裁判所提出書類 二頁

更新日19.4.2


ここからはやや現実的に、私独自の視点から研究したものです。


その4 裁判所に提出する書類 の定義


総務省管轄の行政書士と、法務省管轄の弁護士・司法書士と業際問題(この場合裁判所に提出する書類)で徹底的に争った場合、勝てる見込みはそれほどないように思います。(考えたくはありませんが)
裁判になることはないにしても、政治力・結束力が違う感触があります。

現段階で行政書士の業務として認められている業務について考えてみます。

まず「裁判所に提出する書類」の定義について追求します。

帰化許可申請は司法書士と行政書士の共管業務とされています。
業務の性質上行政書士の独占業務だとは思いますが、提出する場所が法務局なので共管業務とされています。

帰化許可申請は法務大臣宛の許可申請です。法務大臣に提出する書類を、法務局を経由して提出します。

法務大臣提出する書類を、法務局提出します。

提出する相手が法務大臣 提出する場所が法務局です。

やはり行政書士の独占業務だと思いますが、それは置いておきましょう。
提出する相手が法務大臣なので行政書士業務になっていることを考えますと、このような理論が成り立ちます。

法務局・裁判所以外の相手に提出する書類 を 法務局・裁判所で提出する書類 は行政書士の業務である。

この理論にたつと、行政書士が業として作成できる書類は以下のものも含まれることになります。

簡易裁判所書記官宛 (可能だと私は判断しています。官公署に含まれ、裁判所宛ではない)
 支払督促申立書
 支払督促申立書訂正申立書
 仮執行宣言申立書
 支払督促申立て取下書

法務大臣宛 (これは認められています)
 国籍取得届
 帰化許可申請
 国籍離脱届
 国籍再取得届
 国籍選択届 市区町村長宛も含む

裁判所で提出する書類のうち、これらのもの(他にもあるかもしれませんが)は現在も取扱いが可能なはずです。

言葉尻を捕らえたような意見ですが、正論ではないでしょうか。


その5 行政書士の取り扱う法律事務の考察


行政書士法上の「他の法律」に弁護士法が含まれているので、弁護士法72条の制限を受けます。

弁護士法(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

これがかの有名な、弁護士法72条です。
この法律事務については2つの説があります。

弁護士でない者は、報酬を得る目的で、
 「法律事件に関して〜〜法律事務を取り扱い〜」が出来ないとされる「事件性を必要とする解釈」と、  
 「〜和解」までと「その他の法律事務」を分け、全ての法律事務を含む「事件性を不要とする解釈」があります。
 (ここでは斡旋については触れないことにします。)

私自身は「事件性を不要とする解釈」は無理があるように思います。
(日弁連は事件性不要説をとっている)
店でお菓子を買うにも、道を歩くのにも、生活の全てに法律が絡んでいるからです。

最初に関連する会議録を紹介します。

法曹制度検討会(第24回)議事概要(司法制度改革推進本部事務局)
1 日時 平成15年12月8日(月) 10:30〜12:00
委員:「法律事件」の解釈として、法務省の見解のとおり「事件性必要説」に立てば、「事件性」のないものについては、報酬を得る目的であっても弁護士第72条違反とはならず、「事件性」のあるものについても、無報酬であれば同じく違反とならないという理解でよいか。
法務省:そのとおりである。

平成17年06月08日 衆議院 厚生労働委員会 - 26号
○倉吉政府参考人 七十二条の要件を説明しろという御趣旨だと思います。
 まず、七十二条には、報酬を得る目的と、それから業としてという要件を掲げております。したがいまして、無償で行う場合はまず七十二条違反にはならない。それから、反復継続して行う事実とか、反復継続して行うという意思がない場合には業としてということになりませんので、これも当たらないということになります。
 また、弁護士法七十二条が規制しておりますのは、法律事務の取り扱いすべてではありません。若干条文を援用いたしますが、「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して」となっておりまして、これについて法律事務を取り扱うこととされております。
この「一般の法律事件」につきましては、いわゆる事件性があるということが必要と解されまして、事件性のない法律事務を取り扱うことは同条に違反しないと解釈しております。
なお、この事件性とは、文献によりますと例えばこのように書かれておりまして、今読み上げました列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがあり、あるいは疑義を有するものであること、言いかえれば、事件というにふさわしい程度に争いが成熟したものであるということとされております。

調べた中で比較的新しい政府の72条解釈です。ここでも事件性必要説が採られています。おそらく判例をそのまま採用していると思います。

弁護士法72条の「法律事務」は「法律事件にかかる法律事務」であり「事件性必要説」が最近の見解で間違いないでしょう。
また「事件性」とは「訴訟事件などに準ずる程度に争いがある、事件といえるくらい争いが成熟したもの」です。

行政書士法の「権利義務・事実証明に関する書類」も、この72条に抵触しない「事件性の無い法律事務」で取扱い、よって広く依頼者の力になれるのです。
よくイギリスの事務弁護士に該当するといわれるのはこのためです。

弁護士法72条についての私の意見は、当初は関連する全ての判例を紹介しながら述べようと思いましたが、原文が手元に無いものが幾つかあるため割愛します。
代わりに、これまでの判例より新しい、公的な会議録の発言を取り上げることで、72条の客観的解釈としました。


その6 裁判書類と権利義務・事実証明の書類


「事件性の無い法律事務」を裁判書類に当てはめて考えてみます。

簡易裁判所に提出する書類
 自己破産申立  〜既に債務について争う状態ではない。
 即決和解申立  〜当事者同士が和解をしており、すでに争いも疑義も無い状態である。

家庭裁判所へ提出する書類
 審判手続の内、甲類事件の申立  〜当事者が対立して争うものではない。
  01.後見開始の審判の申立書
  02.保佐開始の審判の申立書
  03.補助開始の審判の申立書
  04.任意後見監督人選任の申立書
  05.不在者財産管理人選任の申立書
  06.失踪宣告の申立書
  07.子の氏の変更の申立書
  08.養子縁組の申立書
  09.特別養子縁組の申立書
  10.死後離縁の申立書
  11.特別代理人選任の申立書
  12.未成年後見人選任の申立書
  13.相続放棄の申述書
  14.相続の限定承認の申述書
  15.相続財産管理人選任の申立書
  16.特別縁故者に対する相続財産分与
  17.遺言書の検認の申立書
  18.遺言執行者選任の申立書
  19.氏の変更の申立書
  20.名の変更の申立書
  21.戸籍訂正の申立書
  22.保護者選任の申立
  23.性別の取扱いの変更申立書

裁判所に提出する書類で行政書士が出来得るものとして例示してみました。

残念ながら、これらの書類の作成を業としてすると日司連からの反発があります。
数年前に九州で実例があり、理由が不明のまま自己破産手続等の取扱いが闇に葬られました。

日行連と日政連がこの時どのような対応をしたのか知りたいところです。

私個人としては当然可能だと思っていましたが、残念です。

当然依頼誘致は致しません。
仮に依頼があっても無料で相談を受け、インターネット上でダウンロードした雛形の書類を差し上げたり、弁護士・司法書士を紹介します。

職域問題はずっと解決しないと思います。
イギリス形式にして法廷弁護士と事務弁護士の2つになるよう隣接資格同士を合併していくことが、これからの資格業のあり方ではないかと考えています。



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