血液型裁判が1審、2審とも判決が出ましたので、情報をまとめてみました。
原告岡野さんの敗訴ですが、判決文には、“実質勝訴”と解釈できる文章があります。
詳しく知りたい方は、岡野さんのサイトをどうぞ!
■最新情報 (H28.7.18)
岡野誠さんの最新刊『血液人間学は科学的に実証されている!〜血液型は細胞型の問題と理解しろ!』が7月に発売されました。 p169から紹介します。
この記述が事実だとすると、9件のクレームでBPOは血液型を「差別」と認定できることになります。少々信じがたい話ですが…。 |
■控訴審判決文の全文を入手しました! 先日、岡野さんから控訴審判決の判決文全文のコピーをいただきました。 一言で言うと、「実質勝訴」です。 これで、TV番組については、ほぼフリーハンドになったということになります。 ちなみに、全文はこちらです。 また、岡野さんは、次には某全国紙を相手に提訴するような話もしていました。 |
産経新聞 平成23年8月9日号 血液型で“法廷闘争” 「番組は社会的差別」BPO指摘に研究家反論、提訴
Yahoo!ニュースで始めて見ました。[現在は削除]
血液型で“法廷闘争” 「番組は社会的差別」BPO指摘に研究家反論、提訴
産経新聞 8月9日(火)7時56分配信
血液型をテーマにしたテレビ番組をめぐり、放送倫理・番組向上機構(BPO)の青少年委員会が各放送局に行った「配慮」を求める要望で名誉を傷つけられたとして、血液型人間学研究家の岡野誠氏(52)が8日、同委員会を相手取り、要望の取り下げと慰謝料20万円などを求める訴えを東京地裁に起こした。
産経MSNが最初だったようです。
「血液型番組は差別」に反発、血液型人間学研究家がBPOを提訴この中で、最も興味深いのが次のコメントです。
『血液型人間学は占いまがいのものではなく、学術的なものだ』学術的に何度も否定されてますね。統計として相関関係は見られないと。 2011/08/09しかし、「統計として相関関係は見られない」というのはウソです。
やはり、現在でも、自分で科学的だと思い込んでいる人には、朱子学的伝統が生きているのですねぇ。
妙に感心してしまいました。
人によっては、進化論裁判を思い出すかもしれません…。
時間がある方は、次のエントリーをどうぞ!
「血液型人間学批判」の朱子学的理解
[http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2011-02-24]
山岡重行さん 血液型性格判断の差別性と虚構性(続々)
[http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2010-09-21-1]
-- H24.1.7
岡野誠さん(原告)からのメール
その後、原告の岡野誠さんからメールをいただいたので、ほぼ原文のまま公開します。
【1通目】
前略 ABOFANさんへ
謹賀新年! 本年もよろしくお願いいたします。
さて、ご無沙汰しておりましたが、訴訟の件で、ABOFANさんに経過を報告したかったのですが、何せ、一言で不可解な訴訟です。ただ今も、訴訟に関する資料をまとめるのに紛糾しております。能見正比古氏の文献を再度、念入りに分析すると、新たな発見をしたりと、なかなか充実しています。ABOFANさんホームページ資料も念入りに分析するまでの時間的余裕はないものの、何かと助かっています。特に統計的分析とBPOに対する指摘は参考になります。
公判は、今月[1月]16日に三回目をむかえます。一審の判決がもしかして、4月までに言い渡されるかもしれませんが、僕としては、控訴までは視野に入れています。被告は、担当弁護士を二名付けていますが、こちらは僕一人ですので、訴訟が長引く分には、問題ないのです。
ちなみに、ABOFANさんが気にしていた議事録なるものは、特に始めから用意されずに、簡単なメモ書き程度のものでまとめて、本件要望を作成したとのことです。
とりあえず、本日の報告は、これにて・・・。敬具 岡野誠
−−−−−
【私の返事】
岡野様
新年おめでとうございます。
どうもお疲れ様です。
へ〜、むこうは弁護士2人ですか。
随分と警戒していますね。
どのような内容なのか興味津々です。
私的には、裁判の勝ち負けはともかく、BPOの主張が科学的に間違っている、それと「要望」がBPOの管轄範囲を超えているため無効である、という主張が公開されれぱ「成功」かなと思っています。
東日本大震対応も一段落なので、そのうちお会いできればと思っています。
頑張ってください。
追伸 お送りいただいたメールも、編集して一部も公開できればと思っていますが、いかがでしょう?
−−−−−
【2通目】
>追伸 お送りいただいたメールも、編集して一部も公開できればと思っていますが、いかがでしょう?
昨夜のあの程度の内容であれば、どうぞ公開して下さい。内容的にやや抽象的な文体表現にしているのは、戦略上の問題とご理解下さい。[中略]
また、だいぶ他の掲示板で僕を誹謗中傷する者もいるだけに、一人では何もできない無記名者等を牽制する意味から、「本件を理解したければ、まず原告の心情を知る必要性から、下記サイトの僕の複数出版本を是非読んで下さい。購読しないなら、各図書館でリクエスト手続きをして、借りて読んで下さい。」 旨をABOFANサイトで追記強調していただければ幸です。
http://www.geocities.jp/...
http://www.amazon.co.jp/...
むろん、下記本件事件は、原告の私が弁護士を付けづに単独で主張している点は、特に強調願います。(何せ、弁護士を付けないと訴訟を提起できないと誤解している人も少なからずいるのです)
http://sankei.jp.msn.com/...
ヤフーサイトは、なぜかいち早く削除されていますね。元々、この記事は、産経新聞の記者さんが採用されたもので、昨年8月9日の朝刊で、同内容が掲載されました。
その後、訴状審査が実施され、裁判所からの指摘があり、BPO青少年委員会を被告にするのは、当事者能力としての疑問が上がりました。つまり、当委員会は、2004年当時、BPO本体から諮問された立場であり、最終的な責任統治機構は、当委員会を維持運営するBPO本体であると原告の私が判断しました。然るに、被告は、BPOとなり、被告の代表者は現・理事長ということになります。この件は、詳細要素の一部ではありますが、掲載編集時にご利用下さい。つまり、被告を誰にするかも、時としてやっかいな問題となるのも訴訟です。ましてや、古今東西に渡り、皆無な事件だけに、一つ1つ手さぐりの状況で日々奮闘しております。
>どのような内容なのか興味津々です。
一審の判決が出れば、ある程度、報告できるかと思います。ある程度と言うのは、僕の第二弾出版本を読んだ方なら理解していただけると思いますが、マイク付きプレゼンに執着する僕としては、詳細内容の報告は、何かどこかで、プレゼン機会に恵まれた際に報告したいと考えております。
>BPOの主張が科学的に間違っている、それと「要望」がBPOの管轄範囲を超えているため無効である
この視点は、とても参考になります。むろん、私の読み方も甘いのですが・・・。また何か、ABOFANさんから見て、ポイントになりそうな視点がありましたなら、お知らせいただければ幸です。[後略]
-- H24.1.7
おまけ
参考になるどうかわかりませんが、ABOFAN的視点で関係ありそうな事例を挙げておきます。
私の印象では、(当然のことながら?)血液型やマイナスイオン水?を「裁判所に科学的に正しいと認めさせる」というスタンスでは、「科学的に正しい」という通説でもない限り、勝訴は難しいようです。
従って、原告の吉岡さんは一審で敗訴になっています。また、そのせいかどうかわかりませんが、吉岡さんは控訴はしていないようです。
ところで、裁判中は、原告の吉岡さん、被告の天羽さんのサイトの大量なコンテンツがあったのですが、最近では大幅に縮小されてしまいました。
これまた単なる私の印象ですが、被告の天羽さんのサイトは、以前の比べると大幅にトーンダウンしているようです。
http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/...
http://ja.wikipedia.org/wiki/...
そういう意味では、原告敗訴でも効果があった裁判(?)といえるのかもしれません。
もっとも、私はマイナスイオン水?には正直半信半疑です。(笑)
ただし、天羽さんの批判は非常に非科学的(権威主義的=朱子学的)と感じました。
そういう現象(マイナスイオン水?)があっても、科学的には全然おかしくないわけで、権威主義的な批判(?)はいかがかなと思います。
日経エレクトロニクス イオン健康家電の正体 2009年11月2日号
http://abofan.blog.so-net.ne.jp/2009-11-18
こっちは、マイナスイオン水?とは逆のケースです。
「マイナスイオン」ドライヤーが、一時は“ニセ科学”として批判されましたが、パナソニックやシャープの広告にあるように、最近はかなり復活してきています。
ただし、こちらは裁判とは関係ありません。
これまた私の印象ですが、『日経エレクトロニクス』の権威(?)が、“ニセ科学批判者”の権威(?)に打ち勝ったと感じます。
私の感覚では、普通の大学教授(しかも専門外)よりも『日経エレクトロニクス』の方が、「健康イオン家電」についてなら権威(?)がありそうですから…。
ひょっとすると、“ニセ科学批判者”は、権威に弱いのかもしれません(笑)。
本当だとすると、ちょっと困ったことだと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/...
この裁判は――イデオロギーの好みもあるかと思いますが――新聞社(記者)相手の裁判です。
ただし、最高裁まで行っても、原告(=「百人斬り」は新聞記者の創作と主張)敗訴となっています。
現在でも「百人斬り」があったかどうか事実は不明ですが、少なくとも、この裁判以降は「百人斬り」の記事は(少なくとも全国紙では…)私が知る限り、皆無です。
#それまでは、毎年夏頃に恒例行事のように記事が出ていたのですが…。
ということは、「百人斬り」の記事は、取材した新聞記者の創作だった、と実質的に認めてしまった(?)ということかもしれません。
そういう意味では、これまた敗訴しても効果があった裁判(?)といえるのかもしれません。
ただし、私は、本当に「百人斬り」があったかどうかはわかりません…。
以上の教訓として、目的が血液型人間学への「不当な批判を封じる」ということなら、どうやら個人を相手に訴えた方が得策(?)のということのようです。
具体的には、このサイトにも何回も書きましたが、「血液型人間学は非科学的」という根拠を出すことはかなり困難ですから、BPOが「非科学的」だと断定した説明を、判断した個人名を出させて(あるいは根拠とした資料を明示させて)説明させる、という戦略が一番(イヤガラセとして?)効果的と思われます。
というのは、(心理)学者は裁判所に証人として呼ばれるのは絶対に避けたいこと(間違いなく学者としての評判が下がりますから)だからです。
つまり、岡野さんの裁判以降は、実名で「血液型人間学は非科学的」なんていう人は(ほぼ間違いなく?)ほぼいなくなる(?)ものと思われます。
「血液型人間学は非科学的」という根拠がなくなれば、日本民間放送連盟の放送基準の第54条には該当しません。従って、「要望」の根拠の一角が崩れることになります。要するに、BPOの「要望」は一部は根拠がなくなるということです。
逆に、「血液型人間学は科学的」と裁判所に認めさせるという戦略は、(勝負を考えると?あまり)得策ではないでしょう…。
まぁ、以上は、単なる私の印象ですので、なにが正しいのかは皆さん自身が考えてくださいね(笑)。
ちなみに、「血液型人間学は非科学的」を否定する論文は、いくつかあります。代表的なのは、例えば坂元章さんの論文です(ただし英語)。
■Scientific American 2011年2月15日 2011年2月15日付けの Scientific American の記事を読んでいたら、以前お世話になったお茶大の坂元章さんの論文が紹介されていました。
驚いたのは、自己成就現象と断り書きがあるのを割り引くとしても、統計的に差があると明確に結論付けていることです。
英語だから、日本では話題にならなかったのでしょうかね? いずれにせよ、統計的に差があるかどうかの論争は、既に決着済み(だった)と言っていいでしょう。 |
■韓国・聯合ニュース 平成19年9月21日付け
「O型は外向的でA型論理的」、血液型研究を総合
ぜひ、この論文を読んでみたいものです。でも、韓国語なんだろうなぁ。(*_*) 英語だったらいいのですが…。 -- H19.9.23 その後、こんなニュースも見つけました http://jp.epochtimes.com/jp/...
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もっとも、裁判所がどう判断するのかは、別の問題ですけどね。 -- H24.1.7
その後、判決が確定したので、とりあえずの分析をしてみました。
なお、以下の文章は岡野さんのサイトから抜粋したものですが、読みやすくなるように一部を改変しています。
一審の経過
原告の岡野さんの敗訴になりました…。
■訴状 (岡野さんのサイトより抜粋) BPO血液型慰謝料請求事件 東京地方裁判所 御中 原告 岡野誠 印 2011年8月8日 埼玉県和光市●●● 東京都千代田区紀尾井町1-1 請求の趣旨
との判決及び仮執行の宣言を求める。 請求の原因は、別紙のとおりとする。[省略] |
■経緯
○請求の要旨
●被告の答弁書陳述の要旨
●被告答弁書の陳述の中で確認された矛盾
■判決
請求の趣旨2と3は却下、その他の請求は棄却 →原告敗訴
本件要望は、単に原告の考え方とは異なる内容が含まれているだけで、特段、原告の名誉を棄損したり、原告の表現の自由を阻害するものではない
なお、BPOは、当初から弁護人2人が対応し、岡野さんが意図していたBPO関係者(現BPO理事長と現BPO青少年委員会委員長)の証人喚問はできませんでした(裁判長が却下)。
控訴審の経過
こちらも、原告である岡野さんの敗訴になりました…。
■判決
慰謝料20万円請求と本件要望取り下げは棄却 →原告敗訴
■考察
ところで、岡野さんのサイトによると、控訴審ではBPOの態度に変化が現れたようです。
「本件要望は、たとえば血液型占いなど明らかに科学的でない事柄をあたかも科学的であるかのように扱うことに対する見直し、改善を求めているのであって、科学的根拠が実証された事柄を放送することについて問題視したり、排除したりしているものでもない。」
それは、血液型人間学(=能見説)は、BPOの「要望」には含まれないということです!
ちなみに、判決文には、もう少し明確に書いてあります。
「本件要望が、(中略) 血液型と人間の性格、行動パターン、病気等との関係を学術的に研究する学問自体の存在自体を否定したり、これについても占いの類と同列であるとして否定的な評価をしたりするものではないし、学術的に裏付けられた内容で、しかも、青少年にも配慮して番組を制作することを否定する趣旨を含むものとは解されない。したがって、本件要望が、統計学を駆使し、学術的に血液型人間学を研究しているという控訴人を侮辱したり、控訴人の名誉を毀損するものと解することはできないし、控訴人の表現の自由や幸福追求権を侵害するということもできない。」
やはり、血液型人間学(=能見説)は、BPOの「要望」には含まれないということになります!
つまり、「占い」はダメですが、統計に裏付けられた「血液型人間学」なら、どんどんテレビで放送していいと、裁判所がお墨付きを出したということです。
岡野さん、やりましたね!v(^^)
たぶん、BPOは、今後は血液型に対する「要望」を出すことはないでしょう。
というのは、 誰だって面倒な裁判に巻き込まれるのはまっぴらゴメンだからです。
そういう意味では、「実質勝利」と言ってもいいのかもしれません。 -- H24.7.30
新しいネタが入れば更新があるかもしれません。面白かった人は、次回をお楽しみに!