平和と基本的人権を守ろう!仲間たちの連絡会

No94-5              webへいき連              2022年12月

今でしょ講座

「安全保障3文書」改定
 危険な狙い その1

   
林彰のイラスト

安保三文書と防衛費  明けましておめでとうございます。
 岸田政権は、12月16日に「国家安全保障戦略」「防衛計画大綱」「中期防衛整備計画」のいわゆる安保3文書の改定を閣議決定し ました。この改定は、「専守防衛」を国是としてきた日本の「安全保障=防衛」政策の大転換にほかなりません。
 本講座では、「3文書の改定が何を意味するのか?」「その基本的狙いは何であるのか?」を考えていきたいと思います。
 なお、1回目の講座は閣議決定にむけた「有識者会議」報告書にスポットをあて講義し、背景・岸田内閣の狙い・改憲との関連性など については次回以降の講義で扱いたいと思います。(林彰)

◆敵基地攻撃能力は「不可欠」とした政府有識者会議

 11月22日に、3文書改定にむけた政府有識者会議(「国力としての防衛力を総合的に考える」有識者会議)が報告書を岸田首 相に提出しました。今回は、この報告書の問題点についてみていきます。
国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議メンバー  最大の問題は、敵基地攻撃能力の保有を「不可欠」と結論づけ、巡航ミサイル・トマホークなど長射程のミサイルを「早急に装備すべ き」とまで言い切っていることです。報告書は、「反撃能力(敵基地攻撃能力)保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠」とし、 そのために「国産のスタンドオフミサイルの改良や外国製のミサイルの購入により、十分な数のミサイルを配備すべきだ」と、敵基地攻 撃体制づくりに突き進む岸田政権の意向に全面的に応えているのです。
 第二に、「リアルな継戦能力(戦争継続能力)を高める」ために、「弾薬や施設の着実な整備が必要だ」とか、「防衛装備の移転を拡 大するため、防衛装備移転3原則と運用指針による制約をできる限り取り除き、防衛産業を継続可能なものとしなければならない」と主 張して、軍備増強・軍事産業の育成・強化さえ提言しています。
 そして第三に、「総合的な防衛体制の強化」として次のことが提言されています。①防衛力の抜本的強化のために必要な水準の予算上 の措置をこの五年間で講じる、②有事における防衛相による海上保安庁の統制、③政府と大学、民間が一体で防衛力の強化にもつながる 研究開発を進める仕組みづくり、④空港や港湾など公共インフラも有事を見越して利活用を進めるべき、⑤サイバー攻撃を未然に防ぐた めの能動的なサイバー防御(アクティブ・サイバー・ディフェンス)が必要、などなど。
 これらの提言は、日本の軍備大増強、戦争準備、戦争への国民総動員のススメ以外のなにものでもありません。

◆ 核心問題は軍備大増強のための軍事費(予算)の大拡大

 第四に、「防衛力強化」の財源については、「国債発行が前提となることがあってはならない」とする一方、「国民全体の協力が 不可欠」「幅広い税目による負担が必要」として増税を主張しています。原案にあった「法人税」という文言は、経済界の意向に応え削 除したのでしょう。
 マスコミなどでは、財源の問題(国債か増税か)が最大の争点であるかのように報道しています。しかし、それは国民を欺くことでは ないでしょうか、財源問題の前に、私たちは軍備大増強の是非、そのための軍事費(予算)大増大の是非をこそ考え、論議していくべき ではないでしょうか。
国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議メンバー  ウクライナ戦争以降、日本の「防衛力強化」「防衛費増大」は当然であるかのような論調が大手をふっています。しかし、これほど危 険なことはありません。防衛力とは、軍事力であり侵略力にほかなりません。防衛費とは軍事費です。軍事力の増強は相手国の軍備増強 をま、ねくだけであって戦争の危機をたかめることはあっても戦争の抑止にはなりません。軍事=戦争によっては決して国民を守ること はできません。私たちは、この真理をすでに77年前につかみとったのではなかったでしょうか。
 敵基地攻撃能力の保有をはじめとする軍備大増強、軍事予算の増大、そして戦争体制づくりを進言する政府有識者会議の報告書を私た ちは、認めることはできません。そして、このような反憲法的・反国民的主張が安保3文書の改定に採り入れられることを絶対に許して はなりません。  改憲と軍拡を許すか否か! 戦争する軍国日本・ファシズム社会の到来を許すのか否か! 私たちは、いま正念場に立たされているの です。              (11月23日)

<補講>  岸田政権の大暴走が始まった!

 政府の御用有識者会議の報告を受け取るや、岸田首相は大軍拡・戦争準備に向けて大暴走を開始しました。以下、それについて簡 単に列挙しておきます。
(1)12月2日、自民党と公明党が「敵基地攻撃能力の保有」で合意。集団的自衛権による行使
  も対象に含めるなど、公明党は自民党の主張を全面的に受け入れ。
(2)12月5日、岸田首相は、2023~27年度の5年間の防衛費を総額約43兆円とするよ
  う浜田防衛相と鈴木財務相に指示した。27年度にGDP比2%到達へ。
(3)12月8日、岸田首相は、財源として増税を段階的に実施して27年度には1兆円強の増税
  とすることを表明。与党税制調査会が年内に税目・実施時期などを決める。
(4)12月16日、岸田内閣「安全保障3文書」改定閣議決定。

国の安全保障3つの文章を決定と防衛費(当初予算)の推移グラフ

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