平和と基本的人権を守ろう!仲間たちの連絡会

 No95-6             webへいき連              2023年 2月

独の苦渋、最強戦車供与 さらに遠のく和平交渉と「停戦」
2015年とは違う?「巨額軍事費」「敵基地攻撃能力」手にする岸田・日本

非武装中立論の表紙

       <シリーズ> 「非武装中立」のリアル 23

 このままでは戦争は終わらない。和平交渉による「停戦」の可能性を退ける独「レオパルト2」供与。戦争への反省から生まれた 原則と政策を放棄するドイツの苦悩。安保3文書と巨額軍事予算、敵基地攻撃能力を確かなものとする日本、岸田政権。世界の軍需産業 や取り巻きの資本、それらと結びつく政治家がまた大きな利益を手にする。

◆英国に続き、米国とドイツがウクライナ・ゼレンスキーに主力戦車を供与すると決めた。米「M1エイブラムス」の投入を条件に、 ドイツ・ショルツ首相が世界最強とも言われるハイテク「レオパルト2」の投入を決断したとのこと。ロシア軍のT90、T72型戦車 に大きな威力を発揮するとみられる。春を待ち、ウクライナの平原で双方の重戦車と歩兵が戦火を交え、対戦車ミサイルが飛び交うこと になる。旧ソ連製に代わって、最新鋭の300両を超えるウクライナ支援の連合戦車軍団が出現するかもしれない。この先にあるのは、 航空機供与の要求と投入か。際限がない。戦争の終わりが見えない。

◆このままではウクライナの戦争は終わらない。いわゆる「軍事支援」のレベルが一段アップ、和平交渉による「停戦」がさらに遠のい た。ヨーロッパとロシアの闘い、ウクライナを実質NATO加盟国としての戦争に、質的に転換をしたとも言えなくもない。停戦交渉に など目もくれず、「徹底抗戦」を叫ぶゼレンスキー、民主主義のために戦いを名分に、大国ロシアと戦う武器と資金の提供を迫る。戦後 の復興資金の要求もしているとか。そのゼレンスキー側近や政権高官、20人近くが解任された。高邁な徹底抗戦の影で、支援にたかる 戦闘司令部高官、要人の汚職劇。根は深く広い? 戦時下によくある出来事? NHKがヨーロッパのメディア報道として控え目に伝え た。他局では全く扱われていないのでは。美化される、正義の戦争の不都合な真実? さらにまたウクライナ報道は管制下にあるのか。

◆周囲の圧力に屈し、苦渋の決断をしたと思われるショルツ・ドイツ。殺傷能力の高い強力な武器を送り続ければ戦争はエスカレート、 双方の犠牲者は増え、ドイツだけでなくNATOも戦争に巻き込まれる可能性が高くなる。今回の戦車供与と供与による戦争続行は、ド イツ国民の多くが望んだこととのメディア報道を信じても良いものか。真実は。ドイツは武器輸出大国だが、軍事紛争国に戦車などの重 火器は送らないという原則を守り、この間貫いてきた。原則放棄へのドイツの苦悩、供与への危惧、ショルツの躊躇があったはず。早期 停戦、戦闘ではなく外交や政治的交渉に努めるべきとの主張もあったはずだ。ヨーロッパの平和はロシアと共に構築するもの、ロシア排 除ではないとの現実路線。メルケル首相の外交努力、経済政策。資本の論理をバックに、それでも平和的な経済共同体が構築され、軍事 的緊張も緩和されつつあったはずだが。そそのかされたロシア・プーチンの思惑違い、隙をついた国際秩序の破壊、再構築。ソ連崩壊で 存在意義を失ったはずのNATOは健在、EUは崩壊の危機。利益を得るのはどこの誰か。不透明、不可解である。

◆さて、ドイツの苦悩、苦渋、躊躇。日本はどうか。安保3文書を「閣議決定」した岸田政権。ロシアのウクライナ侵攻は絶好のチャン スだとばかり、「台湾有事」を煽りながら、日本有事をでっち上げ、「巨額の防衛費」「敵基地攻撃能力」の実現と獲得、戦略の大転換 を臆面もなく進める。森元首相の不規則発言など、米国・バイデンのご機嫌取りに終始する岸田に、さすが身内からも不安、牽制の声が。 対中・対ロの外交、経済関係などこれまでをリセットしてしまったかのよう。無展望そのものだ。市民や野党も舐められたもんだ。内閣 支持率も下げ止まり、2015年の安保法制、「戦争法案」反対の市民運動の盛り上がりは確かにない。北朝鮮のミサイル乱射、ロシア によるウクライナ侵攻の現実、中国の台湾侵攻が喧伝される。日本を取り巻く安全保障環境の厳しさに、現実対応が必要との世間の認識、 7年前とは違う。国民、市民の安全保障観が大きく変化したからだとのメディア報道。昨年12月の、朝日の世論調査、外国が日本を攻 撃しようとした場合に「その国のミサイル基地などに打撃を与える能力を自衛隊がもつことに賛成か」との問いに、「賛成」56%、 「反対」38%との結果。

◆「先制攻撃に道を開く、戦後の安保・防衛政策の大転換」。岸田がウクライナに行く気だ。ゼレンスキーと何を語るのか。さらに一歩 踏み込み、日本のスタンスを世界に鮮明にする。「現実的対応」に傾斜する世論。事態を正面から受け止められない我が立民に連合。維 新はもともと野党ではない。与党化する国民も、安保・原発では明らかに与党の補完物。ウクライナ支援は言えても戦争反対を言わない 労働団体中央。戦前の曲がり角、同じ局面に立たされている。戦車供与に賛同するのでなく、「敵基地攻撃能力」の獲得やトマホーク装 備ではない、「有事」を真に回避するための術、安保・防衛政策を論ずべき時だ。「台湾有事」が起こらないよう、起こさぬように、外 交努力を重ねる。「戦争ではなく平和を希求する想像力が必要」との識者の声。平和を構築するための外交努力を訴える時だ。「台湾有 事」の現実的可能性を精査。このままでは、敵の思うつぼ。ロシアのウクライナ侵攻が日本における反戦・護憲の闘いを後退させること にしかならない。東アジアの国々と連携して平和を構築するための外交、政策の力、ヨーロッパや日本での、これまでの戦争回避の努力 と闘い、安保、防衛政策に学びたい。(乱文◇ご容赦…)    <続>

       2023年 1月28日       北条 恒


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