27
目的のためとあらば、最大限の勇気と根性を発揮する .226 .259 n=27
意志が強い .196 .185 n=27
ものの言い方や表現法はもちろん、欲望の表し方もストレートである .157 .185 n=27

個人主義的で、ともすれば自己中心的になってしまう

.098 .074 n=27

情熱的である

.284 .259 n=27
mean=.258 mean=.270

Table 2 通説による分類と通説判断による分類との関係(特性判断)

通説判断による分類

 本人の特性 

それ以外の特性

通説による
分類

本人の
特性

平均=4.99
SD=.91
人数 n=88

平均=3.98
SD=1.27
人数 n=98

それ以外の
特性

平均=5.06
SD=.92
人数 n=90

平均=3.84
SD=.63
人数 n=102

 なるほど、すばらしい分析ですね!  -- H10.5.21

12.gif (321 バイト)でも…

 つまり、血液型による性格の差について知っていようがいまいが(=「血液型ステレオタイプ」(=信念)があろうがなかろうが)、その回答者の回答には影響しないということと理解したのですが、違うのでしょうか?
 しかし、残念なことに血液型による性格の差について知っている人と知っていない人の回答の対比のデータがないのです(もちろん、差がないことが予測できます)。これがあれば全く文句なかったのですが…。非常に残念です。

 ですから、今までの主張の「差があるとしても、それは血液型ステレオタイプによるものであり、性格の差ではない」というのは、無条件で肯定できるものではないようですね(英語の論文にもステレオタイプに個人の判断は影響されないという内容のものがあるようですが、読んでいないのでなんとも…)。

 そういえば、データを眺めていてちょっと奇妙なことに気が付きました。というのは、Table 1のデータはあまりにも「できすぎ」なのです。普通はこんなにうまくいくわけがありません(苦笑)。ですから、血液型による性格の差を自覚することによって、わずかの差が大きく感じられるようなった(血液型ステレオタイプ?)と考えるしかないと思います。そういう意味では、「血液型ステレオタイプ」は存在するかもしれませんね(笑)。
 それから、やはりA型は自分の性格に対して注意深いのでしょう。だから、他の血液型との差が大きくなるのだと思います。O型の差が小さいのは、質問が適当でない(?)からとも考えられます。確かにO型の特性なのですが、なんかちょっと違うのです。平均を比べてみても、他の血液型に比べると低いので、やはりそうかなぁと思えるのですがどうなのでしょう? もっと別な質問だと差が大きく出るのかもしれませんね。
 ひょっとすると、渡邊さんはO型ではないのかもしれません。外れてたらどうしよう(笑)。  -- H10.5.21

12.gif (321 バイト)どんでん返し!

 随分と差があるデータだと思っていたのですが、ふと気がついて念のためにχ2検定をしてみることにしました。この場合、Table 1を本人と本人以外の血液型に分けて再計算することになります。都合のいいことに、血液型別のサンプル数が公表されているので計算は簡単です。さて、結果は…

再計算による検定結果(Table 1 個々の知識問題正答率と調査対象者の血液型との関連)

性格特性

本人の血液型
以外での正答率
本人の血液型
での正答率
χ2 検定結果
A型特性

礼儀正しい

.500 .684 3.30 p<0.10

内向的で、問題を自分の中だけで解決する

.250 .658 16.50 p<0.001

協調性がある

.344 .474 1.69 -

思慮深く、物事に対して慎重な態度をとる

.563 .842 8.39 p<0.005

責任感がある

.344 .605 6.61 p<0.05

本音よりも建前を重視する方である

.422

.658 5.31 p<0.05

感情が豊かで、繊細である

.297

.368 0.56 -

mean=.389

mean=.613
B型特性

すぐに動揺してしまうことがある

.130 .440 11.10 p<0.001

人情もろい

.182 .360 3.43 p<0.10

友人関係が広く、気さくで社交性がある

.260 .400 1.79 -

マイペース型で、周囲の影響は受けにくい

.325 .640 7.81 p<0.01
楽観的である .312 .520 3.54 p<0.10

慎重さに欠けている

.390

.720 8.27 p<0.005

行動派であり、好奇心旺盛である

.403

.400 0.00 -

mean=.285

mean=.497
AB型特性 親密な人間関係を避けたがる傾向がある .422 .333 0.35 -
ソツがなく、意外と親切である .167 .333 1.94 -
妙にメルヘンチックな面がある .133 .333 3.20 p<0.10
合理的にものを考える傾向がある .200 .583 8.41 p<0.005
クールでドライな印象が強い .478 .750 3.14 p<0.10
飽きっぽい .089 .250 2.85 p<0.10
気分にムラがあって、ともすると2重人格のように見えることがある .600 .667 0.20 -
mean=.298 mean=.464
O型特性 人がよくて人間味がある .533 .593 0.28 -
積極的で、かつ実行力がある .213 .333 1.54 -
目的のためとあらば、最大限の勇気と根性を発揮する .213 .259 0.24 -
意志が強い .200 .185 0.03 -
ものの言い方や表現法はもちろん、欲望の表し方もストレートである .147 .185 0.22 -

個人主義的で、ともすれば自己中心的になってしまう

.107 .074 0.24 -

情熱的である

.293 .259 0.11 -
mean=.244 mean=.270
黄色 は危険率10%以下 赤太字は危険率5%以下

 心理学者って、推理小説が好きな人が多いのでしょうか? ちょっとした数字に謎が隠されているようです。う〜ん、ここまで差が出るとは…。解説は不要でしょうから省略します。 -- H10.8.21

 残念なことに、渡邊さんは血液型の研究からは離れてしまったようです。読めば分かるように、この論文は内容といい結果といい非常に画期的なものといえます。しかも、あまりにも明確に血液型と性格は「関係ある」というデータが示されています。
 なぜχ2検定を行わなかったのか、なぜ血液型と性格は「関係ある」という結論にしなかったのか、なぜ血液型の研究からは離れてしまったのか…。いずれにせよ、心理学者の論文は謎が多いようです…。
 また、差がここまで大きいと、さすがに私の仮説(差は10〜20%)も訂正しないといけないのかもしれません。う〜ん、困った(笑)。

19.gif (267 バイト)私の勘違い

 つい最近、あるメールをいただきました。内容は紹介不可ということなので書けませんが、要するにこのページの私の分析が間違っているというものです(この程度の紹介は問題ないと思っておりますが、問題があるのであればお手数でも再度ご連絡ください。ご要望どおり削除・訂正させていただきます)。
 内容をチェックした結果、確かに私の分析が間違っていましたので、ここにお詫びし訂正させていただきます。m(._.)m
 お忙しい中、『ABO FAN』をお読みいただき、またわざわざメールをいただき、本当にありがとうございます。この場を借りて深くお礼申し上げます。

 ただし(幸いなことに?)、私の得た結論については変更する必要はないようです。やはり、「『自分の血液型に当てはまるもの』と判断した性格特性については、その特性が通説によって本人のものとされているか否かに関係なく、調査対象者はその特性がよりよく自分に当てはまっていると思っていることになる」ということになります(私の分析が間違っていたのに、結果が同じというのは本当はおかしいのですが…)。つまり、アンケート結果は、その人の血液型と性格についての知識(=血液型ステレオタイプ)の程度にはあまり関係ないようなのです。しかし、データ的に直接の証拠はありません。あくまでも状況証拠ですから、私のこの主張は断言することはできません。なぜなら、それが証明できるデータ(だけ?)は、公表されていないからです。公表されていない理由は不明です。以上が再分析の結果です。 -- H10.11.9

12.gif (321 バイト)データの再分析

 以下の分析は、はっきり言って読むのが結構面倒です。元々の論文が難しい上に、私の迷解説(?)付きですから(笑)。ということで、まず要約をどうぞ!

 以上の分析結果は、否定論者だけではなく、肯定論者も含めての「常識」をひっくり返すものです。これらのことから、血液型と性格についての知識を普及すればするほど「偏見」や「差別」が減るはずだという結論が得られます。つまり、否定論者の「血液型と性格は関係あるはずがない」といった主張は、本来の意図に反して「偏見」や「差別」を増やすことになり、全く逆効果であることになるのです。う〜ん、なんと言っていいのかわかりませんが、否定論者には皮肉な結論というしかありません。更に、この論文は、

 といった不思議なものなのです。残念ながら真の理由は不明です。いずれにせよ、ミステリアスな論文であることは間違いありません。計算や分析が好きな人は、次もどうぞ!

 ということで、データの再分析をしてみることにします。まず、「どんでん返し!」の表のデータを見てください。このデータで、正答率が0.25以下のものは、その血液型の性格特性と思われていないことになります。というのは、おのおのの性格特性について4つの血液型のどれが当てはまりそうか答えるからです。偶然の正答率は、1/4=0.25ですから、0.25以下なら別の血液型の性格特性と思われていることになります。

再計算による検定結果(Table 1 個々の知識問題正答率と調査対象者の血液型との関連)

性格特性

本人の血液型
以外での正答率
本人の血液型
での正答率
A型特性

内向的で、問題を自分の中だけで解決する

.250 .658
B型特性

すぐに動揺してしまうことがある

.130 .440

人情もろい

.182 .360
AB型特性 ソツがなく、意外と親切である .167 .333
妙にメルヘンチックな面がある .133 .333
合理的にものを考える傾向がある .200 .583
飽きっぽい .089 .250
O型特性 積極的で、かつ実行力がある .213 .333
目的のためとあらば、最大限の勇気と根性を発揮する .213 .259
意志が強い .200 .185
ものの言い方や表現法はもちろん、欲望の表し方もストレートである .147 .185

個人主義的で、ともすれば自己中心的になってしまう

.107 .074

 

 こういう項目は全部で12あります。つまり、これらの12項目については、一般的にはその血液型の性格特性と思われていないのです。血液型と性格についての知識がある人(通説受容群)ならば、自分の血液型の性格特性については他の血液型の性格特性よりもよく知っている(あるいは、自分の性格によくあてはまっている)と仮定すると、

本人の血液型以外での正答率>本人の血液型での正答率

 となることが予想されます。逆に、本人の血液型以外での正答率が0.25以上だと、一般的にはその血液型の性格特性と思われているのですから、

本人の血液型以外での正答率<本人の血液型での正答率

 とならないとおかしいのです。しかし、前者の場合は、12項目中10項目(赤字以外)で、

本人の血液型以外での正答率<本人の血液型での正答率

 となりました。つまり、血液型ステレオタイプによる説明がつかないのです。しかし、こういう反論もあるでしょう。他の血液型の性格特性はよく知らなくとも、自分の血液型についてはよく知っているのだと。確かにそういう理由も考えられなくはありません。どちらが正しいか判断するには、血液型と性格についての知識の程度で2グループに分けて比較すれば簡単です。実は、このアンケートでは、自分にその性格特性がどの程度あてはまるかという7段階の評価(1が最低で7が最高)も記入してもらっているので、この点数(特性判断の平均)を血液型と性格についての知識がある人(=通説受容群)とない人(=通説非受容群)に分けて比較すればいいのです。

 当然のことながら、本人の血液型でこの特性判断の平均は、

通説受容群>通説非受容群

 となるはずです。そして、本人以外の血液型では逆に、

通説受容群<通説非受容群

 とならないとおかしいのです。実は、もう1つ条件が付いて、通説非受容群では4つの血液型別の平均がほぼ等しくなるはずです(当然!)。なにしろ、こんなにうまいデータがあるのだから、分析に使わない手はありません。確かに巧みな分析方法です。しかし、不思議なことに、そういう分析結果はどこにもありません。更に不思議なことに、28ある性格特性別の平均はおろか、4つの血液型別の性格特性の平均もこの論文のどこにも書いていないのです。理由は不明です。この点はメールをいただいて初めて気が付きました。まあ、これは以上の私の考えた分析方法がよくないからなのかもしれません。

 では、次にいきましょう。ここが私の間違ったところです。m(._.)m

 次に、通説による分類の2水準、通説判断による分類の2水準の組み合わせごとに、各個人の特性判断(与えられた性格特性が、本人にどのくらいよく当てはまっているか)の平均を求める(Table 2)。そして、この値を従属変数とし、二つの分類を被験者内要因として分散分析を行った。分散分析の結果は、通説判断の主効果のみが有意((1,76)=70.31, p<.01)であり、通説の主効果((1,76)=.20, n.s.)も交互作用効果((1,76)=1.00, n.s.)も有意ではなかった。つまり、「自分の血液型に当てはまるもの」 と判断した性格特性については、その特性が通説によって本人のものとされているか否かに関係なく、調査対象者はその特性がよりよく自分に当てはまっていると思っていることになる。

Table 2 通説による分類と通説判断による分類との関係(特性判断)

通説判断による分類

 本人の特性 

それ以外の特性

通説による
分類

本人の
特性

平均=4.99
SD=.91
人数 n=88

平均=3.98
SD=1.27
人数 n=98

それ以外の
特性

平均=5.06
SD=.92
人数 n=90

平均=3.84
SD=.63
人数 n=102

 ここで私は、性格特性の選択は通説に関係ない→差が出た場合は「信念」や知識によるものではない→差が出た場合は本当の差、と勘違いしてしまったのです。大変お恥ずかしい限りです。ここにお詫びし、訂正させていただきます。正しくは、「通説判断の主効果のみが有意であり、通説の主効果も交互作用効果も有意ではなかった」のですから、通説による差はない→血液型による性格の差はないのです。ついでに、通説による分類で平均を計算すると、本人による特性判断の平均は4.45、それ以外の特性4.41となり、差はわずかに0.04です。ちなみに、通説判断による分類の平均は、5.03と3.91となり、なんと1.12も差があります。これには大変困りました。(*_*)
 この説明ではわかりにくいかもしれませんので解説しておきましょう。これは、特性判断の数値が大きいほど自分の性格にあてはまると感じているわけです。「あまりあてはまらない」が3、「どちらともいえない」が4、「少しあてはまる」が5ですから、差が0.04では、ほとんど意味はありません。1.12ならかなりの差があるということになります。

 ところが、もう一度よく考えてみると、この分析はあまり意味がないのです。つまり、「通説判断の主効果のみが有意であり、通説の主効果も交互作用効果も有意ではなかった」という結果は、あまり意味がないのです。全く意味がないかとというと、そういうことではありませんが…。正確には、「通説判断の主効果は有意」ですが、「通説の主効果は有意ではないにしてもある程度はある」ということになります。平均の差が0.04で影響を与えていると判断できるのはおかしいと思う人もいるでしょう。確かに、直接的な証拠はありません。しかし、実は…

 ところで、Table 2のnは人数ですが、これも少々おかしいのです。なぜなら、これらの点数を分類しているのは、人数ではなく特性判断の平均だからです。この点もメールをいただいて初めて気が付きました。それなら、nは人数と延回答数と2段書きにしないとおかしいのです。そこで、延回答数がいくつになるのか調べてみたところ、実は何も書いていないのです。これでは言い方が抽象的で分かりにくいと思いますので、具体的な数字で考えてみましょう。それに、(1,76)について分散分析をしていますが、76に対応する自由度の説明がどこにもありません。これまた不思議です。私が推測るに、28の性格特性のうち、4つの分類すべてに少なくとも1回以上の回答がある質問項目の数(19項目)なのだろうと思います。4つの分類ですから、19×4=76となり、確かに自由度は76となります。

表A(Table 2を一部変更 通説による分類と通説判断による分類との関係(特性判断))

通説判断による分類

 本人の特性 

それ以外の特性

通説による
分類

本人の
特性

平均=4.99
SD=.91
人数 n=88
延回答数 n=1400

平均=3.98
SD=1.27
人数 n=98
延回答数 n=28

それ以外の
特性

平均=5.06
SD=.92
人数 n=90
延回答数 n=28

平均=3.84
SD=.63
人数 n=102
延回答数 n=1400

 分かりやすくするため、延回答数を極端な数字にしてしまいました(実際にはこんな数字はあり得ません)。f(^^;; この場合、28のどの特性判断項目もすべての分類に存在するものと仮定します。Table 2と同様に分散分析をしてもほぼ同じ結果が得られるはずです。なぜなら、平均と標準偏差が同じだからです。
 ところで、この分散分析は意味があるのでしょうか? 全くありません! なぜなら、ほとんどの人は通説判断を正しく回答しているからです。人数によって通説による分類で平均を計算すると、本人による特性判断の平均は4.45、それ以外の特性は4.41となり、差は同様に0.04です。通説判断による分類の平均も同様に、5.03と3.91となり、1.12の差となります(当然ですね!)。ところが、延回答数では本人による特性判断の平均は4.99、それ以外の特性3.84となり、差は1.15です。通説判断による分類の平均も同じで、5.03と3.84となり、1.15の差となります。これはヘンです。

 どちらが正しいかはいうまでもないでしょう。要するに、人数はほぼ同じだとしても、延回答数も考慮しないと正しい結果が得られないのです。ただし、延回答数が4つの分類でもほぽ同じだとするなら、Table 2についての分析は意味があることになります。そこで、延回答数がいくつになるのか調べてみたところ、前述したように何も書いていないのです。これはおかしいのです。つまり、「通説判断の主効果のみが有意であり、通説の主効果も交互作用効果も有意ではなかった」という分析結果は、あまり意味がないのです。

 しかし、延回答数を推定する手かがりはあります。私の推定は次のとおりです。

表B(Table 2を一部変更 通説による分類と通説判断による分類との関係(特性判断))

通説判断による分類

 本人の特性 

それ以外の特性

通説による
分類

本人の
特性

平均=4.99
SD=.91
人数 n=88
@延回答数 n=11.5%

平均=3.98
SD=1.27
人数 n=98
A延回答数 n=13.5%

それ以外の
特性

平均=5.06
SD=.92
人数 n=90
B延回答数 n=23.5%

平均=3.84
SD=.63
人数 n=102
C延回答数 n=51.5%

 これは、この論文をよく読むと、@+A:B+C=1:3、@:A=0.46:0.54であると書かれているからです。この数値で通説による分類で平均を計算すると、本人による特性判断の平均は4.44、それ以外の特性は4.22となり、差は0.22です。通説判断による分類の平均は、5.04と3.87となり、1.17も差があります。ただ、通説による差も少しはあるので、結局は「通説判断の主効果は有意」ですが、「通説の主効果は有意ではないにしてもある程度はある」ことになります。
 ズバリ言いましょう。血液型による性格特性の差は、個人差の方が大きいものの確かにあるのです。念のため、この0.22の差を正規分布に当てはめて分析すると(トータルの標準偏差を1.0程度と仮定)、ほぼ10%程度の回答率の差となり、Table 1での回答率の差と一致します。つまり、この推定は正しいらしいのです。しかし、なぜ延回答数が公表されていないのでしょうか。不思議というしかありません。

 いままでの説明で、血液型による性格特性の差があるらしいことがわかりました。しかし、これでは十分ではありません。なぜなら、これは「信念」(=ステレオタイプ、プロトタイプ)による差かもしれないからです。それなら、この特性判断の平均を、血液型と性格についての知識がある人(=通説受容群)とない人(=通説非受容群)に分けて比較すればいいのです。しかし、このデータもなぜか公表されていません。通説受容群と通説非受容群については詳細な分析がされているものの、なぜか特性判断の平均について(だけ?)は公表されていないのです。しかし、「信念」による説明は、「通説についての正確な情報を持っていない者ほど、自分が持っている性格特性を自分の血液型のものと考える」のですから、あまりあてはまらないようです(以下は同論文84〜85ページ)。

比較1と比較2について

 比較1と比較2の分析のために、それぞれの個人について、 まず以下の3変数が算出された。
@通説−通説判断の一致度: その個人が自分の血液型のものである(ない)と判断した特性が、通説においてもその血液型のものであるとされている(ない)かどうかについて、28の特性で一致している比率。(0から1の値をとる。すべての特性が自分の血液型のものではないと判断すれば、通説に関する知識を全く持たない者の一致度は0.75となる。)
A通説判断−特性判断の一致度: その個人が自分の血液型のものであると判断した特性についての特性判断(どの程度自分に当てはまるか)の平均値から、自分の血液型のものではないと判断した特性についての特性判断の平均値を引いた値。この値がプラスの方向に大きな個人は、自分自身の特性と自分の血液型の特性とが一致していると考える傾向が強い。
B通説−特性判断の一致度:通説によりその個人の血液型のものとされている特性についての特性判断の平均値から、それ以外の特性についての特性判断の平均値を引いた値。
 次に、通説と通説判断との一致度に基づき、調査対象者を、通説受容群(一致度0.75以上、38名)と通説非受容群(一致度0.75未満、56名)とに二分した。通説で自分の血液型のものと判断した特性が一つもなかった8名は、Aの一致度が計算できないため、この分析からは除外された。
 比較1については、通説受容群と通説非受容群との間での、通説判断-特性判断の一致度の差についての分析を行った。分析の結果は、通説判断特性判断の一致度が、通説受容群(平均=0.90、SD=.96)よりも通説非受容群(平均=1.32、SD=.91)において有意に高いことを示している(t(92)=2.11, p<.05)。この結果は、通説についての正確な情報を持っていない者ほど、自分が持っている性格特性を自分の血液型のものと考えるという、プロトタイプ的解釈からすると逆説的な関係を示しており、通説非受容群においてイグゼンプラ情報が、血液型ステレオタイプ形成に大きな役割を果たしている可能性を強く示唆している。
 この比較1の結果から、通説非受容群におけるイグゼンプラ情報の重要性が示唆されているが、このことから、比較2で検討される相関の強さも、通説受容群と通説非受容群とでは異なってくることが予想される。先にも述べたように、プロトタイプ的情報が大きな役割を果たす可能性があるのは、通説についての情報を正しく認識している通説受容群においてであると考えられる。従って通説受容群では、通説判断−特性判断の一致度と、通説特性判断の一致度との間に、正の相関が予想される。これに対して、比較1の結果から示唆されるように、通説非受容群ではイグゼンプラ情報が大きな役割を果たしているとすれば、この群では、上記の二つの一致度の間に相関が存在しないものと予想される。分析の結果はこの二つの予測をはっきりと支持するものであった。比較2を行った結果、通説受容群における相関(r=.81, p<.01)が非常に高いのに対して、非受容群においては相関(r=-.06, n.s.)がほとんど存在していないことが判明した7)。通説非受容群でもある程度の通説の受容が行われているとしたら(通説非受容群での通説一通説判断の関係がゼロではないとしたら)、プロトタイプ説によれば、通説判断特性判断の一致度と通説−特性判断との一致度との間にはかなり高い相関が存在するはずである。何故なら、プロトタイプ説によれば、通説−特性判断の一致度(X)は通説一通説判断の一致度(Y)と通説判断特性判断の一致度(Z)の積になる(X=YZ)はずであり、従ってYの値に関係なく(ただしゼロでない限り)、XとZとの間にはほぼ完全な相関が存在するはずだからである。従ってこの場合、 通説−特性判断の一致度と通説判断特性判断の一致度との間の非常に低い相関は、通説非受容群におけるプロトタイプ説を否定する。しかし通説と通説判断の関係が完全にゼロである場合には、プロトタイプ説によっても低い相関を説明することができる。しかしプロトタイプ説で説明しようとすると、全く通説を知らない人が通説を受け入れることによってステレオタイプを形成するという矛盾が生じてしまう。いずれにしても、通説非受容群における低相関を、イグゼンプラ説によらずプロトタイプ説により説明しようとするのは困難である。

7) 今回の場合、ある血液型の人が全くランダムに回答した場合の、通説−通説判断の一致度の最大期待値が.75になるため、通説受容群と通説非受容群に分ける基準点を.75に設定した。つまりこれ以上の正答率を持つ人は、通説をよく知っている人であると考えることができる。しかし、基準点をどこにおいて2分するかによって結果が変化する可能性もあると考え、別な基準を用いて検討してみた。まず(1)2群のnがほぼ等しくなるよう基準点を.72とした場合、1.05(SD=.93, n=46)と1.34(SD=.94, n=48)であり、2群の平均値に有意な差はなかった(t(92)=1.541, n.s.)が、差の方向は同じであった。通説−特性判断と通説判断−特性判断との相関についても同様の分析を行ったところ、同様に通説受容群の相関は非常に高く(r=.73, p<.01)、通説非受容群の相関はほとんど存在しなかった(r=-.10, n.s.)。次に(2)一致度が.75より大きい場合を通説受容群、.65未満の場合を通説非受容群としたときは、平均は.93(SD=.95, n=38)と1.48(SD=.84, n=35)となり、2群の平均値に有意な差がみられた(t(71)=2.60, p<.05)。また、通説受容群の相関は非常に高かったが(r=.82, p<.01)、通説非受容群については有意な相関が得られなかった(r=-.25, n.s.)。このように、基準点をどこにおくかで若干の数値の変化はみられるものの、全体としての傾向には変わりはないといえる。

 この文章を読んで、なんとなくおかしく思った人もいるに違いありません。というのは、わざわざこんな面倒な分析をする必要はないからです。通説受容群と通説非受容群で、通説−特性判断の一致度を比較するだけでいいはずです。通説受容群は一致度が偶然より有意に高く、通説非受容群は偶然と同じ程度であることがわかるだけでいいのですから。と思いつつ、この文章を読むと、これについては何も書いていないことに気が付きます。これも不思議です。では、通説受容群と通説非受容群とで、通説−特性判断の一致度は計算していないでしょうか。そんなはずはありません。なぜなら、比較2で通説受容群と通説非受容群とで特性判断の一致度や相関係数を計算しているからです。相関係数を計算するなら、平均を計算しないはずはありません(平均を計算しないで相関係数を計算することは普通しないでしょう)。ますます不思議です。なぜ書いていないのでしょうか? たとえ数値は書いていなくとも、裏付けをとったといった表現があってもよさそうなのですが…。

 実は、通説−特性判断の一致度を推定できるデータがあるのです。

表C 通説−特性判断の一致度?

区 分

通説−通説判断の
一致度
→知識問題の正答率

通説判断−特性判断の
一致度
→性格特性の確信度
通説−特性判断と
通説判断−特性判断の
相関
通説受容群

≧.75 (n=38)

.90 (SD=.96) .82

≧.72 (n=46)

1.05 (SD=.93) .73
通説非受容群

<.75 (n=56)

1.32 (SD=.91) -.06

<.72 (n=48)

1.34 (SD=.94) -.10

<.65 (n=35)

1.48 (SD=.84) -.25

 あれ?かなり規則的な変化をしているようです。ところで、通説−特性判断と通説判断−特性判断の相関は、血液型と関係なく全くランダムに回答したとすると(つまり、血液型と性格に関係がないとすると)、通説判断−特性判断がどうだろうが相関はゼロになります。通説−通説判断の一致度は、偶然では0.62ぐらいになります(計算は省略)から、0.65以下だと平均は0.62以下であることが予想されます。つまり、この人々は通説とは「反対の知識」を持っているぐらいだから、血液型と性格の知識とは全く関係なく回答しているはずです。
 前述のように、(血液型と性格に関係がないとすると)この場合は相関はゼロにならないといけないのです。もし、血液型と性格の関係があるなら、通説と「反対の知識」とは負の相関があることになります。データを見るとわかるように、「反対の知識」が増えるほど、負の相関があることがわかります。つまり、血液型と性格は関係がありそうだという可能性を示唆しているのです。ただ、統計的に有意な差があるわけではないので、あくまでも可能性を示唆しているだけで、断定はできません。

 その他にも、「通説についての正確な情報を持っていない者ほど、自分が持っている性格特性を自分の血液型のものと考え」て、しかも当てはまっていると考えているのだから、不正確な知識の持ち主ほど血液型による性格の決めつけが多くなることが予想されます。逆に、正確な知識の持ち主ほど、血液型だけで性格は決まらない、と思っていることになります。確かにこれは実感と一致します。となると、血液型による「差別」や偏見は、正確な知識を持つほど減ることになるはずです。なるほど、納得できる結論ばかりのようですね。v(^^)

 以上の計算のチェックをするため、通説受容群・非受容群を通説−通説判断の一致度0.75で分類し、通説非受容群は血液型と関係なく全くランダムに回答したとする(つまり、血液型と性格に関係がないとする)と仮定して、通説受容群の通説−通説判断の一致度を再計算してみると、値は0.70程度になります。この値は、もちろん0.75以上でないとおかしいので、仮定に矛盾が生じます。つまり、通説非受容群は血液型と関係なく全くランダムに回答してはいない→血液型と性格に関係があることになります。

 ということで、この論文にはまだまた謎が隠されているようです。金田一少年やコナンならこんな謎は簡単に解けるのでしょうね、たぶん(笑)。

 いずれにせよ、こんなすばらしい論文を公表していただいた渡邊席子さんに深く感謝したいと思います(パチパチ)。m(._.)m   -- H10.11.9

12.gif (321 バイト)データの再分析(その2)

 その後、通説非受容群のデータを推定してみたので、ここに書いておきます。ここでは、通説受容群と通説非受容群の区分は、通説−通説判断の一致度(知識問題の正答率)が0.75とします。というのは、表Cを見ると分かりますが、知識問題の正答率が0.75未満では、延回答数は全くランダムに散らばることになることが予想されるからです(通説−特性判断と通説判断−特性判断の相関がほぼゼロ→延回答数がランダムとなる)。この場合は、@+A:B+C=@+B:A+C=1:3になることから、延回答数は表Dのようになります。また、平均については、通説判断による平均の差が、通説受容群では0.9、通説非受容群では1.32であることから、平均の差が拡大することが予想されます。この場合、平均が一番変わるのが@です。なぜなら、非受容群の人数と延回答数は@が一番少ないからです。といっても本格的な推定は面倒なので、AとCの値はそのままにし、通説判断による平均の差が1.32になるように@とBを調整してみることにします。

 表D 通説非受容群のデータ?(Table 2を一部変更 通説による分類と通説判断による分類との関係(特性判断))

通説判断による分類

 本人の特性 

それ以外の特性

通説による
分類

本人の
特性

@平均=5.30
SD=?
人数 n=50
延回答数 n=6.25%

A平均=3.98?
SD=?
人数 n=64?
延回答数 n=18.75%

それ以外の
特性

B平均=5.16?
SD=?
人数 n=56?
延回答数 n=18.75%

C平均=3.84?
SD=?
人数 n=64
延回答数 n=56.25%

 この数値を使って通説による分類による平均を計算すると、本人による特性判断の平均は4.56、それ以外の特性は4.45となり、差は0.11です。他の推定でも、この差はほとんど変わりません。また、延回答数による平均は4.31と4.17となり、0.14の差となります。この差は小さいにしても、無視できるものではありません。また、延回答数による差が全体(0.22)とそれほど変わらないのも注目すべき点です。結局、通説非受容群でも、「通説判断の主効果は有意」ですが、「通説の主効果は有意ではないにしてもある程度はある」ことになります。
 同様の推定によって、通説受容群では通説による分類の平均がほとんどゼロか逆転することが予想されます。ただし、延回答数による平均の差は0.7程度(表Cの差x正答率=0.9x0.8=0.72)になるはずです。以上のことから、血液型と性格の知識を得ることによって、元々は0.11-0.14程度の差が0.7程度になることがわかります。つまり、この差が「ステレオタイプ」ということになるのです。

 ところが、最後にまずいことが起こりました。データの再分析その1&その2のデータは矛盾するのです(延回答数など)。1つ1つだけだと問題ないのですが…。では、一体どこが矛盾するのか…。私には残念ながら分かりませんので、将来の宿題としておきます。(^^;; ただ、通説非受容群でも、「通説の主効果は有意ではないにしてもある程度はある」、つまり血液型と性格とは関係あるのは間違いない…はずだと思うのですが。   -- H10.11.9


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最終更新日:平成11年2月13日