【H24.8.4追記】 岡野さんによると、「血液型裁判」の控訴審ではBPOの態度に変化が現れたようです。
一言でいうと、血液型人間学(=能見説)は、BPOの「要望」には含まれないということです! ちなみに、判決文には、もう少し明確に書いてあります。
やはり、血液型人間学(=能見説)は、BPOの「要望」には含まれないということになります! つまり、「占い」はダメですが、統計に裏付けられた「血液型人間学」なら、どんどんテレビで放送していいと、裁判所がお墨付きを出したということです。 となると、BPOは、実質的に「要望を取り下げた」と言っていいのではないでしょうか? v(^^)
【参考】 ◆ 「血液型を扱う番組」に対する要望◆ 以下に全文を掲載しておきます(詳細はこちら)。
2004年12月8日
放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と青少年に関する委員会 「血液型を扱う番組」が相次ぎ放送されている。それらの番組はいずれも、血液型と本人の性格や病気などとの関係があたかも実証済みであるかのごとく取り上げている。放送と青少年に関する委員会(以下、青少年委員会)にも、この種の番組に対する批判的意見および番組がもたらす深刻な状況が多数寄せられている。 それらの意見に共通するのは、「血液型と性格は本来、関係がないにもかかわらず、番組の中であたかもこの関係に科学的根拠があるかのように装うのはおかしい」というものである。意見の中には、「これまで娯楽番組として見過ごしてきたが、最近の血液型番組はますますエスカレートしており、学校や就職で血液型による差別意識が生じている」と指摘するものもあった。 放送局が血液型をテーマとした番組を作る背景には、血液型に対する一種の固定観念とでもいうべき考え方や見方が広く流布していることがあげられる。 しかし、血液型をめぐるこれらの「考え方や見方」を支える根拠は証明されておらず、本人の意思ではどうしようもない血液型で人を分類、価値づけするような考え方は社会的差別に通じる危険がある。血液型判断に対し、大人は“遊び”と一笑に付すこともできるが、判断能力に長けていない子どもたちの間では必ずしもそういうわけにはいかない。こうした番組に接した子どもたちが、血液型は性格を規定するという固定観念を持ってしまうおそれがある。 また、番組内で血液型実験と称して、児童が被験者として駆り出されるケースが多く、この種の“実験”には人道的に問題があると考えざるを得ない。 実験内で、子どもたちは、ある血液型の保有者の一人として出演、顔もはっきり映し出され、見せ物にされるような作り方になっている。中には子どもたちをだますような実験も含まれており、社会的にみて好ましいとは考えられない。 青少年委員会では、本年6月以降、番組内での“非科学的事柄の扱い”全般について検討してきたが、ことに夏以降、血液型による性格分類などを扱った番組に対する視聴者意見が多く寄せられるようになった。そこで委員会では集中的に「血液型を扱う番組」を取り上げ、いくつかの番組については放送局の見解を求め、公表してきた。その過程で、放送局は「○○と言われています」「個人差があります」「血液型ですべてが決まるわけではありません」「血液型による偏見や相性の決めつけはやめましょう」など、注意を喚起するテロップを流すようになった。しかし、これは弁解の域を出ず、血液型が個々人の特徴を規定するメッセージとして理解されやすい実態は否定できない。 民放連は、放送基準の「第8章 表現上の配慮」54条で、次のように定めている。
これらを踏まえ、青少年委員会としては、「血液型を扱う番組」の現状は、この放送基準に抵触するおそれがあると判断する。
青少年委員会は、放送各局に対し、自局の番組基準を遵守し、血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する。 |
最近、血液型をテーマにしたテレビ番組が大流行です。(^^)
ところが、番組によっては「血液型差別」が問題となっているケースがあることがわかりました。
考えるまでもなく、「血液型差別」は社会的な問題で、「血液型と性格」は純粋に科学的な仮説です。だから、「血液型差別」があろうがなかろうが、「血液型と性格」に関係するはずがないと思っていたのですが、必ずしもそうではないようです。(*_*)
そこで、BPO(放送倫理・番組向上機構)青少年委員会では、血液型のテレビ番組について審議します。
その番組とは、「あるある大事典II」と「ホムクル」のようです!
公正な審議を期待しています! 委員の皆さん、ぜひよろしくお願いいたします。
結論だけ読みたい人に…
【血液型問題に対するBPO青少年委員会への素朴な疑問】
この「要望」には、いくつかの謎があります。 まず、日本民間放送連盟の放送基準の第54条です。「血液型を扱う番組」の現状が、この放送基準に抵触するおそれがあると判断するのは、全く根拠がないとは言えないにしても、あまり妥当とは言えないでしょう。ましてや、第三者機関であるBPOがなぜこのような結論を出してしまったのでしょうか?不思議です。 もう一つは、「見解」や「提言」を出すためには、運営規則第6条により委員の3分の2以上の賛成が必要ですが、それだけの賛成が得られなかったから「要望」にしたのかもしれない、という謎です。 この2つは、議事録を公開すれば済むことなので、そのうちホームページに掲載されるのかなぁ、と期待しています。 実は、バラエティ番組への要請は4年前の平成12年11月29日にも行っています。しかし、このときはBPOへの苦情や批判が殺到し、さんざんな評判でした(視聴者の意見:
苦情・批判391件、肯定的41件など)。『朝日新聞』によると「冗談で見ているものにあえて問題を投げかけなくても、とも思った」「ヤボを承知で待ったをかけた方がいいと思った」と委員が発言したのは、そういうトラウマがあったからなのかもしれません。それなら、委員や事務局のやる気がなくなるのも当然です。 ということで、「要望」をプレス発表したの理由は、やはり謎です。心理学者の委員の強い要望でもあったのでしょうか? はて? 【H17.2.3追記−平成16年11〜12月分の青少年に関する視聴者の意見について】読もうとしても、なぜか「ページが見つかりません」と出てしまいます。私だけ? |
ちょっと堅い話題ですので、次からは興味がある方だけどうぞ。 -- H16.9.13
テレビ番組の青少年への悪影響を防ぐために、放送局ではいろいろな取り組みがされています。
■放送法に基づくもの
・ | 放送は、表現の自由と公共の福祉の調和の上に成り立ち、放送法において、番組編集の自由を保証するとともに、番組基準の策定、放送番組審議機関の設置が義務付けられており、放送の自律性を担保する仕組みが構築されている。この仕組みに基づき、放送事業者において、番組の適正化を図る努力が行われているもの。
|
||||
・ | NHKと日本民間放送連盟が共同で設置している放送番組向上協議会において、放送倫理に関するセミナー等を開催。 |
出典:青少年と放送に関する調査研究会/第4回/資料7(平成10年9月21日開催)
■BPO(放送倫理・番組向上機構)
また、第三者機関として「放送倫理・番組向上機構」が平成15年7月1日に発足しました。その目的は、
新機構の目的は、「放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情、特に人権や青少年と放送の問題に対して、自主的に、独立した第三者の立場から迅速、的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与すること」(規約第3条)です。
出典:『BPO報告』 VOL.1(平成15年7月1日)
となっています。
また、BPOホームページによると、
「放送倫理・番組向上機構」(略称=BPO、放送倫理機構)は、放送による言論・表現の自由を確保しながら、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情、特に人権や青少年と放送の問題に対して、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的にしています。
BPOは、従来から活動してきた「放送番組委員会」と「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」、「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」の3つの委員会を運営する、放送界の自主的な自律機関です。
BPO加盟の放送局は、各委員会から放送倫理上の問題を指摘された場合、具体的な改善策を含めた取組状況を一定期間内に委員会に報告し、BPOはその報告等を公表します。
となっています。
■日本民間放送連盟の放送基準審議会
これは、ホームページ上には特に情報がありませんでした。[こちらありました -- H17.1.29]
平成9年12月16日(火)に放映されたポケモンによる騒動を覚えている方は多いでしょう。対策として、翌年4月8日に日本民間放送連盟とNHKが、“アニメーション等の映像演出手法に関するガイドライン”を発表したとのことです。
BPOホームページによると、現在までにVOL.14までの報告書が出されています。その中で血液型が取り上げられているのは、
■『BPO報告』 VOL.12
『BPO報告』 VOL.12(平成16年6月15日 6ページ 太字は私)では、「今後の検討テーマについて」が取り上げられています。
■ 青少年委員会の審議
◆ 今後の検討テーマについて
今年度に委員会で検討すべきテーマについて議論し、委員から次のような提案が出されました。
○ 血液型や怪奇・霊能など非科学的事柄を扱う場合の子どもに及ぼす影響について
[中略]
以上の提案・意見を踏まえ、次回の委員会以降で“非科学的事柄を扱う場合の留意点”や“世界各国の子ども向け番組をめぐる状況”を中心に、議論を進めることにしました。
血液型が「非科学的」というのには少々抵抗がありますね…。(^^;;
■『BPO報告』 VOL.13
『BPO報告』 VOL.13(平成16年7月15日 4〜5ページ 太字は私)では、放送と青少年に関する委員会で「番組での非科学的事柄の扱いについて」が取り上げられています。
◆番組での非科学的事柄の扱いについて
このテーマについては、5月の委員会で概要、「血液型判断や怪奇・霊能・オカルトなど非科学的な内容を情報番組やバラエティー番組で実験などを交えつつ、科学的根拠があるかのように放送することや、カルトであることを明確に示さずに紛れ込んでいるような番組は、子どもに影響を与えるのではないか」といった議論がありました。
これを受けて事務局が、“非科学的な事柄を扱う番組”の内容を大まかに分類した、以下の資料を作成し、それを基に議論しました。
委員から出された意見は概要、次のとおりです。委員会では、今後も引き続き議論することにしています。
○ 特に「血液型別の性格分類」については、医学的・統計的に見て疑問点が多く、専門家の間では関連性が否定されている。バラエティーでのお遊びならともかく、情報番組で実験しながら、あたかも科学的であるかのような伝え方をするのは問題。
[中略]
○ 番組を批評するのはいいが、きわどい内容も含むのが放送だと思う。委員会として「ここから先は、子どもたちに問題が起きる可能性がある」と判断した場合、放送以前に問題を指摘することも必要だ。今年の夏も心霊スポット紹介などがテレビに登場すると思う。
○ 放送局も注意していると思うが、視聴率が取れそうだとやりすぎる可能性もある。その辺の見極めが必要。非科学的事柄を扱う番組の内容分類
【血液型】
・血液型別運勢/・血液型別性格・病気・脳の働き等の検証
[後略]
私はオカルトを信じているわけではありませんし、全ての血液型の番組の内容が正しいと思っている訳ではありません(笑)。しかし、この報告の内容(太字)は問題があるのではないでしょうか?
まず、
「血液型別の性格分類」については、医学的・統計的に見て疑問点が多く、専門家の間では関連性が否定されている。
とのことですが、これは全くのウソでないとしても、少なくとも正しくはありません(ちょっとひどいですよね!)。正しくは、「関連性が否定されている」のではなく、「現時点では関連性があるとは認められていない」か「日常生活場面で問題になるほどの関係はない」です。例えば、長谷川さんは、平成16年7月13日のじぶん更新日記の中で次のように述べています。
筆者は、約一〇年前よりこの問題をとりあげてきたが(7)(8)、その主旨は、第一に、血液型人間「学」と呼ばれる俗説のデタラメな「分析」方法を批判すること、第二に、「血液型と性格」には少なくとも日常生活場面で問題になるほどの相関はないことを反例の形で示すことにあった。純粋に科学的なレベルで「血液型と性格がまったく関係ない」かどうかは私にはわからないし、この問題についての科学的研究を妨げるつもりもない。 …多くの心理学者も私とほぼ同じ態度をとっている。
もちろん、「関連性が否定されている」と言っている場合もあります。例えば、渡邊さんは、長谷川さんとは全く反対の主張をしているようです(性格心理学は血液型性格関連説を否定できるか〜性格心理学から見た血液型と性格の関係への疑義 『現代のエスプリ〜血液型と性格』 188〜191ページ)。
これまで何人かの心理学者が、 血液型と性格との関連を実証的方法で反証し、血液型性格関連説を否定しようとしてきた。ここで注目されるのは、彼らが血液型性格関連説を「科学的方法によって反証可能な理論」、すなわち科学的理論とみなしていることである。この点でそれを「非科学的な迷信」とみなして無視した従来の心理学者とは異なる。
しかし、論文を一読すればわかるように、彼らの多くは「血液型性格関連説は間違っている」というアプリオリな立場を持っており、それを実証するために研究を行なっていることもまた確かである。
また、肯定論者の代表としては、「探検!ホムンクルス」に出演していた澤口さんがいます。
澤口俊之×阿川佐和子さん モテたい脳、モテない脳 H15.5 KKベストセラーズ 1,300円+税どちらもO型の澤口俊之さんと阿川佐和子さんの対談です。澤口さんは、「探検!ホムンクルス」で、血液型と性格は関係あると説明していました。番組中では、あまり詳しい話はなかったのですが、この本ではもう少し詳しい説明があります。(91〜95ページ)
そして、茨城県警のデータをあげて、血液型別の交通事故の特徴を説明しています。例えば、一番事故が多いのはA型でスピード違反が多いとのことです。A型の人には申し訳ありませんが、これには納得できるものがありますね(失礼!)。そして、最近はその理由も解明されつつあるとして、
免疫系が強いと、あまり警戒しなくともいいので大雑把な性格になるそうです。逆に、A型は免疫が弱いので心配性だそうですが、B型とAB型はわかっていないそうです。竹内久美子さんの説明に似ているような気もしますね(笑)。残念ながら論文の紹介はありませんでした。わかれば、ぜひ紹介したいですね |
更に、マウスの実験で「血液型と性格」の関係が実証されたとする報告もあります。
ゲノム情報を超えた生命のふしぎ 糖鎖 第16回「大学と科学」公開シンポジウム講演収録集 H15.1 3,000円+税 クバプロ この本は画期的です。ABO式血液型と同じく糖鎖で決まるルイス式血液型で性格が変わることが実証されたからです。やった〜!
残念ながら、この本には糖鎖によりなぜ性格が変わるのかは書いてありません。今後の研究に期待したいところです。 |
ということですから、少なくとも「専門家の間では関連性が否定されている。」は言い過ぎではないかと思います。
後半の、
非科学的事柄を扱う番組の内容分類
【血液型】
・血液型別運勢/・血液型別性格・病気・脳の働き等の検証
も同じことですが、「血液型別運勢」はさすがに私も信じていません(笑)。それに、「血液型別性格・病気・脳の働き等の検証」は、論文でいくらでもありますから、検証自体は科学的であることには違いありません。
興味がある方は、血液型と性格「常識」のウソもどうぞ。
■『BPO報告』 VOL.14
『BPO報告』 VOL.14(平成16年8月15日 8〜9ページ)では、放送と青少年に関する委員会で引き続き「“血液型”に関する番組について」が取り上げられています。
いて◆“血液型”に関する番組につ
血液型による性格分類などを扱った番組について、視聴者意見が多く寄せられていることから、番組を制作した3局(TBS、テレビ朝日、関西テレビ)に視聴者意見に対する回答を委員長名で要請していることを報告。回答を基に、9月の委員会で審議することにしました。
ということです。結果が気になりますが、公開されるのはこの調子(7月分が8月31日付で公開なので)では10月末ごろになりそうです…。興味津々ですね。
■TBS
青少年委員会報告に全文が掲載されています[H16.10.10 なくなったようです]。
まず、番組名は「能力探検!ホムクル!!ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント! 本当の自分&相性のすべてがわかるスペシャル」です。
回答要旨は、1.特定の血液型への差別について、2.血液型性格診断の科学的側面についての2つです。
1.特定の血液型への差別については、圧倒的にB型からクレームが多かったようです(苦笑)。別にそんな印象は受けなかったのですが、それは私がAB型だからでしょうね、きっと。確かに、これは問題かも知れません。その後は「個人差があります」というテロップを出すことにしたそうです。確かにこんなテロップを見たような気もします…。
2.血液型性格診断の科学的側面については、平成13年に放送した『スパスパ人間学!貴方の知らない本当の性格・好かれる理由・嫌われる理由スペシャル』の中では、「基本的に否定する」立場だったが、今回は(明確には書いてありませんが)「基本的に肯定する」立場(やった!)ということのようです。
#ただし、その後は「仮説です」というテロップを出すようにしたということようですが…。
ちょっと気になったのが、「心理学の分野では血液型と性格の関連は否定されているという事は十分に認識致しております。」という文章です。前述の長谷川さんによると、「『血液型と性格』には少なくとも日常生活場面で問題になるほどの相関はない」「純粋に科学的なレベルで『血液型と性格がまったく関係ない』かどうかは私にはわからないし、この問題についての科学的研究を妨げるつもりもない。 …多くの心理学者も私とほぼ同じ態度をとっている。」とのことですから、必ずしも心理学で否定されているとは言えないと思います。
#もっとも、一般的な印象はそうですが…。
TBSにもう少し強く主張してもらいたいと思うのは、長谷川さんだけではなく、私もです。頑張れTBS!
余談ですが、ホムクルは9月18日で最終回のようです。血液型の問題で打ち切りなのか、あるいは単なるリニューアルなのか、ちょっと気になりますね。
6月5日からのホムクルでは、毎回血液型のコーナーがあるので、血液型の問題とは関係ないニューアルなのかなぁ? はて?
【H16.10.10追記】
青少年委員会報告がなくなってしまったようなので、要旨を書いておきます。 番組名「能力探検!ホムクル!!ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント! 本当の自分&相性のすべてがわかるスペシャル」 <「青少年委員会」からの要請要旨> 今後は、家族全員で楽しめるより、良い番組作りを慎重に進めていく所存でおります。 |
■テレビ朝日
ホームページを「血液型」で検索してダメだったので、いろいろと探して見たのですが残念ながら発見できませんでした。たぶん、「決定!血液型ランキング」が対象だと思うんですが…。
■関西テレビ
番組名はわかりませんが、たぶん「発掘!あるある大事典II 春の芸能人血液型スペシャル」だと思われます。
テレビ朝日と同じく、ホームページを「血液型」で検索してみたところ、平成16年4月4日放送の「発掘!あるある大事典II 春の芸能人血液型SP」番組審議会(No.455)の報告がありました。その要旨は、
といった感じで、否定的な内容はないようです。強いて否定的な内容と言えるのは、
ぐらいでした。
テレビ朝日と同じく、残念ながらBPOへの回答は発見できませんでした。
また、BPOの放送と青少年に関する意見(4月)は3件だけのようでした。
その内容は、「血液型で性格が決まるなら、一部の血液型への差別・イジメにつながりかねず、許されない」といったもので、TBSとだいたい同じです。件数が少ないのは、内容が「決めつけ」ではなかったからなのでしょうか?
【H16.9.23追記】フジテレビ(関西テレビ)、TBS、テレビ朝日では、血液型のスペシャル番組を放送するようです。
番組を見ないとなんともいえませんが、タイトルだけで判断する限り、フジテレビ(関西テレビ)とテレビ朝日は、TBSの委員会報告よりもっと強気に出るようです。 言うまでもありませんが、この3局は血液型スペシャルを放送するぐらいですから、基本的に「青少年への悪影響はない」「血液型と性格には関係がある」と考えているはずです。 それから、9月21日付でBPOホームページに8月分の放送と青少年に関する意見が掲載されたのですが、その中で面白い(?)意見がありました。
「絶対に許されない」という意味がよくわかりませんが、仮に「公共の電波では」ということなら少々問題です。なぜなら、裁判所や行政などを使って特定の主張を禁止することが目的なら、(極論すれば)言論の自由の侵害になりかねないからです。「血液型と性格は関係ある」と主張する人は「絶対に許されない」ということなら、それこそ「特定多数の人に対する差別やイジメ」になってしまいまます。 私と同意見の人もいるらしく、こんな意見もありました。
皆さんはどう思いますか? |
■4月から8月までの番組のリスト
視聴者の意見を読んでいると、「あるある」と「ホムクル」に集中しているようです。この2番組は注目度が高い(視聴率が高い)こともあるのでしょうが、他の番組でも血液型はずいぶん放送している割には反響が少ないようですね。
4月から8月までの番組リストは、
ですから、少なくともドラマやバラエティではほとんど問題がないのかもしれません。どうなのでしょうか?
また、その後も血液型の番組が続々放送されていることから、各放送局ではさほど問題視していないものと思われます。 -- H16.9.13
では、BPOの青少年委員会から報告があった場合どうなるのでしょうか?
BPOホームページによると、
NHKと日本民間放送連盟では、放送事業者による自主的な機関として、2000年4月1日、あらたに「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」を設置しました。
この委員会は、視聴者から寄せられる青少年に対する放送のあり方や放送番組への意見をもとに、各放送局への意見の伝達と審議を行い、その審議結果と放送事業者の対応等を公表します。
さらに、青少年が視聴する番組の向上に向けた意見交換や調査研究を通して、視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての役割を担っていきます。
ということですから、公表するだけで各放送局への強制力はないようです。つまり、各放送局の自主判断ということになります。
普通、放送局への意見は公表はされませんから、インターネットで公表されるかされないか、というのが大きな違いといってよさそうです。 -- H16.9.13
ここまで読んできて、皆さんはBPOに疑問を持ちませんでしたか? 特に問題なのは『BPO報告』 VOL.13です。一部の内容は、科学的に間違っている…と思われます。
まず、
「血液型別の性格分類」については、医学的・統計的に見て疑問点が多く、専門家の間では関連性が否定されている。
とのことですが、「専門家の間では関連性が否定されている。」は言い過ぎではないかと思います。せいぜい、「まだ関連性が認められてはいない」です。
また、
非科学的事柄を扱う番組の内容分類
【血液型】
・血液型別運勢/・血液型別性格・病気・脳の働き等の検証
[後略]
とのことですが、少なくとも血液型別の病気の科学的検証はすでになされています。例えば、斎藤成也さん(国立遺伝学研究所)の『遺伝子は35億年の夢を見る』では、
A型とB型の対立遺伝子の共存が霊長類のあちこちの種でみられることも不思議である。この遺伝子がなぜこのような変異パターンを示すのか、まだよくわかっていないが バクテリアやウイルスなどの感染を防ぐのに、ある程度の効果があるのではないかと考えられている。実際、胃潰蕩や胃癌の原因のひとつであるヘリコバクター・ピロリというバクテリアは、胃壁にもぐりこむ際に、ABO式血液型物質の前駆体であるH型物質を足場にしている。するとH型物質しか持っていないO型の人間は、 胃潰瘍などになりやすいため、多少は生存に不利となるだろう。しかし、まだまだこれらは仮説にすぎない。わからないことが多すぎるのである。
このほか、最近の糖鎖の研究によると、血液型と病気が関係するメカニズムが徐々に明らかになってきています。従って、これらの記述は明らかに間違いということになる…はずです。
興味がある方は、血液型と性格「常識」のウソもどうぞ。
少々不思議だと思って、青少年委員会のメンバーを調べてみました。すると、7人の委員中3人が心理学者なのです! また、医学・大脳生理学の専門家はいないようです。ちょっと考えてしまいました。(*_*)
それに、素朴な疑問ですが、(別に心理学の委員が悪いわけではありませんが)これでは、厳密な意味で血液型に対して「第三者」といえないでのではないでしょうか?
血液型を審議するなら、「放送と青少年に関する委員会」運営規則第2条第3項に「青少年が視聴する番組の向上に資するため、機構の構成員である放送事業者、番組制作者、青少年自身、保護者等と意見交換を行い、その概要を公表する。」とありますから、ぜひ医学・大脳生理学の専門家などの参考人を招いていだたきたいものです。
公正な審議を期待しています! 委員の皆さん、ぜひよろしくお願いいたします。 -- H16.9.13
その後、10月22日にBPO報告VOL.16が公表されました。関係部分を引用します。
#忙しいせいか、いくつかの誤字があるようです…。
■『BPO報告』 VOL.16から抜粋
9月8日に開催した今年度第5回青少年委員会では、“血液型を扱う番組”に関して、委員会が「視聴者意見に対する見解」を求めていた3放送局からの回答などを基に審議しました。また、「青少年へのテレビメディアの影響調査」(4年間調査)の中間報告、7〜8月中にBPOへ寄せられた視聴者意見について検討しました。
委員会の議事、および、放送と青少年関連の視聴者意見の詳細は、BPOのHPに掲載しています。
■ 青少年委員会の審議
◆視聴者意見について検討
[省略]
◆“血液型を扱う番組”について審議
委員会では6月以降、番組での非科学的事柄の扱いについて検討してきました。しかし、最近になって“血液型による性格分類などを扱った番組”に関する視聴者意見が多く寄せられたことから、番組を制作した3放送局に、「視聴者意見に対する回答」と、当該番組の放送済みテープの提出を要請していました。
9月の委員会では、当該局からの回答(以下に掲載)などを基に審議しました。
▽『能力[注:正しくは脳力]探検!ホムクル!! ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント! 本当の自分&相性…すべてわかるスペシャル』(6月5日、19:00〜20:50放送分)に関するTBSからの回答
◆ TBSからの回答〔8月11日付〕◆
【特定の血液型への差別について】
この問題に関してTBSに寄せられた抗議の大半はB型の人からでした。具体的には、「B型に対して何故あんなにひどいコメントや偏見ばかりの結果を出したのですか」「B型だけが悪く言われる意味がわかりません」などという内容で、このことから差別に繋がるという懸念を示す意見もありました。こうした意見が多数寄せられる内容になってしまったことについて、私たちは深く反省いたしております。
私たちは、人格を否定するようなコメントは極力排除するなどの注意はいたしましたが、残念ながらコーナー企画の一部には配慮を欠いたものが含まれてしまいました。血液型をテーマにする番組や書籍では、少数派のB型とAB型を笑いものにする傾向がありますが、今回、“少数派だからこそ大切にする手当てが必要なのだ”という姿勢を再確認し、深く反省するとともに、検討を重ねました。
その後、放送されたTBSのレギュラー番組『脳力探検クイズ!ホムクル』の血液型コーナーでは、差別に繋がりかねない表現をカットするとともに、どの血液型についてもその長所を強調するかたちで扱いました。更に、「個人差があります」というスーパーテロップをできるだけ多く挿入しました。これらの番組については、現在まで差別的に扱われたという意見は殆どいただいておりません。
今後、血液型を扱う際には、教育関係の方から貴委員会に寄せられた「子どもたちが占いや血液型診断を信じ、いかに影響を受けやすいかを知っている」という意見を深く受け止め、更に慎重な番組制作を行っていくつもりでおります。
【血液型性格診断の科学的側面について】
貴委員会に寄せられた「心理学者は性格と血液型との関連について否定している」という意見と同様に、TBSにも「最初から『関係がある』と決めつけて番組を作ったのではないでしょうか」という趣旨の指摘がありました。
私たちのチームは『どうぶつ奇想天外』を11年間、『スパスパ人間学』を5年間制作し、さらに1997年からは『生命38億年スペシャル“人間とは何だ”…!?』の制作・放送を続ける中で、多数の科学者を取材してまいりました。その中で学んだことは、科学的な仮説は常に変わり続けるということ、また説明できない現象も非常に多くあるということでした。
私たちは2001年に放送した『スパスパ人間学!
貴方の知らない本当の性格・好かれる理由・嫌われる理由スペシャル』の中では、血液型診断については「基本的に否定する」立場に立って取り扱いました。
しかし、その後、免疫学の分野を中心に、免疫力と血液型の関連、免疫と性格の関連が指摘され始めています。私たちは今回の番組では、これらの新しい研究成果をもとに幼稚園児に協力していただき、彼らの性格、行動パターンについての実験を行いました。これらの結果を基礎にして今回の番組を構成したわけですが、番組づくりの編集段階で、性格づけを強調しすぎてしまい、あまりにもステレオタイプ化させてしまったという点について反省いたしております。この反省をもとに、これ以降に放送された『脳力探検クイズ!
ホムクル』では、「仮説です」というスーパーテロップを出し、「…と言われています」「…かもしれません」など、絶対的なものという印象を与えないようにいたしました。
私たちも、性格は環境など後天的なものによって形づくられる要素が大きく、血液型のみによって決定されるという立場には立っておりません。特に心理学の分野では血液型と性格の関連は否定されているということは充分に認識いたしております。
今回、貴委員会に寄せられた意見、それに私どもTBSに寄せられた視聴者の皆様からの意見を重く受け止め、家族全員で楽しめるより良い番組づくりを慎重に進めていく所存でおります。
▽『決定! これが日本のベスト100』(6月13日、18:56〜19:58放送分)に関するテレビ朝日からの回答
◆ 関西テレビからの回答〔7月30日付〕◆
この番組は、今や占いの領域にまで浸透し、日本人の日常生活や行動に対し多大な影響を及ぼしている「血液型による性格分類」が、果たしてどこまで実証できるかを番組の起点に置きました。
そこで、当番組では血液型による性格の傾向および行動パターンの俗説を検証するため、「1000人調査」「幼稚園でのウォッチング」や「あるある実験」「海外での最新研究」を放送いたしました。
視聴者の投稿では「ある特定の血液型に対する偏見や差別を助長する」という意見ですが、あくまでも「1000人調査」から得たデータに基づいての統計学的見地に立った企画であり、各々の血液型によって類似する性格や行動の傾向があるという結果にとどめています。
血液型イコールこの性格と断定している訳ではなく、1000人の人間から得たデータから4つの血液型の特徴的な行動パターンを紹介した訳です。
もとより、人間の性格は様々な要因によって形成されており、未知の部分も多く、すべてが血液型によって決定されると断定できるものではありません。
当番組でも、「血液型ですべてが決まる訳ではありません。血液型による偏見や相性の決めつけはやめましょう」というスーパーテロップを番組の最後に出すことによって注意を促しています。
また、4月新番組をテーマにした4月8日の番組審議会でも同番組が多くの委員によって取り上げられました。
その中で、「血液型の話をする人とは付き合いたくない」という委員もいましたが、今回の番組内容については、身近なテーマであり、家族全員が会話をしながら楽しめるものだったと概ね好評でした。
今後も、番組で同様のテーマを扱う場合は、非科学的なものは慎重に対応するようにという当社の番組基準の精神に則った番組づくりを心掛けていきたいと考えています。
▽『発掘! あるある大事典U〜春の芸能人血液型スペシャル〜』(4月4日、21:00〜22:24放送分)に関する関西テレビからの回答
◆ テレビ朝日からの回答〔7月26日付〕◆
今回の番組は、現在、世の中に溢れている血液型に関する様々な情報を集約してみようと企画いたしました。制作にあたっては、偏りによって差別や偏見を助長することがないよう、新聞、テレビ、書籍、雑誌等の情報を集め、さらに血液型研究の第一人者、血液型人間研究室代表・能美[注:正しくは能見]俊賢氏に監修をお願いし、血液型別の傾向を調査・研究いたしました。また、番組独自の調査・実験も行っております。
今回の番組はその結果を放送したものであり、「視聴者の皆様からの意見」で指摘のあったような特定の血液型に悪印象を与える意図は全くございません。むしろ、私どもは企画から放送に至るまで、一方的な決めつけで差別や偏見を助長しないよう留意したつもりです。スタジオでのトークでは結果を全肯定するのではなく、ゲストの方々に当てはまるかどうかという議論を展開しておりますし、番組の最後でも差別や偏見を助長しないようテロップを入れ、視聴者の皆様に注意喚起を行っております。しかし、設問項目の多くで特定の血液型の調査結果が悪かったのは事実であり、このことが視聴者の指摘の要因となったかと反省しております。
私どもは差別や偏見を助長することがないよう制作を行ったつもりですが、結果的に視聴者の皆様から指摘をいただいたことは本意ではなく、遺憾に思います。今後も更に細心の注意を払い番組制作をする所存ですので、何卒ご理解を賜りますようお願い申しあげます。
委員会では、これらの回答などを基に意見交換しました。委員から出された主な意見は、次のとおりです。
▽
お遊び程度なら許容できるが、あたかも科学的根拠があるかのような体裁をとっていることが非常に問題。特に幼稚園児を血液型別に分けて実験をするのは人道的にも問題。「癌に罹りやすい血液型」コーナーがあったが、血液型と病気との因果関係があると決めつけており、病気を抱える人にとってはショックだと思う。
▽
基本的に、あたかも確証があるような構成になっている。科学的な公平を期すなら、否定的な意見を持つ人も登場させるべき。血液型など本人の意思では変えられないものを断定的に分類することは、差別ともなろう。
▽
血液型性格学を支持する学者は少数で、批判が多いのに、科学性を持たせるのは好ましくない。実証実験も、あのようにきれいな結果が出てくることはあり得ない。各局の回答に「真面目に血液型を論じ、番組は検証されている」とあるが、これもまたおかしい。
▽
こうした番組は、科学的なフリをしないと成り立たないのだろう。真面目に受け取らないことが一番だ。学校で血液型によっていじめられるというのはリアリティーを感じないが、番組を見て保護者が「こんなのウソだからね」と子どもに言ってくれればいいのに、今の大人は子どもより熱心に信じてしまっている。番組に振り回されぬように視聴者の意識を鍛えないとだめ。
▽
視聴率が取れるとなると、どの局も同じ内容の番組を作るという姿勢が情けない。血液型について固定観念を持つのは日本特有で、欧米では無関心だ。
▽
脳科学との関連が扱われているが、この分野はまだ発展途上。血液型の違いと脳の働きとは全く因果関係がない。脳科学と子どもの発達との関連は、親が非常にナーバスになる部分なので、慎重を期す必要がある。
▽
人々の中にある血液型に関する固定イメージを、結果的に、番組が科学的に保証するような役目を果たしてしまっている。同様に、占いの番組なども、数多く放送されることにより、テレビは世の中の非科学的な見方を強める役割を担っているのではないか。
▽
視聴者があらかじめ、非科学性の中に組み込まれてしまっている作り方だ。
▽
問題は、血液型関連番組の中に見られる人権問題と、「迷信を肯定したり科学を否定したりするものは扱わない」という民放連・放送基準108条に抵触するのではないかという点だ。
審議の結果、血液型を扱う番組に対して視聴者からの批判が多く寄せられている現状を踏まえ、委員会として何らかの対応をとる必要があるとの認識で一致。10月の委員会では、“非科学的事柄を扱う番組”全体について、さらに議論を深めることとしました。
■明らかなミス
読めばわかるとおり、ほぼ予想された展開と言っていいでしょう。(^^;;
BPOは強制力を持ちません。従って、今後はテレビ各局の対応に任されることになります。
では各局はどうかというと、TBSの「貴委員会に寄せられた意見、それに私どもTBSに寄せられた視聴者の皆様からの意見を重く受け止め、家族全員で楽しめるより良い番組づくりを慎重に進めていく所存でおります」、関西テレビの「番組で同様のテーマを扱う場合は、非科学的なものは慎重に対応するようにという当社の番組基準の精神に則った番組づくりを心掛けていきたいと考えています」、テレビ朝日の「今後も更に細心の注意を払い番組制作をする所存ですので、何卒ご理解を賜りますようお願い申しあげます」とあります。
ここで、各局の回答をもう一度よく読んでみると、血液型が非科学的とはどこにも書いてありません(!)し、今後血液型の番組を制作しないとも書いてありません(!)。要するに、注意はするが今後もどんどん作るということのようです(笑)。
では、9月から11月までの番組(予定)リストを見てみましょう。
青少年委員会が開催されたのは9月8日ですから、委員会の審議と番組の制作はほとんど関係がないということは言えるようです(苦笑)。
なぜなら、本当に問題があるなら、即日番組の差し替えということもあるはずだからです。しかし、実際には9月8日以降は毎回血液型を取り上げていた「ホムクル」がなくなったぐらいで、日テレもテレビ東京も血液型の番組を放送しています。あれれ。
強制力がない以上、10月以降の委員会を開催しても、状況に変化はないものと思われます。
また、問題なのは、委員の意見の中には、明らかに間違い(単純ミス?)が含まれることです。例えば、
> 特に幼稚園児を血液型別に分けて実験をするのは人道的にも問題。
人道的に問題というのは、@保護者の了解があるか、A実験の内容に人道的な問題があるかどうか、だろうと思われます。Aは、テレビで放送しているぐらいだから問題がありはずがありません。しかし、テレビで放送するということなら、@の保護者の了解を取らないというケースはまず考えられません。従って、どう考えても人道的に問題があるとは思えないのですが…。
これに関しては、井沢元彦さん(B型)の『歴史の嘘と真実』(祥伝社文庫 H9.7)から少々長いのですが、引用しておきます(24〜28ページ)。
ミス・コンは「女性差別」なのだそうだ。 もちろん、この民主主義の社会における人間は、どんな思想や信条を持とうと自由である。また自分の思想を「正義」だと思うことも自由である。 ただ、その「正義」を通すために他人の自由を侵害してばいけない。 ミス・コンが女性差別だと思うなら、それに参加しようとしている女性に参加しないように説得すればいい。ミス・コンの参加者は、強制的に集められているわけではない。あくまでも自分の自由意志で、参加したいから参加しているのである。だから、それをどうしてもやめさせたいなら、参加者および主催者にやめるよう説得すべきであって、それ以外の手段で妨害すべきではない。それは参加者に対する重大な人権侵害である。彼女たちは、自分たちが参加したいものに参加する自由があるからだ。(中略) ミス・コン反対者の中には、そもそも「女性の美」を競うことすら「差別」だと叫ぶ人々もいるらわしい。 しかし、そんなことを言うなら、「ソロバン日本一」を決めるコンテストは、人間を「計算能力」で差別するということになる。それどころか「オリンピック」も、人間を「運動神経」で差別する、とんでもないイベントということになってしまう。 人間には、さまざまな能力・属性があり、生まれつきのものもあれば後天的に獲得したものもある。それを比べてみたいという欲望も当然ある。 もちろん、本人の承諾もなしに、勝手に「美人」だの「ブス」だの決めつけることには抵抗があるだろう。しかし、何度も言うように、当事者が自由意志で参加するイベントは、法律に触れるようなものでない限り、他人が妨害すべきではない。「ミス・コンが女性差別だ」 とみなす自由はあるし、「女性差別を糾弾する」自由も当然ある。だが、同時に各人がコンテストに参加する自由もあるのだ。それを現場(注:言論?)以外の不公正な手段で妨害しようとするなど、真の自由も人権もわかっていないのだとしか言いようがない。(中略) 人間は、思想の自由を持つ。平たく言えば「何をどのように考えてもいい」ということだ。だからこそ、100人のうち99人までがそうでないのに残りの1人が「不快感」を抱くこともある。「自由」である以上、それは当然起こり得る。それゆえにこそ、そういう「少数者の不快感」を絶対化してはいけないのである。これは「少数意見の尊重」とはまるで意味が違う。この絶対化は、「お漏らし」(注:建設省が作った治水推進の細川ふみえさんのポスターが「お漏らし」に見えると問題になった事件のこと)のように良識ある人間は考えないことを、「正義」にしてしまうことになる。 それに、もしそれが許されるなら、世の中のことすべてに「インネン」をつけることができるようになる。 たとえば「オリンピック中止」や、サッカーの「カズ・ダンス」が体を自由に動かせない人にとっては「不快」だからやめろ、ということにもなりかねない。理屈と膏薬(こうやく)はどこにでもつく、のである。 ところが、実際には「少数者の不快感」が絶対化され、ますます推進されているのだ。個人の感性の差にすぎない事柄を人権の名のもとに告発するのは、かえって重要な人権問題である差別に対する国民の感性を歪(ゆが)めるのではないか。 |
ただ、井沢元彦さんが血液型と性格についてどう思っているかはわかりません(笑)。
> 「癌に罹りやすい血液型」コーナーがあったが、血液型と病気との因果関係があると決めつけており、病気を抱える人にとってはショックだと思う。
この意見は、医学・大脳生理学の専門家の意見なのでしょうか? もし、そうでないとすると(専門家を呼んでいるとも思えないので…)、「素人」の意見にならないのでしょうか? 「素人」の意見はこの委員会で意味があるのでしょうか?
> 血液型性格学を支持する学者は少数で、批判が多いのに、科学性を持たせるのは好ましくない。
これは明らかにおかしいと思います。少数意見ならダメということなら、テレビはすべて定説とされるものしか番組にできないのでしょうか?
そんなことはないはずです!
例えば、ドキュメンタリーの大半は、制作者の意見の「押し付け」なはずで、それが正しいかどうかは視聴者自身が判断すればいいはずです。政治番組では、与党しか意見を発表できないのでしょうか?
少数意見はテレビでは放送できないのでしょうか?
まだ定説とされていない学説はどうなるのでしょう?
こんなことでは、言論の自由なんて保障できるはずがありません!
> 血液型について固定観念を持つのは日本特有で、欧米では無関心だ。
これも明らかにおかしいと思います。中国、韓国、台湾はどうなるのでしょうか? フランスのブールデルはどうなるのでしょうか? ダダモさんは?
#どうも、昔ながらの欧米崇拝のニオイがしますねぇ。
> 脳科学との関連が扱われているが、この分野はまだ発展途上。血液型の違いと脳の働きとは全く因果関係がない。
前半と後半が矛盾しています。「発展途上」なら「全く因果関係がない」と断定できるはずがありません。それとも、「因果関係があるとは認められない」ということなのでしょうか?
> 人々の中にある血液型に関する固定イメージを、結果的に、番組が科学的に保証するような役目を果たしてしまっている。
これも違うと思います。問題は、そのイメージが正しいかどうかです。
>
問題は、血液型関連番組の中に見られる人権問題と、「迷信を肯定したり科学を否定したりするものは扱わない」という民放
> 連・放送基準108条に抵触するのではないかという点だ。
社団法人日本放送連盟とBPO(放送倫理・番組向上機構)は関係団体ではありますが、基本的には別組織です。従って、放送基準108条に抵触するかどうか決めるのは、あくまで民放連であってBPOがどうこう言うべきことではないはずです。BPOは、自分自身の基準に従えばいいのですから…。
念のため、第108条を調べてみました。
第108条 占い、心霊術、骨相・手相・人相の鑑定その他、迷信を肯定したり科学を否定したりするものは取り扱わない。
あれ、「占い」なんかどの局でも放送しています。仮に血液型が「占い」だとしても、なぜ血液型だけが問題になるのかわかりません。星占いもタロット占いもダメ、というならわかるんですが…。と思ったら、第108条は「第14章 広告の取り扱い」の一部でした(笑)。
正しくは、「占い、心霊術、骨相・手相・人相の鑑定その他、迷信を肯定したり科学を否定したりする広告は取り扱わない。」ということですから、血液型の番組が第108条に違反するはずがありません。BPOの委員の意見はよくわかりませんねぇ。単純ミスなのでしょうか…。
しかし、中には同感できるものもあります。
> 学校で血液型によっていじめられるというのはリアリティーを感じない
> 科学的な公平を期すなら、否定的な意見を持つ人も登場させるべき。
これはそのとおりですね。
結論として、BPOの青少年委員会は、血液型テレビ番組に特に影響は与えていないようです。喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか…。 -- H16.10.25
【H17.1.28追記】
その後、こんなメールをもらいました。BPOが血液型番組に改善求めたそうです。 No.982 O型男性のハロルドさんから H16.12.9 2:371.面白いですか?
2.お気に入りのページ
3.血液型と性格の関係は?
4.メッセージ:
その他にも、BPO関係では次のような記事があります(解説はこちら)。
では、その後のテレビ番組はどうなったでしょうか? 《放送済》
《放送予定》
結論として、BPOの青少年委員会は、血液型テレビ番組に特に影響は与えていないようです。(^^;; |
11月22日にBPO報告VOL.17が公表されました。関係部分を引用します。
ここでは、前回までの審議結果を受け、青少年委員会として血液型を扱う番組について何らかの意見をまとめることが決定されました。そして、案文作成は無藤隆副委員長と川浦康至委員(いずれも心理学者)に依頼されたとあります。
-- H17.1.29
■『BPO報告』 VOL.17から抜粋
10月13日に開催した今年度第6回青少年委員会では、
9月の委員会で当該局に見解を求めることにした“バラエティー番組で放送されたコント”に関する「回答書」を基に審議したほか、継続検討中の“血液型を扱う番組”
について協議し、委員会としての考え方をまとめること
を決めました。また、9月中にBPOへ寄せられた視聴者意見、総務省の行政指導に関するBPOとしての対応な
どについて検討しました。
委員会の議事、および、放送と青少年関連の視聴者
意見の詳細は、BPOのHPに掲載しています。
■ 青少年委員会の審議
◆“血液型を扱う番組”について審議
委員会では6月以降、番組での非科学的事柄の扱いについて検討しています。一方、血液型関連番組は10月初旬にも2局が全国ネット番組を放送し、放送後、BPOに視聴者意見が数多く寄せられました。
委員会では、10月に放送された血液型関連番組のVTRを一部視聴し、引き続き意見交換しました。
委員から出された主な意見は、次のとおりです。
▽
血液型と性格の関係を証明するために脳実験や脳調査を使用するのは、誤解を与える。必要以上に科学性を装うべきでない。
▽
地方の中学校で女生徒が、「自分はB型だが、人に血液型を聞かれるのがとても嫌だ」と言っていた。学校でも、差別やいじめに繋がる危険性がある。
▽
目くじらを立てる必要はないと判断できる人はいいが、何がインチキかを見抜く力を養うことがまず大切。
▽
この種の企画はそろそろ下火になると思うが、放送された血液型と性格の関連性は視聴者の気持の中にそのまま生き続け、10年後にまた復活するのではないか。
▽
B型とAB型はマイナスイメージで伝えられているが、血液型はいくらでも解釈をひっくり返せる側面を持つ。
▽
ある新聞が血液型関連番組でのアンケート調査結果を引用して、男女の相性について記事にしていたが、こうした記事も独り歩きするので、気をつけるべき。
▽
血液型と性格について日本人は、科学的根拠もないのに固定観念を持っており、根は深い。ただ、委員会の議論の中で、その関係がいかに非科学的かという認識はさらに深まったと思う。
▽
真面目に議論しているのは青少年委だけかもしれないが、青少年への影響を考えると、「お笑い番組として、よくできている」と言って済ませていいものか。
以上の審議の結果、委員会として、血液型を扱う番組について何らかの意見をまとめることとし、案文作成を無藤隆・副委員長と川浦康至・委員に依頼しました。
1月21日にBPO報告VOL.18が公表されました。関係部分を引用します。
ここでは、前回までの審議結果を受け、青少年委員会として血液型を扱う番組について何らかの意見をまとめることが決定されました。そして、案文作成は無藤隆副委員長と川浦康至委員(いずれも心理学者)に依頼されました。
-- H17.1.29
■『BPO報告』 VOL.18から抜粋
11月10日に開催した今年度第7回(通算51回)青少年委員会では、10月中に視聴者から寄せられた青少年関連意見について検討したほか、継続審議中の“血液型を扱う番組”に関する委員会としての対応について、起草委員作成の原案を基に協議しました。
委員会の議事、および、放送と青少年関連の視聴者意見の詳細は、BPOのHPに掲載しています。
■ 青少年委員会の審議
◆ 「“血液型を扱う番組”に対する要望」公表へ
委員会では6月以降、“非科学的事柄を扱う番組”について検討していますが、特に“血液型関連番組”に対して多くの視聴者から批判的な意見が寄せられていることから、これまでに意見集約した内容を公表することで一致。11月の委員会では、川浦康至委員が起草した原案を基に議論を深め、さらに若干の加筆・修正をした上で、12月8日の委員会当日に記者会見を開いて公表することを決めました。
◆ 「血液型を扱う番組」に対する要望◆
以下に全文を掲載しておきます(詳細はこちら)。
(54) |
これらを踏まえ、青少年委員会としては、「血液型を扱う番組」の現状は、この放送基準に抵触するおそれがあると判断する。
青少年委員会は、放送各局に対し、自局の番組基準を遵守し、血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する。
同時に、放送各局は、視聴者から寄せられた意見に真摯に対応し、占い番組や霊感・霊能番組などの非科学的内容の取り扱いについて、青少年への配慮を一段と強められるよう要請したい。
1月21日にBPO報告VOL.19が公表されました。関係部分を引用します。
平成16年12月8日の委員会の開催日には、「“血液型を扱う番組”に対する要望」のプレス発表を行いました。新聞・テレビで報道されたのは皆さんご承知の通りです。
-- H17.1.29
■『BPO報告』 VOL.19から抜粋
2004年12月8日に開催した今年度第8回(通算52回)青少年委員会では、11月中に視聴者から寄せられた青少年関連の意見について検討したほか、自民党憲法調査会「憲法改正草案大綱(たたき台)」に書き込まれたメディア規制部分について意見交換しました。
なお、委員会は、午後6時から開催した「“血液型を扱う番組”に対する要望」の発表記者会見後に開かれています。
委員会の議事、および、放送と青少年関連の視聴者意見の詳細は、BPOのHPに掲載しています。
委員会の前に午後6時から「“血液型を扱う番組”に対する要望」のプレス発表が行われました。私はNHK夜9時のニュースで知って大変驚いたのを鮮明に覚えています(しかし、なぜかその日のニュース10では放送していませんでしたし、9時のニュースでも、ごく短い事実のみの報道といった感じでした)。このことを知らせるBPO報告VOL.18が公開されたのは、平成17月1月21日ですから、私のような部外者が発表の日時を知ることはできないのは当然です。
ところで、VOL.18は、VOL.19と同じ1月21日に公開されています。たまたま年末で事務局が忙しかったのでしょうが、不親切と言えば不親切ですね。:-<
その後、新聞各紙で取り上げられたのはご承知のとおりです。ここでは、代表として、『朝日新聞』の平成16年12月9日の記事を取り上げます。
血液型と性格、番組は慎重に 放送倫理機構が要望
放送への苦情に対応している第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の「放送と青少年に関する委員会」は8日、血液型を扱う番組に配慮を求める各放送局向けの要望を発表した。
同委員会によると、視聴者から血液型番組に対して、「性格とは関係がないのに科学的根拠があるかのように装うのはおかしい」といった意見が目立ち始めたのは6月から。4月から11月までに約150件の意見が寄せられた。この間の血液型番組は、コーナーとして取り上げたものも含め民放で49本だった。
要望は、「血液型で人を分類、価値付けするような考え方は社会的差別に通じる危険がある」とし、各局に対し、血液型で性格が決まるといった見方を助長しないよう求めている。
「個人差があります」など注意を喚起するテロップを流す番組もあるが、これにも「弁解の域を出ない」としている。
社会面とはいえ、かなり小さい扱いで、事実のみの報道であったことがわかります。毎日新聞などもチェックしてみましたが、ほぼ同じような扱いであることがわかりました。
では、なぜこんなに小さな扱いなのでしょうか? 皆さんは疑問に思いませんか? そりゃぁ、系列のテレビ局であれだけ派手に血液型番組を宣伝して、視聴率もそれなりに上がったのだから…と思ってしまってはいけません。私もそう思い込んでいたのですが、本当の理由はもう少し別のところにありそうです。
#確かに、青少年委員会には民放各社も委員を出しています。 -- H17.1.29
実は、BPOが記者会見までした「“血液型を扱う番組”に対する要望」はどうやら根拠がないようなのです!
これには私も驚きました。まだ半信半疑なのですが、その理由を皆さんと一緒に考えてみましょう。
まず最初に、「“血液型を扱う番組”に対する要望」は、科学的な面でも正しいとは言えません。その部分を引用すると(太字は私)、
「血液型を扱う番組」が相次ぎ放送されている。それらの番組はいずれも、血液型と本人の性格や病気などとの関係があたかも実証済みであるかのごとく取り上げている。…
しかし、血液型をめぐるこれらの「考え方や見方」を支える根拠は証明されておらず、本人の意思ではどうしようもない血液型で人を分類、価値づけするような考え方は社会的差別に通じる危険がある。
この論理には少々飛躍があります。血液型と性格はともかく、血液型と病気の関係は(一部)実証済みです。例えば、斎藤成也さん(国立遺伝学研究所)の『遺伝子は35億年の夢を見る』では、
A型とB型の対立遺伝子の共存が霊長類のあちこちの種でみられることも不思議である。この遺伝子がなぜこのような変異パターンを示すのか、まだよくわかっていないが バクテリアやウイルスなどの感染を防ぐのに、ある程度の効果があるのではないかと考えられている。実際、胃潰蕩や胃癌の原因のひとつであるヘリコバクター・ピロリというバクテリアは、胃壁にもぐりこむ際に、ABO式血液型物質の前駆体であるH型物質を足場にしている。するとH型物質しか持っていないO型の人間は、 胃潰瘍などになりやすいため、多少は生存に不利となるだろう。しかし、まだまだこれらは仮説にすぎない。わからないことが多すぎるのである。
とあります。他の文献もいろいろとありますし、医学の専門家がいない青少年委員会で、血液型と病気の関係を科学的に否定するのは明らかに行き過ぎです。否定するなら、その根拠を示すべきだろうと思われます。
このほか、最近の糖鎖の研究によると、血液型と病気が関係するメカニズムが徐々に明らかになってきています。従って、これらの記述は明らかに根拠がないということになる…はずです。
興味がある方は、血液型と性格「常識」のウソもどうぞ。
この点は、以前にも書いたし本論ともあまり関係ないので、このぐらいにしておきます。
では、本論に入る前に、BPOとは何か(冒頭にも書いたのですが)、もう一度復習しておきましょう。
■BPO(放送倫理・番組向上機構)
第三者機関として「放送倫理・番組向上機構」が平成15年7月1日に発足しました。その目的は、
新機構の目的は、「放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情、特に人権や青少年と放送の問題に対して、自主的に、独立した第三者の立場から迅速、的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与すること」(規約第3条)です。
出典:『BPO報告』 VOL.1(平成15年7月1日)
となっています。
また、BPOホームページによると、
「放送倫理・番組向上機構」(略称=BPO、放送倫理機構)は、放送による言論・表現の自由を確保しながら、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情、特に人権や青少年と放送の問題に対して、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的にしています。
BPOは、従来から活動してきた「放送番組委員会」と「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」、「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」の3つの委員会を運営する、放送界の自主的な自律機関です。
BPO加盟の放送局は、各委員会から放送倫理上の問題を指摘された場合、具体的な改善策を含めた取組状況を一定期間内に委員会に報告し、BPOはその報告等を公表します。
となっています。
■放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
「“血液型を扱う番組”に対する要望」は、放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)から出されています。ということで、この委員会について調べてみることにしましょう。
BPOホームページによると、
NHKと日本民間放送連盟では、放送事業者による自主的な機関として、2000年4月1日、あらたに「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」を設置しました。
この委員会は、視聴者から寄せられる青少年に対する放送のあり方や放送番組への意見をもとに、各放送局への意見の伝達と審議を行い、その審議結果と放送事業者の対応等を公表します。
さらに、青少年が視聴する番組の向上に向けた意見交換や調査研究を通して、視聴者と放送事業者を結ぶ回路としての役割を担っていきます。
ということです。つまり、基本的には委員会が独自にテーマを設定して審議をするのではなく、あくまで視聴者から寄せられる意見がベースとなり、それに基づいての審議ということになります。また、その結果を公表するだけで、各放送局への強制力はありません。各放送局の自主判断ということになるようです。
これは、BPOの設置の趣旨(規約が公開されていない?ので推測ですが)、BPOがあくまで視聴者からの意見や苦情があった場合に対応するのが本来の業務であり、委員が自由にテーマを設定するのではないことを示していると思われます。要するに、BPOは斡旋・調停機関だという位置付けなのでしょう。確かに、斡旋・調停機関が自由にテーマを設定されては困りますから(笑)。
青少年委員会のページには、次のような図が掲載されています。まさに、上に述べたことが図示されているようです。
ここらへんを、運営規則に沿ってもう一度考えてみることにしましょう。BPOホームページによると、以下がこの委員会の規則です。
(総則) 第1条 「放送倫理・番組向上機構」(以下「機構」という)規約(以下「規約」という)第3条の目的の達成を円滑に行うため、規約第38条第2項の規定に基づき、この規則を制定する。 |
「放送倫理・番組向上機構」規約第3条は、次のようになっています。
放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情、特に人権や青少年と放送の問題に対して、自主的に、独立した第三者の立場から迅速、的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与すること
規約第38条第2項は(公表されていないため?)わかりませんが、常識的には「機構の設置目的を達成するため放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)を置く」といった条文だと思われます。というのは、「第2項の規定に基づき」とあるためで、この条文はBPOの3つの委員会である「放送番組委員会」「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」の設置の根拠の一部だと思われるためです。
#ちなみに、「放送番組委員会」は規約第3条と第26条第3項、「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」は規約第3条と第32条第2項に基づき設置されています。
興味深いのは、「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」だけが、他の委員会と違っていることです。この委員会の運営規則第2条にはこうあります。
「放送と人権等権利に関する委員会」(以下「委員会」という)の運営に関しては、規約に定めるもののほか、この規則の定めるところによる。
「放送番組委員会」と「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」にはこの条文はありません。ということは、BPOの規約はBRCの規約がベースになっていると考えらます。結局、「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」の活動は、BPOの規約にはあまり規定がなく、ほとんど委員会の運営規則によるもの、と考えていいようです。
(委員会の機能)
第2条 「放送と青少年に関する委員会」(以下「委員会」という)の主な機能は、次に挙げるものとする。 |
「主な機能」を限定的に解釈するかどうかで意見が分かれるでしょう。委員(会)がこれ以外のことをやりたい場合はどうするかです。その場合は、第1条の目的に従って解釈することになると思います。常識的には、独自にテーマを設定して審議をするのではなく、あくまで視聴者から寄せられる意見がベースとなり、それに基づいての審議ですから、例示的ではなく限定的な解釈だろうと思うのですが、残念ながら自信はありません。(^^;;
#もっとも、実際的には、(たった)毎月1回の委員会なので、そこまで心配する必要はないということなのでしょうが…。
では、血液型の場合はこの4つのどれにあてはまるのでしょうか?
常識的には(1)です。なぜなら、この「要望」を出した直接の理由は、現在までに約150件の苦情がある(『朝日新聞』 平成17年1月18日夕刊 是か非か、血液型バラエティー テレビ局に「自粛要望」の背景は)からです。ただ、この場合は「放送事業者の自主的検討を要請」となっており、「要望」ができるとは書いてありません。従って、題名を「要望」とするのにはちょっと無理があるようです。
では、(2)なのでしょうか? しかし、(2)は「番組共通の問題」とありますから、問題を血液型だけに限定するのは無理があると思われます。実際、最初は『BPO報告』 VOL.12(平成16年6月15日 6ページ 太字は私)では、「今後の検討テーマについて」として血液型だけに限定せず「非科学的事柄を扱う場合の子どもに及ぼす影響について」が取り上げられています。
■ 青少年委員会の審議
◆ 今後の検討テーマについて
今年度に委員会で検討すべきテーマについて議論し、委員から次のような提案が出されました。
○ 血液型や怪奇・霊能など非科学的事柄を扱う場合の子どもに及ぼす影響について
[中略]
以上の提案・意見を踏まえ、次回の委員会以降で“非科学的事柄を扱う場合の留意点”や“世界各国の子ども向け番組をめぐる状況”を中心に、議論を進めることにしました。
これならあまり問題はありません(少なくとも明らかに問題であるとは思えません)。従って、ここの場合でも血液型だけに限定するのは、やや無理があるものと思われます。
(3)は(4)はどう見ても関係ないので省略します。
結論として、血液型番組に対する要望は、(1)と(2)のどちらに属するのは判断に苦しむところですが、VOL.12と13が血液型に限定しない「非科学的事柄を扱う場合の子どもに及ぼす影響について」で(2)、VOL.14以降では血液型に限定して(1)の立場を取っていると考えるのが最も妥当と思われます。あるいは、運営規則をもう少し「柔軟に解釈」して、(1)(2)にまたがる問題と言えないこともありません。
■『BPO報告』 VOL.12 『BPO報告』 VOL.12(平成16年6月15日 6ページ 太字は私)では、「今後の検討テーマについて」が取り上げられています。
■『BPO報告』 VOL.13 『BPO報告』 VOL.13(平成16年7月15日 4〜5ページ 太字は私)では、放送と青少年に関する委員会で「番組での非科学的事柄の扱いについて」が取り上げられています。
■『BPO報告』 VOL.14 『BPO報告』 VOL.14(平成16年8月15日 8〜9ページ)では、放送と青少年に関する委員会で引き続き「“血液型”に関する番組について」が取り上げられています。 いて 血液型による性格分類などを扱った番組について、視聴者意見が多く寄せられていることから、番組を制作した3局(TBS、テレビ朝日、関西テレビ)に視聴者意見に対する回答を委員長名で要請していることを報告。回答を基に、9月の委員会で審議することにしました。 |
では、次に。
(視聴者からの意見の取り扱い)
第3条 視聴者から委員会に寄せられた意見の取り扱いは、次の基準による。 |
第3条は、議論に特に関係あるとは思えないので、解説は省略します。
(委員会審議の手続き)
第4条 委員会は、事務局が作成した資料に基づき審議を行う。 第5条 委員会は、審議にあたり、当該放送事業者に当該番組の説明を求めることができる。また、審議の参考に資するため、当該放送事業者に当該番組の視聴等関連資料の提出について協力を求めることができる。第6条 委員の3分の2以上の賛成があれば、委員会の「見解」とすることができる。 第7条 委員は、委員会の「見解」に個別意見を付記することができる。この場合、個別意見に委員名を付することを原則とする。 |
血液型については、「要望」という運営規則にない言葉が使われています。そこで、委員会の過去の「見解」「提言」の一覧を見てみましょう。
つまり、「要望」は「血液型を扱う番組」の1件だけです。「要望」は「見解」「提言」とどう違うのでしょうか?
手元の、「スーパーニッポニカ2003」では、次のようになっています。
見解 ある物事についての価値判断や評価。ものの見方や考え。
提言(提議) 論議や議案を提出すること。また、その論議や議案。単に、意見を出すこともいう。提言。
要望 物事の実現をもとめ、強く期待すること。
たぶん、「見解」は第7条のとおり「委員の3分の2以上の賛成」があった場合なのでしょう。委員数は7人ですから、「見解」とするためには5人以上の賛成が必要になることになります。それ以外が「提言」だと思われます(もっとも、「放送番組委員会」では「提言」も委員の3分の2以上の賛成が必要とされているので、辞書どおりの意味の違いなのかもしれません)。しかし、これだけでは「要望」の定義がわかりません。謎は深まるばかりです。(@_@)
(通知・公表)
第8条 委員会は、審議結果を当該放送事業者に速やかに伝えるとともに、視聴者から寄せられた意見の概要、審議結果、当該放送事業者の対応等を月報等にまとめ、構成員、青少年関係機関等に配布する。また、機構が発行する「BPO報告」や、ホームページへの掲載、記者会見等適宜の方法により、公表する。 |
確かにこのとおり行っています。
(改正)
第9条 この規則の改正については、委員の3分の2以上の賛成によって議決し、機構理事会の承認を要する。 附則 この規則は、平成12年6月1日より施行する。 平成12年3月30日 制定 |
これは関係ないのでパスします。
運営規則は以上のとおりですが、結局「要望」を出せる根拠は不明のままです。
■他の「見解」「提言」との比較
そこで、他の見解や提言と比較してみることにしましょう。太字が放送局への意見や評価と思われるところです。
バラエティ系番組に対する見解(平成12年11月29日)
1)放送の公共性について認識
公共性の強いテレビでは、番組全体の文脈から、その表現の必然性が納得されない限り、職場、学校、街中など、多くの人たちが出入りする公共の場所で見せることが社会通念として許されない行為は扱うべきではない。…公衆道徳や社会良識に照らして問題がないか、ほかのさまざまな放送番組を再点検すべきだと考える。
2)番組基準などの徹底
「NHK・民放連放送倫理基本綱領」「民放連放送基準」や各放送局の「番組基準」等は、放送局が自主的に定めた倫理基準である。放送の公共性を考え、番組制作、放送に当たっての考え方を具体的に書き記しているとも言える。しかし、残念なことに今回のバラエティー系番組をめぐる放送局との話し合いの中からは、こうした倫理基準が各放送現場で具体的に活用されている様子はうかがえなかった。制作会社のスタッフを含め放送に携わる全員に、これらの基準を手掛かりに、放送の公共性についての考えが徹底され、自律規制がなされるよう各放送局の一層の努力を望む。
3)放送局の責任体制の確立
各放送局はもう一度、原点に立ち戻って番組の制作・放送に対する自律の責任体制を確立することを要請する。
視聴者の意見: 苦情・批判391件、肯定的41件など
『衝撃的な事件・事故報道の子供への配慮』についての提言(平成14年3月15日)
以上のような考え方に立ち、委員会では衝撃的な事件・事故の報道について次の点を各放送局で検討されるよう要望したい。
提言に対する視聴者の意見: 掲載なし(反響がなかったのでしょうか?)
「消費者金融CMに関する見解」について(平成14年12月20日)
青少年委員会としては、消費者金融CMの現状は、放送基準に抵触するおそれがあると判断する。
そこで、以下の3点を民放各社に要望する。
見解に対する視聴者の意見:代表的な意見の6件が掲載され、その全てが見解に賛成
「子供向け番組」についての提言(平成16年3月19日)
以上のことから、委員会は、各放送局が、次のような点を検討されることを望みたい。
提言に対する視聴者の意見: 掲載なし(反響がなかったのでしょうか?)
「血液型を扱う番組」に対する要望(平成16年12月8日)
青少年委員会は、放送各局に対し、自局の番組基準を遵守し、血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する。
同時に、放送各局は、視聴者から寄せられた意見に真摯に対応し、占い番組や霊感・霊能番組などの非科学的内容の取り扱いについて、青少年への配慮を一段と強められるよう要請したい。
要望に対する視聴者の意見:掲載なし
(『朝日新聞』平成17年1月18日夕刊 是か非か、血液型バラエティー テレビ局に「自粛要望」の背景は には、この要望への反響が掲載されており、約60通のうち賛成が約7割、批判が約3割とのことです)
■今回の「要望」の疑問点
今回の「要望」については、いくつか疑問点があります。
まず、日本民間放送連盟の放送基準審議会では、放送基準の第54条で、次のように定めているとあります。
(54)
占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない。
〔解説〕
現代人の良識から見て非科学的な迷信や、これに類する人相、手相、骨相、印相、家相、墓相、風水、運命・運勢鑑定、霊感、霊能等を取り上げる場合は、これを肯定的に取り扱わない。
では、血液型は「占い、運勢判断およびこれに類するもの」なのでしょうか? これは、常識的に考えると少々無理があると言えるでしょう。もちろん、「占い」もどきのものはたくさんあるのでしょうが、「血液型と性格の関連性」は、純粋に科学的な理論(実証済みかどうかは別として…)です。これは私独自の意見ではなく、心理学者もほぼ同意見です。
例えば、心理学者である渡辺芳之さんは、『現代のエスプリ〜血液型と性格』で次のように書いています(188ページ 『性格心理学は血液型性格関連説を否定できるか〜性格心理学から見た血液型と性格の関係への疑義』 太字は私)。
これまで何人かの心理学者が、 血液型と性格との関連を実証的方法で反証し、血液型性格関連説を否定しようとしてきた。ここで注目されるのは、彼らが血液型性格関連説を「科学的方法によって反証可能な理論」、すなわち科学的理論とみなしていることである。この点でそれを「非科学的な迷信」とみなして無視した従来の心理学者とは異なる。
しかし、論文を一読すればわかるように、彼らの多くは「血液型性格関連説は間違っている」というアプリオリな立場を持っており、それを実証するために研究を行なっていることもまた確かである。
また、岡山大学の長谷川さんも、平成16年7月13日のじぶん更新日記で、このように述べています。
【思ったこと】
_40713(火)[心理]「活きる」ための心理学(7)「血液型性格判断」の論点
筆者は、約一〇年前よりこの問題をとりあげてきたが(7)(8)、その主旨は、第一に、血液型人間「学」と呼ばれる俗説のデタラメな「分析」方法を批判すること、第二に、「血液型と性格」には少なくとも日常生活場面で問題になるほどの相関はないことを反例の形で示すことにあった。純粋に科学的なレベルで「血液型と性格がまったく関係ない」かどうかは私にはわからないし、この問題についての科学的研究を妨げるつもりもない。
結論としては、血液型番組の全部が第54条に該当するかどうかは、心理学者でも意見が分かれている、というの本当のところのようです。従って、「血液型を扱う番組」の現状が、この放送基準に抵触するおそれがあると判断するのは、あまり妥当とは言えないでしょう。ましてや、第三者機関であるなぜこのような結論を出したでしょう。不思議なのは私だけではないと思いますが…。
次に、「要望」という名前についてです。前述のように、委員会の運営規則にあるのは「見解」のみ(前述のように、「放送番組委員会」の運営規則を準用すれば「提言」もあることになります)で、「要望」はありません。「『衝撃的な事件・事故報道の子供への配慮』についての提言」では、実質的には要望となっています。なぜ、「見解」や「提言」にしなかったのでしょうか? 「血液型を扱う番組」に対する提言、ではいけないのでしょうか?
■『朝日新聞』 平成17年1月18日夕刊
実はこの謎を解く鍵(?)は『朝日新聞』にありました。平成17年1月18日夕刊の芸能面(朝刊の社会面ではありません!)に、「是か非か、血液型バラエティー テレビ局に「自粛要望」の背景は」との記事が掲載されています。
概要は次の通りです。
BPOは、血液型バラエティー番組に苦情が多い(約150件)のを受け、テレビ局に事実上の「自粛要望」を出した。血液型番組の波紋は大きく、問題点の議論も含めて大ブームとなっている。プレス発表時には、委員から「冗談で見ているものに」「ヤボを承知で」との戸惑うコメントも出た。また、ある委員から「テレビを批判する力が視聴者にないと思わざるをえなかった」と発言もあった。
この要望に対する反響の約60通のうち、賛成が約7割、批判が約3割。BPOの要望は強制力はなく、どう受け止めるかはテレビ局次第。TBSとテレ朝は「BPOの要望は尊重している」とコメント。各局とも今後の放映は未定。BPO事務局も「現状では血液型番組は出尽くした感」とのこと。
■謎は解けたのか?
この記事で、今までの謎の一部が解けたと言っていいでょう。
読んだ第一印象は、かなりの委員にやる気がないということです(失礼!)。つまり血液型番組の「自粛要望」なんて意味がない、と思っている委員が多いのです。「見解」や「提言」を出すには、第6条により委員の3分の2以上の賛成が必要ですが、ひょっとしてそれだけの賛成が得られなかったから「要望」にしたというのは、考えすぎでしょうか?
#まあ、それなら各新聞社の扱いがほとんどベタ記事同然だったのも納得です。
次に、この要望に対する反響も、約60件(うち賛成が約7割だから約40件)とそれほど大きくなかったようです。今までの苦情の合計は約150件ですから…。
では、BPOの血液型番組に対する「自粛要望」は、どの程度の効果があったのか。まぁ、大した影響はなかった、というのが大方の一致する意見でしょう。前出の朝日新聞から引用すると、
要するに、大した問題ではないということです(笑)。元々が大した問題でないのだから、「要望」に対してのテレビ局側の反応が鈍い(?)のも当然でしょう。前出の朝日新聞では、
では、今後の放送予定はどうなでしょうか?
私もそう思います(笑)。去年は血液型バブルと言ってもいい年でした。過去何年か血液型番組がなかった反動なのでしょうが、4月から12月だけで50本以上の番組が放送されています。これは誰が考えても異常です。これから放送回数が少なくなるのは当然と言っていいでしょう。
#現在は、テレビの数か月遅れで血液型本バブルが起きているようです…。
BPO事務局の方、ご苦労様でした。確かに、こんな仕事につき合わされたら文句の一つも言いたくなるというものです(私だったら絶対文句を言うでしょう・苦笑)。心理学では、意味のない行動を強制された人は、何とかその行動の意味付けをしようとするという研究結果が発表されています。そこで、BPO事務局からこんな発言が出てくるのかもしれません。
いやぁ、ご苦労様でした。
ところで、東京医科歯科大の板橋作美教授の発言についてです。実は、板橋作美さん自身は、別に「血液型と性格」を否定しているわけではありません。原典ではこうあります(『占いの謎』 219〜220ページ)。
第2章で血液型と気質(性格)の相関関係についての能見の説を紹介したが…かりに確かに相関関係があるとしても、その相関関係は、集合や類のレベルで言えることで、個についてではない。
従って、朝日新聞の記事の次の文章は、読者に誤解を与えやすい内容と言っていいでしょう。
「大人が血液型に熱中しすぎ」というのは、「占いの謎」を著した東京医科歯科大の板橋作美教授(文化人類学)。板橋教授によると、血液型ブームは30年代と70年代にも起きており、そのたびに「非科学的」という批判を浴びて、下火になっていった。
この情報は、松田薫さんの著書『「血液型と性格」の社会史』からのものです。私はこの本も読みましたが、「非科学的」という批判には必ずしも根拠がないことも併記されています。板橋さんの文章自体にも読者に誤解を与えそうな気がして、ちょっとどうかなぁ、とも思います。
また、はっきりしたのは、AERAだけでなく、朝日新聞本紙でも心理学者は直接の発言をするつもりがない(?)ということです。これは、心理学者が否定の根拠は公表したくない(怪しいから?)という事実を示しているのかもしれません。本当はどうなのでしょうか?
■残された謎
ただ、やはり謎が残りました。
まず、日本民間放送連盟の放送基準の第54条です。「血液型を扱う番組」の現状が、この放送基準に抵触するおそれがあると判断するのは、全く根拠がないとは言えないにしても、あまり妥当とは言えないでしょう。ましてや、第三者機関であるBPOがなぜこのような結論を出してしまったのでしょうか?不思議です。
もう一つは、「見解」や「提言」を出すためには、運営規則第6条により委員の3分の2以上の賛成が必要ですが、それだけの賛成が得られなかったから「要望」にしたのかもしれない、という謎です。
この2つは、議事録を公開すれば済むことなので、そのうちホームページに掲載されるのかなぁ、と期待しています。
皆さんはどう思いますか? -- H17.1.29
【H17.1.31追記】
全部書き終えた後で気が付いたのですが、バラエティ番組への要請は4年前の平成12年11月29日にも行っています。しかし、このときはBPOへの苦情や批判が殺到し、さんざんな評判でした(視聴者の意見:
苦情・批判391件、肯定的41件など)。「冗談で見ているものにあえて問題を投げかけなくても、とも思った」「ヤボを承知で待ったをかけた方がいいと思った」と委員が発言したのは、そういうトラウマがあったからなのかもしれません。それなら、委員や事務局のやる気がなくなるのも当然です。 しかし、それでもなぜわざわざ「要望」をプレス発表したのかは謎です。心理学者の委員の強い要望でもあったのでしょうか? はて? 以下に、その内容を再掲しておきます。 バラエティ系番組に対する見解(平成12年11月29日) 1)放送の公共性について認識 視聴者の意見: 苦情・批判391件、肯定的41件など |
【H17.6.4 追記】 平成17年4月の青少年委員会 5月23日付けで、4月26日の議事が公開されました。 それによると、新年度になって一部の委員が交代しました(血液型に反対していた多くの委員が退任したのは気のせいでしょうか?)。また、テレビ東京の番組に対しての回答が掲載されました。 【BPOのホームページから抜粋】 ▽
『月曜エンタぁテイメント〜心と体の血液型大診断』(2月14日放送)に関するテレビ東京からの回答
委員会で検討したところ、委員からは、昨年の『要望』にもかかわらず、同じようなテーマの番組が放送されたことについて、「青少年委員会の存在意義にも関わる問題だ」など、厳しい意見が多く出されました。また、“科学的根拠があるように装わない”よう留意したとの局の回答について、「非常に中途半端な姿勢で番組が作られていると感じた。こうしたテーマを取り上げることにどれだけの意義があるか、作り手は意識すべき」「科学的根拠を装わないと言いつつ、スタジオでのアンケート結果を出すのは、ずるいと感じた。素人が見れば根拠があるように思う場合もある」などの指摘があったほか、「“社会現象の一側面を切り取って番組にするのがテレビメディアの役割”と回答にあるが、そうした流行を作り出しているのはメディアであり、責任転嫁ではないか」との意見も出されました。 ここで興味を引くのは、テレビ東京の「(血液型が性格を)決定しないという証拠もない、あるいは決定するとの証拠もないので、(血液型に対して)言ってはいけないというのもおかしな話ではないか」という反論です。 これについての回答は、かなり微妙なものです。
例えば、最初の「ずるいと感じた」という反応があります。つまり、スタジオでアンケートをすること自体にはBPOは干渉できませんから、結果として実質的に“血液型肯定”の番組になってしまっても文句は言えません。それがこの反応になったものと思われます。だから「この問題について、委員会としてどこまで踏みこみ、機能していけるのか難しい」ということです。 #私の全くの推測ですが、テレビ局から何らかの“働きかけ”があったのかもしれません。 そもそもBPOは、あくまで視聴者からの苦情に対応するのが原則ですから、科学的な根拠に踏み込んでは本当はおかしいのです。“科学的根拠”は、本来は現場なりテレビ局が判断すればいいので、BPOがあれこれいうのは本来はルール違反でしょう。BPOには、ある事項が科学的かどうかを判断する権限はありませんから…。それこそ、『1984年』の真理省になってしまいます(ちょっと古いか…)。そんな権限はBPOにはありません(あっても困りますが・笑)。 例えば、私が某血液型否定番組(昔はありましたね…)に文句を言うために、何十人もの仲間をつのって“科学的根拠”がないのはおかしい、とメールを出したらBPOはどうするのでしょうか? #もちろん、そんなことはしませんが(笑)。 取り上げてくれるのでしょうか? 誰が考えても、それはおかしいのです! 「要望の趣旨は議論を喚起すること」とあるように、一方的な見方を押しつけるのはよくありません。あくまで「差別」について議論を喚起するのがBPOの仕事でしょう。しつこいようですが、科学的な判断はBPOでするべきではありません。 余談ですが、血液型問題のBPOの役割については「青少年委員会の存在意義にも関わる問題だ」とあるとおり、あまり効果がなかったというのが実情のようです。f(^^;; 閑話休題。 去年は血液型バブルの反動か、韓国映画の『B型の彼氏』以外はこれといった話題がありません。ちょっと淋しいですね。 |