No94-6 webへいき連 2022年12月
最近感じること 2022年師走 2022.12.12
(日本の原子力発電について 3)
最近の報道では、岸田政権は原子力政策の見直しをすすめ、廃炉が決まった原子力発電所の建て替え(リプレース)として、従来 型より安全性を高めた次世代原発の開発、建設を進めることや、現在は最長60年とされている運転期間の延長を認めることが柱となっ ています。
安全対策のコストを考えても、原発は圧倒的に経済的に見合わないことが明らかになって、自然エネルギーのほうがトータルのコスト で安いのです。そうしたことがはっきりとしてきている状況の中で、岸田政権は建て替えを言い出しています。
東日本大震災や福島第一原発事故の教訓はどこにいったのでしようか?
地震大国日本で、原子力発電を続けていくことの危険性を経験してきたのではないでしょうか?
また、日本各地の原子力発電所へのテロやミサイル攻撃を受けたら、これを防ぐことはできないと思われます。
さらに、従来から問題を先送りしてきた核廃棄物最終処分の方策も未解決のままとなっています。
2022年9月を完成目標としていた六ケ所再処理工場は、完成時期がまたしても延期となって、延期は26回目となり、稼働に必要 な原子力規制委員会の審査が終わる見込みはなく、次の完成目標を明示できず、年内にあらためて公表するとしています。
再処理工場は、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策の中核施設。当初は1997年に完成する予定でしたが、試運転中に トラブルが相次ぐなどして延期を繰り返してきて、工事開始から30年が過ぎようとしています。
なぜ、こんなにも問題山積の政策をすすめようとするのか理解ができません。
前回に続き原発問題を投稿したいと思います。
8, 放射性廃棄物の区分について
放射性廃棄物の区分について再度確認しておきたいと思います。
原発や再処理工場からの放射性物質は、「高レベル」と「低レベル」に分類しています。
「高レベル」:再処理施設→ガラス固化体→地層処分(地下300m以深)→場所未定 |
※廃棄物の処分主体は、高レベルがNUMO(原子力発電環境整備機構)、低レベルが電気事業者となっています。
この分類では、高レベル以外はすべて低レベルとなるが、もちろん原発からの廃棄物であるので、人が近づくことはできないでしょう。 事実とは異なるネーミングで「たいした線量のゴミではない」とイメージさせたかったと思われます。
安全性に違いがあるPWR(放射能を含んだ水が外部に出ない)とBWR(放射能を含んだ水が外部に出る)を軽水炉と言って同じも のだと錯覚させるような表現を使うなど、政府と電力事業者は、問題を軽く見せようとする欺瞞と誤魔化しに満ちています。
▲地層処分:地下300mより深い地下に埋設する処分方法 |
NUMOが管理するガラス固化体は、放射能レベルが極めて高く300m以深の地下で10万年も管理しなければならないが最終 処分場の場所も決まっていない。またビット処分のL2は六ケ所村となっているがこれも300年から400年管理しなければならない のだ。ちなみに10万年前とは、旧石器時代ネアンデルタール人やクロマニヨン人の世界であり、関東平野はまだ海の底といわれている。 8千年前でも縄文時代前期、竪穴式住居の時代である。せいぜい100年の寿命の人類が300年から400年管理するとか10万年間 の安全を担保すると言うのは、想像を絶する。
私達の世代が使った電気による核のゴミを、次世代の人々に永遠と思われる時間にわたって管理してもらうしかないのです。
9, 「廃炉」という幻想(福島第一原発の廃炉作業の実態)
福島第一原発事故を10年に渡り取材した民放TV局記者 吉野実氏による本当の物語
事故から10年「廃炉は順調だ」「30年~40年で完了する」楽観的な空気が蔓延するがとんでもない話だ。政府と電力会社の虚構 にせまる記者の見た真実を紹介します。
1章 廃炉の「現実」
・メルトダウンで溶けた燃料(デブリ)は、取出しの見通しがまったく立たない。
・超高放射線量であり、人間が浴びれば即死レベルの線量となっている。
・なにをもって「廃炉」というのか定義さえない。
2章 先送りされた「処理水」問題
山側からでた地下水がデブリ等に触れ、大量の「汚染水」が発生する。これをアルプス(多
核種除去装置)で処理するが、トリチウムは除けないのでタンクに貯めたのが「処理水」とし
て129万トン(2021年9月時点)ある。科学的・合理的に考えると海洋放出に問題は
ない。(他の原発では、処理水を希釈して海洋投棄している)処理水問題から逃げ続けた東電
と安倍政権の責任は重い。
3章 廃炉30年~40年は「イメージ戦略」
・廃炉の工程表は、民主党政権が出したものだが、これは「普通の原発」の工程表で、事故で
滅茶苦茶になった福島第一原発(1F)に適用できるものではない。
・2013年に出した安倍政権の工程表でもこれを修正しなかった。
・実際には工程表は遅れに遅れているし、デブリ取出しはサンプリングすらできていない現
状。
・2章で触れた地下水の流入を防ぐ対策として安倍政権はのちに話題となる「凍土壁」を大急
ぎで選択する。これは安倍総理がIOC総会で発言した「アンダーコントロール」に忖度し
た経産省の動きであったと思われる。初期段階で470億円、維持費毎年10億円を要して
いる「凍土壁」だが地下水の流入は止まらず、効果もあやふやのまま今に至っている。新た
な「構造壁」の構築が必要となっている。
・2020年7月、日本原子力学会の「1F廃炉検討委員会」が出したレポートが注目され
た。
最終的状態(エンドステート)を設定するのが「国際標準」であるとして考察している。4
ケースに分類、ただし、デブリは取出し、高線量の原子炉や建屋も取り壊すのが前提として
いる。
1:1Fを完全に更地にした場合 約100年 廃棄物量約780万トン |
4章 福島第一原発は「新たな地震・津波」に耐えられるか
・2021年2月13日震度6強の地震が福島県で発生した際、1号と3号機の格納容器の水
位が低下した。水素爆発の影響で複数個所が損傷していると見られる。
・現在は、問題ないとしているが経年劣化は避けられなと思われる。
・また、原子炉建屋も「持ちこたえられる」との評価を出した。
・東日本大震災時1Fには防潮堤はなく、海抜8.5mにあった原子炉建屋の地下に設置され
た非常用発電機は15.1mの津波により水没した。
・地震研の予想を踏まえ2020年9月海抜11mの防潮堤を設置した。さらに地震研がだし
た新たな指針により、2024年3月までに16mの防潮堤を建設予定としている。
5章 致命的な「核物質セキュリティ違反」
2020年柏崎刈羽原発において職員が他人のIDカードで中央制御室にはいるという事実
が発覚。また侵入検知装置の不備を長期間放置し規制委から「運転禁止命令」が出される事態
となった。
6章 破綻した「賠償スキーム」
・わずか5年で「5兆円→22兆円」倍々で膨らむ収束費用
・この中に放射性廃棄物の処理・埋設費用は「含まれていない」環境省が試算していると思わ
れるが出してこない。試算すると約26兆円かかると思われる。
7章 指定廃棄物という「おとし子」
1F事故で拡散した各段に低いレベルの廃棄物を環境大臣が指定して、国が管理することに
なった。福島県周辺5県を対象に環境省が1か所を指定したため、大反対運動に発展するが、
その後撤回して各地での分散保管に落ち着いた。国が何のために1か所にしたかったのか今で
も不明である。
終章
◎廃炉が長期化することを認め。不測の事態への安全策を
◎大規模な財政出動は避けるべき
◎除染土を単なる「ゴミ」としない方策を
※事態の収束には長期間かかるため、チェルノブイリのように石棺にしておくべきという意見も
ある。
10, 砂上の楼閣 原発と地震 (共同通信 鎮目宰司記者)
=東京電力 役員は、福島原発の津波被災を想定したのに隠していた!=
ネットに掲載があった記事を抜粋して紹介します。
津波想定を見直していた東電は2008年3月、「困った事態」に直面する。長期評価を基に、過去に起きた津波のデータを利用して 計算すると、福島第1原発は最大15・7mの大津波に襲われるとの結果になったのだ。それまでの高さ5~6mとしていた想定とは天 と地ほど違う。これを防ぐには10mの敷地の上に高さ10mの壁を造る必要がある。担当者は上司である原子力設備管理部長の吉田昌 郎氏に報告した。吉田氏も事態の重大さに「私では判断できない」として、原子力・立地本部副本部長で常務の武藤栄氏に判断を仰ぐこ とを決めた。武藤氏は「(津波計算の)信頼性が気になるので第三者に見てもらった方がいい。外部有識者に頼もう」と切り出した。津 波想定の見直しも対策工事も「先送り」するというのだ。経済産業省原子力安全・保安院に対し、東電は以前から社内で計算していた高 さ15・7mの津波想定を初めて報告した。東日本大震災の4日前のことだった。(共同通信=鎮目宰司)
東電は、福島第1の大津波対策を先送りし、2011年3月の事故で原発が爆発しても「想定外だった」と居直りました。
政府と東京電力は、事故を小さく見せようとするあまりに本当のことを言いません。
いま原子力政策を大きく転換しようとするターニングポイントにいると思われます。
貧しい国になりつつある日本が選択する道を誤らないよう祈るばかりです。
原子力発電所の廃炉に向けて、考えてゆきたいと思います。 H.I
【 参照した本とサイト 】
◎「廃炉という幻想」 吉野実 光文社新書 2022年2月発行
※民放TV局記者 福島第一原発事故を10年に渡り取材した報道部記者
※廃炉に30年~40年は、「イメージ戦略」で現実には不可能
※溶けた燃料デブリの取出しは高線量の放射能のため不可能にちかい
※事故炉の廃棄物は膨大な量になり(780万トン~1000万トン)
行先がない
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第1原発事故 「砂上の楼閣―原発と地震―」第1回~第6回
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(2021年3月2日から2021年3月11日まで計10回の連載記)