平成19年2月14日 『毎日新聞』 東京朝刊 理系白書’07:第1部 科学と非科学/3 根拠ない血液型性格判断
読者からのメールから抜粋します。
全然(--;)
4.メッセージ:
http://www.mainichi-msn.co.jp/...
ニセ科学の血液型性格診断。
いい加減認めればいいのに。
貴重な情報をありがとうございます。 否定論者が全面敗北を認めた記事ですねぇ、実に感無量です。
しかし、この記事の見出しだけ読んで、一般の読者は血液型はニセ科学で否定されていると勘違いするんでしょうねぇ、たぶん。私も理系ですが、この紛らわしい記事で理系離れが加速しないことを祈るばかりです。(*_*)
内容は実に興味深いので、時間があれば別ページで書こうと思いますが、とりあえず時間が許す限り解説しておきます。
一般の読者のため解説しておくと、まず見出しは次のようになっています。
平成19年2月14日 『毎日新聞』 東京朝刊
理系白書’07:第1部 科学と非科学/3 根拠ない血液型性格判断
これを読むと、qさんの主張は明確に間違い(失礼!)であることがわかります。
なぜなら、この記事では「血液型と性格は関係ない」とも、「“血液型性格診断”はニセ科学」だとも、全く言っていないからです。見出しを読めばわかりますが、「根拠ない血液型性格判断」であって、根拠がないから必ずしも非科学的で間違いだとは言っていません。これは肝心なことですから、読者の皆さんはよく覚えておいた方がいいでしょう。
さて、最初にある松岡さんの『ブラッドタイプ』についてですが、彼の最後のコメントがポイントです。記事によれば、彼は「厳密に言えば、[この記事に書いてある]ニセ検査で多くの人がだまされただけでは、血液型と性格は関係ないことの証明はできない」と言っています。
しかし彼は、「血液型と性格に関係があるという非科学的な考えが根強く残っているのは、科学技術立国として恥ずかしい」とも言っています。
要するにこういうことです。
松岡さん自身によると、血液型と性格に関係があるという考えは非科学的であるが、彼の著書やこの記事の(彼に関する)内容では「血液型と性格は関係ないことの証明はできない」ということです。私はこれを読んで爆笑してしまいました。(^O^)
#科学的に否定できないものを、頭ごなしに非科学的だと言えるなら、それは「科学真理教」とでも言うしかないでしょう…。
この記事は、「根拠ない血液型性格判断」とありますが、ひょっとして(科学的に否定する根拠がない)血液型性格判断という意味なのでしょうか。(笑)
#論理的には、そうとしか考えられないのですが…。
しつこいようですが、彼がわざわざ「血液型と性格は関係ないことの証明はできない」とコメントしているのは、冗談としか思えません。
はたして松岡さんの真意はどこにあるのでしょうか??
この記事を読む限り、「自分の判断の根拠がぐらついた経験を、疑問を持つきっかけにしてほしい」ということですから、やっぱり科学的な否定とは何の関係もなさそうです。はっきり言って、私には理解不可能です。(@_@)
余談ですが、「バーナム効果」という用語と、バナー効果の存在を証明しただけでは「血液型と性格は関係ないことの証明はできない」という彼の主張は、私が『ブラッドタイプ』についての疑問(彼と全く同じ主張!?)を出版元の徳間書店に送信した後に使われているようです(同時にこのHPにも公開しました)。私の指摘のせいだとも思えないのですが、時期的には奇妙に一致していますね。
次の、立命館大の安斎育郎教授についての記事はもっと面白いです。(失礼!)
記事を読む限り、「血液型性格判断を信じる人の心模様も同じだと見る」科学的な根拠は何もありません! なにしろ、血液型については直接的に何の分析もしていないのですから…。
直接分析もしていないし、占いから血液型へ類推できる根拠も不明で「血液型性格判断を信じる人の心模様も同じだと見る」と言えるなら、それは科学的ではあるはずがありません! 安斎育郎教授の著書は何冊か読みましたが、そういういいかげんなことを言う人でありませんから、たぶん記事にするときに、ひょっとして(スペースの関係で?)何かが抜け落ちたのではないかと思います。
#ちなみに、彼の最近の著書では、以前にあった血液型についての記述がカットされてしまいました。理由は不明です。
以上のことから、この記事の安斎育郎教授についての内容は信用できるとは思えません。
最後の、成松久・糖鎖医工学研究センター長の発言は、はっきり言って否定的な内容ではありません。(笑)
あえて否定的な言葉をピックアップしてみると、
の3つですが、いずれも否定的な言葉ではありません。なぜなら、この記事は、血液型を否定するのが目的(?)なようですから、もし成松さんが、「血液型と性格は関係がない」と断言したのなら、こんな回りくどい表現にするはずがありません。そのままズバリ、「血液型と性格は関係がない」と書くはずです。
qさんもご承知のとおり、松岡さんは作家ですし、安斎さんは原子力物理学者ですから、いずれも血液型の専門家ではありません。しかし、成松さんは違います。世界的に有名な血液型の専門家ですから、前の2人とは言葉の重みが違うのです(失礼!)。仮に彼が明確に「血液型と性格は関係がない」と言ったなら、誰だって3人のうちで一番最初に持ってくるはずです。
しかし、現実には、彼の記事を一番最後に持ってきて、しかも直接的に否定的な言葉は全くなかった。それは、彼が否定的な言葉を言わなかったからとしか考えようがありません。
例えば、()の中のような言葉を補っても、何の違和感もありません。
私がこう言っているのは、根拠があります。実は、彼は肯定論者なのです! 以下は、読売新聞の記事についてのコメントしたものからの引用です。
読売新聞(夕刊) 平成18年10月28日付け
KODOMO新聞 SCIENCE 大見出し:血液型と性格 無関係? 記事の一番最初にはこうあります。
その後、血液型について調べています。そして最後には…
といった感じで終わります。一見、否定的な記事のように思えます。 しかし、この記事は、一言で言えば「日和った」記事です! 一見、血液型と性格の関係を否定しているように思えますが、よくよく読むと違うのです。 まず、大見出しが「血液型と性格 無関係?」と「?」マークがあり、明確な否定にはなっていません。 また、小見出しでは「科学的根拠なし」とありますが、よく読むとやはり明確には否定していないのです。大阪大学微生物研究所の谷口直之教授は「性格との関係を示す科学的な証拠は見つかっていません」と答えています。しかし、「科学的な証拠(=メカニズム)」がないからといって、関係が否定されるわけではありません。それは、否定論者である心理学者自身からも明確に否定されています。
ところで、谷口さんは、有名な肯定論者の成松久さんとは知り合いです。参考のために、成松さんの主張を再掲しておきます。
実は、この本は、「平成13年度文部科学省科学研究費補助金」を使っている事業の研究成果の発表であり、その代表は谷口さんです。代表を務めているのですから、この記述を谷口さんが読んでいないはずがありません! また、成松さんの主張に反対なら、わざわざ研究と直接関係がない「血液型と性格の関係」を報告書に掲載するはずもありません。 これからは私の推測ですが、読売新聞の取材に対しては、「性格との関係を示す科学的な証拠は見つかっていません」と答えたのは事実でしょう。しかし、「関係がない」とは言わなかったと想像できます。なぜなら、「関係がない」と言ったなら、たぶんそのまま記事にするはずですから…。もちろん真相はわかりませんが、そう考えると納得ができます。 |
ちなみに、「血液型と性格に関係がある、という説は昭和初期、日本の心理学者の研究から生まれたとされる」とありますが、心理学者によれば、これは間違いとされています。な ぜなら、記事中で紹介された佐藤達哉さん自身が明確に否定しているからです。
正しくは、世界で最初に血液型と気質の関係を示唆したのは原来復さん(A型)と小林栄さんです。事実、佐藤達哉さんの『通史日本の心理学』と『日本における心理学の受容と展開』にはそういう説明があります。以下は、『通史日本の心理学』(274ページ 下線は私)からの引用です。
さて、血液型と人の性質に関係があるのではないかと考えたのは必ずしも古川が最初ではなく、医師原来復(1882−1944)などがその先駆である。しかし、原のアイディアはわずかな医学者の関心をひいただけに終わった。古川はおそらくこれらの人々とは無関係に自説を暖め、研究を行い、成果を発表し、そして賛否両論を受けたうえで、最終的にその説を否定されたのである。その意味で血液型気質相関説は古川の学説であったといってよい。
佐藤さんにも取材したはずなのに、こういう単純ミスがあるとは理解しがたいことです。
いずれにせよ、この記事は不正確な内容が多いことは事実ですから、はたして登場人物の発言も、本当にそういう意味の発言をしたのかは大きな間疑問符を付けざるをえません。私も新聞記者に取材されたことはありますが、某テレビ局のように発言を捏造することはないとしても、引用の仕方で全く違った意味になってしまうことも少なくありません。
そういうことを考慮した上で、総合的に判断する必要があると思います。
繰り返しになりますが、qさんの主張は明確に間違い(失礼!)であることがおかりになったでしょうか?
【追記】
再度読み直してみたところ、もう一つの明らかな、しかも初歩的なミスを発見しました!
記事では、「A型はA抗原、B型はB抗原、AB型はA抗原とB抗原、O型はH抗原を持つ」ということですが、これは明らかに間違いです。なぜなら、H抗原はすべての血液型が持っているからです。これはどんな入門書にも書いてあるはずですから、非常に初歩的なミスと言えます。このような初歩的なミスが見逃されてそのまま記事になってしまうとは、毎日新聞の科学欄は、(少なくともこの記事は)あまり信頼がおけるとは思えません。まぁ、捏造でも意図的なミスでもないと信じますが、それにしても読者の信頼を失いかねない内容であることは確かです。
また、この記事の中では、心理学者が直接発言している部分が発見できません。「性格」と言ったら心理学の専門領域ですから、記事中に全く心理学者の意見がないというのは不思議としか言いようがありません。まさか、記者が心理学者に取材をしなかったとも思えないので、ひょっとして“取材拒否”でもされたのでしょうか…。まぁ、それは冗談としても、非常に奇妙な記事であることは確かです。
以上のことから、この記事はあまり信頼性が高いとは思えません、残念ながら…。
ところで、第1回の「教室にニセ科学」で面白い記述を発見しました。
http://www.mainichi-msn.co.jp/...
モーツァルトの音楽が人間に影響を与えるとする「モーツァルト効果」をめぐっては、90年代に英科学誌「ネイチャー」で科学者が論争を繰り広げたことがあるが、科学的な決着はついていない。
さらに、実際に実験した鳥取大医学部の深田美香助教授(基礎看護学)は、記事によればこうコメントしています。
深田助教授は「他の音楽にも効果はあるかもしれず、モーツァルトだけを特別視する材料はない。被験者が少なく、ストレスを左右する他の要因を考慮していない。個人差もある。統計学的な説得力はない」と話す。学会や論文では発表していない。
素直に読むと、日本の学会ではこの手の研究は「タブー」としか考えようがありません。私は全くの部外者なので、学会の事情は全然知りませんが、血液型と同じように「ネイチャー」の論争後に「タブー」になったのかもしれないと勘ぐってしまいます。(笑)
#なぜなら、議論や追試は全く行われていないようだからです。これは「タブー」である証拠なのかもしれません…。
確かに、どの業界にも「タブー」はありますから、学会に「タブー」があっても私は不思議には思いません。しかし、そういうことでは、記事の意図とは反対に、一般の人の科学離れを促進する結果にもなりかねないのが残念です。
#「血液型論争」はその典型です。
第2回の「教室にニセ科学」にも少々疑問の部分があります。
http://www.mainichi-msn.co.jp/...
それは、関東地方の理科教師(52)の「言葉が物体に影響を及ぼすことはありません」というコメントです。もちろん、言葉が物体に影響を及ぼすとは科学的に証明されていないので、このコメントは間違いではありません。しかし、このコメントでは子供の科学の目を摘んでしまうことにもなりかねないでしょう。実験には必ず誤差があり、その誤差をどう判断するか、どうすれぱ誤差が小さくなるのか、きちんと説明すべきだったと思います。
もちろん、実際にはこの先生はそう指導しているのかもしれません。記事のスペースの都合で「言葉が物体に影響を及ぼすことはありません」と書かれてしまっている可能性もあります。しかし、この記事の一般的な読者はそうは思わないでしょう。
私も記者の意欲は買いますが、一般的な読者には(私の考え過ぎかもしれませんが)逆効果にならないかと、つい余計な心配をしてしまいます。
最後に、『毎日新聞』の記者に苦言を一言。
『朝日新聞』の血液型の記事では、初歩的なミスについてメールで指摘したら、その日のうちに返事が返ってきました。新聞記者は忙しいでしょうから、丁寧な対応に恐縮した記憶があります。しかし、今回の『毎日新聞』の記事では、まだ私のメールの返事は来ていません。たぶん返事はもらえないのでしょう。同じような内容の記事なのですが、新聞社によってこのように対応に差があるとは少々残念です。 -- H19.2.15
平成19年3月28日 『毎日新聞』 東京朝刊 理系白書’07:第1部・科学と非科学 座談会 自分で考えること必要
その後、平成19年3月28日付けで座談会の記事が掲載されました。
理系白書’07:第1部・科学と非科学 座談会 自分で考えること必要
http://www.mainichi-msn.co.jp/...
この中で【血液型性格判断】の反響が取り上げられています。
【血液型性格判断】
なお、前者の意見は私ではありません。(^^;;
念のため、私が送ったメールを再掲しておきます。
《No.1》 件名[理系白書’07:第1部 科学と非科学/3 根拠ない血液型性格判断]の記事を拝見しました。 《No.2》 もう一つ初歩的なミスを発見したので、お知らせしておきます。 |
私は、最初の意見は、既に取材時にチェック済みで、当たり前のことだからあえて記事では書かなかった、と判断していました。しかし、わざわざ読者の反響に掲載してあるところを見ると、どうも私の判断は間違っていたようです。(*_*)
それなら、きちんしたデータに基づいた意見を再度送っておくことにします。
最初の意見は「大規模アンケートをとれば、血液型による偏りが出ると信じている」とのことですが、これは既に証明済みの事実です。
ちなみに、日本人の70%程度は血液型と性格は「関係ある」と思っていますから、(本当に関係があろうがなかろうが)必ずデータでは差が出ます。逆に差が出ないデータは、どこかおかしいのです!
ですから、大規模アンケートを取らなくとも、能見さんの追試をすれば──たとえ心理学者のデータでも──差は出ています。
また、この論文によると、差が出ているのは「思い込み」のせいではありません。
さらに、海外でも追試で確認されていますし、医学的な面からの仮説も提唱されています。
ただ、なぜか心理学の性格テストでは差が出ていません。これは、血液型による差がないのではなく、もともと性格テストが血液型による差を検出できないとしか考えようがありません。
もっと詳しく知りたい読者は、ぜひ血液型と性格の謎を推理するを読んでみてください。 -- H19.3.29
念のため、私が送ったメールを再掲しておきます。
理系白書’07:第1部・科学と非科学 座談会 自分で考えること必要
この中で【血液型性格判断】の反響が取り上げられています。 |