平和と基本的人権を守ろう!仲間たちの連絡会

No95-5              webへいき連              2023年 2月

今でしょ講座

「安全保障3文書」改定
 危険な狙い その2

   
林彰のイラスト

安保三文書と防衛費  昨年12月16日、政府は「安保関連3文書」を閣議決定しました。これにより、「専守防衛に徹し、軍事大国にはならない」とした 戦後日本の安保=防衛政策は大転換することになりました。本シリーズでは、この歴史的転換の意味、それが私たちに何をもたらすのか、 この決定を強行した岸田政権の狙いは何かなどについて考えていきます。

◆「安保関連3文書」とは?

 3文書とは、①「国家安全保障戦略」②「国家防衛戦略」③「防衛力整備計画」の3つです。
①は10年程度を想定した外交・防衛の基本方針とされてい障を確保するための最終的な担保」と強調されているように、防衛=軍事こ そが中心とされ、「防衛力の抜本的強化」が最優先の課題だとしています。
 そして、日本国家の防衛=軍事戦略の目標や手段、具体的な自衛隊の装備(軍備)や体制、必要な予算について②③でのべられていま す。②③は、これまで「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」とされてきましたが、アメリカの戦略文書体系に合わせて名称・内容 を変更しました。このことからも明らかなように、この3文書はアメリカの軍事戦略に一体化=従属したものと言わなければなりません。

◆驚くべき「3文書」の内容(要点)

 次に、3文書の内容についてみていきましょう。
 (1)「我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展し、力による一方的な現
   状変更の圧力が高まっている」と安全保障環境の厳しさを強調。そのうえで、中国の動向は
   「深刻な懸念事項」「これまでにない最大の戦略的挑戦」と中国を主要な敵国と想定。(①)
 (2) 相手国の領域内を直接攻撃する「敵基地攻撃能力(反撃して対処する。日本が直接攻撃さ
    れなくても、集団的自衛能力)」を保有すると宣言。反撃能力の行使は日米で協力権を行使
    できる「存立危機事態」でも反撃能力の行使が可能。(①②)
  (3) 反撃脳力のカギは「スタンド・オフ防衛能力」。国産ミサイルの能力を向上(長射程化)
    させ量産するとともに、アメリカ製巡航ミサイル「トマホーク」などを導入。さら に、
    「統合防空ミサイル防衛能力」「無人アセット防衛能力」「領域横断作戦能力」など「防
    衛力の抜本的強化」をはかる。(①②③)
  (4) 「米国による拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層 強化する」と日米
    同盟の攻守同盟としての強化を謳う。陸自・海自・空自の一元的指揮を行う常設の統合司令
    部の創設。宇宙作戦能力を強化するため、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。(①②③)
  (5) 有事を想定し、空港・港湾などの公共インフラの整備、輸送・保管の体制整備、民間企業
    ・施設の利活用を進める。弾薬・誘導弾、燃料など「継戦能力」を強化する。エネルギーや
    食糧など安全保障に不可欠な資源を強化する。経済安全保障政策を促進する。(①②③)
  (6) 国家主導で民生先端技術の積極活用、防衛産業の援助・育成を行う。防衛装備移転三原則
    を見直し、官民一体で武器輸出を促進する。(①②)
 (7) 2027年度の防衛予算GDP2%へ。23年度から27年度の5年間で43兆円。(①③)

◆ 今問われる 「戦争国家・軍国主義日本」復活を許すか否か

 3文書の要点はこのようなものです。何と驚くべきもの、いや恐るべきものではないでしょうか。
 台湾有事を想定した対中国の戦争準備、そのための軍備大増強。「反撃能力の保有」の名による米軍と一体化した先制攻撃体制づくり。 総力戦遂行のための国家=国民総動員体制の推進。これこそ戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認に憲法の真っ向からの破壊です。条文の 改定なき日米安保条約の大改悪です。
 戦争国家日本、軍国主義の日本を許すのか否か。このことが、いま私たち一人ひとりに厳きつけられているのではないでしょうか。

新聞で見る安保関連3文書

新聞で見る安保関連3文書
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