特認制度の全廃を2 

更新日21.10.1

司法書士法の後に行政書士法が制定されました。
戦後の混乱の中で、成立が遅れたものと推測されます。
これが現在まで引き続く原因でした。
草案のまま通っていれば何も問題は無かったのです。

まずは行政書士法草案昭和22年の条文をご覧下さい。
(全文についてはトップページ→行政書士→行政書士法草案(S22)・行政書士法(S26設立時)をご参考下さい)


行政書士法草案
 第二條 行政書士は、左の條件を具へなければならぬ。
  一、日本國民で、民法上の能力者であること。
  二、高等學校卒業以上の學力を持ち、行政書士試験に合格していること。
   行政書士試驗に關する事は勅令で定める。

行政書士法 (資格)
 第二条 第四条の規定による行政書士試験に合格した者は、当該都道府県において行政書士となる資格を有する。
 2 左の各号の一に該当する者は、いずれの都道府県においても、行政書士となる資格を有する。
  一 弁護士となる資格を有する者
  二 弁理士となる資格を有する者
  三 公認会計士となる資格を有する者
  四 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間がこれを通算して八年以上(次条第一号に該当する者にあつては五年以上)になる者
  


ご覧の通り、行政書士は行政書士試験に合格することを要件としていました。
しかしその4年後、成立した行政書士法は今の試験合格組の我々からすると到底納得できないものとなっていました。

なぜこのようなことになってしまったのか、当時の会議録を見て分かりました。

今回の会議録はかなりの長文であるため、要点を整理して内容を紹介します。
また、遠まわしな答弁のため、読みやすく口語による表現としました。


昭和25年12月3日 地方行政委員会 6号 より要点抜粋 口語化
高橋進太郎 三浦義男(衆議院法制局参事)の答弁

高橋 「(司法書士が認定のみであったことを踏まえて)行政書士法でも、府県の吏員を十年以上やったとか、試験を受けなくても当然社会常識からこの事務を一応こなせる者は認定で資格を与えてもいいのではないか」

参事 「そのような学力を持っている人を前提とし、その中から試験によって選び出す。このような制度になっている」

高橋 「公務員試験もあり、公務員試験などで合格して官庁等に十年勤務した者に、資格を与える途を開いておいたほうが簡単ではないか」

参事 「特殊な人たちに特典を与えることになる。認可制にすると性質上全ての人に認可を与えてよくなる。試験制度を一般常識的な法律常識的な試験を加味し、選び出すことが行政書士の仕事の性質上から適当である」

高橋 「試験制度にすると門戸が閉ざされ行政書士が特権的な職業になる。門戸を開放しておくことが一般性を持ち得る。試験制度は門戸を閉ざして専門化し特権化する嫌いが出る」

参事 「学校を出た者が特権を与えられ出なかった者は特権が無い、というのは、制度の趣旨から新憲法下においてどうか。という点を勘案し試験制度が適当であるという結論になった」

高橋 「将来、行政事務官を多年やっていた者に試験無しで資格を与える方が(良い)。(行政書士は)一般的に誰でも出来る、試験制度で非常に特権化すると返って(行政書士となる途が)閉ざされ窮屈になる。行政書士の報酬や手数料が高くなる」

参事 「今の発言の趣旨は、結局大学を出た者、その程度の資格を持っている者には誰でも許していい、ということになる。殆どある程度学校を卒業した者、経験のある者は皆許してもいいということになる。
 行政書士のある程度資格向上という点から、一定の範囲の者(公務員や大学卒)から選び出すというのはどうなのか。
 司法書士は認可制度によっているが、司法書士の仕事は特殊の裁判所或いは検察庁の仕事に限られているから(認可制度が)考えられる。
 しかし、行政書士は非常に一般的である。資格を広くすることになると、試験制度を加味し、試験制度の運用で(窮屈にならないよう)調整をすることがよい、と考える」

高橋 「一般的専門的だと割合に試験制度は楽である。事務が一般的ということは同時に常識に近い。だから行政官庁に十年(五年)勤めた方が事務をこなすに適当である。非常に広い部面についての試験だから、試験問題が非常に難しい。その試験に合格したかしないかで決めるのはこの制度に合わない。この制度自体は、学校を卒業したとか、試験制度も必要でしょうが、その他に行政事務に多年の経験がある者には認定で与える途を開いた方が良い」



ご覧頂いたように、高橋進太郎議員が認可制度を推し進めた結果、公務員特権が認められ、今尚残っています。

そして、三浦義男衆議院法制局参事の答弁が、今の常識であることも分かります。
三浦参事の答弁は今の国会においても通用します。しかし高橋議員の答弁はもはや通用しません。

公務員特認に加え、弁護士・弁理士・公認会計士も行政書士より上位の資格であるから当然資格があるということで追加されました。

後に税理士も認可で行政書士の資格があることになりました。
この点については調べましたが会議録は出てきませんでした。

この悪法が今尚続いています。
私が強く否定する理由を「3」に述べます。



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