平和と基本的人権を守ろう!仲間たちの連絡会

No97-7              webへいき連              2023年 4月

今でしょ講座

「安全保障3文書」改定
 危険な狙い その4

   
林彰のイラスト

安保=防衛政策の歴史的大転換 背景と要因

安保三文書と防衛費  岸田政権は、「安保3文書」の改定によって、日本の軍備を大増強し、アメリカとともに対中国の戦争体制づくりに邁 進する意思を鮮明にしました。敵国(中国・北朝鮮・ロシア)への先制攻撃をも可能とするこの新たな軍事戦略は、日本 の安保=防衛政策の歴史的大転換にほかなりません。今回の講座では、<なぜ岸田政権はこの歴史的大転換を行ったの か?>について、その背景や要因について考えていきましょう。

◆ 米・中対立の激化、台湾危機の深まり

米国と中国を巡る国際情勢  岸田政権を突き動かした最大の要因は、アメリカと中国との対立が抜き差しならないほど激化し、台湾を焦点とした戦 争的危機が高まっていることにあります。
 経済ではアメリカを凌駕し、軍事でもアメリカに追いつき・追い越して世界の覇権奪取を狙う周近平の中国。「祖国完 全統一は党の歴史的任務」とする中国(共産党)は、ずに台湾の併合を狙っているのです。
 他方、中国の台頭によって世界の覇者の座から転落必死のアメリカは、中国を封じ込め・たたき落とすために躍起とな っています。バイデン政権は、同盟諸国をも動員して政治的・軍事的にも、経済的にも中国を包囲し・排除(デカップリ ング)することに狂奔しているのです。またバイデンは、「一つの中国」という建前も投げ捨て「台湾防衛」を公言して、 台湾に対する政治的・軍事的・経済的支援を強めています。
 こうして台湾をめぐって米・中の軍事的緊張が高まっているのです。米・中両国は、台湾有を想定した実戦さながらの 軍事演習(アメリカは自衛隊をはじめ同盟諸国の軍隊を動員し、中国はロシア軍と連携しつつ)を連日連夜くりひろげて いるのです。

◆ 米・中対立の最前線に立つ「属国」日本

 このような戦争的危機を深める米・中対立の最前線にあるのが私たちの日本です。バイデン政権は、台湾有事を想定し た対中国の戦争遂行の中軸に日米軍事同盟を位置づけています。そのために、敵基地攻撃能力の保有・軍事大増強・軍事 費大増額・継戦能力の強化を岸田政権に要請したのです。このバイデンの要請に、渡りに船とばかりに積極的にこたえ、 「安保3文書」の改定を強行したのが「属国」日本の岸田政権なのです。
 岸田政権は、台湾有事に際しては米軍とともに対中国の戦争に参戦する意思を固め、そのための戦争体制づくりに突き 進んでいるのです。バイデンと岸田が謳いあげた「日米同盟の現代化」とは、日米軍事同盟の<攻守>同盟としての強化 であり、アメリカとの心中の道に他ならないのです。

◆ 世界は大軍拡と戦争の時代へ

 ロシア・プーチンのウクライナ侵略を契機として、世界は分断と大軍拡、そして戦争の時代と突入しました。政治 的・軍事的にも、経済的にもブロック化が進展するなかで、各国政府は軍事優先とばかりに大軍拡競争に走っています。
 米・中対立の矢面に立つ岸田政権は、日本国家の生き残りをかけて、日米軍事同盟のさらなる強化に拍車をかけるだけ でなく、NATOとの連携強化を進めています。軍事力の抜本的強化こそが国家生き残りの要だと考える岸田は、これま での安保=防衛政策を大転換し、アメリカとともに戦争のできる国に踏み出したのです。そして、その総仕上げこそ日本 国憲法の大改悪(緊急事態条項の新設・第9条の実質的破棄)にほかなりません。

◆ 反戦・護憲運動、護憲運動の弱体化

 一片の閣議決定で日本の安保=防衛政策の大転換をやってのけるという岸田政権の大暴走が許されてしまうのは、 残念なことに、反戦・平和運動、護憲運動が弱体化してしまっているからではないでしょうか。反対運動の低迷を見てと って岸田政権は、ここぞとばかりに攻勢をかけてきているのです。
 ロシアのウクライナ軍事侵略や北朝鮮のミサイル発射実験を、そして中国の軍備増強と激化する軍事行動を格好の口実 として、岸田政権は、これらの国の「脅威」を煽り・国防キャンペーンを大々的にくりひろげてきました。“日本を守る ためには抑止力・対処力の強化が必要”“敵基地攻撃能力の保有が不可欠”と叫びたて、軍事力の抜本的強化・日米安保 の<攻守>同盟としての強化に突き進んでいるのが岸田政権です。
 このような政権がたれ流す「抑止力=防衛力強化」キャンペーンに屈服し、「防衛力の強化」「日米同盟の強化」に賛 成してしまっているのが立憲野党や連合指導部ではないでしょうか。「国家の防衛」という国家権力者と同一の土俵に立 つのでは、政府の暴走に対して、何一つ有効な反撃を創り出すことはできません。このような反対運動の体たらくこそが、 岸田による日本の軍事大国化・戦争国家化の歴史的大反動を許している主体的要因だと言わなくてはなりません。

 私たちは、このような現実から出発する以外にありません。反対運動の危機から目を離すことなく・直視し、この 現実を突破していくためには何をなすべきか? いかに闘っていくべきか? をしっかりと考えていきましょう。

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