カイロプラクティックとは

 

 カイロプラクティックとは、身体の構造体である骨を、てこの原理にて、主に徒手を用い神経伝達系を刺激することにより、生体本来が保有する身体機能の回復および健康の増進を図るのを目的とした療術です。


 一般的に言われているような「身体の捻じれ・ゆがみを直す」、「骨盤のゆがみを正す」こと自体を目的としてはいません。それらは結果であり、原因は「神経系の伝達機能の低下」にあります。


 カイロプラクティックは1895年に,この療法の開発者であるD,D,パーマが、難聴であったハービー・リラード氏の聴力を、「骨を利用した徒手のよる施術」により脊椎を整復して回復させたことが始まりです。


 リラード氏の聴力がどの程度であったのか、又、どの椎骨を施術したのかは不明ですが、これが発端として、背骨を整えると万病に効果がある特殊な療術として全米各地に広まりました。


 それから現在に至るまでに紆余曲折あり、歴史の中で医学的・科学的な研究がなされ、神経伝達系統の不具合から生じた疾患には有効であると広く認知され、米国はもとより世界各国に広まり現在に至ります。


 十分な医療体系が整えられる近代以前は、欧米でさえ医学と各種療法が混在していました。発祥から100年以上の歴史があるカイロプラクティックが淘汰されなかったということは、効果の有効性が認知されている事ではないでしょうか。


 もともと、腰痛や肩こりなどの症状を対象とした療法ではなかったことに留意をしていただきたい。


現在においては外科的処置が必要な場合や急性の内科的疾患は、専門の病院での治療を優先すべきことは当然です。



背骨や骨盤のゆがみを整えることの意味とは


 カイロプラクティック療法の特徴は、いわゆる「背骨や骨盤のゆがみ整える」と、治癒力や免疫力が上がる・自律神経が整うことで病気が治るなどと謳われますが、果たしてそうなのでしょうか?

*カイロプラクティック療法の効果を、私が理解し得る範囲で以下に説明します。


 カイロプラクティック療法の特色は、神経系に異常を生じさせている脊椎の部位を、骨を利用し刺激を与え、あるいは神経の絞扼を取り除くことにより、

                               1、神経系の賦活 
                                2、脳・脊髄への血液循環の回復 
                                3、脊椎・頭蓋の自発的脈動

上記の事項が改善されると、身体がホメオスタシス(身体の恒常性)を保つという効果を誘起します。

 いわゆる、歪んでいる背骨や骨盤は、正常な関節可動域の低下状態が生じています。それは、筋肉の過緊張・弛緩状態であり、関節を包んでいるあるいは繋いでいる靭帯も硬化あるいは弱化状態です。

 これにより、神経の出入り口である背骨の椎間孔での神経絞扼、根随動・静脈の血流障害、関節位置・感覚受容器の低下や亢進などが生じ、筋反射の消失による筋の運動障害・筋力低下・感覚麻痺・痺れなどの筋肉系統の異常や血圧の異常・内臓器の活動亢進・低下などが起こります。

 特に自律神経の中枢である脳幹への血流量の低下は、自律神経失調症と診断されることがあり、精神的なものと誤解されることが多々あります。

 脳脊髄と筋肉・内臓器の連絡は、血液を介した内分泌系と神経線維による神経系とがあり、カイロプラクティックは、神経の出入り口である背骨の椎間孔にアプローチすることで、神経系の問題から生じている身体の問題を回復させる療法といえます。


 カイロプラクティックの発祥のきっかけが聴力の回復であると記しました。ハービー・リラード氏の聴力が回復したのは、

 @ 内耳、外耳、脳等の聴覚を司る部位の組織の構造維持していた。
 A 神経伝達系においても、完全な機能の消失はなかった、という2点が挙げられます。
 
 つまり、まだ組織変成まで進んでいない神経系伝達障害に起因する症状においては、十分に回復する可能性があると言えます。


カイロプラクティック生理作用機序


 カイロプラクティック療法の特徴であるアジャストメントの身体へ及ぼす作用が、解剖学的・身体生理学的理由の説明をします。その効果がプラシーボでない事の理解が深まるでしょう。


1、神経系の賦活

2、脊椎椎間孔部の神経・血管絞扼を取り除く

3、筋・血管の弛緩


1、神経系の賦活


 皮膚・筋線維・靭帯・骨膜などのは各種感覚受容器という細胞が存在します。それら感覚受容器は、身体の様々な情報を神経線維を通り、中枢神経である脊髄・脳へ流れます。また、それらの情報に基づいて、中枢神経から身体へ運動・内臓への指令を発動します。

 

 各種感覚受容器は、一定の刺激を与えると電気信号を発します。


 カイロプラクティックは、脊椎骨へのアジャストメントを行うことで、椎骨周囲に存在する感覚受容器に刺激を加へ電気信号を誘起し、中枢神経の神経細胞を活性・抑制して身体恒常性の回復を計るわけです。



2、脊椎椎間孔部の神経・血管絞扼の解消


 水を流すホースが踏まれると、当然の事ながら水の流れは止まるか弱くなります。それと同じように神経線維が絞扼されると、正常な信号が流れが妨げられ、脳・脊髄と筋肉・内臓相互の指令・情報に支障が生じ、身体機能が正しく働きません。


 椎間孔は、脊髄神経に栄養を運ぶ血管も通るので、血管の絞扼は脊髄神経組織そのものの働きが低下します。


 脊椎骨へのマニピュレーションに特化したカイロプラクティック・テクニックは、その絞扼を解消します。



3、筋・血管の弛緩


 カイロプラクティック・テクニックの特徴である脊椎椎間関節部へのアジャストメントの数ある作用の一つに、関節滑液包内の滑液に含まれている窒素(NO)の排出があります。NOは筋・血管細胞を弛緩する作用がある神経伝達物質です。


 排出されたNOが、椎間孔部の筋肉の弛緩による血管の絞扼の解消と拡張がより促されます。血管の拡張による脊髄への血流の回復は、神経伝達系統・脊髄内の筋肉・内臓反射を正すことになります。




*内臓相互間の情報伝達
 近年、神経系を介さない臓器の協調作用があることが判明しました。
様々な臓器から神経伝達物質という化学物質が出て、その神経伝達物質が、他の臓器の活動に血液を介して相互に情報を連絡し、協調をしているということです。

 血管は交感神経支配を受けています。
 交感神経優位な状態では、末梢血管を収縮させ血流が低下します。内臓間の神経伝達物質での相互伝達も当然、低下してしまいます。
 また、内臓器・腺は、交感神経と副交感神経との二重の神経支配を受けており、互いに拮抗的(公園のシーソーのイメージ)に働いています。活動すべき状況時に低下あるいは亢進状態になると体調不良と自覚されます。

*自覚しない痛み信号を発している部位がある。
 「痛み」があると、交感神経優位の状態となります。手足の冷え、乾燥肌、胃腸が弱い、便秘、睡眠が浅い等は交感神経優位な状態であり、身体どこかにある痛み感覚が、自律神経系に影響して生じている症状であると考えられます。

*脊髄の血液循環
 神経細胞である脳・脊髄は、糖や酸素などの代謝性物質を大量に消費する器官ですが、血液を貯めて置く筋肉や脂肪組織はありません。供給が途絶えると組織の維持や伝達や反射活動などの機能を発起できない組織です。にもかかわらず脊髄への血管は非常に細く血液の供給力も弱いので、血管絞扼により神経機能障害が起こしやすいのです。


*なぜ筋肉がコルのか?


 肩凝りや腰痛といった筋・骨格系の症状でも、その原因は神経系に何らかの原因があります。
慣れない作業や久しぶりの運動での筋疲労による筋肉痛は、当たり前です。しかし、それ自体は、まだ、筋肉の凝りではありません。

 凝りとは、筋収縮信号の入力状態が続いていることによる筋線維の収縮状態です。筋肉をほぐす前に、収縮信号の入力を解除し、弛緩信号を入力させなければ筋肉は緩みません。
神経の弛緩信号を、送る状態で筋肉をリリースしなければ、揉めば揉む程筋線維にダメージを与え、より硬い筋組織と変化します。


免疫力と呼吸


 免疫力を上げるために・・・・巷にはいろいろな情報があります。
 笑いは免役力を上げることが証明されているのはご存知のことと思います。瞑想やヨガも免役力を高めるといわれます。これらに共通事項に呼吸があります。

 免疫細胞は骨髄の造血幹細胞からつくられます。骨髄は骨の中央部にある血液に富んだ組織で、ここでリンパ組織の基がつくられます。胸の胸骨・肋骨にも骨髄があります。良い呼吸は、胸骨・肋骨を刺激することとなり、そのことが骨髄に血液の供給が促され、機能が高まると考えられます。
 また、胸腺という免役組織が胸骨部にあり、この組織の機能も呼吸の刺激により、同時に高まるとも考えられます。

 肩・頚部の筋肉のこわばりは、呼吸時の胸の動きを妨げます。胸郭全体の動きを改善して、楽な良い呼吸が身に付いたなら、免役力の亢進・抑制作用が正常に働きだす可能性が上がります。。


カイロプラクティック療法の法的な位置付について


 カイロプラクティックはアメリカ発祥の療術で、神経系の流れを正し、人間が自ら備えている自然治癒力を高めることを主眼とする手技療術です。


発症の地、アメリカではD・Cという国家資格を得て、なおかつ州ごとの開業免許を得なければなりません。


日本でのカイロプラクティック療術は、その手技が国家資格が必要な鍼灸按摩・マッサージではなく、同じく骨折や脱臼を整復する柔整業にも当たらないので、療術として国家資格には該当しません


民間の団体が認定した民間認定資格であり、民間療法の一部という位置づけです。


 そのため、アメリカで大変なご苦労をしてD・Cの資格を有し帰国した方も、日本の2〜3年制の教育終了者も、数週間の講習修了者も同じ民間療術者という玉石混交の状態です。

 しかし、数週間の講習終了者の方でも熱心にセミナー等に参加され、知識・技術の向上に心掛けている素晴らしい先生も実際にいらっしゃいます。


 国家資格のような、一定の基準がないことによる施術レベルの違いが、より複雑化を招いています。



* 国家資格への法制化に向けての活動はありますが、かなり難しいようです。


 仮に法制化となった場合には、現在営業をいている者に救済処置の考慮があるとは思いますが、無制限に資格を与えられるわけでは、決してありえません。


 資格試験への受験の優遇救済処置であり、学科・実技試験等の免除はありません。


 その試験内容は、現在の鍼灸・按摩マッサージ師・柔道整復師、理学療法士に準ずる解剖学・内科学・生理学・公衆衛生学等の内容で、カイロプラクティック哲学及びテクニック講習も別途受けなければならないでしょう。


 さらに、国家資格を得られても健康保険等の適用にはならないでしょう。



安易に資格を得れるようなことを謳う団体・商法に御注意!



 カイロプラクティックは、手技により脊椎を整え、その人本来に備わっている自然治癒力を引き出す、あるいは高めるという哲学的考えがあります。


サプリメントや健康食品・グッズに頼る前に、自身の回復力を高めましょう。


「神経系統の異常を正せば、身体は自ずと治癒能力を発揮する。」

カイロプラクティックの哲学です。