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【マイ設定】 各国部門

■ウェルルシア(1) 冬木洋子投稿(主催者ですが、一参加者としての投稿です)【フリー】

女王国ウェルルシアは、女王ネシュフィを宗教的指導者とする、どこか謎めいた国です。
リオニアやウェトシーとは内海に隔てられ、リュトリザとの国境は深い森のため、沿岸四国の中では、昔から、わりと近所付き合いが薄いです。そのかわり、侵略したりされたりしたこともありません。一応、長年の友好国です。
が、民間レベルの交流もほとんどないため、ちょっと得体が知れない感があります。
女王国であるだけでなく、国政の中枢に非常に女性が多いのも、他国から異質感を抱かれる原因の一つかもしれません。

国交はあまり密ではありませんが、一応ご近所の友好国なので、王族の結婚式だの即位式だのには、やっぱり招かれてやってきます。
ほっそりと優雅な白い御座船で内海を渡ってやってくる女王は、空恐ろしいほどの美女なのですが、迎える宮廷人たちは、何年も前の前回の訪問時から女王が全く変わっていないように見えること、いくら記憶を遡っても、見るたびにずっと同じように年齢不詳の超絶美女だった気がすることを囁き合って、ひそかに驚嘆したり内心で慄いたりします。
そんなふうに陰ではいろいろ取りざたされていますが、かつてネシュフィの生誕祝に祝賀使節を送ったとか贈り物をしたという記録もなく、彼女の幼少時代を見たことがあるという人はおらず、ズバリ年齢を訊ねるわけにもいかず、正確な年齢は、各国外交筋でも、誰も知りません。先代女王と現女王に血縁関係があるのかどうかさえ分かりません。ウェルルシアは、他国には、先代女王の崩御や新女王の即位は知らせたけれど、王位継承については宗教的な秘儀に関わるとして口を閉ざしているのです。

女王は、外交行事に夫を伴いません。結婚はしているはずですが、夫には政治的な地位は無く、単に私的なパートナーであり、私人扱いであるようです。
使節団も、ほとんどが女性です。男性が全くいないわけではなく、高官が十数名いれば中に一人二人は男性もいる感じです。

ウェルルシアは、別に男性が少ないわけではなく、男性が特に虐げられているというわけでもありません。
宗教の関係で王族が女系であるため、政治・外交は伝統的に女の分野となっているだけで、男性も、いろんな分野でちゃんと普通に活躍しています。
ただ、とにかく外国に来る使節団に男性が少ないのと、軍を始め各組織のトップがたいてい女性であるため、外国の人には、男が少ない国、女性上位の国というイメージを持たれているのです。実際、ある程度、女性上位の社会ではあります。

そんなわけで、使節団には少数ながら男性もいますが、女王が連れてくる親衛隊は、すべて女性です。しかも、若く美しい娘ばかりで、みな、女王に狂信的なほど熱烈な忠誠を捧げています。
他国の人は、親善訪問だから見栄えを重視して美しい女性ばかりを揃えてきたのだろう、平和と友好の演出なのだろうと思っていますが、この親衛隊は、精鋭中の精鋭で、実はすごく強いです。
親善行事として御前武術競技会などが開かれると、この最強美女軍団は、弓矢や剣などで、目を驚かす超絶技巧を涼しい顔で披露します。実戦経験のない貴族などは、単に選りすぐりの美女たちが見事な芸を披露してくれたと思い、大いに感心しつつ目の保養と喜んで無邪気に拍手喝采していますが、実戦経験のある騎士たちなどは、彼女たちの真の技量を見抜き、(俺、もしあの女と戦場で会ったらきっと殺される……)と、内心で震え上がったりします。
そんな彼らの前を、演技を終えて引き上げてゆく娘たちが涼しい顔で通り過ぎる時、呆然と見とれていた一人の若い騎士が、娘の一人とたまたま目が合ってしまって、娘は何を思ってか、至近距離で通り過ぎざまに色っぽい流し目をくれながらふっと笑いかけてみたりするので、武骨なリオニア(またはウェトシー)騎士は、目を白黒させて赤くなったり青くなったりです。

親衛隊以外の随行にも、美女が多いです。
このため、ウェルルシアは近隣諸国から、美女の多い国として憧れられています。
そんな美女ぞろいの使節たちの一人と、ホスト国の高官だの騎士だのとの間に、時にはちょっとしたロマンスが生まれることもあります。
が、それはあくまで滞在期間中だけの、旅先のアバンチュール的なもので、後に結婚が成立したという例はありません。
実は情報収集に利用されているだけとか、単につまみ食いされてるだけという噂もあります(笑)

ウェルルシアの首都、ラーフナは、深い森に囲まれた内陸部にあります。
純白の地にごく淡い薄緑色や青灰色、金泥などを控えめにあしらった、卵を思わせる優美な丸屋根の塔が、緑濃い木々に半ば埋もれるように無数に点在し、ほぼ一年を通して色鮮やかな大輪の花々が咲き乱れるという夢のように美しい都で、諸外国でも『花の都ラーフナ』『麗しのラーフナ』などと呼ばれ、おとぎの国のように思われています。
ことに男性には、美女だらけの都と想像されて、よりいっそう夢の国扱いされていますが、ウェルルシアにおける男性の立場が他国人には良く分からないため、憧れると同時に、なんとなくちょっぴり怖がられてもいます。

ラーフナが外国の人々からおとぎの国のように思われて、実在の都なのになんとなく伝説化しているのは、実際にラーフナを見たものがほとんどいないせいも大きいです。
地理的な条件もあって、ウェルルシア自体、他国人が訪れることが少ないのですが、特に、内陸に入り込むものは、民間人も含めて、あまりいないのです。
他国との交易はありますが、交易拠点はすべてレーテス海沿岸の大都市シフォリに集中しており、他国の王族や使節を招いての外交行事も、ほとんどがこのシフォリで行われるので、各国王族たちの中でもラーフナに招かれたことがあるものは稀なほどです。
ラーフナは、首都であり女王の御座所ではありますが、実質的な首都機能は商都シフォリにあって、ラーフナは閉ざされた宗教都市であり、そこで行われるのは非公開の宗教的行事が中心なのです。人口も、シフォリのほうがずっと多いでしょう。
シフォリも白を基調とした美しい都市ですが、もっと世俗的で、建築も堅固で実用的で、海辺なので光明るく開放的な感じです。

もしかすると、ラーフナに住んでいるのは、ほとんどが巫女と、その身辺の世話や都市の維持管理をする仕え人かもしれません。
だとしたら、仕え人の中には力仕事担当の男性もいるかもしれませんが、仕え人はあまり人目に止まらぬように控えめに振舞うので、住んでいるのは女性ばかりのように見えるかもしれません。
そんな様子を見た数少ない旅行者が、都の美しさとともに、通りを行き交うのがもれなく優美な美女ばかりであるということを故郷で吹聴し、『ラーフナ=美女の都』伝説が諸国に広まったのかもしれません。

ウェルルシアの特産品は磁器です。
卵の殻のような極薄の茶器等、優雅で繊細な超高級食器を輸出していて、各国の王宮で珍重され、みんなの憧れの的です。ウェルルシアから諸外国への親善の贈り物の定番でもあり、王族の結婚祝い等には気前よく一式プレゼントしたりして、とても喜ばれます。
その製法、原料などは、門外不出の国家機密です。
実は、国内では、この磁器を、一部の建築にまで利用しています。普通なら建材に使えるとは思わないような、薄く繊細で一見脆そうな素材ですが、実は強化セラミック以上の強度を持つという、ほとんどSFレベルの高度な技術です。明らかにその時代の文明水準を逸脱したオーバーテクノロジーなので、製造や原料に、何か魔法的なものが絡んでいるのかも。

ウェルルシアは、もともと、今のリュトリザ西部に当たる国(当時は小国が分立していた(*)、そのうちの一国)で宗教的迫害にあって逃れてきた(または追放されてきた)人々が人跡未踏の森の奥にひっそりと築いた、小さな隠れ里でした。(*注:この、リュトリザに関する部分も、当『マイ設定』の一部です)
当初はラーフナを中心に僅かな人々が住んでいるだけでしたが、その後、徐々に沿岸部に進出し、そちらのほうが拓けてきて、ラーフナだけが建国の聖地として元の場所に取り残されました。
国土は広く、人口は少なく、資源は豊富で、国土のほとんどがほぼ開拓不能な森なので農地は狭いものの、長年辛苦を重ねて工夫しつくした生産性の高さで食料も自給できています。
なので、海を越えてまでこれ以上の国土を求める必要は無く、今まで他国に侵攻したことは一度もありません。
内海と森に阻まれて、他国から侵攻されたことも一度もありません。
西の国境線は外洋に面していますが、ずっと切り立った岸壁で、しかも海岸線付近はちょっと人が入り込めないような深い森がかなりの幅で続くので、もし上陸できても、そこから人の居住地帯まで進軍してくることは、ほぼ不可能です。

が、かつては農地にもできない未開の森林地帯だと思われてずっと放置されてきたけれど、実は資源が豊富なことや農地も狭いが豊かなことを知られている今は、いつかどこかに侵攻されてもおかしくはないため、軍備は怠りません。
諸外国の政治家たちは、儀礼訪問でウェルルシアが見せる見事な軍事パフォーマンスを女の国と侮られぬための抑止力狙いの『見せ軍事力』と思い、個々人の技量の高さは認めるにしても実際にはそれほどの軍備があるとは思っていないのですが、実はひそかに、沿岸四国の中で一番の軍事大国かもしれません。
もしかすると、女王は、その事実を隠すために、わざと親衛隊を見せびらかしているのかも知れません。あえてきらびやかな表面を見せびらかすことで、軍備をハリボテに見せているのかも。
優雅な微笑みを絶やさず超然と佇む女王の、超絶美貌に隠された真意は誰にも分かりません。

レーテス海を行き来する商人たちの間では、ウェルルシアへのきな臭い物資の流れが最近とみに増えたことは、とっくに気付かれ、噂になっています。
それでも、ウェルルシアが攻めて来るかも知れないなどとは、リオニアやウェトシーの人は誰も思っていません。
なぜなら、ウェルルシアには、海軍らしい海軍がないからです。軍船もろくに持っていないはずです。
海の向こうにあるのに船がなかったら、攻めて来ようがありません。
ウェルルシアが侵攻するならリュトリザだろうと、みんな思っています。国境にほとんど人が踏み込めないような大森林地帯があるとはいえ陸続きには違いないし、そもそも先祖たちはその森林地帯を踏み越えてきたはずなのだし、追放された故郷とあれば、古い恨みもあれば戻りたい気持ちもあるだろうと。

が、最近、ウェルルシアについて、奇妙な噂があります。
夜更けにウェルルシア沿岸を通った船の上を、巨大な鳥のような影が通り過ぎたという噂。
その鳥(のようなもの)は、どう見ても沿岸漁業用の小舟ほどの大きさはあったと、目撃者は主張します。
港町の酒場で怯えて言い張るその男の言葉を、ほとんどの船乗りたちは笑い飛ばしますが、そのうち、隅のほうから、ひっそりと賛同の声が上がったりします。
自分は鳥の姿は見ていないが、やはり夜更けにウェルルシア沿岸を通り過ぎた時、聞いたことのないような奇妙な鳴き声を聴いたと。そういえば鳥の声のようだったかもしれないと。翼の羽ばたきの音も聴いたかもしれないと。
そのうち、そういえば自分が前に見たあれも巨大な鳥影だったのかもしれない、などと言い出すものが増えてきて、だんだんみんな真面目な顔になり、酒場は、ふと不安気に静まり返りったりします。
そこで誰かがぽつりと、そりゃあ鳥じゃない、ウェルルシアのハルピュイアじゃないか、と言いだして、みんなまた、そんな馬鹿なことがあるものかと騒ぎ出します。
ウェルルシアは、美女の顔と鳥の身体を持つ伝説の怪鳥ハルピュイアを紋章としており、御座船の船首像もハルピュイアを象っているのです。
すると、隅のほうから見慣れない男が進み出て、自分は諸国を旅する吟遊詩人であると名乗り、ウェルルシアに行ったことがあると語りだします。そして、「自分は頭上を飛びすぎるハルピュイアを見た、一瞬だけど、巨大な鳥の身体の上に美女の顔が見えた」と主張します。
それを聞いて、「信じてもらえないと思ったから言い出せなかったけど、実は自分も巨鳥の上に女の顔を見た気がする」と言い出すものも出て、酒場は大騒ぎに。
吟遊詩人は、ハルピュイアの出てくる古い唄を幾つも歌って盛大に稼ぎ、ラーフナについて、男たちの期待する通りの与太話を適当に吹きまくってサービスし、みんな大いに盛り上がります。
で、みんな酔っ払って、次の朝には、そんなバカ話は大半忘れてしまっています。

実は、ウェルルシアに実在するのは、ハルピュイアではありません。
巨大な鳥に騎乗した女戦士たちの部隊です。
戦士たちは、特産の極薄磁器で作った軽くて強靭な純白の胸鎧や臑当を装着し、鳥と一体になって空を翔けます。
もしかすると、刀も、純白のセラミック刀かもしれません。
ウェルルシアの軍隊にはもちろん男性も多いのですが、この、騎鳥部隊は、すべて女性です。
なぜなら、この鳥は、女性しか背に乗せないからです。一羽に一人、決まった騎手がいます。
軍のトップが代々女将軍なのも、この騎鳥部隊の存在のせいです。

この騎鳥部隊は、実は昔からウェルルシアにあり、鳥たちは、ウェルルシア人がやってくるまえから、今のラーフナがある辺りに住んでいました。
もちろん、ただの大きな鳥ではなく、知能が高く、何か不思議な力がある、超自然的な生き物でしょう。
そして、初代の女王と、何か契約でもしたのでしょう。
女戦士たちとは、何らかの形で意志の疎通ができているでしょう。
ウェルルシアの紋章であるハルピュイアは、実は、この、巨鳥と女性の絆を伝説の怪鳥の姿を借りて象徴化した図柄だったのです。
今までひた隠しにされてきたけれど、この鳥たちは、実は、そうしようと思えば内海なんかひとっ飛びです。
背中に乗せるのは決まった女性一人だけですが、とても大きな鳥なので、脚にネット等をぶら下げて飛べばかなり大量の物資を運搬することも可能だし、一つの大きなゴンドラのようなものを数羽がかりでぶら下げれば、一度に大勢の兵士を運ぶことさえできるかもしれません……。

※この設定の一部だけを使う、ご自分のオリジナル設定と組み合わせるなど、お好みに合わせてアレンジOKです。お好きなようにご利用ください。


■ウェルルシア(2) 守屋様投稿【フリー】

人物名について

 一般に庶民でも代々の家名があります。女系なので、家名は祖母から母へ、母からから娘へと受け継がれます。父親の名前は個人名の次に来ます。正式な文書には以下の4つの名前が必要です。

男性は自分の個人名・父親の個人名・(父親の家名)・母親の家名
女性は自分の個人名・父親の個人名・(結婚相手の家名)・母親の家名

 よほどの改まった席でもないかぎり、名乗るときは( )内を省略します。父親方の家名は、特に本人がこだわっているか、父方に誰もが知る有名人がいるなどで家名が知れ渡っている場合などにのみ、使われることもあります。
 略す順は、父親の家名、父親の個人名、自分の個人名です。母方の親族の集まりでもない限り、母親から伝えられた家名を呼ばれるのが普通です。

 女性は、新婚時代に夫の家名を付け加えることが多いようです。
 ちなみに結婚制度は婿入りです。庶民の間では、正式な結婚お披露目の前に、しばらく通い婚をします。その期間は周囲の人も、気づいていてもスルーという感じで見守っています。最近では、男性側が女性側の家に住むと決まっているわけではありません。両親か当事者がまとまった資産を持っている場合は、お披露目後に独立した家を構えます。
 貴族や有力者ともなれば、親同士が結婚を決めますが、通い婚→婿入りというのは変わりません。こちらはほとんどが独立した住居を持ちます。

 名前の話に戻ります。
 普通は初対面の相手に3つの名前を名乗ります。親しくなると、個人名・母親の家名の2つですませます。社会に出ると、個人名はあまり用いず、男性、女性とも外で呼ばれるのはこの家名です。
 成人の個人名をそのまま呼び捨てるのは大変な失礼なので、身内か幼なじみか、ごく親しい友人でもなければ呼びません。個人名のみは親が子どもを呼ぶときに使うか、一族の年長者が1世代下の若者を呼ぶときに使う程度です。幼なじみは習慣的に個人名を呼び合いますが、これも仲間内のくだけた場所限定。
 例外は高齢者で、年少の者を名前で呼んでも失礼ではないことになっています。もちろん、身分差がある場合はそれを優先します。軍隊では階級差優先で、上の者が下の者の個人名を呼ぶこともあります。

 家名は男女によって語尾が変化します。

元の家名シェシュトフ→男性シェシュトフィ→女性シェシュトヴァ

 古くから、この国の訛ではフ音とヴ音が混同されて使われてきたので、同一の文字の変化形だと認識されています。よって、女将軍「イリヴァ」も個人名ではなく、「イリフ」という家名の変化形。彼女に息子ができれば「イリフィ」です。
 女王名は「ネシュフィ」とされていますが、これは本来、男性形なので、変に思うべきなのですが、国民は女王様だからわれわれとは違うのだろう程度にしか考えておらず、理由は知られていません。神託でそうなったという説や、大昔の男王の名前を受け継いだという説や、王朝名だから男性形で正しいという説もあり、実際にはわかっていません。もちろん女王やその側近は知っているでしょうが、一般には知られていないということです。

 語尾がフ音のよくある家名は、

アゾフ
イオシフ
ヴィアセスラフ
ヴォロンツォフ
エルモローフ
オコトニコフ
カティレフ
クリコフ
コルサコフ
コロチェンツォフ
ザヴァドフ
サルティコフ
シェシュトフ
シェレメテフ
シュトレスネフ
スヴェフ
ズーボフ
ネリドフ
ポニャトフ
マモーノフ
マルフ
ミロスラフ
ラズモフ
ラチェフ
リコフ
ロスティスラフ
ロストフ

 時代・地域によって微妙に発音は違います。エルモロフがエルモローフだったり、マモノフがマモーノフだったり、マルフがマーフだったりします。その家がどう伝えてきたか、なので。
 女性形を「ファ」で伝えてきた家も少なくはないので、エルモロヴァもエルモロファもいます。


 他に語尾が「ン」音の家名も多く、

アプラクシン
オボレン
クシェシン
グルジン
コシュキン
コヴリン
ゴリツィン
コロチェン
シュヴェリン
シメオン
スカヴロン
ナルイシキン
バグラチオン
バリアティン
ボブリン
ムクラン
リゴン
ロマン

 などがあります。女性形はオボレナ、クシェシナ。これも家によって、微妙にアクセントの位置が違います。オボレーナかもしれないし、オボーレナかもしれません。

 男性の個人名でよくあるのは、語尾が「ィク」「ゥク」「ート」「ール」になっているもの。

イエジィク
イゴール
ウォヴィート
ガフリル
カンテミール
クヌスト
グルシェト
ドルゴル
フセヴォロド
マヴリク
モンスク
ランスク

 女性の個人名は、語尾が「ィア」「ィヤ」「ラ」「カ」が定番です。

アガフィア
エヴドキア
クセニア
ペラゲア
フェオドシア
アフロシニヤ
イヴフィミヤ
エヴドキヤ
プラスコヴィヤ
ヴェラ
コブィラ
フェオドラ
チェルカ
ミリカ


■ウェルルシア(3) 守屋様投稿【フリー】

ウェルルシアの制度いろいろ

《特徴》
 女王名は数十年おきに変わるが、代替わりを国民にも外交相手国にも正確には知らせない。現在、何代目の女王なのか、何年前から在位しているのか、年齢を含め出身地や既婚・未婚のプロフィールは国家機密にされていて、一般市民も知らない。過去にはネシュフィ以外の女王名も記録されている。

《独自制度》
 主に女児の存在を確認するため、5年に1度の国勢調査がある。

《初等教育制度》
 男女で大きな差がある。理由は後述。
 男児は6〜7歳ごろから地元の民間の学校へ通う。毎日、早朝に通学して午後には帰宅するという生活を始める。科目は読み書き計算と簡単なスポーツなどの体育。田舎の村にある学校は青空教室でのんびりムード。沿岸部の商業都市では早くから計算力を重点的に鍛えられる。
 女児は5歳で登録され、7歳から親元を離れて町外れにある国営の初等学校で集団生活する。教育期間は最低2年間。年に2回、20〜30日の休暇(学校と自宅の距離によって増減)がもらえ、生徒は一時金や土産物を持たされて実家へ帰ることができる。授業内容は、最初の2年間は男児と同じ読み書き計算に体育、音楽、図画、工作など。本人や親が頑固に拒否しないかぎり、そのままさらに2年、学校生活を続ける。親に費用の負担がなく(むしろ食費・衣服費が浮く)、逆に小額であっても一時金などを支給されるので、ほとんどの親は喜んで娘を預け、頑張って勉強しなさいよと応援する。
 男児もおおむね4年間は学校へ通う。国立・私立を問わず教師は女性が多い。裕福な商家では子ども向けのみならず、使用人のための家庭教師を雇うこともあり、○○家は太っ腹だ! と評判&ステータスになる。

《その後》
 よほどの成績を取るか、勉強好きでもないかぎり、上の学校へ行くのは少数派。
 農村、漁村では子どもに無理強いしてまで勉強させようという発想がなく、4年も読み書きを習えば充分だと思われている。男女とも10代半ばごろには結婚するため、子どものほうも早く働いて結婚資金を貯めたい気持ちがある。商家の子どもは、それぞれの店の間を走り回るメッセンジャー・ボーイから仕事を始めることが多い。親に余力があれば、たまに趣味の教室へ通わせてもらえるかもしれない。

《障害児教育》
 身体障害児、知的障害児は性別・年齢にかかわらず、親の希望したときに学校付属の施設へ移ることができる。教育を受けるためではなく、年長の生徒たちによる介護を受けるため。親が生活苦や育児放棄で預けるケースもあるので、一定期間観察された後、問題なしとして別の地域の普通の学校へ移されることも。そういう場合は親に知らせず、縁を切ったものと見なして子どもを遠隔地へ送る。
 障害児教育がまったくされないわけではないが、教師も個別の指導をするほどの人手はなく、対応できるのは軽度の障害に限られる。しかし、何らかの異才ありという理由をつければ上の学校へ移せるので、教師は積極的に評価をし、専門科のある学校へ進学させようという共通意識を持っている。漠然とではあるが、視覚障害者には音楽の、聴覚障害者には工芸の才能があると信じられている。
 そうではない子どもは成長後、そのまま学校の住み込み職員として、何らかの軽作業を担当するケースがほとんどである。

《学校》
 生徒が100名前後、教師が20名前後、それ以外の職員10名程度の学校はそれだけで村以上の規模がある団体。周囲には学校の備品を調達するための商店や工房があったり、教師一家の住まいがあったりして、僻地の農村・漁村よりにぎわっている。
 11歳以上の女子は適性と本人の希望に応じて、上の学校へ進むか実家に戻るかを選ぶ。これ以上の学校には試験による選抜があり、希望しても成績が振るわなければ進学できない。
 最終的な目的は首都ラーフナの学校、そしてラーフナの女王府で仕事をすること。女王のお膝元であり、どういう知識・技術を身につけてたとしても、女王に仕えるのはウェルルシア女性の最高のステータスである。

《天気予報》
 もうひとつ、学校には重要な役割がある。ラーフナから送られる天気予報の情報を各都市へ伝えること。ラーフナに尖塔を備えた建物が多いのは、女王府からの情報を次の塔へ伝えるためだ。
 ほとんど一直線上に建てられた尖塔にはふたつの窓が開けられている。担当者は、一方の小窓から前の尖塔の窓に下げられた垂れ幕の色柄を見分け、同じ色の垂れ幕を反対側の窓に下げて次の尖塔へと伝える仕組み。雨や曇りで垂れ幕が見えない日は、灯りによる信号で伝え合う。
 タイミングが重要なので、どの学校も時間を計る装置や道具を管理している。日時計や水時計のほか、時間きっかりで燃え尽きるろうそくなどがある。
 シフォリ以外の沿岸部の諸都市は、商人たちが交易のための中継地点にしたことから始まった。日常的に海へ出る交易商人や漁業従事者にとって、急変することの多い海の天気を前もって知らせてくれるシステムは非常にありがたいこと。ゆえに、女王は神様的な存在感で崇められている。父・夫・息子を送り出す女性たちにとっても同様である。

〈国家機密〉
 女王府には女性隊員限定の騎鳥部隊があり、彼女らの日常業務のひとつが上空偵察。雲の方向や色などを観察し、以降の天気を予測するノウハウがあるのだ。


《女王府》
 他国の王宮に当たる。1000名の巫女が仕えている、とされる。女児にのみ国営の学校が用意されている理由は、表向き、男性は巫女になれないからである。
 しかし、実際には官僚が仕事をする場所ゆえ、男性も働いている。男性官僚には中年以上の年齢の者が多い。地元の学校などで高い事務能力や、被災時の対応力を認められた者が、どんどん出世してより上の組織、ラーフナに近い場所で勤務するようになり、最後は女王府に呼ばれた……というケースが多いため。
 対して、若くして登用されるケースもある女性官僚の年齢はばらばら。
 官僚が家族で住む場合、その妻や夫には機密に関わらない仕事が回される。建物や庭園のメンテナンスなど、仕事はたくさんあるので人手はつねに不足気味。ラーフナには初等学校が置かれていないので、学齢期の子どもはいない(男児も他地域の教師宅など学校関係者に預けられる)。
 女性官僚は出産・子育てのための一時休業も可能だが、その間はラーフナ以外の場所に住まなければならない。ラーフナは女王府のための都で、一時的に滞在するための宿はあるが、一般家庭はない。
 そもそも娯楽施設のないラーフナは住んで楽しい場所ではない。ラーフナで働くことは大変な名誉だが、働き続けるには厳しい場所でもある。能力があっても、気晴らしのない毎日に嫌気がさし、数年で異動願いを出す女性官僚もたまにいる。そういう人向けの異動先は他国にある大使館。

《首都防衛隊》
 ラーフナからやや離れた3箇所に軍の駐屯地があり、兵士が半年交代で首都と女王を警備している。娯楽のない場所ゆえ、兵士間の人気は今ひとつ。ただ、兵士も女王を尊敬する気持ちが強い&故郷の家族の自慢になるので、半年間はぐっと我慢の勤務。
 今まで敵を迎えたことはないため、錬度の低い新兵がびしばし鍛えられる場所でしかないが、新兵の多くはそれを知らない。女王や巫女の姿がたまに見られるかも、的な希望的観測でやってきた若い兵たちは逃げるわけにもいかず(夜の森は駐屯地より危険なうえ、万一、自宅に戻れたとしても喜ぶ家族に恥をかかせてしまう)、耐えるしかない。
 “憧れのラーフナ”の評判を逆用した、軍の新兵教育作戦である。

《女王親衛隊》
 女性隊員限定。男性兵士と違い、こちらは厳選された精兵のみ。彼女らの文字に手加減はない。女王を守る最後の砦として、相手を殺すか自分が死ぬかしかないぎりぎりの状況でしか、出番はないからである。そのため、隊員は独身女性限定。一定の年齢で他の部署へ転属になる。
 先輩後輩の絆が強いので、転属後は、結婚話を山ほど持ち込まれる。“元女王親衛隊”も、官僚に次ぐステータスの名誉な仕事。能力もそうだが、国家機密の多い女王府で働けるのは、その真面目な人柄が認められたから。男性やその家族は、人柄の評価に期待して結婚したがるのだ。

〈国家機密〉
 さらに厳選された隊員が騎鳥部隊に入る。戦闘力よりもバランス感覚や騎鳥との相性で選抜される、少数精鋭のスペシャリスト部隊だ。

《巫女》
 女王府の奥に石造りの正神殿があり、巫女たちはそこに仕えている。こちらは同じ独身女性でも、能力より性格重視で選ばれた。結婚を望まず、若い娘らしい遊びに加わらず、地味な日常を送って不満を感じないタイプの女子生徒が、複数の教師の推薦により地方の神殿の下働きからステップアップして最終的にラーフナへ、というコースである。
 俗に“1000名の巫女”という表現があるものの、正確な人数は不明。当人たちもそういうことに興味を持たない。
 彼女たちの仕事は、官僚組織との間でやりとりされる書類の保管と整理だ。個室に陣取る女性上司の秘書業務をしているのだが、彼女たちには横の連携がない。ひとりの上司に複数の巫女がついていても、担当が違えば部屋への出入り口も別なので互いにわからないようになっている。

〈国家機密〉
 実は神殿こそが女王の居場所。巫女が女性上司だと思っているのは女王たち。巫女の出入りは別の扉と階段で分けられているが、女王たちの個室は廊下でつながっているため、緊急の臨時会議がいつでも可能。

《女王》
 宗教指導者とされながら、ウェルルシアは多神教の国。女王を崇拝する国民は少なくないが、女王個人を神として崇めているわけではない。巫女たちをたばねる女王は、神々と一般人の間の通訳のような存在だという認識がされている。
 天災は神々からの厳しい警告であり、女王にも阻止する力はない。ただし、女王は神々の小さな警告を受け取って先読みし、一般の国民に通達して人死にを減らしてくれる。日々の天気予報もその一環で、仕組みを知らない国民は、天候の神が女王の祈りに応じて悪化することを先に教えてくれたのだと感じている。
 ごくまれに、天災を予知したかのような指示が村や町に出されることも。○月○日に祭りをせよという指示が出るのは、天災が起きるだろうから眠らずに備えよの意味。指示を受けた村人が、半信半疑で夜中に村祭りをしていると、地震で家が崩れてしまった。しかし、家族は助かった。知らずに眠っていれば、今ごろは……。ウェルルシアの各地に似たような言い伝えがある。

〈国家機密〉
 女王は女性官僚の最終到達地点。
 実は“表の女王”と“奥の女王”がいて、前者は外交を担当する。他国へ出向いて儀礼を行い、王族と語らったりもするが、本当の権限を持つのは30代になり、表の仕事を次の女王と交代してから。政治をするのは“奥の女王”のほう。
 “表”の条件は前任者と似ていること。美しい顔立ちはもちろんだが、背格好などのプロポーションも重視される。いわばウェルルシアのミスコンで選抜された少女たちが、身のこなしや礼儀作法を専門の教師(前女王候補のひとり)から徹底的に教育され、抜擢されて“表の女王”になる。
 当人たちはその事実を知らされず、教育期間中も外交デビュー後も、女王の影武者をしているつもり。家族に会えず、実家にも帰れず、ラーフナで半ば軟禁状態に置かれるが、数年間だけ、とても重要な仕事を任されたと思って女王らしく振舞う。外交デビューは10代後半から20代前半で、容姿にもよるが30歳ごろまで務める。さすがにそのころには、自分の役割を察するようになるが、国の安全のためなので口をつぐんでいる(7歳からの集団生活で責任感が強いと評価された少女しか女王候補に選ばれない)。
 相手国が違えば別の“女王”が向かうことも。顔立ちの違いは、額や目尻に入れる魔除けの模様の化粧で誤魔化す。10年に1回以上の頻度で同じ国へ出向くことはないよう、“奥”のほうで理由をつけて調整している。宗教的な秘儀のための潔斎に入ったという断り文句で、30年近くのブランクを挟んでのトップ外交再開は、相手国に歓迎されこそすれ、疑われる気配もない。30年もすれば相手国の王や大臣も高齢化し、代替わりしているからである。
 難しい外交交渉のため、前々女王たちが若い“表の女王”の随員に加わることもあるが、それでもセーフ。相手国には、ウェルルシア女王は美貌の若い女性であるという強い先入観があるせいかもしれない。
 “奥の女王”たちの存在はトップ・シークレットとして厳重に秘匿され、当人たちの家族も知らない(肩書きや所属は若いころから家族にも伏せる習慣。テロ防止のためという理由から、家族も問わないようにしている)。女王府で働く官僚たちも、その仕組みを知っているのはトップの約10名。欠員が出ると、その10名が次の“奥”入りする。
 こちらは容姿に関わらず、能力主義で選ばれる。“表”経験者より高齢化しているため、その主張には重きが置かれる。


■ウェルルシア(4) 宣芳まゆり様投稿【フリー】

ウェルルシア国の香木

○ラージデード
一般的に香木と言えば,これを指す場合が多い.
生木のままでも,火にくべてもいい匂いがする.
家具の材料として使用するには強度が足りない.
(装飾品としては使用可能)

○チェングラ
希少な香木.
ラージデードよりもいい香りがする高級品.
生木のときは,ほとんどにおわない.

○ポンディソール
チェングラに似た木.
見た目ではほぼ見分けがつかない.
ものすごく鼻のいい人ならば,生木のときのにおいで,チェングラとの区別がつく.
しかしほとんどの人には区別がつかないので,チェングラのにせものとして市場に出回っている.
ちなみに火にくべると,くさい.
ウェルルシア国では,嫌いな人間に対して,ポンディソールを贈る習慣がある.
よってポンディソールのイメージは悪い.
しかし近年,ポンディソールで肉を燻製にすると,やたらとおいしいものができるために,ポンディソールの価値が見直されつつある.

○スーラチェングラ
もっともグレードの高いチェングラ.
世界に3,4本しか生えていないと言われている.
あまりにも貴重なために,伐採は禁じられている.
そもそも伐採したくても,どこに生えているのか,ごくごく一部の人しか知らない.
生木のままでも,かすかににおう.

ウェルルシア国の王宮深くには,過去に伐採したスーラチェングラの幹がある.
世界最高の香木と呼ばれている.
火にくべると,たとえようのない玄妙なる香りがする.
特別なときにのみ使用されるらしいのだが,具体的にどんなときに使用されるのかはナゾである.
女王経験者の葬儀のときにのみ使用されるのではないかと,他国からは推測される.
その憶測のせいか,香をたくと死者に会えるとも言われる.
また,神を降ろせるとも,この香りでウェルルシア国の女王は国民を洗脳するとも.
記録に残っている限りでは,この幹が切り取られ,香として使用されたのは,11回である.
(使用目的は他国には公開されていない)
しかし幹には,13箇所の切り取られたあとがある.
なぜ2箇所だけ多いのか,誰にも分からない.
あまりのかぐわしさに人ならざるものがかすめとったという言い伝えがあるが,香木の管理者が,その職務にも関わらずに,盗んだという説もある.

○スーラチェングラに関する伝説

民間に伝わる伝承では,昔,恋人をなくした女が,王宮で,スーラチェングラの幹を切り取り,その香りによって恋人との再会を果たしたと言われている.
恋人と再会した女は,恋人とともに死者の国に旅立ったとも,恋人の子をみごもって一人で産み育てたとも言われている.
また,女が見たのは,死んだ恋人ではなく,まったくの幻想であったという説もある.
しかし公式文書には,スーラチェングラが窃盗にあったという記録はない.


■ウェルルシア(5) 蒼山れい様投稿【フリー】

【白金鷲(スパルナ)】
 ウェルルシアの樹海に生息する巨鳥。その名のとおり鷲に似ている。小さな個体でも成人男性よりひと回り以上大きく、白金に似た光沢を帯びた羽毛を持つ。知能が高く、人語を解しているようなそぶりをよく見せる。基本的に温厚だが、とても誇り高く気難しい性質を有する。
 ウェルルシア人の祖先が渡来する遥か以前から樹海を支配してきた古い生きもの。昔話によれば、初代の女王が〈羽ばたける森の王〉と盟約を交わし、善き隣人としてこの地に住むことを許されたと云われている。事実、白金鷲が友好的な態度を見せるのはウェルルシアの民のみである。
 なかでもとりわけ白金鷲が親しむのは、年若い女性である。無二の友として絆を結んだ乙女には白金鷲の背に乗る誉れが許され、その多くが鳥騎兵(ハルピュイア)として軍役に就いている。一説には、白金鷲は翼獅子リオノスのように天空神の眷属、あるいはその末裔ではないかとされているが……?

 公用語では白金鷲は『しろがねわし』と読むが、ウェルルシア人は『スパルナ』のほうを好んで使う。ある鳥騎兵によれば、白金鷲たちが『スパルナ』の呼び名を気に入っているからだという。ちなみに『スパルナ』はウェルルシアの古語で『麗しき翼』の意味し、白金鷲への賛美と親愛の証とされている。