骨髄移植と性格
脳と性格


ABO FAN


[注:実は血液型と性格は関係があるという医学的根拠があるようです→詳しくはこちら -- H14.1.3]

18.gif (350 バイト)骨髄移植と性格

 『"THE BLOOD GROUP" SAVE THE HUMAN RACE』のc-chanさんから許可をもらったので、ここに転載しておきます。 -- H10.6.11

 専門家からメールをいただいたので、参考までご紹介しておきます。

Red_Ball12.gif (916 バイト)No.431 B型男性の篠原菊紀さんから H12.10.25 2:22

1.面白いですか?

とっても(^O^)

2.お気に入りのページ

骨髄移植と血液型・脳と血液型

3.血液型と性格の関係は?

どちらともいえない

4.メッセージ:

私、生理人類学(主に脳生理)が専門ですが,性格と血液型が関係する場合の可能性の立て方は、細部はともかくとして、正しいと思いました.というか、つい最近、似たような論旨で一般向きの小論を書きました.NEを外向−内向,DAを衝動性,5-HTを不安,と対応させる仮説を紹介して,血液型が性格と関係するとすれば,こういう系(この三つの系は脳に幅広く投射し脳全体を調整する)への作用の証拠を示すことになるかもね。とか.

有益な知見をどうもありがとうございます。せっかくなので、ぜひその一般向けの論文をご紹介いただければと思います。(^^)

18.gif (350 バイト)骨髄移植で性格は変わるか?についての「仮説」

ヒトの血液型は、「普通は」一生かわることはない。
ところで「骨髄移植」では、HLA(白血球型)さえ一致すれば、ABO式の血液型が違っていても移植できることがあるという。
その場合、移植されたヒトは、いずれ骨髄を提供してくれた人の血液型に変わってしまうであろう。
(骨髄とは血液をつくる工場のようなものである)
そのような場合に、血液型が変わってしまうということはありうる。

それでは血液型が変わったら、性格も変わってしまうのだろうか?
まったくの推論だが、私の仮説では答えは「NO !」(変わらない)である。
なぜなら、血液は変わっても、その人の脳は変わらないからである。
先にも示したことではあるが、脳にもわずかながら「血液型物質」は存在している。
(血液中での含有率を100とすると、脳には8ぐらいの割合で存在する。脳とは非常に微妙なものである。ほんのちょっとした違いが大きな影響につながると考える。)
そして脳細胞や神経というのは、他の細胞と違って、再生することはない。
だからいくら血液型が変わっても、「脳細胞はもとの血液型(体質型)のまま」だから、影響されることはない!というのが私の仮説なのである。
また脳には「血液脳関門」というバリアのようなものがあって、分子量の大きなものは通さない仕組になっている。
脳に新しい血液型の血液が流れ込んでも、「血液型物質」は「糖タンパク」という比較的分子量の大きなものなので、そのバリアをほとんど通過できない可能性がある(実際には不明らしい)。
したがって新しい血液型の影響はほとんど受けない、と考えるのである。
脳はもとの血液型(体質型)のままで、たまたま血液だけが変わってしまった、という状態なのではないだろうか?
(なお私は文系出身なので、これ以上詳しいことは分かりかねます。) -- H10.6.11

19.gif (267 バイト)なるほど…

 なるほど、生理学的にもうまく説明できるようですね。なお、神経系についても、ほぼ同じ考え方ができると思います。でも、否定論者は「脳には血液型物質はない」から「血液型と性格は関係ない」という人が多いのです。ちょっと気になったので、早速チェックしてみることにしました。 -- H10.6.11

 その後にこんなメールをいただきました(みなさんからのメール)。

Red_Ball12.gif (916 バイト)No.155 AB型男性のFREIAさん(freia@mx6.nisiq.net)から H11.3.17 0:15

1.面白いですか?

とっても(^O^)

2.お気に入りのページ

E−MAIL

3.血液型と性格の関係は?

ある

4.メッセージ:

1.私の妻は看護婦ですが、大ベテランの先輩がこう言っていたそうです。
「輸血した人は、少し性格が変わるような気がする。患者さん自身でも「話す言葉が自分の言葉でないみたい」と言った人がいた。」と。

2.私の甥が悲しいことに白血病になりました。骨髄移植をすると血液型が変わることがあるそうです。もしそうなった時は、それどころではないかもしれませんが、その気になれば性格の変化についてレポートさせていただきます。
 しかし、そういうデータは他には…無いんでしょうね。

(以下省略)

【H19.2.10追記】

 芦田嘉之さんの『やさしいバイオテクノロジー』で、骨髄移植についての記述がありました。

芦田嘉之さん やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る サイエンス・アイ新書 ソフトバンククリエイティブ H19.1 945円(税込)

 現職は、広島大学大学院理学研究科助手です。専門は、ガンの移転・浸潤、植物のストレス応答・防御機能などだそうです。あまり血液型に詳しいとは思えないのですが…。 サブタイトルに血液型や遺伝子組換え食品の真実を知るありますが、これはたぶん編集部が付けたのでしょう。

 血液型に関する内容として6ページを割いています。内容は、血液型を決める遺伝子(110〜111ページ)、血液型の分子生物学(112〜113ページ)、コラムとして血液型と性格に関連はあるのか(114〜115ページ)の3つです。

 これらのうち、コラムでは、能見さんについては『能見の集めた膨大なデータはとても「統計」とはいえず、その解析に科学性はありませんでした』と述べています。また、「血液型と気質の関与は今のところ科学的な根拠が見つかっていません」ともあります。「科学的」の説明がないのでなんともいえませんが、全体の文脈からすると、統計的な根拠があれば「科学的」だとも読めます。

 そうだとすると、否定論者のデータも全否定でないとおかしくなります。なぜなら、否定論者のデータは、自分の教えている学生がほとんどだからです。能見さんのデータだけ一方的に批判するのはいかがかと思いますが、そう言う記述は全くないようです。ちょっと一方的な記述だと思うのは私だけではないでしょう。

 また、能見さんのデータは再現性があるらしいことも、一部の心理学者からは指摘されています。例えば、

 です。これらについても、全く触れられていないのはいかがなものかと思います。まさかとは思いますが、よく調べてないのでしょうか。ちょっと考えにくいのですが、ひょっとして知っていて書いていないのでしょぅか?

 意外なところでは、松岡さんの『ブラッドタイプ』についてにいてですが、骨髄移植の誤解しているようだと批判しています。『ブラッドタイプ』では、骨髄移植を受ける患者が全身の血液型がB型に変わるから拒否する、という場面があるのですが、これは私もウソ1で指摘したとおり間違っているとのことです。115ページから引用します。

骨髄由来以外の圧倒的多数の細胞のゲノムは、移植前後で変わりません。したがって、血液型を決定している遺伝子も元のまま変わっていませんから、骨髄由来以外の「血液型」は変化していません。

 やはり、骨髄移植では血液以外の血液型は変わらないようです。

09.gif (441 バイト)否定論者−高田和明さん

型物質の局在

 A・Bトランスフェラーゼ(注:糖転移酵素のことで、A・B型物質をつくる働きをします)が存在するのは骨髄、胃粘膜、顎下腺、母乳、血清、精液、羊水などである。つまり細胞膜では赤血球のみ自己で作られる型物質をもつ。その他の細胞に存在する場合(リンパ球など)では血液から吸収されたものとされる。腫瘍の場合は赤血球以外にも型物質が発現されることがある。
 しかしモークローナル抗体を用いてしらべると膜上にはA型、B型のタイプ1と2の他にタイプ3からタイプ6までのオリゴ糖鎖が存在することがわかった。型物質は長い糖鎖の末端のガラクトース、Nアセチルガラクトサミンに抗原決定のエピトープを有するので、例えばタイプ3のガラクトース・Nアセチルガラクトサミンの結合箇所はA抗原様の反応をする。
 しかしこれらは本来のA抗原、B抗原とは異なるものであることは言うまでもない。

型物質と脳

 性格をきめるものは脳であるとすることに異存をはさむ人は多くはないであろう。もしそうとするなら、脳に型物質が存在するか、脳に血液中の型物質が接触するかがこの議論の中核をなすものと考えられる。
 前述したように神経細胞、神経膠細胞など脳を構成する細胞にはA、Bトランスフェラーゼは発現しておらず、膜上にA・B・Hの糖鎖は存在していない。しかし注意すべきことはタイプ3から6までの型様の糖鎖が若干発現することは否定出来ない(これを示している人はいない)。しかしこのようなことがおこってもこれは人により脳の場所により発現の程度は異なり、とても性格とは関係づけられない。
 一方脳の血管のまわりには膠細胞の突起がすき間ないように附着しており、脳機能に関係する酸素、ブドー糖、アミノ酸の一部、水などごく少数の物質しか通過させないことが知られている。これを血液・脳関門と呼んでいる。当然型物質のような糖脂質、糖タンパクは血液・脳関門を通過しない。
 つまり脳細胞が自己の血液型を知ることはないのである。
(『現代のエスプリ〜血液型と性格』 血液型学から見た血液型と性格の関係への疑問−血液型…発見から最新知識まで 165〜166ページ) -- H10.6.11

09.gif (441 バイト)肯定論者−能見正比古さん

 私は人間の“性格”とは、脳を含めた人間の神経系を、1つの電気回路とみなしたとき、その回路特性であると定義している。事実神経の刺激伝達は、電気的に行われる。その回路を構成する材料が血液型で異なるのだ。回路特性にもひびくわけである。
 中で私が有力な犯人とニラんでいるのは、シナップスである。これは神経細胞のターミナルのようなもので、八方から情報が入って来ては出て行く。その伝達方式は電気化学的に行われる。つまりシナップス1個は1つの電池のようなものである。その電解液の化学性が血液型によって通っている。1つ 1つのシナップスの特性差は小さくても、脳の中だけで何億というシナップスがあるのだ。積算すれば、大変な差になることも考えられる。
(『新・血液型人間学』 80ページ) -- H10.6.11

09.gif (441 バイト)血液型の専門家1−山本茂さん

 皆さんが考えている血液型というものは、赤血球のほかに、血液と無関係な体のいろいろな組織や体液などにも血液型物質として含まれています。分布がもっとも広い血液型はABO式血液型です。どのような場所にまで分布しているのかを表3・3に示します。
 この表を見て意外な感じをもつ方もいるでしょう。赤血球にも無論、血液型物質は含まれていますが、含有量から見比べますと、赤血球よりも血液型物質が多い場所があるのです。臓器や組織では、胃や十二指腸に極めて多く、とくに胃袋の内側の壁、胃粘膜は豊庫の1つです。分泌液や体液関係では、唾液、精液、胃液に多量に含まれています。
 筋肉の他に、骨、歯、毛、爪などの硬い組織にもABO式の血液型物質が含まれています。骨や歯においては、外側の硬い部位にあるのではなく、内側の髄(ずい)と呼ばれる幾分柔らかい中心部に集中しています。ほとんど水ばかりと思われる尿や汗にも、量は少ないとはいえ、ABO式血液型物質は含まれています。
(『知っておきたい血液型の科学』 48〜49ページ) -- H10.6.11

表3・3 ABO式血液型物質のヒト体内における分布

(1)臓器や組織

ア 非常に多い(赤血球よりも) 胃、十二指腸、唾液腺、食道など
イ 中程度から少ない 筋肉、肝臓、肺臓、白血球、血小板、骨、歯、毛、爪、皮膚など

ウ 極めて少ない

、脂肪組織、眼のガラス体や水晶体など

(2)分泌液や体液など

ア 非常に多い 唾液、精液、胃液、胎便*(特殊なものでは卵巣のう腫液)など
イ 中程度から少ない 羊水、膣液、母乳、血清、尿、汗、涙など
ウ 極めて少ない 脳脊髄液など

*とくに生後まもない赤ちゃんの便

09.gif (441 バイト)血液型の専門家2−大久保康人さん

 ABO型物質は赤血球に存在するだけではなく、表I−5表I−6に示すごとく各種臓器、各分泌液中にも認められる。特に、胃液や唾液には多量に分泌している。そのため唾液を血液型物質の検査に利用することが多い。
(『血液型と輸血検査(第2版)』 6〜7ページ) -- H10.6.13

表I−5 各臓器中のABH抗原

臓 器

反応(%)

100
十二指腸 90

空 腸

80

胆 嚢

78
顎下腺 76
食 道 70

膵 臓

66

回 腸

56

腎上体副腎

40

膀 胱

40
耳下腺 40
リンパ節 37

腎 臓

37

前立腺

34

肝 臓

34

精 嚢

29
肺 臓 29
結 腸 23

副睾丸

22

脾 臓

18

睾 丸

16

8

表I−6 各分泌液中のABH抗原

分泌液

反応(%)

胃 液

100

唾 液

82

胆 液

74

精 液

69
尿 16

19.gif (267 バイト)あれ?

 公平になるように、否定・肯定、それから血液型の専門家(「血液型と性格の専門家」ではなく、「血液型の専門家」です)と4つ並べてみました。また、能見さんの本で、どっかで脳は血液中の8%ぐらいのABO血液型物質があると読んだような記憶があったですが、残念ながら探し出すことはできませんでした。
 いずれにせよ、脳にABO血液型物質(あるいは類似物質)があるのは(量は少ないにしても)確かなようです。ということは、やはり血液型と性格は関係ありそうだ、という結論になるのですが…。はて?

 また、ABO式血液型の専門家の意見を聞くとわかりますが、やはり「血液型と性格」の関係を明確に否定することはできないのです。
 
複数の専門家からの情報によると、ABO血液型物質が脳の発生の時期や神経系(性格?)に何らかの影響を与えていることは(現状では)完全には否定できないそうです。 -- H10.6.11

 脳と血液型に関係あると思うので、他のページにも書いたのですが、ここにも書いておきます。

Red_Ball12.gif (916 バイト)糖鎖の違いと性格

 血液型人間学メーリングリストでの議論で、主催者である鹿児島大学の板倉さんから、なかなか説得力のある説明がありました。それによりますと、糖鎖の違いと性格には関係があるかもしれないのではないかということです。ただし、ABO式血液型糖鎖で性格が違うかどうかはまだ未解明のようですが。次からが引用です。

 最近、と言いましても1994年くらいに発行された糖鎖関係の書物を読んでいますと、糖鎖研究は、私の学生時代には想像もしなかった展開を見せているようです。
 20年も前は、血液型物質と気質の関係について私に可能性として考えられたのは、

神経伝達物質やホルモンの「受容体」の作用に対して周辺の糖鎖がなんらかの影響を与える可能性

程度でした。(ま、それはそれでおもしろい面もあるので、■興奮と脱感作 としてこのメールの最後につけておきます。)

 さて、昨年、久留米大の先生にABO式血液型を決定する遺伝子について講演していただいたとき、その遺伝子が、

神経、筋肉、骨

において、胎児期に大量に発現しているということを伺いました。実は、わたしは、「脂肪組織、筋肉、骨、ではどうですか?」と質問したのすが、上記のようなお答えでした。脂肪組織の方は、わからない、ということでした。神経(脳を含む)は、われわれとしては当然ですね。
この答えが、わたしの予想にあまりピッタリだったので少し驚きましたが、「胎児期」というのにひっかかりました。う〜ん。「発生」について勉強して、仮説も練り直さないと。。。と思ったわけです。

 しかし、昨日届いた 日経サイエンス 糖鎖と細胞 の中の「神経系の糖脂質による細胞認識」は、なかなかエキサイティングなものでありました。
動物の糖脂質であるスフィンゴ糖脂質の中でもガングリオシド(末端にシアル酸がついた酸性糖脂質)の話しではありましたが、糖脂質が神経系の発生、シナプス形成において重要な役割を果たしている、ということなのです。

脳の複雑な機能は、脳細胞(神経細胞)の複雑な神経回路網によるわけですが、その回路網の接続部分がシナプスです。

 ただし、ガングリオ系ではなく、ラクト(ネオラクト)系糖脂質である血液型物質が、上記の事柄に関与しているとは書かれていません。
「単なる糖鎖が。。。」という否定の言葉は、これで笑いとばせるのですが、「単なるラクト系スフィンゴ糖脂質が。。。」と言われると、ま、「まだまだこれから。。」と答えるくらいしかないかもですね。(^^;

ガングリオ系とラクト系は、糖鎖の大きさや複雑さにそんなに差があるわけじゃないですけどね。はしっこに、酸性のシアル酸がついていることが一番の差のようです。また、ラクト系にシアル酸がついて、長糖鎖ガングリオシドというのができることもあるようです。

長くなりましたので、また。m(_ _)m

■興奮と脱感作

 例えば、アセチルコリン受容体については、分子レベルの研究がかなり進んできました(おなじ遺伝子スーパーファミリーに属すると考えられているセロトニン受容体なども同様のようですが)。α、α、β、γ、δという5つのサブユニットが細胞表面で輪を作って中央に穴(閉じたり開いたりするチャンネル)ができています。

 特命リサーチでも出てきましたが、神経細胞と神経細胞の接合部であるシナプスにおいて、神経終末から放出された神経伝達物質が次の神経細胞に届くと、この受容体に結合します。そうすると、チャンネルが開いて、Naなどのイオンが流入し、興奮へとつながるわけです。

 神経細胞の種類、性質によって神経伝達物質が異なり、それぞれの受容体が存在し、流入するイオンの種類も違うようです。

 さて、ここで、この受容体には「脱感作」という状態がある、ということなのです。神経伝達物質がずっと存在していると、つまり刺激が長く続くと、受容体に神経伝達物質が結合しているのにチャンネルが開かない、つまり刺激に反応しなくなっちゃう状態です。むちゃくちゃ興奮し続ける危険性を回避しているわけですね。

 さてさて、能見さんの本に出てくる、血液型別興奮曲線ですが、この脱感作となんらかの関係があると思われませんか?

  • O型は、一度興奮しだすと(あがったりすると)収まらない。
  • A型は、普段はO型ほど安定しているわけでもないが、興奮の後、開き直って安定する。
  • B型は、喜怒哀楽も激しい方であるが、AやOのような興奮状態がない。
  • AB型については、能見さんは2つの波を重ねてかいていますが、B型同様、AやOのような興奮まではいかない? 突発的感情変化、というのはよくいわれますが。

 上の、A型の開き直りって「脱感作」そのもののような気がするのですが。。。
ただ、成人の神経細胞に、ABO式血液型糖鎖がどれだけ存在しているのか(胎児では、ABO式血液型遺伝子が大量に発現しているということではあるが)はたまた、存在しているとして、それがどれだけ受容体の作用に影響できるのか、情報不足、未解明、の部分が多いですね。

 なお、ABO式血液型の研究者から、こういう意見をいただいています。

赤血球や血管内皮のフコース転移酵素(ABO式血液型物質を作る働きを持つ酵素)はFUT1という遺伝子産物であるが、胎児期の脳に発現している可能性か大きい。

 ですから、脳の発生の時期(性格?)に何らかの影響を与えていることは完全には否定できないと思います。 -- H10.6.28

Red_Ball12.gif (916 バイト)HLAと性格

 竹内久美子さんから、HLA(白血球の型の一種)と性格に関係があるのではないか?という説が出されています。そしたら、やはり白血球の型と性格には関係があるのだそうです。もちろん、遺伝子レベルで科学的根拠があるのだそうで…。残念ながら、赤血球の型(ABO式血液型など)とは関係があるとはまだ証明されていません(高田明和著『血液は体のすべてを知っている』 コスモの本 H4.10 206ページ)。

白血球の型とある種の体質、性格は遺伝子のレベルで結びついていることが知られている。しかし、赤血球の場合は遺伝子レベルでこのような関係があることは知られていない。血液型性格診断は占いの一種くらいに思った方がよさそうである。

 残念ながら、どの型がどんな性格に関係があるのかは書いてありませんでした。しかし、この本の著者はABO式血液型と性格の関係には否定的です。私は、この調子でABO式血液型と性格に関係があることが証明されることを願っているのですが。 -- H10.6.28

【H16.7.19追記】 デザイナー・チャイルドと胎児期の脳

 最近、平成16年6月19日付の『日本経済新聞』で面白いコラムを見つけました(早稲田大学教授 池田清彦さん「生物進化考(16)」)。

 ひところ、デザイナー・チャイルドなるコトバがはやった。ヒトの形質に関与する全ての遺伝子が判明したあかつきに、遺伝子を自由に組み合わせて、理想的な子供をつくろうという話だ。今は絵空事だが、技術が進歩したら本当に可能になるのだろうか。
 デザイナー・チャイルドをつくるには、個々の遺伝子たちが、それぞれ別々の形質に1対1で対応していることが前提となる。すべての形質は特定の発生システムのなかで遺伝子たちと環境の共同作業の結果作られる。中にはひとつの遺伝子でひとつの形質を決めているように見える場合もあるが、その形質発現に関与する他の遺伝子たちや体内環境が安定しているのでそう見えるのだ。ひとつの遺伝子がそれぞれ独立に形質を決定したわけではない。

 また、ある研究者からは、こんなようなことも言われました。

 ABO式血液型を決定する遺伝子は、胎児期には神経[注:脳を含む]にも大量に発現している。だから、成人の脳に血液型物質がないから血液型と性格に関係がないなんていうのは、まるっきり素人の意見だ。医者は発生[注:胎児期]の専門家ではないし、そんなことは知らないから平気で発言をしているのであきれている。ABO式血液型の研究者でも、こんなことを知っているのは一部の人だけだろう。ABO式血液型が、発生のとき[注:胎児期]に神経細胞に影響を与える可能はあるので、血液型と性格が関係ないとはいえないのではないか。

 ということですから、「脳内物質であるドーパミンに関係する遺伝子がABO遺伝子(第9染色体)の近くにある」という根拠は、あまりにも素人的発想のようです。
 もともとは、ある否定論者が「性格を決定する遺伝子と血液型の遺伝子の連鎖が発見されていないし、その可能性も低い」と言っていたので、反論として用意したのですが、今となっては撤回した方がよさそうです。(^^;;

 結論としては、

  • 性格を決定する遺伝子と血液型の遺伝子の連鎖が発見されていないし、その可能性も低い
  • 成人の脳には血液型物質がないから血液型と性格に関係がない

 などという否定的な根拠は信用しない方がよさそうです。

 科学は日進月歩ですから、最新の知識をどんどん吸収して「常識」を変えなければいけませんね。反省反省。

 なお、この部分の訂正は、NATROMさんからの示唆も受けています。ご指摘ありがとうございます。m(._.)m

【H20.2.3追記】

 参考までに、浅尾哲朗さんの『血液型と母音と性格』から引用しておきます。

 口絵1 蛍光抗体法による神経終端部の型物質の存在(見事な写真なので、お見せできないのが残念です)

3枚の写真のキャプション…皮膚の神経終末A抗原、脊髄後根の第1次感覚神経B抗原、皮膚の汗腺と神経終末H抗原

 口絵1に対する解説(24ページ)

 反対派の人々の反論の根拠は、大脳では血球が血管から組織に出て神経細胞に接触することはないということに基づいている。
 これは型物質が赤血球に限定していると仮定した場合の話で、実際にはABO式とルイス式での型物質は血球以外の体の細胞、筋肉でも、内臓の組織でも、そして神経細胞でも立派に存在していることが分かっている【口絵カラー1】

18.gif (350 バイト)血液型と性格の関係の生化学的説明?

 その後別な本を読んでみました。

R・グラント・スティーンさん 『DNAはどこまで人間の運命を決めるか』 三田出版会 H10.4 2,600円+税

dna.jpg (7474 バイト)

 226〜227ページには、心理学で長い間論争になっていた「遺伝か環境か」にピリオドを打つかもしれない記述がありました。それによると、遺伝の影響が40%強、環境の影響が60%弱だそうです。

 現在おこなわれている人格テストに問題があるのは明らかだが、別々に育てられた一卵性双生児の間の類似度が高いという事実は、 人格の遺伝性に関する強力な証拠となる。
  職業適性、職能、および全般的な関心事に関する徹底的なテストの結果、人格のこれらの分野の遺伝率は全体として40%ほどであった(*1)。 一緒に育てられた一卵性双生児と別々に育てられた一卵性双生児の間には重大な違いが見られ、どんなことに関しをもつようになるかについては、 環境の果たす役割がかなり大きいことが確認された。また、いくつかの異なったテストによれば、社会的態度といった漠然としたものでさえ、40%の遺伝性があるとされている。現に、双生児による回答からは、人生において宗教は重要であるという奪え方の遺伝率は40%、伝統的な価値観にこだわることに関しては53%の遺伝率が出ている。双生児の2人の間のもっとも大きな違いをひとつだけ挙げるとすれば 「社会面での無宗教的な態度」で、これは受けた教育による影響がかなり強かったが、それでも遺伝率は34%となっている。別々に育てられた一卵性双生児から特性に関して最大限の遺伝率が算出されるのはもっともであることを考えてもなお、 これらの結果には驚くべきものがある。ついでながら述べておくと、別々に育てられた一卵性双生児の研究では、IQの遺伝率は69%となっている (第8章参照)。
 人格決定因は各々遺伝性の程度が異なり、遺伝性の強いものもあればほかよりも弱いものもあることは十分に考えられる。 しかし現在のデータでは、それぞれの決定因の間に大きな違いがあることは明らかにはなっていない。数年前、合計で双生児が三万組になる四つの異なった研究結果を総合したところ、外向性と神経症傾向のどちらも遺伝率は50%という数値が出た(*2)。さらに最近になって、 異なった研究からデータを集めたところ(表10・1)、異なった人格特性に見られる遺伝率がほぼ均一の数字となって現れた。もっとも遺伝率の高かったのが外向性で47%、いちばん低かったのが人当たりに関する遺伝率で39%であった(*3)。これらの結論は、多数の双生児を対象とし、近代的な心理テストをおこない、最新型のコンピュータ・モデルを採用して遺伝率を計算したいくつかの研究を基にしたものである。

表10・1 人格特性の遺伝

特性 遺伝性 環境
外向性 47% 53%
開放性 46% 54%
神経症傾向 46% 54%
誠実性 40% 60%
人当たり 39% 61%
全体的性格 45% 55%

(a) 各々の人格特性に関するデータは、多くの異なった研究の平均(*3)

*1 Bouchard, T. J., et al., Sources of human psychological differences: The Minesota Study of Twins Reared Apart, Science 250 (1990): 223-228.
*2 Plomin, R., The roles of inheritance in behavior, Science 248 (1990): 183-188.
*3 Bouchard, T. J., Genes, environment, and personality,  Science 264 (1994): 1700-1701.

 元の論文は『サイエンス』だそうですから、なかなか信頼できる数字だと考えていいと思います。遺伝のうち血液型はどのくらいなのかわかりませんが、私の感じだと概算で最高で数10%といったところです。血液型って結構な影響があるものですね。

 また別な本では、

Living with Our Genes - Why They Matter More Than You Think - (1998) by Dean Hamer et. al. Doubleday

が面白いですね。著者は、アメリカ国立がん研究所(というのかな?)の研究員です。共著者がマスコミ関係者なので、表現もこなれていてなかなかです。ただ、あまりにもこなれすぎていて理解できない表現もありますが。(^^;; 残念ながら、日本語訳はまだ出ていないようです。
 この本によると、脳内物質と性格の関係については、アメリカではかなり研究が進んでいるようです。何らかの方法でドーパミンやセロトニンに影響を与え、それによって性格が変わってくるメカニズムが説明されています。となると、血液型物質がドーパミンやセロトニンに何らかの影響を与える可能性が示せれば、生化学的な証明ができることになるのかもしれません。
 別な論文によると、ある種のHLAとドーパミンやセロトニンの分子式が似ているので、受容体などとの反応(=性格)に影響がある可能性が示されています。ですから、ABO式血液型でも、ある種の脳内物質と血液型物質の分子式が似ていることが示せればいいわけです。これは決して不可能なことではなく、そのうちどこかの大学の医学部の図書館にでも行って調べてみたいと思っています。   -- H10.9.7

18.gif (350 バイト)血液型と性格の関係の生化学的説明?(続き)

 その後、ABO血液型物質やドーパミンとの構造を調べてみました。

 竹内久美子さんの『小さな悪魔の背中の窪み』によると、ABO血液型物質とは次のようなものだそうです。

赤血球の表面には、びっしり毛のように糖の鎖(ガラクトースやN−アセチルグルコサミンのような糖がいくつも連なっている。根元部分は糖質かタンパク質に結合)が生えている。最末端の糖の並び方は、血液型によってちょっとだけ違い、それにより抗原としての性質も違う。

 血液型というから、てっきり赤血球に含まれる物質が違うと思っていたのですが、そうではないようですね。要するに、赤血球の生化学的性質(抗原抗体反応)が違うということのようです。また、

A型の赤血球表面にはA型とO型の糖鎖が本数にしてそれぞれ同じくらいずつ存在し、B型ならB型とO型の糖鎖がそれぞれ同じくらい、AB型ならA型とB型とO型の糖鎖がそれぞれ同じくらい、O型のみO型の糖鎖が存在する。

 のだそうです。つまり、どの血液型でもO型の糖鎖は存在することになるのだそうです。

ドーパミン

dopamine.gif (2144 バイト)

■血液型物質(糖鎖)を構成する糖

galactose.gif (2619 バイト)

acetyl.gif (3119 バイト)

D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン …
L-フコース
N-アセチルガラクトサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン …
L-フコース
D-ガラクトース −  D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン …
L-フコース

 意外(?)なことに、神経伝達物質であるドーパミン(2−ジヒドロキシフェニルアミン)と、ABO血液型物質の一部であるアセチルグルコサミンやアセチルガラクトサミンは割と似ていることが分かります。アセチルグルコサミンやアセチルガラクトサミンは、ドーパミンと同じモノアミン(アミン=NH基が分子中に1つある)ですから、化学的な性質も何かしら似ていることには違いないでしょう、たぶん。
 ですから、ABO血液型物質とドーパミンは全く関係ないとは断定することはできないのではないかと思うのですが…。
 なお、セロトニン(5−ヒドロキシトリブタミン)の構造は残念ながら調べられませんでした。しかし、同じモノアミンであることには違いありません。ついでに、アドレナリンやノルアドレナリンも同じモノアミンで、構造もよく似ています。
 これで、状況証拠はそろいました。(^^)   -- H10.9.18

 神経パルスの伝達は、ナトリウムイオンやカリウムイオンによって伝わります。血液型物質の違いによる微妙な電位(イオン)の違いが、ナトリウムイオンやカリウムイオンの伝達特性に何らかの影響を与えているのかもしれません。というのは、糖鎖の末端(表面)の性質が血液型によって違うからです。生化学的にはどうなのか知りませんが、電気工学的には大いにありえる話だと思います。あるいは、血液型物質が受容体や神経伝達物質に影響を与えている可能性もあります。
 もっとも、これは(私の)全くの推測で、特に根拠はありません。(^^;;

09.gif (441 バイト)遺伝子と性格

 遺伝子と性格について解説してある本があります。残念ながら英語ですが、内容がとっても面白いので、この本からちょっと引用しておきます(76〜80ページ)。脳内物質や遺伝子と性格については、現在では関係が証明されているようです。なお、著者はアメリカの国立がん研究所(というのかな?)の主任研究員だそうです。

 Living with Our Genes -- Why They Matter More Than You Think --(1998) by Dean Hamer, et. al.

harmer.jpg (10677 バイト)

THE GENE AND PERSONALITY

     Murphy and Lesch's persistence had paid off. They'd found an inherited variation in DNA that clearly affected serotonin transport. Here was a little button effectively controlling levels of serotonin in the brain. Now the key question was, What did this "genetic Prozac" do in human beings? What effect did it have on temperament?
     Murphy and Lesch were pretty sure what the gene was not. They doubted it was an on-off switch for some mental illness; it was just too common. If it were a controlling factor in major depression, for example, that would mean at least one-third of the entire population should be feeling terrible. They figured the variation played a role in a more normal-meaning more common-variation in personality. The problem was that most of their research subjects were uncom mon: they were psychiatric patients with serious problems. The researchers needed DNA samples and personality profiles on a broad range of healthy people. They called me.
     Murphy and I had collaborated previously looking for the novelty-seeking gene. He knew I had exactly the material he needed, and within a few weeks, postdoctoral fellows Sue Sabol in my lab and Dietmar Bengel in Murphy's lab had genotyped 505 individuals for the DNA region just upstream from the serotonin transporter. They looked at every person for whom we had personality scores -- college students from local campuses; gay men from our studies of sexuality and AIDS; brothers and sisters, fathers and mothers; young and old; white, black, yellow, and brown; male and female. Once all the bench work was done on the DNA, it was a simple matter to match the data with the personality test scores.
     We held our breath as the first results rolled down the computer screen. Given all the various functions ascribed to serotonin -- from anxiety to depression to aggression, not to mention eating and drinking, cognition, and sex -- it was an open question whether we'd see anything specific or indeed anything at all. Maybe serotonin was responsible for so much that it wouldn't be linked with any of the narrow traits we were looking for. On the computer screen, we were search ing for stars. As the statistical results were churned out, two stars (**) indicated that a result was significant at the p <0.01 level, which meant less than a 1 percent chance of being a fluke.
     The earliest results were based on a standard personality test that measures five major traits. First we ran the DNA data against the factor for conscientiousness, which means dependability and organization. If the people who scored high or low for conscientiousness shared anything in common about this bit of DNA, the computer would catch it and mark it with a star. The first results were negative; no stars, no correlation. Next we ran the data for the trait of openness; nothing. I crossed my fingers as we punched in the third factor, extroversion. The numbers ran, the results popped onto the screen. No stars.
     The first hit came with agreeableness. That made sense because one aspect of agreeableness (or the lack of it) is ag gression, a trait ascribed to serotonin. The correlation was weak, though, only one star. It wouldn't be much of a link, but it was encouraging. The computer ground on. The fifth and final factor was neuroticism, a measure of anxiety, emotional stability, and reactivity to stress. These were exactly the traits that should be involved if we really were looking at a genetic Prozac. If we didn't get a hit here, we weren't going to find it anywhere.
     I watched the screen. New numbers popped into view. My face lit up in a big smile. Not one star. Not two stars. But three stars -- less than 1 chance out of 500 that the correlation was just by chance. And right bang on where we expected it.
     This was great news, but it was only a beginning.
     Next we started looking at the data from every possible angle. Maybe there was something obvious we were missing, or perhaps the way we had collected the subjects had biased the sample. First we split the subjects into those who'd been recruited through the National Institute of Mental Health and the National Cancer Institute. There was no difference: both groups showed the same significant correlation to neuroticism but not to the other factors. Next we checked females versus males, and straights versus gays; the neuroticism factor continued to shine through. We corrected the data for age, ethnic group, education and income; no matter how we crunched the numbers, the result stayed the same.
     I still wasn't convinced. It was possible the results were just some sort of coincidence based on the five-factor structure of the personality test. The questions we asked people about their personalities or how we categorized the answers could have led us in the wrong direction.
     Fortunately our subjects had been given not one but two different personality tests. Since there is much disagree ment about how to describe and measure personality, we wanted to use as many different yardsticks as possible. The second test is called the 16 Personality Factor inventory, developed by the pioneering American psychologist Raymond Catell in the 1940s. The 16PF divides personality into five factors formed from 16 core traits.
     When we matched the DNA data on our subjects with Catell's traits, a star appeared by only one of the five superfactors: anxiety. The correlation was right where we expected it to be, confirming that we really had found a link between the DNA region and a basic personality trait.
     The final analysis was to look at Cloninger's predictions. He had theorized that serotpnin would be involved in harm avoidance, and now we had a chance to test the theory. He was right. We found a significant correlation between this DNA region and the trait he called harm avoidance, which we could estimate by mathematically rearranging the questions from the five-factor test. There was no correlation for any of the other traits he identified. This was the second confirmation of Cloninger's theory. He also had guessed right that dopamine was linked to novelty seeking, and now he was proved right that serotonin was linked to harm avoidance. His model of personality was starting to look pretty good indeed.
     There was one intriguing twist to the story. The people with the highest level of anxiety-related traits had the short version of the gene promoter. This meant that where the serotonin transporter was least efficient, people had the most anxiety. This was the opposite of the Eli Lilly explanation for how serotonin works; it should have been the lowered serotonin transporter levels that were associated with decreased harm avoidance. Our results were more consistent with the "classical" model that serotonin causes rather than alleviates anxiety, depression, and other elements of harm avoidance.
     It's difficult to draw any firm conclusion yet about the direction of serotonin action, however, because it's possible that a lifelong decrease in serotonin transporter gene expression actually decreases serotonin signaling through a feed back or compensatory mechanism. What's really needed is a direct way to measure serotonin signaling in the living brain -- but that's not available yet.
     Our study not only confirmed the connection between the serotonin transporter and harm avoidance, but it also provided the first conclusive evidence that the multiple facets harm avoidance are connected at the level of the genes. That's because the differences in the DNA correlated equally well with several different aspects of harm avoidance: anxiety, depression, hostility, pessimism, and fatigability. Thus the results were a satisfying confirmation of the claim that a single set of genes -- in this case just one gene -- can influence distinct traits that are obvious in real people.

REFERENCE:
Lesch, Klaus-Peter, Dietmar Bengel, Armin Heils, Sue Z. Sabol, Bejamin D. Greenberg, Susanne Petri, Jonathan Benjamin, Clemens R. Muller, Dean H. Hamer, and Dennis L. Murphy. "Association of Anxiety Related Traits with a Polymorphism in the Serotonin Transporter Gene Regulatory Region Science 274,1527-31 1996.

 結論である下線部のみ訳しておきます。何かヘンな日本語ですが、それはご愛嬌ということで(笑)。

 私たちの研究は、セロトニン伝達物質と危険回避(harm avoidance)との関係を立証しただけではなく、多面的な危険回避が遺伝子レベルで関係があるということを明確に実証した。それは、DNAの違いと、数種類の危険回避(心配性、うつ、敵意、悲観主義、疲労感)とにかなりの相関があるからである。以上の結果は、1組の遺伝子−−この場合はたった1つ−−が実際の人々の明瞭な性格の違いに影響するという主張の確かな証拠となっている。

 結局、ドーパミンと好奇心(novelty seeking)、セロトニンと心配性(harm avoidance)が関係しているようです。となると、ドーパミンがB型物質、セロトニンがA型物質と関係しているとピッタリなのですが…。でも、そんなにうまくいくなら誰も苦労しませんね(笑)。   -- H10.9.19

19.gif (267 バイト)血液型と性格の関係の生化学的説明?(私の仮説)

 今までの説明は、真面目すぎて面白くないと感じた人も多い(?)のではないかと思います。そこで、この項目は『ABO FAN』流のいい加減な話です(笑)。眉に唾をつけて、だまされないように読んでみてくださいね。

 私の仮説では、

 ということになります。では、スタート!

 地元の図書館で、いろいろと調べてみました。アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質はアミンです。アミン以外の物質もありますが、数的には少ないようです。
 血液型物質の糖鎖は、糖とアミンでできています。糖鎖の端の方が抗原の性質を持っているのですから、途中は無視して端の方だけちょっと見てみましょう。かなりいいかげんですが、黄色の部分が1とすると灰色の部分が0.5ぐらいの全体の性質への影響を持つと仮定して、他の部分は無視することにします。そして、この部分のアミンの分子数を全体の分子数で割ったのを「アミン率」と名付けることにしてみましょう。計算すると、O型物質はアミン率0.20、A型物質が0.43、B型物質が0.14になります。つまり、A>O>Bの順になることがわかります。

 D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン  − D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン …
L-フコース
N-アセチルガラクトサミン −  D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン  − D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン …
L-フコース
D-ガラクトース −  D-ガラクトース  − N-アセチルグルコサミン  − D-ガラクトース  − N-アセチルガラクトサミン …
L-フコース

 ところで、神経伝達物質はアミンが多いので、血液型物質のアミンに影響される可能性も考えられます。同じアミンなので、「アミン率」が高いほど、神経伝達物質への影響が大きいことになりますね。つまり、血液型物質の影響が大きいのはA>O>Bの順となります。しかし、具体的にどんな影響が出るのでしょうか?
 常識的に考えて、神経インパルスの伝達そのものが−神経伝達物質が血液型物質のアミンに邪魔されて−遅くなると考えるのが妥当(?)でしょう。もちろん、神経伝達物質の分解も遅くなるはずだと思うのですが…。アドレナリンやノルアドレナリンは血管を通じて神経系へ運ばれ、ドーパミンやセロトニンはシナプスそのもので合成されるようです。ドーパミンやセロトニンについては、直接的に受容体を刺激するのではなく、transporter"Living with Our Genes"に書いてありますが、なんて訳すんでしょう?)によって受容体まで運ばれることになっているようですね。ここらへんは、かなり怪しいのであまり追求しないでください(笑)。

#ですから、「血液脳関門」があろうがなかろうが、アドレナリンやノルアドレナリンのような神経伝達物質は血液型物質と接触するようです。

 あれ? そうなると、骨髄移植で性格が変わるのかな? アドレナリンやノルアドレナリンの影響より、ドーパミンやセロトニンの影響の方がずっと大きいのでしょうか? あるいは、神経なんかより脳の方が性格に与える影響がずっと大きいのかしれません。
 そういえば、シナプスに血液型物質があるかどうかはどこにも書いてありませんでした。ま、もともといい加減な仮説ですから(笑)。いずれにせよ、血液型物質が脳や神経に何らかの影響を与えていることは完全には否定できないでしょう。
 なお、アドレナリンやノルアドレナリンは「血液脳関門」を通らないそうです。

 え?前書きが長くて全然面白くない?f(^^;; では、結論です。

 う〜む、なるほどと思いませんか? 私のいいかげんな説明でも、こんなにうまく当てはまるのです!(笑)

 そして、"Living with Our Genes"によると、ドーパミンが多いと好奇心(novelty seeking)が刺激され、セロトニンのtransporterがあまり働かないと心配性(harm avoidance)になるようです。つまり、B型が好奇心旺盛でA型が慎重で安全志向だということに…。う〜ん、本当かな?

 この裏付けとなるもう一つの事実を付け加えておきましょう。既に書きましたが、竹内久美子さんの『小さな悪魔の背中の窪み』によると、

A型の赤血球表面にはA型とO型の糖鎖が本数にしてそれぞれ同じくらいずつ存在し、B型ならB型とO型の糖鎖がそれぞれ同じくらい、AB型ならA型とB型とO型の糖鎖がそれぞれ同じくらい、O型のみO型の糖鎖が存在する。

 のだそうです。つまり、どの血液型でもO型の糖鎖は存在することになるのだそうです。ここで注意しないといけないのは、各血液型の血液型物質の種類です。

 常識的に考えて、種類が少ないほど神経伝達物質や受容体への影響が一定している→感情が安定しているはずです。つまり、O型が一番の安定型で、次はB型(O型物質とB型物質とのアミン率の差が小さい)とA型(O型物質とA型物質とのアミン率の差が大きい)、一番不安定なのがAB型ということになります。アミン率での分析結果とうまい具合に一致しますね。(^^)

 でも、AB型が不安定なのは、AB型の私にとってあまりうれしくないような気もします(笑)。 -- H10.9.19

神経伝達物質 しんけいでんたつぶっしつ Neurotransmitter
 神経細胞と神経細胞をつなぐシナプスや、神経と他の器官(筋肉など)との連結部で、神経終末から分泌され、神経の興奮を隣のニューロンやほかの器官につたえる物質。神経の種類によって、神経伝達物質はことなる。現在知られているものには、神経筋接合部・自律神経節・副交感神経終末のアセチルコリン、交感神経終末のノルアドレナリンをはじめ、セロトニン、アドレナリン、ドーパミン、ヒスタミンなどがある。
 神経伝達物質は通常、シナプス小胞の中にたくわえられているが、神経からの電気的刺激が神経終末部に達すると、そこから放出される。放出された神経伝達物質は別の神経やほかの器官の受容体と結合し、神経の刺激をつたえ、興奮させたり、抑制したりする。

アドレナリン Adrenaline
 自律神経のうち交感神経系に作用する神経伝達物質のひとつ。主としてストレスがくわわると副腎髄質から分泌され、血液ではこばれて交感神経系を興奮させる。ストレスを感じるとアドレナリンは、そのストレスからにげるにしても、たたかうにしても、体が力をだす態勢をととのえるように作用する。その結果、心臓の動きは活発になり、血管は収縮して血圧があがり、瞳孔がひらいて気管支は拡張する。肝臓や筋肉にたくわえられているグリコーゲンを分解してエネルギー源である血糖を上昇させたり、脂肪組織からは脂肪を分解して血液中に遊離脂肪酸を増加させたりする。
1901年、高峰譲吉が純粋な化合物として分離し、アドレナリンと命名したが、この物質の存在は、以前から推測されており、エピネフリンとよばれていた。したがって、アドレナリンもエピネフリンも同じ物質をさす。
 以前は副腎から抽出していたが、現在では合成している。薬としての用途はひろく、ショックがおきた場合に心臓を刺激したり、喘息の発作には気管支を拡張する目的でつかわれたりする。
 ノルアドレナリン(別名ノルエピネフリン)は交感神経終末から放出されて、心臓や血管平滑筋などの受容体に結合し、交感神経刺激作用をあらわす。したがってストレスのない平常時には、おもにノルアドレナリンが交感神経と心臓や血管の伝達物質となっている。
ノルアドレナリンとアドレナリンは化学的によく似ており、その前駆体であるドーパミンとあわせてカテコールアミンと総称される。

受容体 じゅようたい Receptor
 レセプターともよばれる。細胞膜上や細胞質内にある構造体で、おもにタンパク質からなる。受容体は、物質や物理的刺激などの刺激をうけとめ、それによって細胞に変化をおこさせる。たとえば、ホルモンや神経伝達物質などの生理活性物質は、体内のすべての細胞にはたらきかけるわけではなく、特定の細胞だけにはたらきかけており、そのために作用させたい目標の細胞にある受容体とのみ、むすびつくようになっている。つまりホルモンや神経伝達物質を鍵(かぎ)とすると、受容体は鍵穴であり、鍵が鍵穴にぴったりはまったときに、その細胞に変化がひきおこされる。
近年は、受容体の働きを促進したり、抑制したりする薬の開発も盛んにおこなわれている。

Microsoft(R) Encarta(R) 98 Encyclopedia. (c) 1993-1997 Microsoft Corporation. All rights reserved.
しんけいでんたつぶっしつ 神経伝達物質 neurotransmitter
 ニューロン(神経単位)間のシナプス、神経と効果器との連結部において、神経終末から分泌され、興奮を次のニューロンまたは効果器に伝達する役割を果たす一連の物質。中枢神経系の伝達物質の候補として現在知られているものには、アセチルコリン、アミノ酸類(γ−アミノ酪酸、グリシン、グルタミン酸、L-アスパラギン酸)、モノアミン(セロトニン、ヒスタミン)、カテコールアミン(ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミン)、ペプチド(パソプレシン)などがある。しかし伝達物質として確立しているものは上記のうちでもまだ少ない。…
 神経伝達物質であることの基準としては、@シナプス前神経を刺激するとその終末から相当量の放出が見られること、Aその物質をシナプス後膜に投与するとシナプス前神経刺激と同様な興奮性、抑制性の変化が現れること、Bその物質の合成系がそのニューロン中に存在すること、Cその物質を不活性化する機構がシナプス内に存在することなどが挙げられる。
 神経伝達物質は通常、神経前膜付近にある400〜500Åのシナプス顆粒synaptic vesicle中に高濃度に蓄積されている。神経からの電気的刺激が神経繊維を通って神経終末部に達すると、シナプス穎粒のあるものはその白容物を素量quantumとしてシナプス間隙に放出する(神経伝達物質は一つ一つの分子としてではなく、一定数の分子がひとまとまりとなって放出されるが、このまとまりを素量という)。これらの過程には、伝達物質の素材およびエネルギーを摂取する過程、伝達物質を合成し、濃縮し分泌穎粒を作る過程、刺激によって放出される過程など広義の分泌scretionの複雑な過程が含まれている。
 シナプス間隙に放出された伝達物質はシナプス後膜に局在する受容体と結合し、シナプス後膜に終板電位を発生させ、続いて活動電位を生じ興奮を伝導することとなる。この過程は、味覚や嗅覚と同じような一種の化学的興奮である。現在、この過程は、@受容体に伝達物質が結合する、Aその結合の結果受容体タンパク質に構造変化を生じる、Bこの変化が膜に内在するイオンの透過系に伝わり、 イオンの透過性が変化する、Cイオンの透過性の変化により電位変化を起こし生理的応答となると考えられ、細部についての生化学的解明が進められている。このような化学伝達機構は、興奮の電気的伝導とは違って、神経情報を一方向的に流することを可能にする。

ドーパミン dopamin

 生理活性アミン、カテコールアミンの一種。ホルモン、神経伝達物質として重要なノルアドレナリン、アドレナリン合成の前駆体。L-チロシンからドーパ(DOPA、3、4-ジオキシフェニルアラニン)の脱炭酸反応によって作られる。ドーパミンβ−オキシダーゼの作用によりノルアドレナリンとなる。副腎髄質、脳、交感神経系、肺、小腸、肝臓にも多く含まれている。パーキンソン症候群の際に脳内 のドーパミンエが減少していることが知ら、さらに脳幹の線条体ではノルアドレナリンよりドーパミシが多量に含まれていることが見いだされ、しだいにドーパミン自身がいわゆるカテコールアミン作動性ニューロンの神経伝達物質として作用していることが明らかになってきた。

セロトニン serotonin

 代表的インドールアミンの誘導体であろ5-ヒドロキシトリプタミンをいう。トリプトファンの代謝産物で、トリプトファンから5-ヒドロキシトリプトファンを経て合成される。ウシの血清などから分離される。動物に広く分布しており大脳視床下部、牌臓、胃、腸、血小板などに多く含まれている。強い血管収縮作用があり血小板のものは止血に役だっている。脳神経ではシナプス小胞内に高濃度含まれており、神経伝達物質の一つと考えられている。セロトニンは脳の活動を高めると言われ、いわゆる抗セロトニン薬はセロトニンの酸化的分解を抑えるために覚醒剤となる。LSD-25などはこの例である。またレセルピンreserpineは結合性のセロトニンを遊離させ分解を促進するため精神安定作用をもつ。上生体(松果腺)には、水酸基の部分にメチル化を受けた脂溶性のメラトニンmelatoninが存在する。

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平凡社『世界大百科事典』(1988年版)より

09.gif (441 バイト)心理学事典の説明

 その後、心理学事典に当たってみました(南博編著『読みこなし 使いこなし 自由自在 心理学がわかる事典』 日本実業出版社 H6.2)。まず、49ページからです。

■脳の基本単位…神経

 脳は、主に神経細胞が約1000億個[注:正しくは150億個ですが誤植か?]も集まった器官です。この神経細胞が、脳の基本単位です。
 私たちの体は、細胞からできていますが、その中でも神経細胞は特殊な形をしています。神経細胞からは多数の樹状突起や神経突起と呼ばれる長い突起が出ており、時には1メートルほどの長さになります(神経細胞の本体は、1000分の数ミリ)。この軸索に絶縁の働きをする髄鞘がついている有髄神経と、ついていない無髄神経とに分かれています。
 神経細胞は、情報(刺激)の伝達が重要な役目で、原則的に電気信号として伝達されます。しかし、次の神経細胞との間には、シナプスと呼ばれる間隙がありますので、電気信号では伝達できません。そこで、このシナプスでは、神経ホルモンが伝達物質として使わています。この神経ホルモンには、神経細胞を興奮させる働き、抑制させる働きのものがあります。
 また脳には、もう1つグリア細胞という神経細胞の約3倍もある細胞があり、この細胞が神経細胞の栄養補給等の役目を担っています。
 脳の神経細胞は90%ほどは使用されていないといわれています。これは、神経細胞は再生しないので、神経細胞が何らかの原因で死ぬと、その代わりとして他の神経細胞が働くための予備だといわれています。

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 次に、脳内物質のところです(51ページ)。

■脳内化学物質

 以前は脳では神経が一番重要であると考えられていましたが、最近の研究から、脳の中の化学物質の重要性も次第にわかってきました。
その化学物質のまず第一が、脳下垂体から分泌されるホルモンです。例えば、性腺刺激ホルモンは生殖腺(精巣や卵巣)の成熟を促し、他の器官にはほとんど 何の影響も与えませんので、ホルモンも情報伝達の手段といえます。またホルモンは、血液を通して伝達するため、非常に伝達速度がゆっくりしています。
 第二は、神経ホルモンと呼ばれるシナプスに関連する化学物質です。シナプスの隙間を、この化学物質の媒介で情報を伝達します。主な化学物質としては、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、GABAなどたくさんの物質が発見されています。
 第三は、脳内麻薬といわれる化学物質です。この脳内麻薬は、レセプター(神経伝達物質の受容体) の研究から1970年代に発見され、現在では30種類以上の物質が発見されています。エンケファリンやエンドルフィンなどが代表的な物質で、その働きは鎮痛作用や爽快感と関連があるといわれています。
 これら脳内麻薬は、必要な時に分泌され、不必要になれば分解されてしまいます。ところが、外から入ってきたモルヒネ等は、なかなか分解されず、作用が長続きするために依存性が生じて薬物依存になると考えられています。
 その他にも、脳のエネルギー源であるブドウ糖、神経伝達物質とその原料である遊離アミノ酸、タンパク質、脂質などまだまだたくさんの化学物質が脳の中には存在します。
 このように、脳は神経回路という電気信号だけではなく、化学信号をも利用している複雑なシステムともいえます。

 残念ながら、執筆者たちは大脳生理学が専門ではないらしく、あまり詳しい解説ではないようです。では、最後に血液型と性格についてです(126ページ、下線は私が追加)。

■血液型で何がわかるか

 血液型相性診断や血液型性格分類などの知識が一般的に広まっているのは周知の事実です。NHKの世論調査によると、首都圏の調査対象者のうち75%が「血液型と性格には関係がありそう」と回答しました。(1)昔、陸軍医による将校兵754人を対象とした血液型と階級・身体・懲罰経験などにつての調査では、「B型には優秀な兵士が多く44%が上等兵になっている」と報告しています。また数年前B型人間[注:A型かAB型ならまだわかるのですが…]はチームワークがよいとの理由で、B型のみ集めて会社を経営している社長の話題がありました。(2)いずれも血液型による差別問題にまで発展しかねない報告です。(3)
 血液型と性格との関係については、予想以上に巷で信じられているようです。しかし現段階での脳の研究からは、 血液型が脳の活動様式に影響を及ぼしているとはとても思えません。(4)にもかかわらず1911年[注:正しくは1900年ですが、単なる誤植かもしれません]に血液型が発見されて以来、実に多くの研究者たちがABO式の四つの血液型と人間の性格・気質・行動との関連を求めて研究を行なってきました。大村政男著『血液型と性格』(1990)は、そうした研究の歴史を“偉大なる錯覚の歴史であった”と論じています。(5)
 最近、血液中にある血小板MAO(モノアミン酸化酵素)の活性が、脳の神経伝達物質の活動に影響を与え、それによって行動や性格に影響してくることが知られるようになってきました。MAOが低値の人は、アルコール依存性にかかりやすく、スリルと冒険を求める傾向が強く、外向性で、攻撃行動・喫煙傾向が高いそうです。しかし脳MAOと血小板MAOの間には複雑な関係が存在し、同一に論じられるものではありません。(6)
 現在のところ、科学的には脳の機能に血液型が関係しているという確たる証拠はないのです。(7)

 これを読んで少々びっくりしました。なぜこんなことが断定できるのでしょう?
 確かにウソは言っていません。(1)は事実ですし、(7)のように、「現在のところ、科学的には脳の機能に血液型が関係しているという確たる証拠はない」というの本当ですから。また、(5)のように、大村さんがそう言っていることは事実です。普通の読者だったら、ここで「血液型と性格は関係ない」と思っても不思議ではありません。
 しかし、注意深く読んでみるとわかりますが、この執筆者は一言も「血液型と性格は関係ない」とは言っていないのです。なるほど、うまく書いたなぁという気がします。それに、(6)のように、血小板MAOと性格に何らかの関係はありえるのですから、常識的に血液型と性格に関係が全くないとは言えないでしょう。それが、「しかし脳MAOと血小板MAOの間には複雑な関係が存在し、同一に論じられるものではありません」という表現なのですから、少々不思議です。同一に論じられないのはともかく、(4)のように関係を全面的(?)に否定することはできないはずです。

 ここまで読んできた皆さんならおわかりのように、モノアミンは性格に何らかの影響を与えているようです。例えば、A型物質は、A遺伝子の支配するA型転移酵素(α-N-acetylgalactosaminyltransferase)の働きにより、O型物質にN-アセチルガラクトサミンが付加されて生成されます。もちろん、N-アセチルガラクトサミンはモノアミンです。血小板MAOとに何らかの関係があっても別に不思議ではないでしょう、たぶん。
 結局、血液型と性格の関係は、モノアミンを中心に調べてみると、状況証拠は限りなく「クロ」に近いようです…。→詳しくはこちら

 余計なことですが、この執筆者は血液型にはあまり詳しくないようです。なぜなら、いくつかの初歩的な誤解があるからです。ランドシュタイナーによる血液型の発見は1900年ですし、普通に考えて(2)のようにB型が一番チームワークがよいはずもありません(B型の人、ゴメンナサイ)。また、大村さんの『血液型と性格』については、前川輝光さんだけではなく、否定論者の心理学者からもいくつもの疑問点が提示されています。そして、(6)の「脳MAOと血小板MAOの間には複雑な関係が存在し、同一に論じられるものではありません」という表現には大きな疑問符が付きます。なぜ、ここまでして(専門外の?)血液型と性格の関係を否定しなければならないのでしょうか?

 ところで、(3)では「血液型による差別問題にまで発展しかねない報告です」とのことですが、私は寡聞にして裁判になったという話は聞きません。つまり、「差別」ではないわけです。数年前だったら、誰かが既に「差別」として裁判に訴えていても別に不思議ではありませんから。
 もっとも、アメリカでは裁判になるかもしれません…。例えば、日本で通常行われている就職時の学歴・年齢による「差別」は違法です。常識的に考えて、血液型よりこっちの方がもっとひどい「差別」です。しかし、私は寡聞にして日本で年齢・学歴による「差別」が問題になったという話は聞きません。ですから、(日本では)血液型が「差別」になる可能性はかなり低いことになると思うのですが…。   -- H10.10.11

18.gif (350 バイト)後天性B型(aquired B)について

 能見さんもちょっと書いていた、aquired Bについての記述があったので、ここに引用しておきます(大久保康人著 『血液型と輸血検査(第2版)』 29ページ 下線は私が追加)。

 1959年、CameronらはA型にB型様抗原が現れAB型になった患者に遭遇した。同年、StrattonらはB-like antigenとして、その成因はB型類似の細菌のpolysaccharideが赤血球表面に吸着されて、一時的なB型抗原特異性を呈していると想像した。その後Gerbalらは、acquired B(後天性B型)の原因は細菌に由来するdeacetylaseがA型抗原決定基のN-acetylgalactosamineに作用してacetyl基を切り、B型様に変性させ、またacetyl化することで元に復することを証明した。わが国でも町田はClostridium teritumから抽出したN-deacetylaseを用いてA型血球を処理し試験管内でacquired B(Adeac)をつくることに成功している。そのうえ、この処理血球でウサギとニワトリを免疫して抗体をつくり反応を試みている。
 AB型健常者血清をAdeacでスクリーニングすると、抗acquired Bが検出されることがわかっている。わが国でのacquired Bの報告は多くみられるが、なかでも菊地らのAB型患者にacquired Bがみられた珍しい症例がある。acquired Bはpolyagglutination[注:赤血球凝縮]を伴っていることもあり(polyagglutinationの項参照)、Klarkowskiはpolyagglutinability TとTkに伴ったacquired Bを報告している。わが国でのpolyagglutinationを伴ったacquired Bの症例は意外に少ない。もう少し詳細に検査をすれば見出されるのかもしれない。

 なるほど、そういうことだったのですね。となると、そういう細菌が脳やシナプス内の血液型(類似)物質に作用するかどうか知りたいところです。もし作用すれば、性格も変わらないといけないことになります。もっとも、細菌に感染している病気の人に、普通の性格テストをやっても、まともな結果が出るとは思えません…。となると、結局、aquired Bによって性格が変わるかどうか研究してもあまり意味がないのでしょうか? はて? -- H10.10.19

18.gif (350 バイト)血液型物質の役割について

 『血液型の遺伝子』(池本卯典他 専修大学出版局 H8.10)という本を読んでみました。この本は、日本語では数少ない血液型の遺伝子についての専門書です。一般の人でも入手は可能なようです。あとがきからの引用です(下線は私が追加)。

 LandsteinerがABO式血液型を発見してから、今日までに多種類の血液型(広義の)が発見されている。しかし、血液における遺伝的多型は赤血球型ばかりではなく白血球多型、血清タンパク質多型、血球酵素多型、血小板多型など多岐にわたる。さらに、唾液、精液などの体液や組織などに含まれているタンパク質にも多型の存在は知られている。これら、遺伝的多型は個人識別や親子鑑定など法医学の分野で応用されるばかりではなく、集団遺伝学的な調査研究にも有効な情報を提供している。また、ヒト以外の動物にもこれらの遺伝的多型はみられ,動物学や獣医学領域からの研究も盛況である。
 10年くらい前までは、これらの遺伝的多型を示す変異は抗血清(抗体)や酵素反応を利用した表現型の検出にとどまり、抗原構造や酵素の変異などをいくつかの型で明らかにしたにすぎない。ともあれ、赤血球型の研究は血球膜の表面をなで回しているようで、その膜の表面を構成している物質の研究は遅々として進んでいなかった。それが、1970年代における制限酵素の発見から始まった遺伝子工学技術の血液型研究への導入は、血液型研究にも大きな発展をもたらすこととなった。すなわち、これら表現型の遺伝的変異をコードしている、遺伝子上のヌクレオチド配列の違いを明らかにすることも可能となったのである。現在では、多くの血液型表現型の変異が、その遺伝子の変異として明らかになってきた。さらに、その遺伝子の発現機序並びに制御なども解明されつつある。とはいっても、それら遺伝子の産生する物質(糖鎖やタンパク質)の、生体内における真の役割などが明らかにされているものは少なく、今後の研究を期待するものである。

 結局、専門家にも血液型物質の役割というのはまだまだ不明な点が多いようです。この本によると、いくつかの血液型では、ある種の役割が明らかにされています。

 しかし、ABO抗原については、特に記述はありませんでした。つまり、ABO抗原については、(少なくとも現在の時点では)はっきりした役割は不明ということです。ですから、ABO式血液型と性格の関係については、生化学的には肯定も否定もできないようです。となると、否定論者の中で「生化学的に否定されている」というのは明らかに間違いのはずなのですが…。本当はどうなのでしょうか?   -- H10.10.19

18.gif (350 バイト)シナプスに血液型物質はあるか?

 つい最近、「絵とき脳と神経の科学」(小林繁他 オーム社 H9.9)という本を見つけました。内容はかなり専門的なのですが、絵ときというだけあって、なかなか分かりやすくなっています。この本でよかったのは、シナプスの神経伝達物質の説明が詳しいところです。8〜10ページには、「脳室、脊髄中心管えおよびクモ膜下腔はすべて脳脊髄液で満たされており、したがって脳と脊髄は脳脊髄液に浮かんでいる。ミクロのレベルでは、すべての神経細胞は脳脊髄液に浸っている。」という記述があります。私はここで、あれ!っと思いました。
 すでに述べたように、シナプスにはわずかな間隙があります。細胞と細胞の間なのだから当然です。となると、「ミクロのレベルでは、すべての神経細胞は脳脊髄液に浸っている」のですから、シナプス間隙には脳脊髄液が存在することになります。山本茂さんの『知っておきたい血液型の科学』によると、脳脊髄液にはわずからながら血液型物質があるのですから、シナプスの特性に何らかの影響を与えることも考えられます。要するに、脳細胞に血液型物質があろうがなかろうが、血液型(物質)がシナプス(≒性格)になんらかの影響を与える可能性はあるのです!
 神経伝達物質が数十種類、さらに1つの神経伝達物質には複数の受容体があるということで、ABO物質がシナプスに何らかの影響を与えるというのが、現在では一番もっともらしい仮説のようです。なお、この仮説は能見さんがいっていたのと同じものです。なるほど…。

 なお、骨髄移植では脳内の血液型物質の型は変わらないようです。これは、ある専門的なホームページ(URLは忘れてしまいました…大失敗です)に書いてあったので間違いないでしょう。つまり、骨髄移植をしても性格は変わらないことになります。   -- H10.11.29

18.gif (350 バイト)肝臓移植で血液型や性格が変わる?

 しかし、肝臓移植をすると血液型や性格も変わる場合があるようです。高田和明さんの『脳からストレスが消える』(光文社 H8.11)では(20ページ)、

 肝臓を移植すると血液型が移植した型に変わってしまうことがあるのです。この原因はよくわかりませんが、血液型物質を分解する酵素が肝臓にあるからだという人もいます。…
 肝臓の移植を受けた人は、たとえば、鏡に映る自分が自分でないような気がするとか、一緒にいる仲間に「お前は誰だ」といったりするというのです。これは米国で肝臓移植の研究者たちによって報告されています。…

 これはちょっと意外でした。また、23ページでは、

 脳は機械のようなもので、脳が働くことで、考え、感情、記憶などの働きが生ずるのですが、その動かし方は脳以外の体液が決めているのです。
 では、体液を成分を作っている場所とはどこでしょう。
 それは、肝臓なのです。血液や粘液の成分は大部分肝臓が作っています。 

 高田さんによると、最近はギリシャ時代の体液説が見直されているそうです。体液説というのは、ヒポクラテスの考えで、体液のバランスで性格、精神、健康が決まるというものです。これらの体液とは、血液、粘液、黄色胆汁、黒色胆汁の4つです(肝臓は胆汁を作っています)。
 体液説が根拠を失ったのは、脳内物質によって性格が決まるという理論が支配的になったからだそうです。しかし、脳内物質の基となる物質は、肝臓が作っています。なにしろ、肝臓は物質代謝の中心なのですから…。肝臓で作られた物質が脳に運ばれ、酵素によって脳内物質に変わるのです。移植された肝臓が作る脳内物質は、以前の肝臓とはバランスが違ってきます。結果として、脳が新しい肝臓の影響を受けて感じ方が変化し、自分でない自分がいたり、性格が変わってくるということになるようです。

 しかし、高田さんは、どういうわけか血液型と性格の関係には否定的(失礼!)です。158ページには、「性格のような多くの因子の決定する性質が血液型のようなものの影響下にあるとは考えられません」と書いてあります。しかし、この本にあるように、ドーパミンやセロトニンなどの脳内物質の量の変化だけで性格が変わったりします。つまり、「性格のような多くの因子の決定する性質」でさえ、特定の脳内物質の影響下にあるのです。なんとも不思議なことですが…。   -- H10.11.29

18.gif (350 バイト)ホルモンと血液型

 またまた脳内物質の本を読んでみました。

テレサ・クレンショー 小川敏子=訳 『愛は脳内物質が決める』 講談社 H10.5

 女性が書いているからでしょうか、ところどころに違った視点の分析があってなかなか面白いのですが、その中にこんな文章がありました(18ページ)。

 精神科の分野では、さまざまな情緒障害を引き起こす化学的な要因について解明が着々とすすんだ。…今では数え切れないほどの種類のホルモン、そしてホルモンと密接に関わっている物質があきらかにされている。ペプチドや神経伝達物質などもその一部だ。こうした化学物質どうしの関係がひじょうに複雑であることもわかっている。その相互作用はなんとも入り組んでいるので、単独の物質の効果について特定できるのはまれなことだ。

 なるほど、ですね。神経伝達物質だけではなくて、ホルモンも体調や心に影響するということです。確かに、それはそうです。ホルモンバランスがおかしくて体調を崩すのですから、精神面に何らかの影響があっても別に不思議ではありません。この本には、(性)ホルモンがどんなプロセスで愛に影響を及ぼすかが詳しく説明してあります。どんな内容なのかは、読んでのお楽しみとしておきましょう(笑)。そして、19ページには、

 1980年代に、神経細胞にはエンドルフィンをはじめとする化学物質のためのレセプター(受容体)があることが発見されると、研究量は飛躍的に増えた。まもなく、脳を流れる無数の血管はホルモンでいっぱいだとわかった。他の場所から運ばれてきたものもあれば、脳そのものでつくりだされるものものある。ということは、たとえばテストステロン、エストロゲンなどの性ホルモンは、以前には生殖器官だけではたらくと考えられていたのだが、じつは指令センター、つまり私たちの脳で直接働くことも可能なわけだ。

 ということは、ホルモンが脳の血管中に存在し、「血液・脳関門」を乗り越えて脳内に出入りするのですね、たぶん。となると、赤血球上の血液型物質とホルモンは接触しているのですから、何らかの影響を与える可能性はゼロではありません(ただ、そうなると骨髄移植で性格が変わることになりますが…)。あるいは、たくさんあるホルモンのうち、遺伝子的に血液型と関係するものがあるのかもしれません。いずれにせよ、「血液・脳関門」がどうだろうが、血液型と性格の関係を(完全に)否定することはできないはずです。

 と、ここまで書いてきて、少々不思議な気持ちになってきました。なぜ、否定論者は生化学的に関係を(完全に)否定できると思うのでしょうか? もちろん、「関係がある」とも断定できませんが、どう考えても「全く関係ない」とは断定できません。狐につままれたような気持ちです…。   -- H10.12.5

18.gif (350 バイト)型物質の量の計算

 ちょっと趣向を変えて、ABO型物質の量の計算をしてみることにしましょう。まず、赤血球は1mm3中にだいたい500万個程度が存在します。健康診断や人間ドック、献血なんかをすると、自分の赤血球数を調べてくれますね。その数です。次に、1つの赤血球の抗原活性部位数は、だいたい100万個程度です(『現代の法医学』第3版増補 金原書房 H10.2)。人体中の血液の割合は、だいたい10分の1ですから、質量では数kg程度となります。で、結局、血液中には、3×1019程度の活性化部位が存在することになります。これをmol(6.02×1023)に直すと、0.05m molとなります。また、mol濃度は0.01m mol/kgになります。なお、脳内では血液中のほぼ10分の1の濃度になりますから、0.001m mol/kgです。
 これじゃあ、なんだかわかりませんね。そこで、他の物質と比較してみることします。手始めに、コーヒーで計算してみましょう。コーヒー1杯には、約100mgのカフェインが存在します。このカフェインが胃腸から全部吸収されたとすると(実際にはそんなことはありえませんが)、濃度は約20mg/kgとなります。カフェインの分子量は180程度ですから、結局0.1m mol/kgとなります。ん〜、これでは型物質の10倍も存在することになります。しかし、実際には血液や脳の中の濃度がどの程度になるかは、よく書いていないのでわかりません。とは言っても、飲んだ量が100%吸収されるということはありえないので、この濃度よりかなり低くなることは確かでしょう。ですから、型物質はカフェイン程度以上の量が存在すると考えても、全くの間違いとはいえないと思います。
 カフェインの次は、当然アルコールということで、エチルアルコールについても計算してみます。ほろ酔い加減では、血中のアルコール濃度は2〜5mg/kg程度です。分子量は50程度ですから、血中濃度は0.1m mol.程度になります(計算してみると、飲んだ量よりはるかに少ない量しか血液には吸収されないようです)。
 酒とくればタバコです。タバコと言えば、当然ニコチンということで、ニコチンについても計算してみます。タバコ1本に含まれるニコチンの量は、種類によっていろいろでしょうが、普通は10mg以下でしょう。ニコチンの分子量は160程度ですから、100%血液に吸収されたとすると、血中濃度は0.01m mol/kgとなります。なるほど、ニコチンはかなり強力なようですね。
 麻薬だと、これが1mg以下というものもあり、更に強力なことがわかります。普通の向精神薬だと、10mg〜1g程度のようです。いずれも、分子量は100〜200程度のものが多いようです。

 実は、この計算だけでは十分ではありません。血液型物質は脳にどんな形で分布しているかが明らかでないからです。誰かが調べているかもしれませんが、私の知る限りではそんなデータはないようです。シナプスの中に大量にあれば大いに性格に影響するでしょうが…。また、型物質がどの程度に神経の特性に影響を与えるのかも不明です。仮に影響を与えるとしても、それは受容体なのか、トランスポーターなのか、それとも別のものなのか…。それぞれ何十種類もありますから、その組み合わせだけでも膨大な数になります。全部調べるのには、大変な手間がかかるでしょう。結局、調べれば調べるほどわからなくなるいうのが正直なところです(苦笑)。まあ、私のような素人では、ここらへんが限界のようです。

 では、これまでの計算は全くムダだったのか? そんなことはありません! 確実に言えるのは、生化学的に血液型と性格の関係を完全に否定するのは、現状ではほぼ不可能ということです。「調べれば調べるほどわからなくなる」のだから、どちらとも言えないというのが妥当な線でしょう。「関係がある」とも断定できませんが、どう考えても「全く関係ない」とは断定できません。なぜ、否定論者は生化学的に関係を(完全に)否定できると思うのでしょうか? はて?  -- H11.1.16

18.gif (350 バイト)遺伝子と性格の関係

 まず、次の文章を読んでみてください(『血液型物語』 横山三男 日本医学館 H9.4 235ページ)。

 ここまでの説明では、脳の機能によって表現される性格が、遺伝子によって調節されるかもしれないと推察した。しかし、ABO式血液型をつくりだす酵素を合成する遺伝子とは別個のもので、性格を規制する遺伝子と同じ染色体にそれぞれ接近して存在するのか、しないのかもわかっていない。それゆえ、血液型の特異性をあらわす遺伝子と性格とが関係しているとは考えにくいことになる。

[注:性格に関係する遺伝子と、血液型の遺伝子の染色体上の位置が近ければ、当然連れ合って遺伝するわけです。つまり、血液型と性格には関係があることになります。]

 何回もこの文章を読んだのですが、理解不可能でした。素直に読むと、「性格が、遺伝子によって調節されるかもしれない」し、「性格を規制する遺伝子と同じ染色体にそれぞれ接近して存在するのか、しないのかもわかっていない」なら、遺伝子的には血液型と性格に関係があるのかないのかは「わからない」はずです。しかし、著者によると「血液型の特異性をあらわす遺伝子と性格とが関係しているとは考えにくい」のだそうです。なぜ、こういう結論になるのでしょうか? はて? また、238ページには、

 そもそれ赤血球の持つ血液型としては、今日までに数百種類が分類されており、それらすべての血液型の違った組み合わせ(遺伝子型)をつくるとすれば、無限に近い数となり…性格の定義付けにより分類される数も無限に近くなり

 確かにそのとおりです。ただ、全身に広く分類しているのはABO式血液型の型物質とHLAです。また、抗原の量は、赤血球の型ではABO式血液型が一番多いのです。だから、ABO式血液型は性格に関係がありそうだと思うのですが。更に引き続いて、

 個人個人に特有な血液型と個々の特定される性格とがマッチするということでも立証されたとしたら、血液型と性格とを結びつけるという問題に終止符が打たれることになるだろう。

 これまた理解不可能です。素直に読むと、確かに「血液型と性格とを結びつけるという問題に終止符が打たれる」ことになります。「特有な血液型」にはABO式も入るかはわかりませんが、常識的には入ることになるのでしょう…。いずれにしても、血液型と性格は「関係ある」ことになります。著者は、血液型と性格が関係あると主張したいのでしょうか? そんなことはありえないはずですが…。
 ただ、後ろの文章も続けて読んでみると、ABO式血液型だけと性格が関係あるというのはおかしいということのようです。240ページには、「HLAと性格には相関関係がみられるのだろうか」と疑問を呈していますが、私はあると思っています。データはないので証拠はありませんが…。私は別にABO式にこだわっているのではありませんので、そういう意味では著者の型と意見が一致することになります。

 いずれにせよ、遺伝子的に血液型と性格の関係を完全に否定するのは、現状ではほぼ不可能ということです。「関係がある」とも断定できませんが、どう考えても「全く関係ない」とは断定できません。まあ、私のような素人では、ここらへんが限界のようです…。プロの考えを、ぜひ聞きたいものですね。 -- H11.1.16

 その後、中村祐輔さんの『遺伝子で診断する』(PHP新書 H8.10)という本を読みました。この本によると、(下線は私)

 近年、遺伝子に関するマスコミの報道も多くなり、なんとなく、様々な「生命現象と遺伝子」、あるいは「病気と遺伝子の関わり」が相当わかってきたかのような印象がもたれています。しかし、10万種類とも推測されている遺伝子について、その構造やそれによって合成されるタンパク質の機能について明らかになっているものの数はわずかに6000前後に過ぎません。つまり、実際にはわれわれ自身の遺伝子に関する情報はまだまだ乏しいのです。(35ページ)

 病気には遺伝的な要因と後天的な環境要因が複雑に関与します。図10[省略]が示すように、これまで一般的に遺伝病と呼ばれてきたものの多くは ひとつの遺伝子の異常があればその影響でほぼ100%の確率で病気にかかるものでした。しかしながら最近では、複数の遺伝子の異常に環境要因が加わって発症するような高血圧・糖尿病などの成人病の研究も進んでいます。(38〜39ページ)

 結局、遺伝子を調べても、現時点では何の結論も出ないようです。 -- H11.2.19

 最近、脳についての本を何冊か読みました。
  • 立花隆 脳を究める 朝日新聞社 H8.5 2,200円
  • イミダス特別編集 ここまでわかった脳と心 集英社 H10.9 1,381円
  • 久野宗・三品昌美[編] 岩波講座 現代医学の基礎6 脳とニューロンI 岩波書店 H10.10 5,200円

 で、結局、血液型については何も書いてありませんでした。(*_*)

 よく分かったのは、性格を形成するメカニズムについてはほとんど何も解明されていないことです。そして、脳神経システムは、神経インパルスによる電気的なものというよりは、イオンチャンネルなどによる(非常に複雑な)化学的プロセスが主であることです。

 要するに、血液型で性格が違っても何も問題ないわけです。v(^^)

#くどいようですが、「血液型と性格」が科学的に証明されているのではありません、念のため。   -- H11.5.4

18.gif (350 バイト)血液−脳関門が破られるとき

 いままでの説明では、「血液−脳関門」の働きにより、脳の中に(血液中に存在する)血液型物質が侵入することがない、というのが前提の話でした。ところが…。

 以下は、同じく生田哲さん『脳と心をあやつる物質』(講談社ブルーパックス H11.10)の41ページから、「血液−脳関門」についての抜粋です。

脳の神経細胞が生きるのに必要な物質、たとえばアミノ酸やブドウ糖なのどの栄養素、ナトリウム、クロリド、カリウム、などの神経細胞の興奮にかかわるイオン、インスリンなどの大事な物質は通り抜けている。

 本当に血液型物質が「血液−脳関門」を通り抜けているのかどうかはわかりませんが、ちゃんと調べた例はないでしょうから(少なくとも私は知りません)、頭から否定するのは難しいでしょう。(^^;;

 また、ストレスなどによりこの「血液−脳関門」が破れる場合があることが明らかになりました。もっとも、マウスでは証明されていますが、人間では完全には証明されていないようです。

 以下は、同じく『脳と心をあやつる物質』の44ページからの抜粋です。

ストレスのあるハツカネズミの血液−脳関門は、ストレスのかかっていないハツカネズミにくらべて100倍も破られやすいことが確認されたのである。

 実際に、湾岸戦争に従事した米軍兵士には、原因不明の中枢神経異常が通常の何倍も多く見られたそうです。サリン攻撃に対抗するための解毒剤が原因なのかもしれませんが、この物質は普通は「血液−脳関門」を通過しないはずなのです。しかし、ハツカネズミによる実験の結果が人間にもあてはまるとなれば理解できます(同じく44ページから)。

戦場という大きなストレスにさらされた兵士の血液−脳関門にほんのわずかのすきまができ、そこからふだんはけっして入らない物質が脳内に侵入し、伝達物質のバランスが崩れ、中枢神経に異常が起きたと理解できる。

 つまり、「血液−脳関門」がある限り、脳の中に(血液中に存在する)血液型物質が侵入することがない、という前提は必ずしも無条件で正しい訳ではないようです。ここでも生化学的な説明による(否定論の)限界が示されたことになります。(*_*) -- H11.12.19

18.gif (350 バイト)顆粒球とリンパ球の比率による仮説

安保徹さん 医療が病をつくる〜免疫からの警鐘〜 岩波書店 H13.11 1,800円+税

 安保(あぼ)さんは、世界的に活躍する免疫学者です。
 最近の著書である、この『医療が病をつくる』では、血液型と性格について正面から取り上げています(17〜19ページ)。

 交感神経優位のタイプでは活動的で「顆粒球人間」となり、副交感神経優位のタイプではゆったりした「リンパ球人間」となることを述べた。しかし、この法則と関連して、血液型と人の性格の間にも関係があることが分かってきたのである。
 長い間、血液型と性格のつながりが指摘されてきたが、その謎を科学的に明らかにした研究はこれまでなかったように思う。

 ではその根拠は何かというと、

 人間ドックで測定した成人の末梢血のリンパ球のレベルを血液型ごとにまとめると次のようになる。O型39%、B型37%、A型36%、AB型34%である(対象者5000人)。この鋭い観察は畏友の福田稔医師が明らかにしたものである…

 これはかなり衝撃的な文章ですね。(@_@)

 そこで、O型>B型>A型>AB型となるデータをチェックしてみました。松井さんの論文1からよさそうなものを選んだのがこれです。なお、データの出典と詳細については松井豊さんの論文のページを見てください。

血液型別肯定率(%) →最高値が赤 →最低値が青

項目の内容

O(182) A(225) B(138) AB(68)

9. 人には心を開く方である

54.4 49.3 52.9 47.1

 でも、顆粒球が多く活動的な方が「人には心を開く」ような気もしますが、本当はどうなのでしょうか? ちょっと気になります。ただ、O型が情緒安定型とするなら、普通の状態ではそうですから確かにあてはまります。たぶん、もう少し詳細に分析する必要があるのでしょう。

 ここで注意すべき点は、必ずしもすべてのデータでO型>B型>A型>AB型(あるいはO型<B型<A型<AB型)となるのではないことです。従って、顆粒球とリンパ球の割合だけで血液型と性格についてのすべてが説明できる訳ではありません(残念!)。

 しかし、血液型と性格について、説得力がある医学的な仮説がまた一つ増えたことになります。やった〜、パチパチ。(^^)

 ちなみに、安保さんの名前はローマ字で書くと「ABO」さんです(笑)。お後がよろしいようで…。

西原克成さん 内蔵が生みだす心 NHKブックス H14.8 920円+税

 カバーの解説からです。

 [脳中心の人間観を見直す]
 心肺同時移植を受けた患者は、
 すっかりドナーの性格に入れ替わってしまうという。
 これは、心が内臓に宿ることを示唆している。
 「腹が立つ」「心臓が縮む」等の感情表現も同様である。
 高等生命体は腸にはじまり、腸管がエサや生殖の場を求めて
 体を動かすところに心の源がある。その腸と腸から分化した
 心臓や生殖器官、顔に心が宿り表れる、と著者は考える。

 著者の西原さんは、人工臓器の開発で世界的に有名な人です。彼は、脊椎動物の進化についても独自に解明しています。
 ここで重要なのは、心肺同時移植を行うと性格が変わる場合があるということです。どうやら、性格を決めるのは脳だけではないようなのです。

 別な例も報告されています。肝臓移植でも性格が変わる場合があるようです。高田和明さんの『脳からストレスが消える』(光文社 H8.11)では(20ページ)、

 肝臓の移植を受けた人は、たとえば、鏡に映る自分が自分でないような気がするとか、一緒にいる仲間に「お前は誰だ」といったりするというのです。これは米国で肝臓移植の研究者たちによって報告されています。

 また、23ページでは、

 脳は機械のようなもので、脳が働くことで、考え、感情、記憶などの働きが生ずるのですが、その動かし方は脳以外の体液が決めているのです。
 では、体液を成分を作っている場所とはどこでしょう。
 それは、肝臓なのです。血液や粘液の成分は大部分肝臓が作っています。 

 高田さんによると、最近はギリシャ時代の体液説が見直されているそうです。体液説というのは、ヒポクラテスの考えで、体液のバランスで性格、精神、健康が決まるというものです。これらの体液とは、血液、粘液、黄色胆汁、黒色胆汁の4つです(肝臓は胆汁を作っています)。

 体液説が根拠を失ったのは、脳内物質によって性格が決まるという理論が支配的になったからだそうです。しかし、脳内物質の基となる物質は、肝臓が作っています。なにしろ、肝臓は物質代謝の中心なのですから…。肝臓で作られた物質が脳に運ばれ、酵素によって脳内物質に変わるのです。移植された肝臓が作る脳内物質は、以前の肝臓とはバランスが違ってきます。結果として、脳が新しい肝臓の影響を受けて感じ方が変化し、自分でない自分がいたり、性格が変わってくるということになるようです。

 心肺同時移植についても、同じようなメカニズムで性格が変わるのかもしれません…。

 いずれにせよ、臓器移植により(脳内物質に何らかの影響があり?)性格が変わるということは事実のようですから、脳細胞に血液型物質があろうがなかろうが、血液型(物質)がシナプス(≒性格)になんらかの影響を与える可能性は否定できないことになるようです…。

 本当はどうなのか、興味津々ですね。(^^) -- H14.9.4

18.gif (350 バイト)免疫系への影響による仮説

■澤口俊之×阿川佐和子さん 『モテたい脳、モテない脳』

 どちらもO型の澤口俊之さんと阿川佐和子さんの対談です。澤口さんは、「探検!ホムンクルス」で、血液型と性格は関係あると説明していました。番組中では、あまり詳しい話はなかったのですが、この本ではもう少し詳しい説明があります。(91〜95ページ)

血液型は、もともといい加減なデータだと、みんな思っていたんです。…あれは統計的な話だったんです。ししかし、最近、血液型というのは人の性格に非常に関係するということが統計的な話では立証されてきているんです。

 そして、茨城県警のデータをあげて、血液型別の交通事故の特徴を説明しています。例えば、一番事故が多いのはA型でスピード違反が多いとのことです。A型の人には申し訳ありませんが、これには納得できるものがありますね(失礼!)。そして、最近はその理由も解明されつつあるとして、

その理由がわかってきたんです。これは免疫力に関わることなんですが、O型の人というのは免疫力が強いことがわかってきました。詳しい理由は不明ですが、どうやらO型の赤血球だと免疫系がうまく働くみたいです。

 免疫系が強いと、あまり警戒しなくともいいので大雑把な性格になるそうです。逆に、A型は免疫が弱いので心配性だそうですが、B型とAB型はわかっていないそうです。竹内久美子さんの説明に似ているような気もしますね(笑)。残念ながら論文の紹介はありませんでした。わかれば、ぜひ紹介したいですね。 -- H16.3.18


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最終更新日:平成20年2月3日