3.飛行訓練

いよいよ実機訓練の開始です。 さあ、コックピットに乗り込んでください。
飛行前にコクピットで最低限、次のチェックしてください。
お気に入りの飛行機は選択できましたか?
コクピットから周囲は確認できますか?
エルロン、エレベータ、フラップ、スロットは正しく動作しますか?

3.2.離陸・着陸

<航空機操縦の醍醐味を極めよう!>
いよいよ離陸・着陸の訓練です。
「離陸」は「タキシング」をマスター出来ていればなれてしまえば難しいことはありせん。
着陸技術は「経験」と「先を読む技術」と「判断力」が試されます。
皆さんも挫けず鍛錬してください。マスターできる頃にはフライトシミュレータの面白さにはまっていることと思います。



離陸・着陸訓練の前に「失速」についての認識することが必要です。
そして「失速」からの回避方法を習得しましょう。
飛行機は空気の流れを利用して揚力を得て空中に飛び立つことが出来ます。
この揚力の殆どを作っているのが翼です。
失速は飛行機が飛んでいる(当然離着陸時も含む)とき「人為的」又は「風の影響」で翼表面(厳密には上表面)の気流がなくなり揚力を失うことをいいます。
<どうして失速が起こるか?>
ケースT 低速度
発生要因 回避方法
1)

2)
離着陸時の低速飛行で追風の突風に吹かれた場合。
飛行機の「失速速度」以下に速度をダウンしてしまった場合(操作ミス)
低高度では残念ながら方法はありせん・・・
高度が3000ft以上あれば、スロットルをアイドルまで絞り機首を下に向けます。(急降下状態)
機体をコントロールできる対気速度まで回復するのを待ちます。
速度が回復したら徐々に操縦桿を引き出力を上げます。
大事なことは慌てず徐々に操作することがポイントです。
ケースU 過度の迎え角
発生要因 回避方法
急激な機首引揚による迎え角増大
(特に離着陸時は注意)
基本的には低速度の時と同じ現象である。 このケースは殆ど人為的ミスであるので急激な操縦桿操作を慎むことです。
ケースV 非調和旋回
発生要因 回避方法
急旋回(大バンク旋回)時のスリップ、スキッドにより片翼失速。(殆どがスピンに陥る) 予防方法としては、旋回のとき常に「旋回釣合計」を監視して調和旋回に努めることです。 くれぐれも、操縦桿の操作は禁物です。
水平スピンに進展する可能性もあります。
水平スピンからの有効な回復方法は殆どありません気をつけてください。
スピンに陥った場合、落ち着いて操縦桿から手を離し回転落下している方向を見極めてください。
スピンの回転方向にラダーを目いっぱい踏み込んでください。
後は、回転が止まることを神に祈るだけです。
回転が停止したら前項の回避方法と同様操作となります。
fig-3.2.1

<離陸時の対気速度の目安>
離陸着陸には、航空用語として決められた速度名称と各航空機の性能に応じた速度が決められています。 搭乗前には必ず書き程度の自機のデータを調べておいてください。 ここに記したのは、練習機(セスナ機)を参考とした目安を示します。
速度名称 呼称 説  明
ギア/フラップダウン失速速度 Vs0 レシプロ機体の最大重量時の最低速度データです。
この速度以上でなければ飛ぶことができません。
必ず着陸の時は気をつけてください。
高度の低い状態で、この速度を割ると墜落につながります。
ギア/フラップアップ失速速度 Vs1 巡航時の失速速度です。
離陸決定速度
(Vs0x1.15程度)
V1 この速度に達したらトラブルが発生してもリフトオンさせなければなりません。
「V1」到達前にトラブルが発生した場合、直ちに緊急停止措置をとります。
ローテーション速度
(Vs0x1.2程度)
Vr 離陸滑走から機首を持ち上げる速度です。
リフトオフ速度
(Vs0x1.2程度)
Vlof 滑走路から機体が離れる速度です。
離陸上昇速度
(Vs0x1.3程度)
V2 飛行機が地面を離れ,安全に離陸が続けられる速度です。
巡航速度
(Vs0x1.6程度)
巡航時の最適速度です。本校ではこの速度を演習速度としています。
超過限界速度 機体の設計上越えてはならない速度です。
この速度を超えると空中分解する可能性があります。
最小操縦速度
(Vs1x1.2程度)
Vmc 巡航時の最低速度です。
着陸速度
(Vs0x1.3程度)
Vref 高度50ftまでの着陸進入速度です。
この後、徐々に機首を持上げ「フレア」*1を行いVs0速度まで落とし着地します。
フラップ
使用可能速度
離陸・降下などの低速の時、揚力を向上させるためフラップを使用します。
戦闘機の空戦フラップを除く、フラップは高速で破損するためフラップダウンする速度が決められています。
各航空機でデータが違いますのでチェックしておいてください。
ギアダウン速度 離着陸時のギアをダウンできる速度です。
定められた速度以下で操作しないとギア破損につながりますので注意してください。
fig-3.2.2
*1 「フレア」とは、着陸寸前に操縦桿を引き(迎え角を大きくし)速度を失速速度へ近づけかつ尾輪から着地できるようにする操作を言います。



訓練条件 訓練の前に下記の準備をしてください。
練習滑走路 :滑走路は1500m以上あり、周囲に山、ビルがない空港を選定してください。
離陸フラップ角 :機種(大型機では重量)によって変わりますので、角度又は段数を確認しておいてください。
各種速度データ :fig-3.2.2の速度データを参考に機体データの調査してください。
本訓練の速度データはセスナ172型の参考値です。
訓練項目 離 陸
目的・訓練方法 技術向上のコツ 教習単位
目的
レシプロ航空機で離陸操作を訓練します。
  • スロットルの急激な操作はいけません。
  • 「離陸速度(VR)」に達して操縦桿を引いてもただちに離陸しません。
  • 操縦桿の引き過ぎに注意してください。
  • 離陸後、直ちにランディングギアを揚げる習慣を付けましょう。
50回
練習時間
3時間 以上
訓練手順
  1. フラップを離陸時の角度に降ろします。
  2. パーキングブレーキを解除。
  3. 徐々にスロットルを押ていくと機体が動き出しますので速やかにフルスロットルにします。
  4. 滑走路を直進するようにラダーで調整をします。
  5. 対気速度に注意し離陸決定速度(V1=54kt)までに不調、問題ないこと*1を確認します。
  6. 「離陸決定速度(V1)」を超え「ローテ−ション速度(VR=56kt)」に達したら操縦桿を静かに引き機首を上げ離陸を待ちます。
  7. 機首上げ角は3〜4°を目安としてください。
  8. 離陸後即座にギアをUPしてください。
  9. (セスナはこの操作はありません)
  10. 「離陸上昇速度(V2=60kt)」に達したらフラップを上げ、スロットル絞り300ftまでは60ktで上昇するように調整します。
  11. 徐々に操縦桿を戻し水平飛行へ移行します。
  12. 水平飛行後、巡航速度(75kt)にスロットを調整します。
fig-3.2.3
訓練項目 緊急離陸
目的・訓練方法 技術向上のコツ 教習単位
目的
軍用機など、短距離で離陸をする場合に使います。
  • スロットルの急激な操作はいけません。
  • 「離陸速度(VR)」に達して操縦桿を引いてもただちに離陸しません。
  • 操縦桿の引き過ぎに注意してください。
  • 離陸後、直ちにランディングギアを揚げる習慣を付けましょう。
50回
練習時間
4時間 以上
訓練手順
  1. フラップを全角度降ろします。
  2. パーキングブレーキを解除
  3. フットブレーキ(左右)を踏込ます。
  4. 徐々にスロットルを最大出力まで上げます。
  5. ラダーで方向調整をしながら最大回転になるのを待ちます。
  6. 最大回転到達後、ブレーキを開放します。
  7. 対気速度に注意し離陸決定速度(V1=54kt)までに不調、問題ないこと*1を確認します。
  8. 「離陸決定速度(V1)」を超え「ローテ−ション速度(VR=56kt)」に達したら操縦桿を静かに引き機首を上げ離陸を待ちます。
  9. 機首上げ角は3〜4°を目安としてください。
  10. 離陸後即座にギアをUPしてください。
  11. (セスナはこの操作はありません)
  12. 「離陸上昇速度(V2=60kt)」に達したらフラップを上げ、スロットル絞り300ftまでは60ktで上昇するように調整します。
  13. 巡航高度に近づいたら徐々に操縦桿を戻し水平飛行へ移行します。
  14. 水平飛行後、巡航速度(75kt)にスロットを調整します。
fig-3.2.4
*1 「離陸決心点(V1)」で、問題発生の場合も想定して、非常停止(スロットアイドル、ブレーキング)操作も練習しておきましょう。



訓練条件
着陸操作は慣れが必要なので何度も練習すことが要求されます。
根気をもって頑張りましょう。
「巡航訓練」、「旋回訓練」をしていないので、フライトシムの設定(「フリーフライト モード」などに設定)を滑走路沿線上から始めます。
滑走路までの距離10マイル、高度5000ft、速度190Kt程度に設定し開始してください。
もし、フライト シムの都合で設定できない場合は、次の「トラフィックパターン訓練」で習得する巡航・旋回操作を覚えます。
離陸後上昇旋回し着陸開始ポイントに機を操縦できるようにしてから、「着陸訓練」を実施してください。
この訓練ではセスナ172型の速度データを参考値にしています。
訓練項目 滑  空
目的・訓練方法 技術向上のコツ 教習単位
目的
スロットをアイドリング状態にして機体が自然降下(滑空)する速度と降下状態を覚えます。
  • 操縦桿は対気速度を見ながら徐々に引きます。
  • Vs0、Vs1を常に意識してください。
  • 「AOA指示計」で降下姿勢(角度)メモしてください。
50回
練習時間
3時間 以上
訓練手順
  1. スロットルをアイドルまで一気に戻します。
  2. 徐々に操縦桿を引き迎え角を大きくし「最小飛行速度(Vmc)」を維持します。
  3. 機体は降下しながら「最小飛行速度(Vmc)」を保つように姿勢(ピッチ)をコントロールします。
  4. フラップポジションをフルフラップまで変え「滑空降下姿勢」を覚えてください。
  5. また、ギアダウン状態でも「滑空降下姿勢」を保てるように練習してください。
  6. 1000ftぐらいまで降下したら、5000ftまで上昇し滑空降下を繰り返して練習してください。
fig-3.2.5
訓練項目 グライドスロープ*1に乗る
目的・訓練方法 技術向上のコツ 教習単位
目的
滑走路の着地点に向けて降下する練習です。
  • あらかじめ「着地点」を想定しそこへ向けて降下するようにしてください。
  • 降下中、速度が超過した場合は迎え角を大きくして減速します。
50回
練習時間
3時間 以上
訓練手順
  1. 降下角度3〜4°にピッチを調整し着陸速度(60kt)にスロットル調整します。
  2. 一段ずつフラップダウンをします。ダウンの度に降下角、速度一定となるようピッチ、スロットルを調整します。
  3. フルフラップ状態でギアダウンし最終降下姿勢にします。
  4. このときも着陸速度と降下角を維持します。
  5. 高度500ftに達したらギアアップし上昇角3〜4°にピッチ調整し、離陸上昇速度(60kt)で上昇します。(ゴーアラウンド)
  6. 機体を上昇させながら全フラップを引き上げます。(スロットルの調整して上昇速度を維持)
  7. 高度5000ftに近づいたら(約4950ft)水平飛行へゆっくりピッチ操作します。
  8. この一連の操作を繰り返し練習します。
fig-3.2.6
訓練項目 着  陸
目的・訓練方法 技術向上のコツ 教習単位
目的
着陸のときの降下角と速度は機種で決められていますので、機体のデータを確認しておくことをお勧めします。
  • 高度50ftからのフレアは徐々にかけてください。迎え角を大きくしすぎると失速墜落します。
  • 「目標着地点」を決めて必ずその点に着地出来るまで訓練しましょう。
150回
練習時間
10時間 以上
訓練手順
(下記の数値データは参考としてください。)
  1. 高度800ft、滑走路までの距離2.5マイル、巡航速度75ktから着陸を開始します。
  2. フラップダウンとスロット調整し着陸速度(60kt)で降下角3〜4°でグライドスロープに乗り降下を開始します。
  3. フルフラップ、ギアダウンし着陸速度(60kt)を維持し降下します。
  4. 高度50ftに達したら迎え角をとり少しスロットルを戻しフレアをかけます。
  5. 徐々にスロットルを戻し尾輪着陸程度までフレアし着地を待ちます。
  6. 着地後、スロットルをアイドルまで絞り両輪のブレーキをかけます。
  7. 再びリフトしないように直ちにフラップアップしてください。
  8. 以後タキシング操作となります。
fig-3.2.7