自転車安全条例について@ (令和3年1月30日)



 そもそもこの条例の制定について、調査研究を自由民主党(会派)に依頼したのは議長であった私である。しかしその後、「富山県自転車活用推進条例」が施行(平成31年3月)され、「富山県自転車活用推進計画」も策定されたため、富山市で類似の条例をつくる意義はないと考えていたが、議長を辞め、会派も離れた私が、コントロールできない状況で、突然自由民主党(会派)から、各派代表者会議の場において、会派が作った条例案についてパブリックコメントを実施したいとの提案がなされた。

 あまりに唐突な提案であったので、当然他会派の理解は得られず、厚生委員会で審議することになった。

 厚生委員会の審議で、私は傍聴席から委員外議員の発言を求め、度々議論の整理や、間違いを指摘してきたが、その意見の多くは理解されなかった。

 厚生委員会の中間報告が行われた議員協議会では、私の質問に答えられない場面が多く、審議の未熟さが露呈した。

 自転車の安全が厚生委員会の所管事項にとどまらないことは容易に想像できることから考えると、特別委員会の立ち上げは遅かったといえる。

 早く特別委員会を立ち上げ、私をその委員会のメンバーに入れるべきだと考えていたが、条例制定に否定的な私を委員にしたくない思惑があったのかもしれない。

 いわゆる「自転車安全条例」の制定を目指して、自転車安全利用促進特別委員会が昨年3月に発足した。

 まず、ここが問題で、条例制定ありきの委員会審査が、正しい議論、熟議に及ばないのは必然ともいえる。

 自転車利用が安全にさらに活用が促進されるような環境をつくるために、不足する条例があれば、それをつくるべきであり、その視点が欠けていては、条例制定に市民の理解が得られないのは当然である。

 富山市当局が、条例制定に消極的でその理由が「市民の理解を得られない」としたのはもっともな話である。

 審議において、参考人を呼ぶことは制度としてはあり得ることだが、何のために何を聴くために誰を呼ぶのかを明確にしなければ、招致してはいけないと進言したが、理解されず参考人が委員会に招致された。委員長が、「質問をどうぞ」と促したが、委員の誰も挙手しない場面はさもありなんである。参考人招致やパブリックコメントは慎重審議の手法の一つであるが、やりました感を演出する道具に終わってはならない。

 特別委員会は市当局が策定中の次期(令和3年度〜令和12年度)「自転車利用環境整備計画」について調査しながら、条例制定の必要性について考察すべきであり、この計画が十分なものであれば、自ずと条例制定は必要ないとの結論を得られると私は考えていたが、本計画は、厚生委員会の所管事項であるからという理由で、本格的な審議に至らなかった。何のための特別委員会か。まったく特別ではない、審議の希薄さに愕然とした。

 富山県警察からも参考人としておいでいただいた。私は「自転車の安全利用推進にあたり、不足している条文や条例はありますか」と尋ねたところ、参考人は明確に「ありません」とお答えになった。同様の質問を市民生活部長にも訪ねたが、答えは「ありません」であった。この時点で条例制定の必要性は無いと判断するのが正解であると思うが、それでも自由民主党(会派)や社民党(会派)の「スケジュールどおり制定に向けて進めるべき」との意見で特別委員会は条例制定に前向きな姿勢を続けた。

 特別委員会の審議は必要性を脇に置きながら、条例案の中身についても審議されたが、私の指摘を満足させるものには今でも至っていない。最も基本となるべき目的や理念についてもである。

 制定不要論の私が条例案について意見するのは、正しい条例案を作ろうとすれば、それは自転車活用推進法や県条例その他の自転車関係法令に包含されるものであり、新たに条例を制定する意義がないことを委員各位に理解してもらうためである。

 しかし、道路交通法をはじめとした、関係法令や他自治体の自転車安全条例をとことん読み込んだ委員は少なかった。あちこちの条例を抜き出して、並べてみても、整合性が取れないのは必然で、条例案は右往左往した。

 結局、条例制定の可否は、市当局の理解を得られないことをもって、諦めに収束していくのであるが、こんなことは議会としてあってはならない。委員会の議論の末、条例制定不要と結論付ければいいのであって、わざわざ市民生活部を委員会に呼んで、市が消極的だから条例制定しませんというのでは、議会のメンツ丸つぶれである。

 条例制定に積極的であった会派は、いったい何のためにこの条例の議員提出にこだわり続けたのか。

 賠償責任保険加入の義務化は本条例の重大な要素であるが、ならば次期「自転車利用環境整備計画」において、10年後の加入率目標が50%に設定されていることに納得してはいけない。10年後にやっと現在の全国平均ほどにしようというなら、加入を義務化する条例を制定する必要はまったくない。条例制定に前向きだった会派は、いったい義務化してどれほどの加入率を目指していたのか。

 私は、自転車利用の利便性と安全確保の両立、そしてそのバランスが大切だと考えている。ヘルメットをかぶれば事故の際の被害は軽減し、賠償保険に入っていれば、被害者の救済に資するが、「ヘルメットや保険加入が面倒だから自転車に乗らない」という人が増えたら、活用推進にはならない。

 いずれも、現行法や県条例で法的根拠は足りており、これに基づく計画や各種の施策で安全利用や保険加入を進めるべきであると考える。

 1月29日の特別委員会で、前回配布をお願いしておいた次期「自転車利用環境整備計画」について「まだ、読み込んでいない」と発言する委員がいたことに驚いた。しかも、条例制定に最も積極的であった委員の一人である。

 次期「自転車利用環境整備計画」は自転車活用推進法で市町村に対して策定の努力義務を課した「自転車活用推進計画」である。

 この素案は、昨年のうちに富山市のホームページに掲載されており、誰でも(議員でなくとも)知ることができるものであるが、委員各位に見てもらうために、念のため、委員長から前回の委員会の後配布してもらった。

 その意味するところは、条例制定の必要性がないとの参考人の意見とともに、しっかりした次期計画が策定されたことを条例制定不要の理由とするためである。

 この日の委員会では市当局に対して、


 自転車利用環境整備計画について

 自転車の安全利用の促進に関し、計画の着実な推進を図ること

 その際には以下についても合わせて検討すること

ア 来年度以降の自転車の安全に関する施策について速やかに示すとともに、重点的に実施するものについて市民等へ周知すること

イ 10年後の目標指標の設定のみではなく、5年後などの途中段階での指標を設定すること

以下略


などを意見・要望するというのである。

 しかし、次期「自転車利用環境整備計画」は正にその施策であり、現計画から切れ目なく実施するために今年度中に策定されるもので、中間見直しの段階で、全国の加入率を確認し、数値目標を見直すことも記されており、この意見・要望はまったく的を射ていない。

 いったいこの計画を何だと思っているのか。

 私と他の委員の認識のずれの原因は、自転車に関する基礎的な知識・経験の違いから生ずると考える。本特別委員会は調査を終了し廃止するが、議員各位には自転車の活用推進について、調査研究を続けていただきたい。

一つは道路交通法をはじめとした関係法令の読み込みと理解。もう一つは視察である。本委員会のメンバーである私と鋪田委員長は国内の視察はもとより、デンマークのコペンハーゲンにも視察に行き、世界一と言っていい自転車活用を見てきた。とかく批判の対象となる海外視察であるが、その意義は大きく、是非先進地を見てくるべきだと思う。現在は政務活動費の運用指針で、海外視察は事実上困難となっているが、ならば、自費で視察に行き、自転車活用推進の意義を理解するべきであり、特に若い議員はそれくらいの熱意をもって政策立案に臨んでほしい。

 私もまだまだ調査研究を重ね、本市に相応しい、自転車利用環境、自転車活用推進施策を提案していく決意である。

 長文を最後までお読みいただきありがとうございました。