平和と基本的人権を守ろう!仲間たちの連絡会

No97-4              webへいき連              2023年 4月

入管体制を過去から紐解
~入管改悪法案閣議決定に対抗しよう~

入管難民法改正案のポイント  政府は7日午前、出入国管理・難民認定法改正案(以後、入管法改悪法案と表記する)を閣議決定し今国会での成立を めざすとしている。改悪法案のポイントは右に示す。それでも明らかなように難民認定に関して改善は見られず、ただ長 期収容者の解消を目指しているだけである。そして退去強制の合理化を図り、一方でウクライナからの難民を「避難民」 として差別化する発想は全く変わっていないのだ。
 よって、来る4,5月は入管法改悪阻止の決戦的時期となる。ここに最近YouTubeで公開された動画について紹介し、 入管法の知られざる過去について情報共有をしたい。

 (パソコンからは  https://www.youtube.com/watch?v=-X69Ut_EBqE でYouTubeへ)

入管残酷物語

1. 新憲法発布の前日に出された「勅令」が入管法の母体

 現在の入管法誕生の過去を知れば知るほど、岸田政権が現在繰り返し行っている閣議決定による国政の方向を決め ていることが、安倍政権が行ったことの猿真似ではないことが分かる。
 なぜなら現在の入管法が新憲法発布前日(1947.5.2)に「勅令」によって定められた 「外国人登録令」(以後「外登令」と表記する)を起源としていることからわかる。つまり、憲法発布後となれば、国会 を通さなければ法律ができないことを見越して占領軍と吉田茂政権が共犯となって外登令を定めたのである。この外登令 第十一条に見るように、この法令が外国人一般ではなく、朝鮮人が対象であったのである。すなおに読めば台湾人も対象 のようにも見えるが、台湾は当時連合国の一員とされたので、台湾人に外登令の適用はなかったのである。
 このように吉田内閣は国会の審議を経る必要がないに新憲法発布前日に「勅令」という形で多くの人々を日本国民では なく朝鮮人台湾人にしたのである。国会審議を経ずに国の方向を決める悪しき慣習の始まりでもあったのである。
 この外登令を基礎に、1951年に「出入国管理及び難民認定法」、さらに1982年、1990年、2018年と三 度の改正を経て現在に至っているのである。だが、次項にあるような大村収容所での警官隊による暴力行為は入管の中で 生き続けてきたのだ。

2. 悲劇の幕開けは大村収容所(九州) 600名の警官が7名を撲殺

 1963年6月1日、大村収容所で官憲による弾圧事件が起こり、600名の警官が導入され7名の朝鮮人が撲殺、 その他多数が重軽傷を負わされるなど悲惨な事件が起こった。大村収容所には日本で出生して日本語しか話せない人々も 大勢いて、それらの人々も朝鮮半島に追放されるのを待っていたのである。このような理不尽に対し収容者は立ち上がっ たのであるが、権力は600名の警官隊の暴力で押さえつけたのである。
大村収容所に書かれた落書き

3. 外国人は煮て食おうが焼いて食おうが勝手

吉田茂首相からマッカーサーに宛てた書		簡要旨  外登令から2年余り経たころ吉田茂はマッカーサーへ宛て、日付無しの書簡を出している。日付を書かなかったのは 「公文書」となることがないように、だった。それが右のような言語道断の内容であった。
 だが吉田茂の人権感覚は彼一人のものではなかった。1965年、入国管理局参事官の池上務は「外国人は煮て食おう が焼いて食おうが自由」と書いた(『法的地位200の質問』京文社出版、池上務)。この人が入管法の改正に関与した ことを、1969年の衆議院法務委員会で猪俣浩三社会党議員が取り上げている。
映画東京クルドのポスター  まさに戦後の朝鮮人追放に見られるごとく、外国人に対する差別感情は今日まで引き継がれているのだ。
 そして今日でも日本で生まれ、日本語しか話せず、日本しか知らない様々な国籍を持つ人々が、在留ビザを持たないこ とを理由に、日本から追放されようとしている。果たして在留ビザを所有していないことは「不法」なのだろうか。

4. 差別が犯罪者を創り出している

 尾辻かな子氏(立憲民主党)は言う。「日本には入管行政しかない。私たちは『多文化共生法』を作ろう、と言っ ているが、与党は全く応じない」と。この意見は全くその通りで、厳然と存在する多くの 石橋議員と尾辻議員の写真 外国人の地位も人権も認めないことは、彼らを犯罪者とみなしていることと同じである。「不法在留者」という言葉がそ れである。彼らはそうなりたくてなっているわけではない。いろいろな事情で母国を離れざるを得なかったのであり、こ の国は彼らの言葉を聞こうとせず、不法在留とすることで全件収容とするのである。そしてあたかも恩恵であるようにい い、いくばくかの金銭をむしり取り、「仮放免者」に仕立て上げる。そして移動や就労の自由を奪い、そして「嫌なら出 ていけ」と拷問のような生活を強いているのだ。

5. こんな入管法改悪法案が通れば日本にくる外国人はいなくなる

 現在、国会でも少子高齢化が重要な課題である。そして「移民」なくして日本国の存立が危うい状態である。そう いう意味での「存立状態危機」はまさに私たちの目の前にあるのだ。それなのに日本経済をけん引しているはずの経団連 などは入管の問題に全く無関心であるかのようだ。私が入管に行って感じたのは、廊下で入管の係官の対応を待つ外国人 とその雇用者であった。「技能実習制度」で日本に来た労働者が雇用者や本人のちょっとしたミスでビザ更新ができず、 廊下で言い合ったり、共に嘆いたりする姿であった。
 国は外国人労働者を迎え入れることはしたが、彼らのセーフティーネットを全く用意していない。彼らの心配の理由は 単に仕事を失い帰国することではない。人買い同然の斡旋業者の借金が返せなくなると、帰国後の生活は日本に来る前よ り一層悲惨なものになるからである。
 過去に多くの同胞をハワイ、アメリカへ、そして満州に移住することを国が勧奨していたように、外国人実習生は国で 食えないから来日しているのである。インドネシア、ミャンマー、カンボジア、ベトナムの出身者の多くはそういう人々 である。
 これらの国々も現在は急速に経済発展を遂げつつあり、国民生活も改善しつつある。そういった現実下で技能実習 制度入管の悪評が広まれば、ますます技能実習制度は縮小してくるだろう。人権意識欠如の自民党政権で は日本経済も立ち行かなくなるだろう。
 是非、YouTube放送をご覧になって、入管制度改悪の闘いに参加をお願いしたい。この運動の中心的支柱でもある石橋 みちひろ議員と共に闘おうではないか。

3月12日   殿山梧楼

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