平和と基本的人権を守ろう!仲間たちの連絡会

No96-6              webへいき連              2023年 3月

今でしょ講座

「安全保障3文書」改定
 危険な狙い その3

   
林彰のイラスト

安保三文書と防衛費  前回の講座では、台湾有事を想定した米軍と一体化した日本の対中国の戦争体制づくり、そのための軍備大増強と軍事費の大拡大をめ ざすものとして「安保3文書」改定にかけた岸田政権の危険な狙いをつかみとってきました。今回は、「反撃能力(敵基地攻撃能力)の 保有」ということを切り口に、さらに深堀するとともに、日本国憲法や日米安保条約との関係についても考えていきます。

◆米軍と一体となった敵国=中国への先制攻撃体制づくり

反撃能力とミサイル防衛  反撃能力(敵基地攻撃能力)は、「武力行使の3要件」に測り行使する、とされています。このことは、日本が攻撃されていなくても、 「存立危機事態」(例えば米軍が攻撃されている場合)であれば、自衛隊が敵国(艦船、基地、司令部など)を攻撃できるということな どです。  これはまさに先制攻撃にほかなりません。憲法を踏みにじって制定された戦争法(2015年)にもとづく「集団的自衛権の行使」に よって自衛隊の先制攻撃は正当化されているのです。
 なし崩し的に形骸化させられてきたとはいえ、これまでの「専守防衛」では、武力行使の対象地域は日本とその周辺に限定され、他国 に脅威を与える攻撃的な兵器(戦略爆撃機・空母・長射程のミサイルなど)は保有しない、とされてきました。しかし、1000キロ メートルを超える長距離のミサイルなどの「敵基地攻撃能力の保有」は、国是としてきた「専守防衛」政策の大転換、つまり憲法第9条 の破壊と言わなければなりません。
 しかも、敵基地攻撃能力、その要をなす「スタンド・オフ防衛能力」を行使するためには、「日米共同対処」が謳われているように、 情報・作戦・戦闘などあらゆる部面で米軍との一体化が不可欠となります。米軍の指揮・命令のもとで、アメリカの戦争に自衛隊が参戦 する、これこそが、敵基地攻撃能力の保有=対中国の先制攻撃体制づくりの意味するものではないでしょうか。

◆「日米同盟の現代化」の名による安保同盟の飛躍的強化

 敵基地攻撃能力の保有により、<盾>(防衛)としての自衛隊が<矛>(攻撃)としても位置づけられました。これにより、侵略をほ しいままにしてきたアメリカの先兵として他国を攻撃する軍隊として自衛隊は変貌するのです。1月13日のバイデン・岸田「共同声 明」で宣言した「日米同盟の現代化」こそ、日米安保同盟の全世界を対象にした<攻守>同盟としての飛躍的強化に他ならないのです。
 「3文書」では、自衛隊は2027年度までに陸・海・空の部隊運用を一元的に担う統合司令部を常設するとしています。これに合わ せ、米インド太平洋軍は、在日米軍の統合運用の指揮権を在日米軍司令部(横田基地)に付与することを検討しています。米・日の政府 は、対中戦争に向け在日米軍と自衛隊の統合運用体制の強化を急いでいるのです。

自衛隊は統合司令部を創設する、在日米軍司令部への指揮権付与のイメージ

 さらにバイデン政権は、沖縄の米海兵隊を数年内に改編し、離島を機動的に展開する能力を持つ「海兵沿岸連隊(MLR)」を創設 します。岸田政権は、南西諸島を担当する陸自第15旅団を師団に格上げし、ミサイル部隊の配備や弾薬の備蓄を増強しようとしていま す。このように、南西諸島は米・日と中国との戦争の最前線にたたき込まれようとしているのです。
 そればかりではありません。1月11日の米・日の安全保障協議委員会(2+2)において、安保条約(第5条)を宇宙空間にまで適 用することが決定されたのです。

◆「専守防衛の基本方針は不変」(岸田)の詭弁を許さない

 憲法を踏みにじり、日米安保同盟を<攻守>同盟へと強化し、対中国の戦争体制づくりに突き進む岸田政権。にもかかわらず彼ら は、「平和国家としての専守防衛の基本方針は不変」などと開き直っています。こんな真っ赤な嘘をおしとおすために、岸田首相は「専 守防衛」の内実をたんに「先制攻撃をするか否か」にすりかえ、日本は「先制攻撃をしない」と表明しているのだから「専守防衛を堅持 しているのだ」などと強弁しているのです。
 だが、先制攻撃は国際法で禁止されているのであって、「先制攻撃をしない」ということの表明をもって「専守防衛」というならば、 およそ世界中のすべての国に軍隊が「専守防衛の軍隊」になってしまいます。そもそも“憲法第9条に縛られた”日本の「専守防衛」と は、攻撃型兵器をもたず・他国を攻撃しない、すなわち<盾>にて徹するということであったはずです。
 私たちは、岸田政権の詭弁を許さず、日本の安全保障政策の大転換に警鐘を乱打していきましょう。対中国の先制攻撃体制づくりを許 さないために、「安保3文書撤回、大軍拡・軍事費倍増反対、改憲反対、安保強化反対」の闘いを創造することが、いま強く求められて います。

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