やっと松井豊さん(現・筑波大教授)の論文を入手しました。いろいろな本やホームページで取り上げられているのですが、原文を読んで理由がわかりました。データの取り方といい、分析のシャープさといいピカイチだからです(私がいうのもヘンですが…)。本当に出色の論文です。で、肝心のデータですが、バッチリ血液型と性格は関係あるという傾向が出ています。やった〜! それと、JNNデータバンクは、すごい人数と項目を調査しているのですね。担当者の方の努力に敬意を表します。
誤解のないように書いておきますが、松井さんは血液型と性格の関係に否定的ですので、念のため。
-- H10.5.3
論文2の説明で、私の計算違いで標準偏差が2倍になっていました。ここに訂正してお詫びします。大変申し訳ありませんでした。m(._.)m 今度は訂正したから大丈夫だと思うのですが…。でも、他の人から指摘がある前に訂正できてホッとしています。(^^;; -- H10.8.18 |
その後、内容が非常にわかりにくいという苦情を何人かからいただいたので、要約を全面的にリニューアルしてみました。これで、少しは分かりやすくなったと思うのですが…。 -- H10.9.14
このページは数字ばかりなので、中には読むのが面倒な人がいるかもしれません。そういう人のために要約を書いておきましょう。
論文1では、20項目の質問中で2つの項目でしか統計的な差が出ませんでした。 →最高値が赤 →最低値が青
予想された
血液型項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 検定の結果
(χ2検定)A 4. ルールや慣習や秩序を重視する
57.7 54.7 50.7 41.2 p<0.001 B 10. 未来に対して楽観的である 46.2 52.9 52.2 67.6 p<0.05
記述20項目のうち、4つの型間の差が有意であったのは2項目で、「A型」と記述された4番の項目と「B型」と記述された10番の項目である。ただし4番の項目の肯定率が最も高かったのはO型の人であり、10番の肯定率が最も高かったのはAB型の人である。血液型性格質問20項目のうち僅か2項目に血液型による差が見られたが、差の方向は能見(1984)の記述とは全く違っていた。
といったぐあいで、さっぱり差がないのです。また、論文2では、全部で1万人以上のデータを分析したにもかかわらず、24項目の質問中でたった1つの項目でしか統計的な差が出ませんでした。
表8 項目4「物事ごとにこだわらない」の肯定率(単位%) →最高値が赤 →最低値が青
O A B AB 80年
31.8 30.6 37.8 34.3 82年
39.1 33.0 35.6 36.1 86年
39.5 32.4 38.8 39.9 88年
42.9 35.9 45.1 37.1
4つの年度で共通して差が見られた項目4について、4年度の肯定率を一覧したのが表8である。(中略)4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた。(中略)以上の結果は、ABO式血液型による性格の差には、年度を越えた一貫性がみられないことを明らかにしている。本資料のデータから見る限り、血液型ステレオタイプ[筆者注:血液型で性格に差があるという「信念」のこと]は妥当性を欠くと結論される。
(注3)視点をかえれば、A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる。表7のデータをA型とその他の型に再分類し、差の検定を行うと、いずれの年度でも有意差が認められる。しかし、この検定における関連係数(ユールのQ)は0.082〜0.148と低めである。分析された24項目のうち、1項目だけが低い関連しか示していない点を考慮すれば、本報告の結論を改変する必要はないと考えられる。
つまり、データに血液型による差がない→血液型による性格の差がない、という結論になっています。
しかし、論文2と同じデータ(ただし、年数は4年分→11年分と増加)を分析した坂元章さんの論文では、データに血液型による差がある→血液型で性格に差があるという「信念」によるもの(=「血液型ステレオタイプ」)→血液型による性格の差がないという結論になっています。
よく考えてみると、これは明らかにおかしいのです。血液型と性格は関係ないという結論こそ松井さんと同じものの、データに血液型による差がない(松井さん)、データに血液型による差がある(坂元さん)と全く正反対の分析結果が得られてしまったのですから…。
もっとも、松井さんは単独項目ごと、坂元さんは複数項目の合成による合成項目である点が違いますが、単独項目で「きちんとした差」が出ないのであれば、当然のことながら合成項目でも「きちんとした差」が出ませんから、本質的に単独項目であろうが合成項目だろうが同じことのはずです。 また、坂元さんの分析によると、年を追うごとに差が大きくなっていますが、いずれにせよ「きちんとした差」が出ていることには違いありません。 【H11.6.11追記】この記述は誤りであるという指摘がありました。確かにこの指摘はもっともです。このままでは誤解を生じかねませんので、再度書いておきます。真意は、「合成項目で出る結果は、単独項目でも出ている(はずだ)が、誤差の影響で表面上はそうは見えない場合もある」ということです。ご指摘どうもありがとうございました。 |
不思議なことに、この「矛盾」には心理学者は誰も気が付いていなかったようです。いや、本当は気づいていたのかもしれません。なぜなら、否定論者の心理学者の誰に質問しても、そのほとんどはあいまいな答えでお茶を濁されて終わりになってしまうからです(たとえ返事をもらえても、その全てが「公表不可」とのことなので、残念ながら公開できません)。しかし、教えてもらえなければ、ますます知りたくなるのが人情というものでしょう。
しょうがないので、私自身が松井さんと坂元さんの分析結果の両方ともうまく説明できるような仮説を考えざるを得なくなってしまいました。最近になって、やっと全てをうまく説明できるようになったような気がするので、なるべく分かりやすく書いてみることにしましょう。
実は、今までの松井さんなどの心理学者のデータでも、能見さんと同じ一貫した傾向が出ていたのです。しかし、サンプル数が少ないことや、質問があいまいなどの理由で、統計的に「有意に」差があるというデータはほとんどありませんでした。また、検定方法(χ2検定のみ)も適切ではなかったのです。
私の分析によると、統計的な差が出るには次の4つの条件が必要です。
1.回答者が均質でないといけない(つまり、同じ大学の大学生なんかがいちばんいい)
2.回答者総数が数百人以上でないといけない(できれば千人以上で血液型別の人数が同じならなおよい)
3.能見さんの本の血液型別の特徴を質問項目にすること(一般の性格テストではダメ)
4.能見さんの本の血液型別特徴と回答結果は必ずしも一致しない(とにかく差が出ればよい)
例えば、論文1では上の4つの条件を全部クリアしています。そのため、20項目中の2つに統計的な差が出ました(サンプル数を増やせばもっと統計的な差が出る項目が増えるはずです)。しかし、論文2ではサンプル数が1万人以上と大幅に増えたにもかかわらず、1.と3.の条件を満たしていないため、24項目中の1つしか有意差が出ていません。
実は、これだけではいけないのです! 私は、より正確な分析のために、5番目の条件を付け加えたいと思います。
5.統計的な誤差をきちんと計算すること(誤差は思っているよりずっと大きい)
では、論文2の中で一番はっきりとした差が出た項目4について再分析してみましょう。分かりやすいように、松井さんの分析をもう一度引用しておきます。
表8 項目4「物事ごとにこだわらない」の肯定率(単位%) →最高値が赤 →最低値が青
O A B AB 80年
31.8 30.6 37.8 34.3 82年
39.1 33.0 35.6 36.1 86年
39.5 32.4 38.8 39.9 88年
42.9 35.9 45.1 37.1
4つの年度で共通して差が見られた項目4について、4年度の肯定率を一覧したのが表8である。(中略)4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた。(中略)以上の結果は、ABO式血液型による性格の差には、年度を越えた一貫性がみられないことを明らかにしている。本資料のデータから見る限り、血液型ステレオタイプは妥当性を欠くと結論される。
(注3)視点をかえれば、A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる。表7のデータをA型とその他の型に再分類し、差の検定を行うと、いずれの年度でも有意差が認められる。しかし、この検定における関連係数(ユールのQ)は0.082〜0.148と低めである。分析された24項目のうち、1項目だけが低い関連しか示していない点を考慮すれば、本報告の結論を改変する必要はないと考えられる。
太字の文章に注目してください。この場合、「最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた」のはなぜでしょうか? もし、「最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた」ことがきちんと説明できれどうでしょうか? 「A型とその他の型の間には、一貫した差がみられる」のだから、血液型と性格は「関係ある」ということがいえるのではないでしょうか?
そこで、統計的な誤差が分かりやすくなるように、各年度の平均に対して血液型別の差を計算してみたのが次の表です。
4. 物事にこだわらない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
-1.8
-3.0
4.2 0.7
7.2 1982
3.2 -3.0
-0.3
0.2
6.1 1986
1.9
-5.3
1.2
2.3 7.9 1988
2.7
-4.4
4.9
-3.2
9.2 平均
1.5
-3.8
2.5
-0.1
6.3 最大と
最小の差5.0
2.3 5.2
5.4 - 平均での
A型との差5.3
0.0
6.3 3.7
- 平均での
B型との差-1.0
-6.3 0.0
-2.6
-
なるほど、松井さんのいうように、年度・血液型によってかなりバラツキがあるようですね。それではというので、実際に計算してみると、これらのデータの誤差はだいたい7%程度(信頼度95%)になります。誤差って結構大きいものですねぇ。
細かいことをいうと、O・A型では7%より小さく、B・AB型で7%より大きくなり、結局はA<O<B<ABの順になります。確かに、バラツキ(下から3番目の行→太字)が見事にA<O<B<ABの順になっていることが分かります。
A型と他の血液型の差は、4年分の平均で3.7〜6.3%(ちなみに、この平均値の誤差は信頼度95%で3.6%程度です)ですから、(最大で)7%程度の誤差があっても順位は(たまたま)逆転しませんでしたが、O・B・AB型の間では同じ差は1.0〜2.6%ですから、7%程度の誤差があれば順位の逆転は割と簡単に起こるはずです。
つまり、「A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる」としても、もともと大した差がないO・B・AB型の間では「4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた」のは当然というのが私の結論です。
これで、項目4についてはうまく説明できたことになります。次の項目でも、この結論がぴったりあてはまるように思えます。
2. 目標を決めて努力する
6. ものごとにけじめをつける
9. 人に言われたことを長く気にかけない
15. 何かをする時は準備して慎重にやる
22. がまん強いが時には爆発する
そして、4年度の平均のデータについては、統計的な誤差を考慮して計算してみると、全24項目中16項目が血液型と性格と関係を示しているのです。
論文1についても、上に書いた5つの条件と統計的な誤差を考慮して計算してみると、20項目中の次の5つが他のデータと同じ傾向を示しています。
1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
4. ルールや慣習や秩序を重視する
9. 人には心を開く方である
13. 人とのつきあいに距離をおいている
18. 人間関係を大事にし、とくに人の信頼を重視する
更に、同時に行われた性格テストでも血液型による明らかな差が見られます。
松井さんのデータや分析は全て正しいのです。ただし、統計的な誤差を考慮しなければ…の話ですが。統計的な誤差を考慮して再計算すると、松井さんの結論はことごとく覆されます。この2つの論文のデータは、非常に明確に血液型と性格の関係があるということを示しています。 -- H10.9.14
こんなメールをいただきました。 -- H17.3.20
ふつう
2.お気に入りのページ
3.血液型と性格の関係は?
どちらともいえない
4.メッセージ:
心理学を学んでいるものです。ちなみに、松井豊先生のいる大学です。
血液型性格診断の是非については、診断がほとんど行われていない国で行えば、バーナム効果などの影響はでないのではないですか?この診断が流行しているのはアジアのみ(ですよね?)なので。
ステレオタイプについては一般的性質として、認知の歪み、バーナム効果、誤った関連付けがありますよね。誤った関連付けについては記述がなくないですか?そこのところどうなんでしょうか?
また、人類学の授業での話ですが、チベットのほうのある民族では全員がO型だそうです。もし診断が正しいのだったら、この人々はみんな同じ性格特性であるということになりませんか?
なんか否定的な感じになっちゃってますが、決して否定しているわけではありません。松井先生の授業を受けた上でこれを読んでいるのでこんなになっちゃってるだけです。松井先生も言いすぎだとは思いますが。
診断を信じている人は、追従欲求が高いと統計で出ている。ABO式は日本では気質研究として行われたが、西洋では民族研究→優生学となった。優生学=ナチスである。ナチスドイツの国民性として、追従欲求が高い。よって、診断を信じる人は端的に言うとナチスと同じだ。
とか言うんです。かなり端折ってますが。言いすぎだと思います。
なんか脱線してしまいましたが、上記の3つが読んだ際の疑問点でした。
そうですか…。ちなみに、松井豊先生のいる大学の学生さんからは2通目です(非公開希望ということなので、内容は掲載していません)。
> 診断がほとんど行われていない国で行えば、バーナム効果などの影響はでないのではないですか?
そうだと思います。
> この診断が流行しているのはアジアのみ(ですよね?)なので。
以前にはフランスでも流行しました。また、アメリカでも本は出版されています。
> 誤った関連付けについては記述がなくないですか?そこのところどうなんでしょうか?
すみません、定義を教えてください。疑似相関ということでしょうか? あるいはタイプ1エラーですか? それとも、別な意味なのでしょうか?
>
また、人類学の授業での話ですが、チベットのほうのある民族では全員がO型だそうです。
>
もし診断が正しいのだったら、この人々はみんな同じ性格特性であるということになりませんか?
ははは、これは心理学者自身が明確に否定しています。
ただ、最近は血液型性格判断を撲滅しようという意識ばかりが先走って、適切でない批判をする人も散見される。よく聞くのは「多様な人の性格が四つになんか分けられるはずがない」という批判である。しかし「何らかの基準によって四つに分ける発想」自体には本質的に問題はないのである。もちろん境界線上であいまいに分類される欠点はあるが、この発想自体は心理学でも類型論という考え方で受け入れられている。…血液型性格学への批判は確かに重要だが不適切な批判で満足しているとすれば、それは非論理性という点では相手と同じ穴のムジナになりかねないことに注意しなければなるまい。
> なんか否定的な感じになっちゃってますが、決して否定しているわけではありません。
はいはい、ありがとうございます。
> 松井先生も言いすぎだとは思いますが。
はい、私もそう思います。(^^;;
> よって、診断を信じる人は端的に言うとナチスと同じだ。
なんか、風が吹くと桶屋が儲かる、という感じですね。(^^;;
割と最近の本の例を出しておきます。特に変わってないようです -- H17.3.20
上瀬由美子さん ステレオタイプの社会心理学 H14.2 サイエンス社 1,300円+税 上瀬由美子さんの『ステレオタイプの社会心理学』を調べてみたところ、43ページから50ページに血液型ステレオタイプの説明がありました。そこでは、ここで松井豊さんの論文を紹介し、このように書かれています(43ページ 太字は私)。
この『ステレオタイプの社会心理学』には、「それぞれの特性と血液型との統計的有意な関係は見出されなかった」という主張を否定する坂元さんの論文が引用文献のリストに存在します(この研究は松井さんのものよりサンプルが多いので、明確に差が出ているのですから、松井さんの論理が変わらないとすれば、ABO式血液型と性格の関連性を肯定することになります)。 そして、170ページには、
とありますから、前述の43ページの記述は松井さんの「示唆」があることはほぼ確実です。編集委員なら必ず執筆者の原稿を査読し、必要であれば修正の指示を出すのは当然です。ましてや、「貴重なご示唆」とまで書いてあるなら、170ページの記述は松井さんの意見そのものと考える方が自然でしょう。 -- H16.2.23 松井豊さん他著 性格心理学への招待[改訂版] H15.10 サイエンス社 2,100円+税 もっとも、『ステレオタイプの社会心理学』は松井さん自身の文章ではないのではないか、という反論もあるかと思います。そこで、つい最近出版された(平成15年10月)松井さんの本『性格心理学への招待』[改訂版]をチェックしてみました。 この本には、松井さん自身による松井豊さんの論文の紹介があり、上瀬さんの『ステレオタイプの社会心理学』と同様「回答者をきちんと選んだ調査結果によれば、血液型と性格には一貫した関連は見られないのである」とあります(63〜64ページ)。
この本は最近出版されたのですから、松井さんが坂元章さんの論文のことを知らないとは非常に考えにくいのです。実は、松井さんが知っていることは明らかです(根拠を示すことは簡単ですが、プライバシーの侵害にもなりかねないので、ここでは非公開とします)。つまり、反論が一言も書いていないということは、無視しているのではないか、と推測することもできます。 もちろん、上瀬さんも同じです。上瀬さんで不思議なのは、前述のように坂元さんの論文が引用文献のリストに存在することです。しかし、「血液型と性格には一貫した関連は見られた」という結論を引用するどころか、『ステレオタイプの社会心理学』のどこにも引用したような形跡はありません。それなら、初めから引用文献に含める必要はないはずなのですが…。はて? |
原題: 血液型ステレオタイプについて 東京都立大学人文学報 第44号 15〜30ページ S60
まず、最初の論文です。この論文は、詫磨武俊さんとの連名になっています。詫磨武俊さんは、私が昔に心理学の本を読んだときに著者だった人で、心理学では有名な人ですね。ちょっと懐かしくなってしまいました。なんてことは置いといて、本題に入りましょう。(^^;;
表1では、回答者の血液型の分布が書かれています。東京都・神奈川県の公立・私立大学に所属する640人の学生で、分析の対象になったのは、無回答反応のない613人です。性別は、男346人、女215人となっています。日本人の平均とほぼ一致しているので、特に問題はないでしょう。
表1 回答者の血液型の分布(%)
項 目
N O A B AB 回答者
613 29.7 36.7 22.5 11.1 日本人の平均
115万人 30.7 38.1 21.8 9.4
次に、血液型別にみた血液型予想質問の肯定率です。項目の内容については、「能見(1984)を参考にして、血液型による差があらわれやすいと予想される性格特性を選び」と書いてあります。なお、統計的に正しいデータになるように、質問の順番を人によってランダムに変えるといった細かい工夫をしていますが(さすがですね!)、直接データには関係ないのでここでは省略します。
表2 血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%)
予想された
血液型項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 検定の結果
(χ2検定)A 1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
55.5 53.3 47.1 55.9 2. 周囲の人に細かく気を使う
57.1 63.1 58.7 61.8 3. 感情や欲求はおさえる方である
54.4 61.8 57.2 63.2 4. ルールや慣習や秩序を重視する
57.7 54.7 50.7 41.2 p<0.001 5. 生きがいを求めている
84.6 84.4 84.1 82.4 B 6. 周囲の影響は受けにくい
25.3 31.6 20.3 29.4 7. 人にしばられ、抑制されたりするのはきらいである
86.8 86.2 92.0 88.2 8. 柔軟な考えや新しいことには理解がある方だ
56.6 70.2 67.4 69.1 9. 人には心を開く方である
54.4 49.3 52.9 47.1 10. 未来に対して楽観的である 46.2 52.9 52.2 67.6 p<0.05 AB 11. 考え方がストレートである 44.0 45.8 39.9 41.2 12. 情緒の安定した面と不安定な面がはっきりわかれている 57.1 58.2 63.8 61.8 13. 人とのつきあいに距離をおいている 33.5 40.4 41.3 45.6 14. ものごとに没頭できず、根気がないほうだ 28.0 22.7 23.2 23.5 15. 分析力や批判力がある方だ 42.9 44.0 45.7 47.1 O 16. 人との応対はニコヤカでソツがない 41.2 39.1 45.7 42.6 17. ロマンチックな面と現実的面をどちらももっている 80.8 80.4 81.2 94.1 18. 人間関係を大事にし、とくに人の信頼を重視する 84.6 84.9 79.7 80.9 19. バイタリティがある 35.2 38.2 37.0 52.9 20. 目的が決まれば直進して、がんばってやりとげる 66.5 66.7 65.9 66.2
そして、結果として(20ページ)、
記述20項目のうち、4つの型間の差が有意であったのは2項目で、「A型」と記述された4番の項目と「B型」と記述された10番の項目である。ただし4番の項目の肯定率が最も高かったのはO型の人であり、10番の肯定率が最も高かったのはAB型の人である。血液型性格質問20項目のうち僅か2項目に血液型による差が見られたが、差の方向は能見(1984)の記述とは全く違っていた。
要するに、能見さんは間違っているということですね。そして、明確には書いてありませんが、その2項目の差も「偶然」によるものと考えているようです。もし、「偶然」でないなら、能見さんの記述とは違うけれども性格と「関係がある」ことになってしまいますからね。:-p
しかし、ABO FANの読者であるあなたは、ここで「なるほどね〜」と思ってはいけません(笑)。まず、ちょっと表に細工してみましょう! 一番高い肯定率のデータを赤で、一番低い肯定率のデータを青、その差が10%以上の項目を太字で表示してみましょう。
表2に細工したもの 血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%)
予想された
血液型項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差A 1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
55.5 53.3 47.1 55.9 8.8 2. 周囲の人に細かく気を使う
57.1 63.1 58.7 61.8 6.0 3. 感情や欲求はおさえる方である
54.4 61.8 57.2 63.2 8.8 4. ルールや慣習や秩序を重視する
57.7 54.7 50.7 41.2 16.5 5. 生きがいを求めている
84.6 84.4 84.1 82.4 2.2 B 6. 周囲の影響は受けにくい
25.3 31.6 20.3 29.4 11.3 7. 人にしばられ、抑制されたりするのはきらいである
86.8 86.2 92.0 88.2 5.8 8. 柔軟な考えや新しいことには理解がある方だ
56.6 70.2 67.4 69.1 13.6 9. 人には心を開く方である
54.4 49.3 52.9 47.1 7.3 10. 未来に対して楽観的である 46.2 52.9 52.2 67.6 21.4 AB 11. 考え方がストレートである 44.0 45.8 39.9 41.2 5.9 12. 情緒の安定した面と不安定な面がはっきりわかれている 57.1 58.2 63.8 61.8 6.7 13. 人とのつきあいに距離をおいている 33.5 40.4 41.3 45.6 12.1 14. ものごとに没頭できず、根気がないほうだ 28.0 22.7 23.2 23.5 5.3 15. 分析力や批判力がある方だ 42.9 44.0 45.7 47.1 4.2 O 16. 人との応対はニコヤカでソツがない 41.2 39.1 45.7 42.6 6.6 17. ロマンチックな面と現実的面をどちらももっている 80.8 80.4 81.2 94.1 13.7 18. 人間関係を大事にし、とくに人の信頼を重視する 84.6 84.9 79.7 80.9 5.2 19. バイタリティがある 35.2 38.2 37.0 52.9 14.7 20. 目的が決まれば直進して、がんばってやりとげる 66.5 66.7 65.9 66.2 0.8
あれ、10%以上差がある項目が7つありますね。これはちょっと多いと思いませんか? 確か、県民性についてもこんな感じのデータだったような…。そこで、もう少し詳しく調べることにします。しかし、能見さんと同じような質問項目がないので、残念ながら比較することができません。
どういうわけか、誰も指摘していないのですが、この質問項目は問題が多いのです。というのは、質問項目を選ぶのに「能見(1984)を参考にして、血液型による差があらわれやすいと予想される性格特性を選び」というのなら、わざわざ能見さんと別の項目にする必要は全くありません。どう考えたって、能見さんと全く同じ項目にした方がいいに決まってます! それで、全く違った傾向が現れるなら、「能見さんは間違っていた!」と堂々と主張できますからね。しかし、何十もの論文や資料を当たってもそういう例は1つもありません。 となると、どう考えても「意図的」にそういう質問項目を避けているとしか思えません(不思議なので、何人かの否定論者に質問しましたが、いまだに確たる返事はいただいていません)。これは全く私の推測ですが、能見さんと同じ質問にすると、全く同じ傾向が出ることをウスウス感じているからではないでしょうか? もしそうなったら、否定論者は全面的に敗北しますから、頑として能見さんと同じ質問を拒否しているのでは? これはなるほどです。:-p しかし、もう一つの残された可能性もあります。それは、「アカデミック」な心理学者のプライドにかけて、「ポピュラーサイコロジスト」である能見さんのデータや質問は絶対使わないということです。いずれにせよ、こんなことをすると学問的な決着が付くのが遅れるわけで、非常に不幸なことです。 |
ところが、うまいぐあいに比較するデータがあったのです! それは… -- H10.5.5
O型とA型とは集団や組織への帰属意識が一番強く、AB型は一番弱く、B型はその中間というのものです。
能見さんの「新・血液型人間学」からのデータです(P71第18表)。陸上競技の一流選手へのアンケートで国際競技の場合に、「日本のためだ頑張ろう!」という人の比率です。調査時期は不明ですが、昭和50年代でしょう。今だったら、もっと比率は低くなると思いますが…
血液型 人数 比 率 O 58人 13.8% A 73人 13.7% B 51人 9.8% AB 22人 0.0%
ま、予想どおりというか、O≒A>B>ABの順になっています。AB型は日本への帰属意識は非常に低いようですね。
次に、同じく能見さんの「新・血液型人間学」からのデータです(P211第24表)。質問は、「人と一緒にする食事について、おいしく感ずる最高は?」という問いで、「ホ、一人で食べてもウマいものはウマい」と回答した比率です。調査時期は「血液型愛情学」のアンケートの時期とあるので、昭和50年前後でしょう。
血液型 人数 比 率 O 636人 20.1% A 739人 19.6% B 600人 23.2% AB 428人 27.1%
ま、これも予想どおりというか、O≒A<B<ABの順になっています。
次は、外国のデータです(R.B.キャッテルの研究)。
次は、「大学生のデータの分析」からのものです(大村政男 「血の商人」の餌食になるなデタラメぶりは立証された 『朝日ジャーナル』 昭和60年3月8日号 89〜92ページ) 。
O型の特徴といえるものがあるのか(%)
項 目
O型
115人A型
216人B型
104人AB型
45人5.仲間内では開放的
82.6 75.5 79.8 68.9
グループへの帰属心が強いという質問ではないのでやや違う傾向(A型がB型より低い)を示しています。しかし、ここでもO型の回答率が一番高く、AB型が一番低くなっています。A型が低いのは、「仲間内」という言葉があるからだと思います。A型は、仲間というよりは抽象的な組織そのものへの帰属心が強いからです。
最後に、松井さんのデータではどうでしょうか?
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差9. 人には心を開く方である
54.4 49.3 52.9 47.1 7.3 13. 人とのつきあいに距離をおいている 33.5 40.4 41.3 45.6 12.1 18. 人間関係を大事にし、とくに人の信頼を重視する 84.6 84.9 79.7 80.9 5.2
やった〜! ほとんど同じ傾向だといっていいでしょうね! -- H10.5.3
まず、この論文のデータです。
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
55.5 53.3 47.1 55.9 8.8
次に、松井さんの別なデータです。JNNデータバンクの調査で、2年おき4回のデータが分析され、それぞれ約3,100人ずつ、合計で12,418人のデータが分析されているそうです(松井豊 H3 血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 第24巻 51〜54ページ)。
血液型別にみた質問の肯定率(%)
6. ものごとにけじめをつける →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差S55
38.2 39.2 36.6 42.7 6.1 S57
41.6 41.2 37.0 44.9 7.9 S61
36.5 38.9 35.6 37.4 3.3 S63
39.3 39.5 35.0 39.0 4.5 平均
38.9 39.7 36.1 41.0 4.9
やや差が小さいのが気になりますが、B型が一貫して低い傾向が出ているようですね。バンザ〜イ! -- H10.5.3
ところで、この論文では性格テストも同時に行っています(18ページ)。
具体的には、以下の9尺度が選ばれた。EPPS(エドワーズ個人選好検査)より、親和(affiliation)欲求、追従(defence)欲求、秩序(order)欲求の3尺度。矢田部ギルフォード性格検査(成人版)より、回帰性傾向(C)、神経質(N)、のんきさ(衝動性、R)、愛想の悪いこと(攻撃性、AG)、社会的外向性(S)、支配性(A)の6尺度。各尺度はいずれも原尺度から5項目ずつ抜粋され、計45項目の尺度群になっている。これらの項目は「いつもの自分」にあてはまるか否かを、「はい」「?」「いいえ」の3件法で回答する形式である。各尺度は、原尺度に合わせて、0、1、2点と得点化して加算した後、更に1点を加えて尺度得点化された。各尺度得点は1点から11点まで分布し、得点が高いほどその特性が強いことを示す。
その結果が表4に示されています(19ページ)。標準偏差は省略します。
表4 血液型別の性格尺度得点の平均(標準偏差) 注1) →最高値が赤 →最低値が青
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)親和欲求
7.26 7.27 7.07 7.46 F<1 追従欲求
6.55 5.88 6.06 6.38 F=2.68 秩序欲求
7.16 7.48 6.96 7.28 F=1.14 回帰性傾向
5.16 5.11 5.68 5.74 F=2.33 神経質
5.47 5.69 5.65 5.66 F=<1 衝動性(のんきさ)
5.25 5.23 5.78 5.66 F=1.67 攻撃性(愛想の悪いこと) 5.48 5.41 5.51 5.53 F<1 社会的外向性 7.04 7.16 7.05 7.60 F<1 支配性 4.72 4.64 4.64 4.60 F<1
注1)各尺度得点は1点から11点まで分布し、得点が大きいほどその性質が強いことを表している。
注2)F値の自由度はいずれも、(3,166)である。p<0.05 p<0.10
で、結局(19〜20ページ)、
血液型別にみた性格尺度得点の平均値と、平均の差の検定の結果を表4に示した。9尺度のうち平均の差が有意であったのは、追従要求だけであった。この追従要求も、最高(O型6.55)と最低(A型5.88)との差は0.67と僅かである。
要するに、わずかではあったが差があったわけです。性格テストは質問項目が公開されていないので分析できませんが(実はそうでもないのですが、これについては後述します)、A型が一番秩序を要求するとか、B型が一番のんきだとか、思わず納得するようなデータが並んでいると思うのですが。はて?
また、有意差が出なかった理由は簡単です。表2の方は20%以上も差が出ている質問項目があるのですから、差が出ないのであれば、質問が適当でなかったとしかいいようがありません。それにもかからわず、ある程度納得できる結果が得られたことになりますね。ですから、私にとっては非常に貴重なデータということになります(笑)。
しつこいようですが、血液型と性格の謎を解くのページでは、差が出るための条件としてこんなことを書いています。
1.回答者が均質でないといけない(つまり、同じ大学の大学生なんかがいちばんいい)
2.回答者総数が数百人以上でないといけない(できれば千人以上で血液型別の人数が同じならなおよい)
3.能見さんの本の血液型別の特徴を質問項目にすること(一般の性格テストではダメ)更に条件があって、
4.能見さんの本の血液型別特徴と回答結果は必ずしも一致しない(とにかく差が出ればよい)
うまく当てはまっていると思いませんか? -- H10.5.5
27〜28ページに書かれている考察から引用しておきます。
血液型ステレオタイプの妥当性
9つの性格尺度のうち、血液型による差がみられたのは追従欲求の尺度だけであり、その差も僅かであった。血液型別性格を記述した項目のうち血液型による差がみられたのは2項目しかなく、差の方向は能見(1984)の記述とは一致していない。
このように本調査のデータは血液型による性格の差を殆んど示しておらず、僅かに示された差も従来の説に一致していない。本調査の結果は、血液型ステレオタイプを否定し、血液型による性格の差を認めないとする宮城の説を支持していると考えられよう。
しかしながら本研究の回答者は首都圏在住の大学生を有意抽出したものであり、日本人全体の無作為標本とは考えられない。血液型ステレオタイプの妥当性の検証には大標本による厳密な検証が必要であろう。血液型ステレオタイプの内容
本研究では操作的に半数の回答者を血液型ステレオタイプをもつ者と分類し、血液型別性格のイメージを探った。その結果、「A型」性格のイメージは能見の記述とほぼ対応していたが、「O型」のイメ ージは能見と一致していなかった。記述が対応していた「A型」性格においても、あてはまるとされた比率は最高6割台にとどまっていた。つまりステレオタイプを持つ人が全員共通して抱く性格イメージはみられなかった。
本調査における血液型ステレオタイプ群は、「血液型によって性格が異なる」と信じているものの、 どのように異なるかは意見が一致していないと結論できよう。各型の性格イメージはバラバラであり、明確な性格像は形成されていない。ステレオタイプ群は血液型別の性格があるという信念のみが先行しているのである。
彼の主張は明快です。「大標本による厳密な検証が必要であろう」ということで、6年後の論文2では1万人のデータにより「差が出なかった」という結論になっていることは言うまでもありません。また、「ステレオタイプを持つ人が全員共通して抱く性格イメージはみられなかった」のですから「血液型ステレオタイプ」は存在しないということになります。
私は、これを読んで思わずニヤリとしました。なぜかは最後まで読んでのお楽しみです(笑)。
-- H10.5.8
他にもステレオタイプについての興味深いデータがあるのですが、時間がないのでここでは省略します。 -- H10.5.3
原題: 血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 第24巻 51〜54ページ H3
次の論文は、TBSの協力を得て1万人以上のデータを分析したものです。日本の心理学者のデータでは、私が知る限り一番サンプル数が多いので(しかし、すごい調査があったものです!)、私にとっては難物(?)だったのですが、実はこれこそが「関係がある」という一番確かなデータだったのです! もっと早く読んでいれば苦労しなかったのにぃ。
まず、方法についてです(52ページ)。
血液型と性格に関する質問を含み、代表性のあるサンプリングに基づき、数年度にわたり同一項目が測定されている、社会調査の結果を再分析した。
対象データ:JNNデータバンクの調査結果、4年度分。
このデータは、満13歳から59歳までの男女約3000名(有効データは表1参照)を、全国無作為3段抽出した調査である。抽出は、1段で都道府県または市部を抽出し、2段で町丁を抽出し、3段で対象者を抽出している。標本は、都道府県人口によるウェイトで各地区に割り当てている。調査地域は、全国の都市部で、全人口の4分の3をカバーしている(調査地点は表2を参照→省略)。
調査は留置法と面接法の併用で実施されている。
分析されたデータの実施時期は、1980年10月、1982年10月、1986年10月、1988年10月である。1984年10月のデータには血液型に関する設問が含まれていないために、分析から除外されている。
分析手続き:分析の対象となった質問項目は、「性格・人柄」に関する24項目(表3)とABO式血液型の項目である。
血液型に関する項目において、「型がわからない」と回答した者と無回答は解析から除かれた。「性格・人柄」の設問は、回答にあてはまるか否かを2件法で答える多重回答形式の設問である。
これらの項目への回答を血液型への回答とクロス集計し(2件法×4つの型)、比率の差の検定(χ2検定)を行った。表3 分析された質問項目
1. 誰とでも気軽につきあう
2. 目標を決めて努力する
3. 先頭に立つのが好き
4. 物事にこだわらない
5. 気晴らしの仕方を知らない
6. ものごとにけじめをつける
7. 冗談を言いよく人を笑わす
8. 言い出したら後へ引かない
9. 人に言われたことを長く気にかけない
10. 友達は多い
11. くよくよ心配する
12. 空想にふける
13. 人づきあいが苦手
14. 家にお客を呼びパーティするのが好き
15. 何かをする時は準備して慎重にやる
16. よくほろりとする
17. 気がかわりやすい
18. あきらめがよい
19. しんぼう強い
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう
21. 引っ込み思案
22. がまん強いが時には爆発する
23. 話をするよりだまって考え込む
24. 人を訪問するのにてぶらではかっこうが悪い
では、結果についてです(52〜54ページ)。
血液型別に各項目への肯定率を算出した結果と、比率の差の検定の結果を表4〜7に示す。有意水準5%で差の見られた項目は、1980年度3項目、1982年度3項目、1986年度4項目、1988年度4項目であった。しかし、4年間で共通して有意差の見られた項目は、1項目(項目番号4)のみであり、他の項目は全て1年度のみで差がみられたにすぎない。
4つの年度で共通して差が見られた項目4について、4年度の肯定率を一覧したのが表8である。表からわかるように、項目4への肯定率は、80年度はB型が最も高く、82年度はO型、86年度はAB型、88年度はB型がそれぞれ高くなっている。また、4つの型の比率の差(レンジ)は、6%(82年)から9%(88年)の間にとどまっている(注3)。4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた。(中略) 以上の結果は、ABO式血液型による性格の差には、年度を越えた一貫性がみられないことを明らかにしている。本資料のデータから見る限り、血液型ステレオタイプは妥当性を欠くと結論される。
表8 項目4の肯定率(単位%) →最高値が赤 →最低値が青
O A B AB 80年
31.8 30.6 37.8 34.3 82年
39.1 33.0 35.6 36.1 86年
39.5 32.4 38.8 39.9 88年
42.9 35.9 45.1 37.1
(注3)視点をかえれば、A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる。表7のデータをA型とその他の型に再分類し、差の検定を行うと、いずれの年度でも有意差が認められる。しかし、この検定における関連係数(ユールのQ)は0.082〜0.148と低めである。分析された24項目のうち、1項目だけが低い関連しか示していない点を考慮すれば、本報告の結論を改変する必要はないと考えられる。
なお、この関連係数は年度を追う毎に、増加する傾向がみられる(0.082→0.095→0.148→0.144)。この傾向は、血液型ステレオタイプについても、予言の自己充足現象(self-fulfilling-prophesy)が進行している可能性を示唆している。 -- H10.5.3
実は、『現代のエスプリ〜血液型と性格』や否定論者のホームページで読んだときは、(注3)の説明がなかったのです。ホームページは指摘して直してもらったのですが、なにも私が指摘するまでもなく、元の論文に書いてあるのですね。なんか、釈迦に説法というか、余計なことをしてしまったようで、ちょっと恥ずかしいです (^^;; |
しかし、本当に「分析された24項目のうち、1項目だけが低い関連しか示していない点を考慮すれば、本報告の結論を改変する必要はないと考えられる」のでしょうか? このデータを見ていてまず考えたのは、差が小さいにしても「A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる」といった項目が他にないのか?ということです。ということで、早速探してみました…
2. 目標を決めて努力する →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
26.7 27.1 23.8 30.4 6.6 1982
27.7 30.7 26.8 28.5 3.9 1986
28.3 26.8 23.7 29.0 5.3 1988
27.8 28.2 27.8 28.6 0.8 平均
27.6 28.2 25.5 29.1 3.6 4. 物事にこだわらない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
31.8 30.6 37.8 34.3 7.2 1982
39.1 33.0 35.6 36.1 6.1 1986
39.5 32.4 38.8 39.9 7.9 1988
42.9 35.9 45.1 37.1 9.2 平均
38.3 33.0 39.3 36.7 6.3 6. ものごとにけじめをつける →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
38.2 39.2 36.6 42.7 6.1 1982
41.6 41.2 37.0 44.9 7.9 1986
36.5 38.9 35.6 37.4 3.3 1988
39.3 39.5 35.0 39.0 4.5 平均
38.9 39.7 36.1 41.0 4.9 9. 人に言われたことを長く気にかけない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
23.5 22.2 26.7 23.3 4.5 1982
28.2 24.3 24.4 25.0 3.9 1986
25.6 23.7 26.1 26.9 3.2 1988
27.6 24.2 27.2 28.3 4.1 平均
26.2 23.6 26.1 25.9 3.6
15. 何かをする時は準備して慎重にやる →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
32.1 29.8 25.9 29.1 6.2 1982
32.7 32.3 29.8 31.6 2.9 1986
29.3 33.6 28.7 33.6 4.9 1988
28.3 32.3 26.4 30.1 5.9 平均
30.6 32.0 27.7 31.1 4.3
22. がまん強いが時には爆発する →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
33.4 35.2 30.8 34.0 4.4 1982
34.2 34.1 28.4 33.5 5.8 1986
36.1 35.9 30.1 35.0 6.0 1988
36.0 35.0 34.7 34.9 1.3 平均
34.9 35.1 31.1 34.4 4.0
あまりにもはっきり傾向が出てているので、解説をつけるまでもないでしょう(笑)。ということで、解説は省略します。
ちなみに、全くの偶然で、ある血液型だけが一番少ない肯定率になる確率は、0.253ですから1.6%以下です。それが6つもあるのですから、偶然でないことは確かですね。また、平均に対してχ2検定を行うとすべての質問項目で有意差が認められます(もっとも、項目2と9は危険率10%以下)。
-- H10.5.5
でも、次のような反論があると思います。確かに、6つの項目で一貫した傾向は見られたけれども、差が少ないから意味がないのでは?というものです。しかし、ちょっと待ってください。論文1のデータと論文2のデータを比較してみましょう。
論文1のデータ−血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差1. ものごとのけじめや白黒をはっきりつける
55.5 53.3 47.1 55.9 8.8
論文2のデータ−血液型別にみた質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O A B AB 最大と
最小の差6. ものごとにけじめをつける(S55)
38.2 39.2 36.6 42.7 6.1 6. ものごとにけじめをつける(S57)
41.6 41.2 37.0 44.9 7.9 6. ものごとにけじめをつける(S61)
36.5 38.9 35.6 37.4 3.3 6. ものごとにけじめをつける(S63)
39.3 39.5 35.0 39.0 4.5 6. ものごとにけじめをつける(平均)
38.9 39.7 36.1 41.0 4.9
論文2の方が3.9%差が小さく出ています。違うのは質問項目と対象者です。まず、質問項目については、
なお、太字が違うと思われる部分です。論文1の質問の内容については、「能見(1984)を参考にして、血液型による差があらわれやすいと予想される性格特性を選び」と書いてあります。ここを強調しておきますね。
次に、対象者については、
別に大した差はないのではないか?と思ってはいけません。かなりしつこいですが、血液型と性格の謎を解くのページでは、差が出るための条件としてこんなことを書いています。
1.回答者が均質でないといけない(つまり、同じ大学の大学生なんかがいちばんいい)
2.回答者総数が数百人以上でないといけない(できれば千人以上で血液型別の人数が同じならなおよい)
3.能見さんの本の血液型別の特徴を質問項目にすること(一般の性格テストではダメ)更に条件があって、
4.能見さんの本の血液型別特徴と回答結果は必ずしも一致しない(とにかく差が出ればよい)
ABO FANの読者ならもうおわかりでしょう。差が出ないのは、対象者と質問のせいだったのです! -- H10.5.5
1つだけだと信用しない人もいるようなので、もう1つの例を書いておきます。データそのものはすでに書いたのですが…
まずは、大村さんの「大学生のデータの分析」からです(大村政男
「血の商人」の餌食になるなデタラメぶりは立証された 『朝日ジャーナル』 昭和60年3月8日号 89〜92ページ) 。
大村さんのデータでは、
O型の特徴というものはあるのか(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(115) A(216) B(104) AB(45) 最大と
最小の差5. 仲間内では開放的
82.6 75.5 79.8 68.9 13.7
松井さんの論文1のデータでは、
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差9. 人には心を開く方である
54.4 49.3 52.9 47.1 7.3
全く同じ傾向を示していますが、松井さんの方が6.4%も差が小さいのです。質問項目を比較すると、
太字が違うと思われる部分です。対象はどちらも大学生ですから、この差は質問項目によるものと判断していいでしょう。つまり、「人」といった抽象的な記述よりは、「仲間」という具体的な記述の方が差が出るのです。更に、松井さんは「方である」というあいまいな記述を加えています。この2つの違いが6.4%の差になって現れているのです(データのバラツキを考慮してもかなり大きな差です)。大村さんが能見さんの記述をダイレクトに使っているのに対して、松井さんはオリジナルな記述であることはいうまでもありません。
ついでに、松井さんの論文1の別なデータを見てみましょう。
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差13. 人とのつきあいに距離をおいている 33.5 40.4 41.3 45.6 12.1
前のデータとA型とB型の順序が違いますが、それはデータのバラツキによるものか記述の差によるものかはわかりません。とにかく項目9の方が項目13より4.9%も差が小さいのです。質問項目を比較してみると、
9. 人には心を開く方である
13. 人とのつきあいに距離をおいている
太字が違うと思われる部分です。対象はどちらも全く同じですから、この差も明らかに質問項目によるものと判断していいでしょう。項目9には「方である」というあいまいな記述が加わっています。この2つの違いが4.9%の差になっているのではないでしょうか?
いずれにせよ、血液型による性格の差を調べるには、質問項目の選択に十分な注意が必要なようです。
-- H10.5.5
その1、その2を書いてから、なんとかもっと関係ある項目が増えないかなぁと、いろいろデータを分析してみました。でも、なかなかうまくいきません。パソコンにデータを入れていろいろやってみたのですが、思ったような結果が出てこないのですね。ところが、ふと思いついてある項目の4年間の平均を計算してみました。すると、実に明確に傾向が現れたのです! ということで、全24項目の平均を取ってみたのが下の表です。
差が1%以下のものは、さすがに傾向というには厳しいですが、1%台後半以上のものはほぼ納得できる傾向が出ているようですね。ということで、その1で漏れた項目について、私の迷(?)解説付きでお送りしましょう(笑)。
表A 4年度の平均 →最高値が赤 →最低値が青 →太字は一貫した傾向がある項目
項目
O A B AB 最大と
最小の差χ2 検定結果 N
3551 4548 2487 1180 - - - 1 42.4 40.9 41.8 42.8 1.9 2.53 2
27.6 28.2 25.5 29.1 3.6 7.63 p<0.10 3 13.6 12.5 11.6 11.9 2.0 6.20 p<0.20 4 38.3 33.0 39.3 36.9 6.3 37.24 p<0.0001 5 14.0 13.1 13.0 13.8 1.0 1.96 6 38.9 39.7 36.1 41.0 3.9 11.62 p<0.05 7 31.5 31.8 32.5 32.5 1.0 0.88 8 26.3 25.5 25.3 26.6 1.3 1.41 9 26.2 23.6 26.1 25.9 2.6 9.46 p<0.10 10 38.5 36.3 36.4 36.7 2.2 4.80 p<0.20 11 30.8 33.9 32.2 31.9 3.1 9.01 p<0.10 12 25.9 25.9 27.3 25.7 1.6 2.09 13 20.7 20.8 20.1 22.0 1.9 1.83 14 16.4 16.5 16.3 16.8 0.5 0.16 15 30.6 32.0 27.7 31.1 4.3 14.11 p<0.01 16 36.0 35.4 34.7 35.9 1.3 1.18 17 19.3 18.8 21.7 21.8 3.0 12.03 p<0.01 18 26.5 25.2 26.3 27.4 2.2 3.24 19 33.1 33.5 32.0 31.9 1.6 2.30 20 42.9 42.4 40.7 42.4 2.2 3.09 21 22.3 23.4 23.5 23.2 1.2 1.70 22 34.9 35.1 31.0 34.4 3.9 13.66 p<0.01 23
16.1 16.5 14.9 15.4 1.6 3.28 24
37.9 36.9 36.8 36.9 1.1 1.17
1. 誰とでも気軽につきあう & 13. 人づきあいが苦手
項目
O A B AB 最大と
最小の差1 42.4 40.9 41.8 42.8 1.9 13 20.7 20.8 20.1 22.0 1.9
→矛盾した傾向ですね。1.が正しく13.が誤差と考えれば納得できるのですが…
3. 先頭に立つのが好き
項目
O A B AB 最大と
最小の差3 13.6 12.5 11.6 11.9 2.0
→これは当然O型でしょう。
5. 気晴らしの仕方を知らない
項目
O A B AB 最大と
最小の差5 14.0 13.1 13.0 13.8 1.0
→これはわかりません。誤差かな?
7. 冗談を言いよく人を笑わす
項目
O A B AB 最大と
最小の差7 31.5 31.8 32.5 32.5 1.0
→B型が多いのはわかりますが、AB型が多いのとO型が少ない理由が不明です。誤差かな?
8. 言い出したら後へ引かない
項目
O A B AB 最大と
最小の差8 26.3 25.5 25.3 26.6 1.3
→これもわかりません(苦笑)。
10. 友達は多い
項目
O A B AB 最大と
最小の差10 38.5 36.3 36.4 36.7 2.2
→これも当然O型でしょう。A型が少ないのも納得ですね。
11. くよくよ心配する
項目
O A B AB 最大と
最小の差11 30.8 33.9 32.2 31.9 3.1
→これは当然A型でしょう。A型は心配性ですからね。
12. 空想にふける
項目
O A B AB 最大と
最小の差12 25.9 25.9 27.3 25.7 1.6
→これもわかりません(苦笑)。
14. 家にお客を呼びパーティするのが好き
項目
O A B AB 最大と
最小の差14 16.4 16.5 16.3 16.8 0.5
→これもわかりません。誤差かな?
16. よくほろりとする
項目
O A B AB 最大と
最小の差16 36.0 35.4 34.7 35.9 1.3
→これもなんともいえませんねぇ。
17. 気がかわりやすい
項目
O A B AB 最大と
最小の差17 19.3 18.8 21.7 21.8 3.0
→気まぐれのAB、B型ですね(笑)。
18. あきらめがよい & 19. しんぼう強い
項目
O A B AB 最大と
最小の差18 26.5 25.2 26.3 27.4 2.2 19 33.1 33.5 32.0 31.9 1.6
→「あきらめがよい=辛抱強くない」ということですから当然ですね。やっぱりA型は辛抱づよいようです。
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう
項目
O A B AB 最大と
最小の差20 42.9 42.4 40.7 42.4 2.2
→B型ってクールなのでしょうか?
21. 引っ込み思案
項目
O A B AB 最大と
最小の差21 22.3 23.4 23.5 23.2 1.2
→O型が少ないのは当然ですが…。他はどうなのでしょう?
23. 話をするよりだまって考え込む
項目
O A B AB 最大と
最小の差23
16.1 16.5 14.9 15.4 1.6
→これは解説するまでもないでしょう。A型が多いに決まっています!
24. 人を訪問するのにてぶらではかっこうが悪い
項目
O A B AB 最大と
最小の差24
37.9 36.9 36.8 36.9 1.1
AB&B型が少なくA&O型が多いはずなのですが…。誤差でしょうか?
やはり、回答者の構成が均質でないと明確な結果は出ないようです。今回は、サンプルが1万人以上あったから大いに助かりました。 -- H10.5.5
データのバラツキについて、考えが浮かんだので忘れる前に書いておきます(笑)。実は、その1とその4は統一的に説明できたのです(もう少し前に気が付いていればなぁ)。
まず、データの誤差を計算してみましょう。サンプル数が1回につき約3,000ですから、1つの血液型ではその1/4となって約750になります。このデータは、0と1との2つの値を取る2項分布ですから、平均を0.5と仮定して計算してみると、標準偏差は概算でSQRT(0.5×0.5÷750)=0.0183です。ですから、データの誤差は信頼度95%では0.0183×1.96≒0.0359になりますね。となると、平均すると3.6%程度の誤差があることに…。ただ、これはあくまで平均からの誤差ですから、実際にはプラス側とマイナス側で倍の7.2%程度という結果を得ることができました。あれ?、これだけサンプル数が多くても、結構な誤差があるものですね。
ちなみに、比較するのはたった4年分ですから、信頼度を年数の逆数である75%(=1/4)にまで下げてみると、同様の計算で誤差は0.0183×1.15≒0.0210となります。これまた同様にプラス側とマイナス側では倍の4.2%程度ということになりますね。
ここで、その1のデータを見てみると、差が3%前後のデータまで4回とも一貫した傾向を示しているので、(うまいぐあいに)これとほぼ一致することがわかります(当然!)。ところで、その4では4回分の平均を取るので、サンプル数が4倍になることになりますね。同じ方法で誤差を計算すると、信頼度75%だと2.1%になりますから、ほぼ半分になることになります。サンプル数をN倍にすると、誤差はNの平方根分の1になりますから当然ですね! だから、その4のデータでは、その1のデータの半分の差(約1.5%)のものまで一貫した傾向を示すはずです。これは、実際とほぼ一致しますね。ホッ。
ついでに、論文1について計算してみると、標準偏差は4.0%ぐらいになります。ですから、10%程度以上(4.0%×1.15×2≒9.2%)の差が出ているものについては、ほぼ一貫した傾向があるといっていいのではないかと思います。
-- H10.8.18
論文1と2とで、更に2つほど項目がほぼ一致するデータに気が付きました。ちょっと都合が悪いのですが書いておきましょう。
論文1 14. ものごとに没頭できず、根気がないほうだ
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差14. ものごとに没頭できず、根気がないほうだ 28.0 22.7 23.2 23.5 5.3
論文2 18. あきらめがよい & 19. しんぼう強い
項目
O A B AB 最大と
最小の差18 26.5 25.2 26.3 27.4 2.2 19 33.1 33.5 32.0 31.9 1.6
A型が「根気がある」「あきらめがよくない=しんぼう強い」ということですから当然ですが、「根気がない」血液型が一定しません。偶然なのか記述の差なのか…。
論文1 20. 目的が決まれば直進して、がんばってやりとげる
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差20. 目的が決まれば直進して、がんばってやりとげる 66.5 66.7 65.9 66.2 0.8
論文2 2. 目標を決めて努力する
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
26.7 27.1 23.8 30.4 6.6 1982
27.7 30.7 26.8 28.5 3.9 1986
28.3 26.8 23.7 29.0 5.3 1988
27.8 28.2 27.8 28.6 0.8 平均
27.6 28.2 25.5 29.1 3.6
B型が少ないのは一致していますが、他の血液型については偶然なのか記述の差なのかはっきりしません。ただ、論文1での0.8%という差は、誤差の範囲内ですから、記述あるいは対象者によるものと考えた方が妥当だと思います。 -- H10.5.5
ちなみに、常識的に考えて、差の出なかった次のような質問(性格テストの質問に似ているような気もしますが、記憶があいまいです)、は意味がないのではないでしょうか? 私だったら、何を基準にして回答するか大いに迷うところです。結局、面倒だからいいかげんに答えちゃえと…f(^^;; もっとも、そんな不真面目なのは私だけでしょうが…。
12. 空想にふける
16. よくほろりとする
試しに、一貫して差が出た項目をみてみると、
2. 目標を決めて努力する
4. 物事にこだわらない
6. ものごとにけじめをつける
9. 人に言われたことを長く気にかけない
15. 何かをする時は準備して慎重にやる
22. がまん強いが時には爆発する
確かにこっちの方が答えやすそうですね(笑)。 -- H10.5.5
これも誰も指摘していないのですが、この論文の質問項目を見ていて不思議なことに気付きました。というのは、データを見るとわかりますが、24もある項目中で肯定率が50%を超えるものがほとんどないのです。性格テストの質問項目は(差が出やすいように)、平均が50%前後になるように選ぶのはずですから、ちょっと不思議です。はて?
いずれにせよ、ちゃんと差が出たから問題はないのだろうと思いますが…。質問項目としてはあまり適当ではないかもしれませんね。
ちなみに、論文1のデータを見てみると、肯定率は50%を中心に上下にかなり散らばっていることがわかります。ですから、論文1の方が差が大きく出ているのだろうと推測しています。
-- H10.5.9
念のため、もう一度データを見てみると、データの再分析(その1)で差が出た質問項目は、平均の差が2.6%以上あることがわかります。また、データの再分析(その4)で取り上げた質問項目は、項目11を除いて平均の差が2.1%以下しかありません。ということは、このデータは、平均の差が2.1%以下の質問項目では、(確率的な誤差により)一貫した結果は出ないようです。なるほど。
結局、24項目中16項目に意味のある差が出たことになります(太字で表示)。ま、こんなものでしょう(笑)。
-- H10.5.5
1. 誰とでも気軽につきあう
2. 目標を決めて努力する
3. 先頭に立つのが好き
4. 物事にこだわらない
5. 気晴らしの仕方を知らない
6. ものごとにけじめをつける
7. 冗談を言いよく人を笑わす
8. 言い出したら後へ引かない
9. 人に言われたことを長く気にかけない
10. 友達は多い
11. くよくよ心配する
12. 空想にふける
13. 人づきあいが苦手
14. 家にお客を呼びパーティするのが好き
15. 何かをする時は準備して慎重にやる
16. よくほろりとする
17. 気がかわりやすい
18. あきらめがよい
19. しんぼう強い
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう
21. 引っ込み思案
22. がまん強いが時には爆発する
23. 話をするよりだまって考え込む
24. 人を訪問するのにてぶらではかっこうが悪い
考察のところで、松井さんは次のように書いています(54ページ)。
もし、「血液型によって人の性格が異なる」という血液型ステレオタイプが妥当なものであれば、統計的に正しい手法で得られた本報告のデータにも、血液型による差がみられるはずである。しかし、24項目という多数のデータを分析したにも関わらず、年度を越えて一貫した結果は得られなかった。
以上の結果は、ABO式血液型による性格の差には、年度を越えた一貫性がみられないことを明らかにしている。本資料のデータからみる限り、血液型ステレオタイプは妥当性を欠くと結論される。
私の再分析では、「年度を越えた一貫性」がみられたのですから、松井さんのいう「血液型ステレオタイプ」は確かに存在します。しかも、そういっているのは私だけではありません。それは、
この論文の元データは、松井さんのデータより年数が多いのです。具体的には昭和53年から昭和63年までの1年ごとのデータが使われています。松井さんは、昭和55年から昭和63年まで(ただし昭和59年は除く)の2年ごとのデータです。グラフを見るとわかりますが、ちゃんとはっきりとした傾向が現れています。ですから、「安定して一貫した傾向が見られる」ということになります。ただし、この傾向が見られるのはA型とB型のみのようで、他の血液型はないようです。
しかし、データの再分析(その1)のデータを見ても(残念ながら?)、そういう傾向は発見できません。不思議ですねぇ。はて? -- H10.5.5
その1で、「ただし、この傾向が見られるのはA型とB型のみのようで、他の血液型はないようです。」とありますが、その理由は簡単です(これももっと前に気が付いていればなぁ)。要するに、これらの質問項目には、A型とB型とで差が出る項目ばかりで、O型とAB型とで差が出る項目がないのです。説明は不要です。データの再分析(その1)を少し眺めてみてください。A型とB型とで差が出る項目ばかりであることが簡単に確認できると思います。
また、データの再分析(その4)を見るとわかりますが、ここにもO型とAB型とで差が出る項目がほとんどないのです。つまり、どう頑張ってもこの項目からは(安定した)O型やAB型得点というのは算出不可能なのです。仮に無理して作っても、データのバラツキに大きく左右されて、非常に不安定なものになるはずです。ということは、(性格テストから抜粋したにしては?)質問項目の選択が不適切としかいいようがありません。試しに、4回分のデータの平均(表A)で各血液型別の差の合計を計算してみました。A型とB型の差が一番大きいのに対して、O型とAB型の差が一番少ないのがはっきりわかります。
表B 血液型・項目別の差(%) →最高値が赤 →最低値が青 →太字は10%以上の差がある項目
項目
OvsA
OvsB
OvsAB
AvsB
AvsAB
BvsAB
項目計
1
1.5 0.6
0.4 0.9
1.9 1.0
6.3
2
0.6 2.1
1.5
2.7 0.9
3.6 11.4
3
1.1
2.0 1.7
0.9
0.6
0.3 6.6
4
5.3
1.0 1.4
6.3 3.9
2.4
20.3
5
0.9
1.0 0.2
0.1 0.7
0.8
3.7
6
0.8 2.8
2.1
3.6
1.3
4.9 15.5
7
0.3
1.0
1.0
0.7
0.7
0.0 3.7
8
0.8
1.0
0.3
0.2 1.1 1.3
4.7
9
2.6 0.1 0.3
2.5
2.3
0.2
8.0
10
2.2 2.1
1.8
0.1 0.4
0.3
6.9
11
3.1
1.4
1.1
1.7
2.0 0.3 9.6
12
0.0 1.4
0.2
1.4
0.2
1.6 4.8
13
0.1
0.6
1.3
0.7
1.2
1.9 5.8
14
0.1
0.1 0.4
0.2
0.3
0.5 1.6
15
1.4
2.9
0.5 4.3 0.9
3.4
13.4
16
0.6
1.3 0.1 0.7
0.5
1.2
4.4
17
0.5
2.4
2.5
2.9
3.0 0.1 11.4
18
1.3
0.2 0.9
1.1
2.2 1.1
6.8
19
0.4
1.1
1.2
1.5 1.6 0.1 5.9
20
0.5
2.2 0.5
1.7
0.0 1.7
6.6
21
1.1
1.2 0.9
0.1 0.2
0.3
3.8
22
0.2 3.9
0.5
4.1 0.7
3.4
12.8
23
0.4 1.2
0.7
1.6 1.1
0.5
5.5
24
1.0
1.1 1.0
0.1
0.0 0.1
3.3
合計
26.8
34.7
22.5 40.1 27.7
31.0
182.8
念のため、O−AB対A−Bの分布図も描いてみました。確かにO−ABが少ないようですね。また、データが原点付近に集中していることから、やはり差が出にくいデータであるようです。
もし、どうしてもO型とAB型とで差を出したいなら、安定して差が出ている次のようなものがオススメです。何回も書いていますが、
O型の特徴というものはあるのか(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(115) A(216) B(104) AB(45) 最大と
最小の差5. 仲間内では開放的
82.6 75.5 79.8 68.9 13.7
血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青
項目の内容
O(182) A(225) B(138) AB(68) 最大と
最小の差4. ルールや慣習や秩序を重視する
57.7 54.7 50.7 41.2 16.5 9. 人には心を開く方である
54.4 49.3 52.9 47.1 7.3 13. 人とのつきあいに距離をおいている 33.5 40.4 41.3 45.6 12.1
探せばまだまだあると思います(笑)。 血液型による性格の差を調べるには、質問項目の選択に十分な注意が必要なようです。-- H10.5.9
では、最後に元のデータも書いておきましょう。 -- H10.5.5
表4 1980年度の検定結果(単位%)
項目
O A B AB χ2 N
861 1098 588 309 - 1 43.2 41.4 39.3 44.3 3.100 2 26.7 27.1 23.8 30.4 4.896 3
12.2 11.5 9.5 13.3 3.619 4 31.8 30.6 37.8 34.3 9.639 5 13.4 10.7 14.1 11.7 5.564 6 38.2 39.2 36.6 42.7 3.417 7 32.4 30.5 28.7 32.7 2.729 8 26.1 26.3 22.3 25.6 3.763 9 23.5 22.2 26.7 23.3 4.309 10 36.9 36.0 31.6 37.5 5.279 11 31.8 31.2 30.6 31.7 0.264 12 24.3 25.2 27.0 24.6 1.504 13 19.9 19.7 21.4 23.0 2.152 14 14.5 18.0 13.8 12.0 10.304 15 32.1 29.8 25.9 29.1 6.511 16 34.6 35.7 33.5 38.8 2.773 17 18.2 19.0 18.5 19.7 0.424 18 22.2 25.0 25.7 27.5 4.609 19 28.1 31.1 32.3 37.2 9.401 20 40.3 41.3 36.1 40.8 4.743 21 21.8 21.9 24.3 23.3 1.633 22 33.4 35.2 30.8 34.0 3.310 23
14.9 14.4 13.9 15.9 0.682 24
35.3 37.2 34.7 36.9 1.452
注 P<0.05, P<0.01 以下同。
表5 1982年度の検定結果(単位%)
項目
O A B AB χ2 N 878 1109 627 316 - 1
38.6 41.4 41.9 42.1 2.458 2 27.7 30.7 26.8 28.5 3.839 3
12.4 11.0 12.0 10.8 1.254 4 39.1 33.0 35.6 36.1 7.873 5 13.6 12.4 12.4 12.7 6.276 6 41.6 41.2 37.0 44.9 8.050 7 28.8 32.4 35.6 30.7 8.050 8 24.1 25.7 25.5 31.3 6.333 9 28.2 24.3 24.4 25.0 4.675 10 39.9 37.0 38.9 35.4 2.881 11 29.3 32.4 33.3 33.5 3.880 12 24.7 26.1 28.5 25.6 2.853 13 21.1 22.2 20.3 23.1 1.453 14 17.9 16.2 17.9 19.0 1.845 15 32.7 32.3 29.8 31.6 1.569 16 38.7 36.0 32.7 36.7 5.817 17 17.9 18.2 20.9 19.6 2.666 18 26.1 25.6 24.1 24.1 1.091 19 36.9 34.8 32.1 33.2 4.120 20 41.0 40.5 40.5 40.2 0.089 21 22.3 22.9 23.1 25.9 7.185 22 34.2 34.1 28.4 33.5 7.185 23
17.8 16.5 15.2 17.7 2.065 24
37.8 34.7 37.8 37.7 2.793
表6 1986年度の検定結果(単位%)
項目
O A B AB χ2 N
907 1162 624 286 - 1 44.4 39.2 43.1 46.9 8.987 2
28.3 26.8 23.7 29.0 4.828 3 15.1 13.2 13.0 13.6 2.049 4 39.5 32.4 38.8 39.9 14.456 5 15.2 12.3 9.8 15.7 12.062 6 36.5 38.9 35.6 37.4 2.313 7 33.7 30.6 30.8 36.7 5.537 8 26.4 24.6 27.9 23.8 3.027 9 25.6 23.7 26.1 26.9 2.234 10 38.6 35.1 38.1 39.5 3.806 11 31.9 35.8 33.5 29.0 6.428 12 26.7 24.3 25.8 25.9 1.645 13 20.9 20.7 17.9 19.9 2.499 14 15.7 15.8 16.8 19.6 2.831 15 29.3 33.6 28.7 33.6 7.290 16 32.9 34.5 36.9 36.0 2.880 17 20.1 17.6 22.4 22.0 7.356 18 29.4 24.8 27.1 29.0 6.197 19 32.2 34.0 30.4 28.7 4.220 20 44.8 42.4 41.7 50.7 7.916 21 24.3 26.2 25.2 23.4 1.581 22 36.1 35.9 30.1 35.0 7.221 23
14.9 17.9 15.2 15.0 4.360 24
40.5 35.8 37.8 38.1 4.175
表7 1988年度の検定結果(単位%)
項目
O A B AB χ2 N
905 1179 648 269 - 1 43.5 41.5 42.7 37.9 2.806 2
27.8 28.2 27.8 28.6 0.109 3 14.7 14.2 11.7 10.0 6.073 4 42.9 35.9 45.1 37.2 19.249 5 13.9 16.8 15.7 15.2 3.249 6 39.3 39.5 35.0 39.0 4.116 7 31.0 33.8 34.9 29.7 4.157 8 28.5 25.8 25.3 25.7 2.756 9 27.6 24.2 27.2 28.3 4.347 10 38.5 37.0 37.0 34.2 1.676 11 30.3 36.0 31.2 33.5 8.722 12 28.0 27.8 27.9 26.8 0.160 13 20.9 20.6 20.8 21.9 0.233 14 17.5 15.8 16.8 16.4 1.093 15 28.3 32.3 26.4 30.1 8.156 16 37.6 36.3 35.5 32.0 2.958 17 21.1 20.2 25.0 25.7 8.064 18 28.2 25.4 28.1 29.0 3.143 19 35.1 34.2 33.3 28.6 4.085 20 45.3 45.3 44.6 37.9 5.258 21 20.9 22.5 21.5 20.1 1.186 22 36.0 35.0 34.7 34.9 0.351 23
16.7 17.0 15.1 13.0 3.353 24
38.1 39.9 36.9 34.9 3.202
表A 4年度の平均
項目
O A B AB 最大と
最小の差χ2 検定結果 N
3551 4548 2487 1180 - - - 1 42.4 40.9 41.8 42.8 1.9 2.53 2
27.6 28.2 25.5 29.1 3.6 7.63 p<0.10 3 13.6 12.5 11.6 11.9 2.0 6.20 p<0.20 4 38.3 33.0 39.3 36.9 6.3 37.24 p<0.0001 5 14.0 13.1 13.0 13.8 1.0 1.96 6 38.9 39.7 36.1 41.0 3.9 11.62 p<0.05 7 31.5 31.8 32.5 32.5 1.0 0.88 8 26.3 25.5 25.3 26.6 1.3 1.41 9 26.2 23.6 26.1 25.9 2.6 9.46 p<0.10 10 38.5 36.3 36.4 36.7 2.2 4.80 p<0.20 11 30.8 33.9 32.2 31.9 3.1 9.01 p<0.10 12 25.9 25.9 27.3 25.7 1.6 2.09 13 20.7 20.8 20.1 22.0 1.9 1.83 14 16.4 16.5 16.3 16.8 0.5 0.16 15 30.6 32.0 27.7 31.1 4.3 14.11 p<0.01 16 36.0 35.4 34.7 35.9 1.3 1.18 17 19.3 18.8 21.7 21.8 3.0 12.03 p<0.01 18 26.5 25.2 26.3 27.4 2.2 3.24 19 33.1 33.5 32.0 31.9 1.6 2.30 20 42.9 42.4 40.7 42.4 2.2 3.09 21 22.3 23.4 23.5 23.2 1.2 1.70 22 34.9 35.1 31.0 34.4 3.9 13.66 p<0.01 23
16.1 16.5 14.9 15.4 1.6 3.28 24
37.9 36.9 36.8 36.9 1.1 1.17
最後まで書き終わって、はてな?と大きな疑問が残りました。松井さんは本当にこんな単純なことを知らなかったのか?という疑問です。彼の論文を読むとわかるのですが、彼の分析のシャープさはすばらしいものがあります(私なんか問題になりませんから…)。私にも簡単にわかるようなことが、彼にわからないはずがありません(これは皮肉ではなく)。となると、こんなことはとっくに気が付いていたのかもしれないのです。ただ、現状でそんな分析結果を公開すると日本の心理学界は大混乱になることは目に見えています。だから、しばらくは隠しておこうと。
しかし、彼が発表するちょっと前に私が見つけてしまいました。いや、仲間内ではすでに「定説」になっていたのかも(本当かな?)。
おっと、これは『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』の見過ぎでしょう(笑)、たぶん。
-- H10.5.5
このページを最後まで読んだあなたにはわかると思いますが、いままでポピュラーに行われていたχ2検定は、実は血液型による性格の差を見るには非常に不向きな方法だったのです。血液型による性格の差はせいぜい10〜20%程度ですし、普通の質問項目では数%しかありませんから、元々の誤差が数%ある数百人程度のサンプルでχ2検定を行っても、「有意な」差が出ないのは当たり前です。そんなのはちょっと計算してみれば当然のことなのですが、今まで誰も指摘しなかったのは非常に不思議です。
また、松井さんの論文1&2、大村さん、能見さん、坂元さんのデータについても、かなりの再現性があることが確認されました。質問項目や対象者による影響についても、私の仮説がちゃんとあてはまることもわかりました。万々歳といったところです。
つまり、心理学の「常識」は血液型の「非常識」なのです。χ2検定では差が出るはずがないし、性格テストの質問項目を使っても血液型による差が出るはずがないのですから、まじめな人ほど「差が出ない」「データの再現性がない」というのは当然のことでした。これで、いままでのことがすべてうまく説明できました。ということで、当分の間は心理学者から「血液型と性格は関係ある」という主張は出てこないでしょうね、残念ながら。 -- H10.5.5
実は、上の論証には少々欠点があります。というのは、性格テストの分析が抜けているからです。記述が一致する項目も2種類しか比較していません。もし、性格テストについても一緒に比較できれば、全部で3種類のデータということになりますから、飛躍的に信頼度が上がることになります。
しかし、性格テストは一般の人に質問項目が公開されていませんから、心理学者にしか分析が不可能なのです。その心理学者が「差がない」といっているのですから、今までは指をくわえて見ているしかありませんでした。しかし、最近になって運よくうまい本を見つけることができました。それは、別冊宝島335『性格がわかる・変えられる!』という本です。この本には、21種類の性格テストの解説と模擬テストが付いています。どうも、最近になってツキが回ってきたようです(笑)。
そこで、論文1の性格テストのところを再度引用しておくと(18ページ)、
具体的には、以下の9尺度が選ばれた。EPPS(エドワーズ個人選好検査)より、親和(affiliation)欲求、追従(defence)欲求、秩序(order)欲求の3尺度。矢田部ギルフォード性格検査(成人版)より、回帰性傾向(C)、神経質(N)、のんきさ(衝動性、R)、愛想の悪いこと(攻撃性、AG)、社会的外向性(S)、支配性(A)の6尺度。(後略)
その結果が表4に示されています(19ページ)。標準偏差は省略します。
表4 血液型別の性格尺度得点の平均 注1) →最高値が赤 →最低値が青
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)親和欲求
7.26 7.27 7.07 7.46 F<1 追従欲求
6.55 5.88 6.06 6.38 F=2.68 秩序欲求
7.16 7.48 6.96 7.28 F=1.14 回帰性傾向
5.16 5.11 5.68 5.74 F=2.33 神経質
5.47 5.69 5.65 5.66 F<1 衝動性(のんきさ)
5.25 5.23 5.78 5.66 F=1.67 攻撃性(愛想の悪いこと) 5.48 5.41 5.51 5.53 F<1 社会的外向性 7.04 7.16 7.05 7.60 F<1 支配性 4.72 4.64 4.64 4.60 F<1
注1)各尺度得点は1点から11点まで分布し、得点が大きいほどその性質が強いことを表している。
注2)F値の自由度はいずれも、(3,166)である。p<0.05 p<0.10
27〜28ページに書かれている考察から引用しておきます。
血液型ステレオタイプの妥当性
9つの性格尺度のうち、血液型による差がみられたのは追従欲求の尺度だけであり、その差も僅かであった。血液型別性格を記述した項目のうち血液型による差がみられたのは2項目しかなく、差の方向は能見(1984)の記述とは一致していない。
このように本調査のデータは血液型による性格の差を殆んど示しておらず、僅かに示された差も従来の説に一致していない。本調査の結果は、血液型ステレオタイプを否定し、血液型による性格の差を認めないとする宮城の説を支持していると考えられよう。
しかしながら本研究の回答者は首都圏在住の大学生を有意抽出したものであり、日本人全体の無作為標本とは考えられない。血液型ステレオタイプの妥当性の検証には大標本による厳密な検証が必要であろう。血液型ステレオタイプの内容
本研究では操作的に半数の回答者を血液型ステレオタイプをもつ者と分類し、血液型別性格のイメージを探った。その結果、「A型」性格のイメージは能見の記述とほぼ対応していたが、「O型」のイメ ージは能見と一致していなかった。記述が対応していた「A型」性格においても、あてはまるとされた比率は最高6割台にとどまっていた。つまりステレオタイプを持つ人が全員共通して抱く性格イメージはみられなかった。
本調査における血液型ステレオタイプ群は、「血液型によって性格が異なる」と信じているものの、 どのように異なるかは意見が一致していないと結論できよう。各型の性格イメージはバラバラであり、明確な性格像は形成されていない。ステレオタイプ群は血液型別の性格があるという信念のみが先行しているのである。
太字のところをもう一度読んでみてください。解説は不要でしょう。念のため、別な本からも引用しておきましょう。それは、心理学者の佐藤達哉さんと渡辺芳之さんの共著『オール・ザット・血液型』です。187〜188ページには、「ほんとは血液型と性格は関係ない」として、次のような記述があります。
ほんとは血液型と性格は関係ない
血液型と性格に関係がないと考えてる、といっても、昔の人たちみたいに最初から「非科学的だー」 なんて頭ごなしに否定するだけじゃ科学じゃない。心理学は科学なんだから、関係がないっていう証拠を集めなきゃ。まず、血液型とは別に性格をとらえる方法を何か使って、その結果と血液型とに関係があるか調べてみた。
性格をとらえる、といったら性格テストだ。心理学者が作ってる性格テストは、いちおう正確に性格を測れるというお墨つきがついている。もし血液型と正確に関係があるなら、血液型によって性格テストの結果が違うはず。
これが、ぜんぜん違わない。何人もの学者が何十種類もの性格テストを使って調べたけれど、血液型によって差が出たという結果はほとんどない。たしかに血液型で差が出た場合もごくすこしはあるけど、それは血液型性格判断の説と矛盾してたり(O型が神経質でB型が臆病とか……)、テストによって一貫してなかったり(あるテストではA型は神経質と出たけど、あるテストではA型はおおらかと出たとか……)で、ぜんぜんあてにならない。
性格テストだけでなく、性格の自己評価とか、他人からどう見えるかとか、性格のいろんな基準と血液型との関係を調べてみても、 いまのところ意味のあるような関係は発見されてない。
しつこく、大村政男さんの『血液型と性格』からも引用しておきます(237ページ)。
(3) 心理学の標準検査による各血液型者の性格研究
心理学では多くの標準化された性格検査を用意している。そういう性格検査によって、4類型の血液型者の性格を探ろうとする研究である。長谷川芳典(長崎大学医療技術短期大学部助教授=当時) が行なった「“血液型と性格”についての非科学的俗説を否定する」はこの(3)に属する研究といえる。もちろん、これといった意味のある差異は現われてこない。
ここも、太字のところに注目してください。なんだ、そんなの当たり前じゃないか、心理学の性格テストでは血液型による差は出にくいんだよ!当然でしょ!と思う人もいるかもしれません。別な人は、性格テストで血液型による差が簡単に出るのなら、とっくの昔に心理学の教科書に載っているよというかもしれません。つまり、性格テストできちんと差が出るなら、血液型と性格は「関係ある」といえるのですが、今までには意味のある差は出ていない…はずでした。しかし、先入観ほど恐ろしいものはないのです。私もついさっきまではそう思っていました。(^^;; ところが… -- H10.5.8
まず、最初の3つはEPPS(エドワーズ個人選好検査)です。そこで、別冊宝島335『性格がわかる・変えられる!』で、EPPSのところの記述を見てみます。順番に見ていくと、
親和欲求 友人と仲よく協力しようとする傾向。
追従欲求 他人の意見、期待、慣習に従おうとする傾向。
秩序要求 物事に対する計画性、整理好きかどうか。
となっています。なんか、普通の日本語のニュアンスとちょっと違うような気もしますね。ところが、この3つには残念ながら模擬質問がないのです。ししょうがないので、論文2の表A(4年度の平均)から適当にそれらしいデータを持ってくることにしました。
論文1 親和欲求 友人と仲よく協力しようとする傾向。
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)親和欲求
7.26 7.27 7.07 7.46 F<1
論文2 1. 誰とでも気軽につきあう
項目
O A B AB 最大と
最小の差1 42.4 40.9 41.8 42.8 1.9
あれ、AB型が1位なのは共通していますね。ま、これは偶然かもしれません。では、次を見てみましょう。
論文1 追従欲求 他人の意見、期待、慣習に従おうとする傾向。
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)追従欲求
6.55 5.88 6.06 6.38 F=2.68
これは適当なものがありませんでした。実は、ちょっと似たような項目もあるのですが、傾向は全く違うのでパスします(苦笑)。次は、
論文1 秩序要求 物事に対する計画性、整理好きかどうか。
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)秩序欲求
7.16 7.48 6.96 7.28 F=1.14
論文2 15. 何かをする時は準備して慎重にやる
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
32.1 29.8 25.9 29.1 6.2 1982
32.7 32.3 29.8 31.6 2.9 1986
29.3 33.6 28.7 33.6 4.9 1988
28.3 32.3 26.4 30.1 5.9 平均
30.6 32.0 27.7 31.1 4.3
これはピッタリ一致しますね。
矢田部ギルフォード性格検査のところでは、回帰性傾向(C)、神経質(N)、のんきさ(衝動性、R)、愛想の悪いこと(攻撃性、AG)、社会的外向性(S)、支配性(A)の6つですが、これはうまいぐあいに模擬質問項目があります。
論文1 回帰性傾向
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)回帰性傾向
5.16 5.11 5.68 5.74 F=2.33
- すぐに涙ぐむ。
- いったん怒り出すと自分がおさえられない。
- 気分にムラがある。
論文2 17. 気がかわりやすい
項目
O A B AB 最大と
最小の差17 19.3 18.8 21.7 21.8 3.0
これまたピッタリ一致します。なかなかいいですね。
論文1 神経質
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)神経質
5.47 5.69 5.65 5.66 F=<1
- リラクセーショングッズに凝りまくっている。
- 与えられた仕事は完璧にこなさないと気がすまない。
- ちょっとしたミスがいつまでも忘れられない。
論文2 9. 人に言われたことを長く気にかけない
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
23.5 22.2 26.7 23.3 4.5 1982
28.2 24.3 24.4 25.0 3.9 1986
25.6 23.7 26.1 26.9 3.2 1988
27.6 24.2 27.2 28.3 4.1 平均
26.2 23.6 26.1 25.9 3.6 論文2 11. くよくよ心配する
項目
O A B AB 最大と
最小の差11 30.8 33.9 32.2 31.9 3.1
これもいうことなし。次は、
論文1 衝動性(のんきさ)
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)衝動性(のんきさ)
5.25 5.23 5.78 5.66 F=1.67
- 宴会部長的な役割を求められることが多い。
- 人の話をだまって聞いているのが苦手である。
- 考える前に体が動いてしまう。
論文2 15. 何かをする時は準備して慎重にやる
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
32.1 29.8 25.9 29.1 6.2 1982
32.7 32.3 29.8 31.6 2.9 1986
29.3 33.6 28.7 33.6 4.9 1988
28.3 32.3 26.4 30.1 5.9 平均
30.6 32.0 27.7 31.1 4.3
論文2 23. 話をするよりだまって考え込む
項目
O A B AB 最大と
最小の差23
16.1 16.5 14.9 15.4 1.6
不思議なほどピッタリ一致しますね。
論文1 攻撃性(愛想の悪いこと)
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)攻撃性(愛想の悪いこと) 5.48 5.41 5.51 5.53 F<1
- 目的を達成するためなら手段を選ばない。
- ユーモアを装いながら人を傷つけることがある。
- 自分の意見をはっきりいわない人にはいらいらする。
ピッタリするものないし、差が小さいので無視します。(^^;;
論文1 支配性
尺度名
O(182) A(225) B(138) AB(68) 平均値の差
の検定 注2)支配性 4.72 4.64 4.64 4.60 F<1
- いつの間にかリーダー的な役回りをしていることが多い。
- 人前で話すことはそれほど苦痛ではない。
- みんなのために働くことが好きだ。
論文2. 先頭に立つのが好き
項目
O A B AB 最大と
最小の差3 13.6 12.5 11.6 11.9 2.0
O型が一番のところは一致しています。 -- H10.5.8
どうも、論文2の質問項目はどっかの性格テスト(矢田部ギルフォード性格検査?)の質問項目から抜き出したもののようです。そうでなければ、こんなに質問項目が一致するわけがありません。それよりも、注目したいのはデータの傾向です。有意差は出ているものと出ていないものがありますが、(誤差の範囲内で)これだけ一致するなら偶然ということは絶対にありませんからね。もちろん、私がどう頑張ったって、こんなにうまく質問項目や結果を選べるわけがありません。
くどいですが、否定論者である3人の主張の主張は、
また、論文1の考察によると「各型の性格イメージはバラバラであり、明確な性格像は形成されていない」のですから、もし一貫した差があれば、それは血液型による性格の差といっていいわけです。ですから、論文1と論文2のデータによると、明らかに血液型と性格は「関係あると」いうことができます。本当に驚きましたね。なぜだれも気が付かなかったのでしょうか? 正直な話、あまりにも話がうますぎて、いまだに半信半疑なのです。皆さんはどう思われますか? -- H10.5.9
論文2のデータの分布図を書いて見てたので、論文1も分布図で分析してみましょう。
論文1−表2 血液型別にみた血液型予想質問の肯定率(%)
この質問項目は、能見さんの本を参考にして作っただけあって、さすがに差が出ています。どういうわけか、O−ABの方がA−Bより差が出ていることがわかります。もちろん、有意差なんか出ていなくたって問題ありません。見ればわかるとおり、これは「誤差」ではありませんから。
論文1−表4 血液型別の性格尺度得点の平均
この質問項目は、性格テストからのものです。O−ABとA−Bのどちらにもバランスよく差が出ていることがわかります。さすがに性格テストというべきでしょうかね。もちろん、見ればわかるとおり、これも「誤差」ではありません。:-p
論文2−表B 4年度の平均
前にも書いたとおり、確かにO−AB方向の差が少ないようです。また、やはり差が出にくいデータであるようです。理由は不明ですが、これは対象者が(ランダムサンプリングによる)均質でないことによるものだと思われます。しかし、A−Bはちゃんと差が出ていることから、O−ABは年齢によって血液型と逆傾向の差が出るのでしょうか? それとも、質問項目の選択(性格テストの中から?)によるものかもしれません。あるいは、大村政男さんの論文のページの分析のとおり、本来の3者択一を2者択一にしてしまったのが原因かもしれませんね。本当はどうなのかわかりませんが…
もちろん、見ればわかるとおり、これも「誤差」でないことは明らかです。:-p
詳しくは、血液型得点の計算のページをどうぞ!
-- H10.5.9
工学系の常識どおり、データ分析のための分布図を書いてみました。見ればわかるとおり、血液型による性格の差は「誤差」ではないことがわかります。なかなか面白い結果が出たと思いませんか? いろいろな解釈ができると思います。また、データを11年分に増やした坂元章さんの論文もありますが、グラフを見るとほぼ同じ傾向であることがわかります。 -- H10.5.13
最近になってですが、松井さんの分析ミスにはっきりと気が付きました(実はこのページにそれとは気が付かずに書いていたのでした…う〜ん)。それは論文2の表8の分析です。分かりやすいように、もう一度引用しておきます。
表8 項目4「物事ごとにこだわらない」の肯定率(単位%) →最高値が赤 →最低値が青
O A B AB 80年
31.8 30.6 37.8 34.3 82年
39.1 33.0 35.6 36.1 86年
39.5 32.4 38.8 39.9 88年
42.9 35.9 45.1 37.1
4つの年度で共通して差が見られた項目4について、4年度の肯定率を一覧したのが表8である。(中略)4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた。(中略)以上の結果は、ABO式血液型による性格の差には、年度を越えた一貫性がみられないことを明らかにしている。本資料のデータから見る限り、血液型ステレオタイプは妥当性を欠くと結論される。
(注3)視点をかえれば、A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる。表7のデータをA型とその他の型に再分類し、差の検定を行うと、いずれの年度でも有意差が認められる。しかし、この検定における関連係数(ユールのQ)は0.082〜0.148と低めである。分析された24項目のうち、1項目だけが低い関連しか示していない点を考慮すれば、本報告の結論を改変する必要はないと考えられる。
太字の文章に注目してください。この場合、「最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた」のはなぜでしょうか? これは、本当に「一貫性を欠いた結果」なのでしょうか? 私も松井さんのいうとおりだと思っていたのですが、「一貫性を欠いた結果」でもおかしくないのだとつい最近気が付きました。実は、ほぼ同じ内容をこのページに書いていたのですが、やっと気がついたのです。思い込みとは恐ろしいものですね(単に私が間抜けなだけ?)。では、これからその理由を説明しましょう。
「データの再分析(その5)」に書いたとおり、このデータの誤差はだいたい7.2%程度になります。そこで、各年度の平均に対してどの程度の誤差があるのかちょっと計算してみましょう。その前に、4年度の平均を書いておきます。
4. 物事にこだわらない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
31.8 30.6 37.8 34.3 7.2 1982
39.1 33.0 35.6 36.1 6.1 1986
39.5 32.4 38.8 39.9 7.9 1988
42.9 35.9 45.1 37.1 9.2 平均
38.3 33.0 39.3 36.7 6.3
なるほど、値に結構バラツキがありますね。そこで、各年度の平均に対して血液型別の差を計算したのが次の表です。
4. 物事にこだわらない →最高値が赤 →最低値が青
年度
O A B AB 最大と
最小の差1980
-1.8
-3.0
4.2 0.7
7.2 1982
3.2 -3.0
-0.3
0.2
6.1 1986
1.9
-5.3
1.2
2.3 7.9 1988
2.7
-4.4
4.9
-3.2
9.2 平均
1.5
-3.8
2.5
-0.1
6.3 最大と
最小の差5.0
2.3
5.2
5.4
-
サンプル数に応じて、バラツキが見事にA<O<B<ABの順になっていることがわかると思います。なるほど、これは「正しい」バラツキのようですね。
さて、上にも書いたように信頼度95%では誤差は7.2%程度になります。まあ、実際にはここまで誤差が大きくなることはないでしょうが…。ですから、一番下の行の最大と最小の差(=誤差)については、最大7%ぐらいあっても不思議ではありません。もちろん、見れば分かるとおり、「誤差」は計算どおり7%以下に収まっています。つまり、もともとこの程度の誤差はあるのですから、「A型とその他の型の間には、一貫した差がみられることになる」としても、もともと大した差がないO・B・AB型では「4年度で共通して差の見られた1項目も、最高の肯定率を示す回答者の血液型が年度によって異なるという、一貫性を欠いた結果になっていた」のは当然です。逆に、この程度の差で「最高の肯定率を示す回答者の血液型」が一貫性を示していたら、そっち方が確率が低いのですから偶然なのです。これは何もわざわざ計算するまでもないでしょう。論文2の他のデータについても全く同じことがいえますね。
このページの最初に書いたように、統計的な差が出るには次の4つの条件が必要です。
1.回答者が均質でないといけない(つまり、同じ大学の大学生なんかがいちばんいい)
2.回答者総数が数百人以上でないといけない(できれば千人以上で血液型別の人数が同じならなおよい)
3.能見さんの本の血液型別の特徴を質問項目にすること(一般の性格テストではダメ)
4.能見さんの本の血液型別特徴と回答結果は必ずしも一致しない(とにかく差が出ればよい)
ここに、私は5番目の条件を付け加えたいと思います。
5.統計的な誤差をきちんと計算すること
しかし、なんでこんな簡単なことに今まで誰も気がつかなかったのでしょう? 狐につままれたような気持ちです。
今まで松井さんの分析は間違いないと尊敬していたのですが、この点に関してだけは間違っていると思います。皆さんはどう思いますか?
-- H10.8.16
初めて松井豊さんの分析ミスを発見しました。しかし、こんな凡ミス(失礼!)が10年以上も誰にも指摘されないというのは実に不思議です。いや、松井さんはとっくに気付いていたのかもしれないのです。ただ、誰にもわからないのでそのままにしよう思っていたのかもしれません。う〜ん、これではまるで私のようだ(苦笑)。いや、松井さんのことだから、なにか別な理由があったのかもしれません。例えば、わざとミスを書いておいて、どの心理学者が一番最初に発見するのか知りたかったとか…。 でも、心理学者でない私が一番最初に発見してしまいました。これでは、松井さんもさぞかし残念(?)でしょう。いや、仲間内ではすでに「発見」されていたのかも(本当かな?)。おっと、これまた『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』の見過ぎでしょう(笑)、たぶん。 -- H10.8.16 |