治まらない痛み



脳幹・小脳への血流と筋トーヌス


施術の基本方針に述べている事項をもう少し詳しく解説いたします。



 「痛み」や「不調」を発生させるタイミングはそれぞれ千差万別です。
同じ姿勢作業が続いたとか荷物を持とうとしたとき、立ち上がろうとしたらグキッといってからなど様々ですが、それはキッカケであり、原因は身体の動きコントロールする中枢神経系にあります。


軟部組織の変化


 身体の骨と筋肉の関係において、一つの骨には複雑に複数の筋肉が付いています。その筋肉がそれぞれバランスよく働いて、骨を動きの軸・支点にし、筋肉が収縮・弛緩することにより「動作」が行なえる訳です。

 一部の筋肉あるいは骨と骨をつないでいる靭帯が障害を受けると、その治癒する過程におい筋肉は、線維性の強い瘢痕組織が形成され収縮や伸長に制限をうけ、逆に靭帯組織は線維性が弱くなり骨と骨との支持力が低下します。

 筋肉、靭帯組織細胞自体の細胞修復は完了しても、以前のような組織の性質とは異なっていることを理解しないで動いてしまうから、再発を繰り返し慢性的な状態になってしまいます。


中枢神経系の変化


 筋肉には筋紡錘、靭帯組織には腱紡錘、関節部位には位置感覚受容器などの感覚受容細胞があります。障害を受けると、傷が治癒する過程において、筋肉、靭帯、関節の感覚情報の受容状態に変化が生じます。

 脳には感覚野・運動野と呼ばれる領域部位があり、互いに連絡し合い「動き」が発動されますが、先の理由により感覚情報が変化すると、この領域部位の大脳皮質組織にも影響します。

 受容情報が多いと連絡が強くなり、少ないと連絡が弱くなり、弱い連絡状態が長期に続くと、皮質組織であるニューロン及び連絡組織であるグリア細胞の減少、場合によっては消失してしまいます。

 忘れているような過去の障害や日常の身体の継続的負担が、そのような「脳」に変化します。痛みをかばう姿勢が続くと、その姿勢状態が優位となるプログラムに脳が変わるということです。 

 このような「脳」の状態では、各筋肉や関節が、統一され連携された動きが出来ないので、チョットしたきっかけや疲労により「痛み」や「不調」が発生します。


筋トーヌスの変化


 身体の筋肉は、意識して力を入れていない状態時でも一定の緊張を保っています。これを筋トーヌスといいます。これは、姿勢を保つのに重要な働きで、それでなければ、立っていることも座っていることもできません。身体の前後左右の数多くの筋肉が、適切に協調して「姿勢」が保たれているのです。作業やスポーツの時も同様に、多数の筋肉が協調して働いているから、バットを振ったり、ゴルフではスイングしたりなどの動きができます。


 この筋トーヌスを保つ神経組織が、脳幹・小脳という部位にあります。
 大脳からの指令を受け、身体各部からの筋・靭帯、関節にある受容器の情報をもとに、コントロールされた「動き」の命令を身体に送ることにより、作業やスポーツ、日常的な動作がスムーズに行えるわけです。

 この筋トーヌスの変化を起こすのは、上記に述べているように筋・靭帯・椎間板などの障害、および脳神経の変化以外に、脳幹・小脳への血流量の低下があります。

 中枢神経系の組織はその活動ために、組織構造を維持するための血流量の4倍の量が必要です。さらに、神経組織内には、血液を貯めて置ける筋肉・脂肪組織はないので、常に必要十分な血流量であらねばなりません。
 椎骨動脈という血管が、この脳幹・小脳へ血液を送ります。頸椎の6番目と7番目から入りますが、この部位は頭重量や動きのストレスがかかる部分なので、狭窄や絞扼障害が起きやすい部位でもあります。

 このことが影響して、脳幹・小脳への血流量の低下を招き、筋トーヌスの変化が生じ、身体の前後左右の筋肉の協調性の働きが弱まり、いわゆる「身体のゆがみ=側弯」や身体の柔軟性が低下した「身体の硬さ」となります。

そのような理由により


 この身体のゆがみが特定の部位への負担になり、腰痛や肩こりはもとより、四・五十肩、股関節や膝痛、肘、手首などの四肢に影響していろいろな筋骨格系の疾患に発展します。また、成長期の子供達に多い「成長痛」と言われる膝の痛み、使い過ぎで発症するといわれる「オスグッド症候群」も、上記の原因が含まれます。

 このように、脳を含めた全身的な問題が、身体の一部分の「痛み」や「不調」として現れます。例え、膝の痛みでも頚の状態を改善しなければならない理由が、お解かりいただけたでしょうか。

良くなったと自覚できるには、


@神経系の回復、

A筋・靭帯などの軟部組織の再生、

B動きの再学習、


この3つが伴って、良くなったという実感を得ることができます。


「痛み」はなかなか解消されないのは、この3つが伴っていないからです。