亡くなった方が不動産を所有していた場合、その名義を相続人に変更する手続きを相続登記と言います。
相続登記に期限はありませんが、早めの手続きをお勧めいたします。
相続登記をせずに長期間放置しておくと、相続人の方にも相続が発生し、相続人の人数が増え、相続関係が複雑となってしまいます。 そうなると、いざ遺産分割協議を
しようと思っても、相続人の人数が多くなりすぎて協議がまとまらない、相続人の一部の方の連絡先や所在が不明など、名義変更が困難になってしまう恐れがあります。
例として、相談者が住んでいる土地・建物について、祖父から父親が相続し、そして父親から相談者が相続したため、相談者自身の名義に変更しておきたいと、ご相談に来られた
方がいらっしゃいました。 当事務所でその土地・建物の謄本を調べ、登記記録上の名義を見てみると、いまだ相談者の祖父の名義となっておりました。 この場合に、祖父の法定相続人が父親以外にもいれば
(父親の兄弟姉妹など)、まず、父親の名義にするための遺産分割協議を成立させなければなりません。 父親が生きていれば、その兄弟姉妹等他の相続人との間で、協議し書類を作成をすればよかったのですが、
父親が亡くなっているので、その相続人、つまり相談者自身(相談者以外にも父親の相続人がいればその方々も)が、祖父の遺産についての遺産分割協議の当事者となって協議する必要があります。
また、その協議は父親の兄弟姉妹等、祖父の法定相続人との協議になるのですが、その方々も亡くなっているのであれば、その方々の相続人(相談者から見ればいとこにあたる方など)と、祖父の遺産について
遺産分割協議をする必要があります。さらに、そのいとこが亡くなっている場合には、そのいとこの子供や配偶者が相続人となるため、お会いしたこともないような方と連絡を取り、
事情を話し、協議・交渉をしなければならないこととなります。 さらには、この相談者の方が事実上その土地・建物を相続したといっても、遺産分割協議がされていない、書類として残っていない以上、
他の相続人から、その土地・建物についての権利を主張され、その相続分につき代償金の支払いを求められることも考えられます。その代償金を支払えなければ、その土地・建物を売却し金銭による分配
となる、つまり相続したはずの土地・建物が他人のものになってしまうことも可能性としては考えられます。 また、父親の兄弟姉妹が、ご健在であったとしても、高齢で認知症などになっている場合も
可能性としては十分に考えられます。この場合は、遺産分割協議するためには、その方に成年後見人を選任してもらわなければならず、さらにその方の相続分については、代償金を支払うなりして
確保しなければなりません。
このように、相続登記を一世代放置してしまっただけでも、名義変更に想定外の費用、時間、労力がかかるおそれがあります。
その相談者も、上記のような状態となっており、早急に手続きをしておかないと、さらに複雑になり、難しくなるとお伝えしましたが、結局は名義変更を断念されてしまいました。
上記の例では、祖父が亡くなられた際に、父親がしっかりと相続登記の手続きをしておけば、とても簡単に相談者の名義に変更することができたのです。
後の世代に苦労を掛けないためにも、代々受け継がれた土地・建物を後の世代にスムーズに受け継いでもらうためにも、相続登記は早めにすることが大切なのです。
その他、名義変更をしていないとなると、ローンを組んで建物を改築をしようと思っても、自身の名義になっていないため、土地・建物を担保にローンを組むことができないなどの
弊害も出てきますので注意してください。
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