村上法律事務所〜相模原の弁護士〜
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since 2017.10.19



    目次
   13 2018.5. 1(火)  【高等文官試験(司法科)復活の予想】
   12 2018.4.13(金) 【非免責債権の減免の可否】
   11 2018.3.15(木) 【破産手続きにおける免責不許可と非免責債権】

   10 2017.11.2(木) 【建築紛争に関する弁護士のためのセミナー】
   9 2017.10.19(木) 【お子さんが弁護士になりたいと言ったら】
   8 2017.8.23(水) 【経済的全損】
   7 2017.7.31(月) 【主婦の休業損害】
   6 2017.6.27(火) 【裁判官の性差】  
   5 2017.5.19(金) 【 子供の連れ去りと親権者】
   4 2017.4.10(月) 【弁護士が作成する請求文書】
   3 2017.3.7(火)   【後遺障害の等級認定】
   2 2017.2.24(金) 【簡易裁判所判事】
   1 2013.6.28(金) 【裁判で真実を明らかにする?】



13 2018.5.1(火) 【高等文官試験(司法科)復活の予想】
 太平洋戦争の前,我が国は,ドイツやフランスの司法制度を参考にした制度が採用されていたため,公務員組である裁判官・検察官と民間組である弁護士とは資格試験が異なり,公務員組は高等文官試験(司法科)の合格者から採用されていました。太平洋戦争の後,弁護士から裁判官や検察官を選出する法曹一元を採用するアメリカを参考にして制度が見直された結果,アメリカと同じとまでは行かなかったものの,少なくとも共通の司法試験を受験し,その合格者が司法研修所での共通の司法修習を経て裁判官・検察官・弁護士となる,いわば入口限定の部分的な法曹一元の制度が出来上がりました。
 しかし今,この制度が危機に瀕しています。弁護士大増員により弁護士の経済価値が毀損するのにお付き合いする形で司法試験受験の価値下落・魅力喪失を招き,司法改革以前に法曹界のエリートを多数輩出してきたトップクラスの大学の学生が司法試験の受験を敬遠するようになってしまいました。その結果,弁護士の知的レベルが低下するだけでは済まず,裁判官の職務に耐えうる優秀な人材を確保することができなくなり,昨年度は大量の司法試験合格者と司法修習修了者がいたにもかかわらず,裁判官の採用者はわずか65名の少数に留まりました(驚くべきはその出身大学の内訳です。)。司法試験の合格者500人時代にあってさえ100人弱を確保できていたにもかかわらずです。最高裁判所は,司法試験合格者を大増員すれば,合格者の知的レベルが全体として低下することはあっても,まさか裁判官として採用できるレベルの人材を確保できなくなるまでに至るとは予想していなかったはずです。弁護士大増員を推進した面々は,弁護士の知的レベルが低下しても(それ自体誠に遺憾ではありますが…。),最後の砦となる裁判所がしっかりしていれば,国家として,あるいは国民として不利益は生じないと考えていたのでしょうが,それも危うくなったということです。
 こうなれば,最高裁判所,そして法務省としても,キャリア官僚や外交官と同じレベルの人材を確保するためには,受験価値の下落した司法試験とは分離した独自の,そして合格者500人時代の司法試験を上回る難度の試験制度を新たに採用するしかありません。戦前の高等文官試験(司法科)の復活です。日弁連は,司法試験合格者を大増員することによりアメリカ流の法曹一元を実現したいと考えていたフシがあるのですが,現実にはそれと逆の結果が導かれることになりそうです。日弁連,どこまでも世間知らずです。司法改革の主導者たちから見れば,日弁連を丸め込むなど赤子の手をひねるより楽であったに違いありません。
 さて,裁判制度の利用者から見れば,どのような試験制度が合理的と考えられるでしょうか。法曹三者全体が一定以上のレベルを備えている制度,弁護士は劣ることがあっても,裁判官と検察官は一定以上のレベルを備えている制度,どちらをお望みですか。

12 2018.4.13(金) 【非免責債権の減免の可否】 
 破産法253条1項,民事再生法229条3項は,非免責債権についての規定をおいています。これらの規定により,破産手続きで免責許可決定を受けたとしても,あるいは民事再生手続きで再生計画が認可されたとしても,債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権,故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権,婚姻費用・養育費等の親族関係に基づく請求権などが減免の対象から外されています。では,これらの債務の減免を受けることは絶対に不可能なのでしょうか?
 民事再生法229条3項の規定は,民事再生法の第13章「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する督促」に置かれており,裏を返せば,いわば民事再生手続きの中では特則に位置付けられる小規模個人再生あるいは給与所得者等再生ではない,通常の民事再生手続き(手続きフル装備の重たく煩瑣な民事再生手続き)であれば,その適用がない,減額の対象に含め得ることを意味します。しかしながら,これらの非免責債権の額が債務者の債務の額の過半数を占めていれば,再生計画が債権者に承認されることはありませんので,通常の民事再生手続きにより非免責債権が減額されるのは,事実上,非免責債権以外にそれ以上の額の多額の債務があり,非免責債権以外の多額の債務の債権者が再生計画を承認する場合に限定されることになります。なかなかハードルは高いです。


11 2018.3.15(木) 【破産手続きにおける免責不許可と非免責債権】 
 いよいよ債務の支払いをできなくなったとき,破産を申し立て,免責許可を受けることにより債務を免れて,経済的更生を図ることができます。
 しかし,破産法は,免責不許可となる場合,また,免責許可となっても個別に免責されない債務(非免責債権)についての規定を設けています。
 まず免責不許可については,破産法252条に規定があり,そこに列挙された事由がある場合には,原則として免責が認められないことになっています。例えば,債権者を害する目的で破産財団の価値を不当に減少させる行為,破産手続き開始の遅延を目的とする債務負担・財産処分等,特定の債権者に対する優遇措置,浪費・賭博等の射幸行為,破産手続きに対する妨害行為・協力義務違反等,過去7年以内に免責許可を受けていることなどです。免責不許可事由が認められる場合であっても,裁判所の裁量により免責が許可される場合がありますが,結果的に免責不許可とされた場合は,破産手続きが終了した後も,すべての債務の支払義務を負い続けることになります。なお,現在の運用では,免責許可が大変認められやすくなっており,私が弁護士登録した平成9年当時であれば,免責が許可されなかったような浪費事案であっても,破産管財人による調査さえ経ずに裁判所の裁量による免責許可が認められるケースもあり,原則と例外が逆転している印象があります。
 次に,免責許可となった場合であっても,免責の対象とならない個別の債務(非免責債権)についてです。これについては破産法253条が規定しています。租税等の請求権,悪意で加えた(害意に基づいて程度の意味です。)不法行為に基づく損害賠償請求権,故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権,婚姻費用,養育費,雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権,罰金等などが該当します。
 これから破産の申立てを検討されている方で,御自身に免責不許可事由があると思われる場合,あるいは非免責債権が含まれると思われる場合の対処方については,事由ごとに対処方も異なりますので,依頼される弁護士に相談なさって下さい。


10 2017.11.2(木) 【建築紛争に関する弁護士のためのセミナー】 
 今月から来年2月まで神奈川県建築士会が主催する「建築紛争に関する弁護士のためのセミナー」に参加します。テーマは,
第1回「住宅の紛争事例より」
第2回「判例による建築計画の基礎知識」
第3回「判例による建築の構造(コンクリートのひび割れと関連事例…強度不足,かぶり不足)」
第4回「判例による地盤と構造に関する説明」
です。
 もともと建築には興味があり,旭川弁護士会に在籍した当時には,弁護士会に設置する住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の定める住宅紛争処理期機関の立ち上げに関わる機会を得て,建築基準法や建築物の構造などに関する多くの勉強をしました。個人的にも,品確法の住宅性能表示制度による性能評価(設計・建築)を利用しました。
 最近は工務店・建設業者も下請けの各設備業者(基礎,屋根,外壁,水道,電気,内装,塗装など)も技術レベルが上がっており,瑕疵物件が建ち上がる危険は少なくなっているようにも感じられます。しかし,建築棟数の増加,建築関係の人材不足などにより気を許せば再び安全性を欠くような物件もまた建設されるようになりますし,また,消費者の厳しい目から新たな問題が提起されるかもしれません。特別の縁でもない限り,多くの事案を受任できる分野ではありませんが,新しい問題にも対処できるように備えます。


9 2017.10.19(木) 【お子さんが弁護士になりたいと言ったら】 
 今回は,雑談です。あなたのお子さんが弁護士になりたいと言ったらどのようにアドバイスしたら良いでしょうか。弁護士の置かれている現状を少しお話ししましょう。
 私が弁護士登録をした1997年(平成9年)当時,弁護士の登録数は1万6000人弱でした。今年2017年(平成29年)12月には4万人(2.5倍)に達する見込みです。他方,裁判所の事件受理件数はピーク時の7割程度に減少しています。70%に減った仕事を2.5倍に増えた弁護士で分け合うとすれば,1人当たりの事件数はわずか28%に減ったということになります。1997年(平成9年)当時であっても,弁護士は,医師に比べれば,経済的にはるかに恵まれていませんでした。因みに,弁護士を短期間のうちに激増させた司法改革の中で,裁判官と検察官はほとんど増やされず,いわば弁護士一人負けです。安易に弁護士大増員を受け入れた日弁連のお人好しぶりが間抜けにさえ感じられます。裁判所を利用した人に何が問題であるかを取材することもなく,おもしろおかしく弁護士を増やせば国民が幸せになれると報道していたマスコミの無責任ぶりは非難に値します。
 ところで,一時期より減らしたとはいえ,今年も司法試験の合格者は1500人を超えています。そして法務省は今後も合格者1500人以上を維持する方針です。1500人のうち200人が裁判官,検察官,学者その他に進むとすると,1300人が弁護士登録をする可能性があります。1300人で40世代が存在すれば総数は5万2000人に上ります。弁護士登録数4万人の現在であっても,既に法曹資格を有しても弁護士登録さえせずに別の仕事をしている者,あるいは,いったん弁護士登録をしても廃業する者が続出しているのに,司法試験合格者を1500人以上も輩出し続ければどのようなことになるのか,日本の人口は短期間のうちに急激に減少することが確実なのに,想像するのも恐ろしいですね。
 弁護士は,もはや合理的な判断能力を備えた人が選択する職業ではなくなりました。お子さんが弁護士になりたいと言ったら,そのお子さんがよほど商売の才能があると期待される場合以外は,「医師を目指しなさい。」とアドバイスするのが賢明です。やりがいだけでは,家族の生活を支えることはできませんから。
※補足です。[2017.11.2(木)]
最高裁によれば,民事事件・行政事件の受理件数は,平成7年度2,411,360件,同15年度3,520,500件[最高値],同28年度1,470,612件とのことですので,私が弁護士登録したときに比べると,弁護士1人当たりの事件数は,25%に減ったことになります。


8 2017.8.23(水) 【経済的全損】 
 例えば,自動車が交通事故により損傷し,修理代が150万円,損傷した自動車の事故前の時価額が80万円である場合,修理代の150万円ではなく,時価額の80万円が自動車の損害となると考えます。このように修理代が時価額を上回る場合のことを「経済的全損」と言います。被害者からすれば,「古いとはいえまだ使えたのに。」,あるいは「時価額を支払われても買い替えできない。」と不満を覚えるのはもっともなのですが,時価額以上の賠償をする必要はないというのが実務の確立した考えです。その考え方自体は受け入れるより他ないのですが,損害賠償請求をする場合,合理的な時価額がいくらであるのかを適切に調査・証明できるかが腕の見せ所となります。自動車については,保険会社が活用している「レッド・ブック」の金額を鵜呑みにすることはできないのです。

7 2017.7.31(月) 【主婦の休業損害】 
 交通事故に限らず,事件・事故(不法行為と言います。)が原因で仕事ができずに減収が生じた場合,被害者は加害者に対して「休業損害」を請求することができます。
 男性の給与所得者で,給与明細書に欠勤日数と減収額が記載されていれば,あるいは勤務先がその証明書を発行してくれるのであれば,「休業損害」の額はその減収額で決まりです。難しいのは女性です。
 専業主婦については,統計資料(賃金センサス)に基づいた女子全学歴全年齢平均賃金(約360万円)をベースに治療期間中にどの程度家事をできなかったかの割合を乗じて「休業損害」の額を算出します。
 主婦兼有職者の場合には,主婦として計算した休業損害額と稼働収入の減収額とを比較して,高い方を「休業損害」とみなします(主婦兼有職者について,稼働収入の減収額のみを休業損害とすると判断する裁判官もいないではないですが,私が知る限り,交通事故専門部である東京地方裁判所民事27部はそのような考え方を採用していません。)。
 本来金銭的な評価をすることのできない家事労働を年額約360万円に値するとみなすこと,今どき家事を一切引き受けない男性などほとんどいないのに,主として女性だけに主婦休業損害を認めること,これらに釈然としない方もいらっしゃるでしょう。今後下級審がどのように運用して行くか,あるいは最高裁がこの点について何らかの判断を示すか,興味のあるところです。

6 2017.6.27(火) 【裁判官の性差】 
 一方で,当該事案についてはバランスを失する結論になるとしても,頑なに判例や一般的な事実認定論に従おうとする裁判官がおり,他方で,判例や一般的な事実認定論を飛び越えてでも,当事者本人やその代理人の好き嫌いが露骨に判断に影響してしまう裁判官もいます。この傾向には顕著な性差があるように感じているのですが,どちらが男性の裁判官でどちらが女性の裁判官であるかについては,想像にお任せします。

5 2017.5.19(金) 【子供の連れ去りと親権者】 
 離婚することを決めた一方配偶者が他方配偶者に無断で子供を連れ去って別居し,離婚調停や離婚訴訟で子供を養育している実態を強調して,親権者に相応しいのは自らだと主張することがあります。そして,無断の連れ去りをマイナスに評価することもなく,むしろ養育している実態をプラスに評価して,現に養育している一方配偶者に親権を認める傾向がまだまだ家庭裁判所に見受けられます。
 これでは家庭裁判所が「親権を取りたければ,他方配偶者の隙を見て子供を連れ去り,別居して子供を養育している既成事実を作れ。」と言っているようなものです。まさに「誘拐天国日本」,他の先進国であれば,刑事事件になることも覚悟しなければならないほどですが…。家庭裁判所には,なぜ日本がハーグ条約を締結させられたかを良く考えていただきたいものです。子供が無断で連れ去られたらひとまず元の住居・養育環境に子供を戻す,子供の無断連れ去りの事実は親権者の指定に当たってマイナスに評価するくらいの運用をしなければならないと思っています。

4 2017.4.10(月) 【弁護士が作成する請求文書】 
 弁護士が請求文書を作成するに際して,やめた方が良いと思っていることが2つあります。
 1つは,実際にはその案件に関わっていない弁護士まで含めた複数の弁護士の名をズラズラと代理人として列挙すること,もう1つは,相手方と協議して初めて支払金額を決められるような事案であるにもかかわらず,一方的に金額を決定し,また,法的措置を講じる期限を指定して支払いを求めることです。どちらも請求金額に合理性がなくても,代理人の就いていない相手方が脅えたのに乗じて回収を図ってしまおうという意図が明らかです。依頼者を喜ばせる効果はあるかもしれませんが,それでは弁護士がその筋の連中と変わないことになってしまいます。

3 2017.3.7(火) 【後遺障害の等級認定】 
 交通事故の被害者が後遺障害等級の認定を受けられるのと受けられないのとでは,損害賠償金額が大きく変わってきます。
 痛みについては,レントゲンやMRIなどの画像等の他覚所見から痛みの原因が認められなくとも,14級9号「局部に神経症状を残すもの」が認定される場合があります。14級9号が認められるかについては,他覚所見がないだけに,被害者がどれだけ痛みそのものと痛みにより日常生活に支障を生じているかを説得的に説明できるかにかかっていると言えます。
 ところで,これまで経験してきた中で,特に注意しなければならないと感じていることがあります。それは,関節可動域の制限について後遺障害の認定を受けようとするのであれば,「後遺障害診断書」に自賠責保険が要求する箇所の可動角度がすべて記載されていなければならないのですが,その記載が漏れていることがたびたびあるということです。「後遺障害診断書」を記載する整形外科医は意外に後遺障害認定の実務に詳しくないのだと思います。これまで何度か計測漏れに気が付いて,被害者の主治医に計測箇所の補正した「後遺障害診断書」の再作成をお願いして,後遺障害の認定を得たり,後遺障害等級のアップを実現することができました。

2 2017.2.24(金) 【簡易裁判所判事】 
 簡易裁判所の裁判官は,判事を65歳で定年退職した後に簡易裁判所判事の資格で配属されている人,判事の資格を持ちながらも定年前に配属されている人,また,少数ながら司法試験を経ずに裁判所書記官から簡易裁判所判事になるための試験に合格した人などいろいろいます。
 膨大な事件数を抱えているので致し方ないところもありますが,地方裁判所や高等裁判所に比べると,裁判例をよく調べていないなど少し手抜きを感じることがあります。代理人の就いていない本人訴訟の当事者に不合理な判断を押し付けて強行に和解を迫ることもあります。裁判官によって見解が分かれる問題であれば仕方ありませんが,圧倒的多数の裁判官が取らない見解を採用している場合には,何とか是正したいものです。しかし,裁判官は一度口にしたことを撤回することができない傾向がありますので,誤った判断を是正するためには,簡易裁判所で判決を受けた後に控訴し,改めて地方裁判所の判断を受けなければなりません。当事者の負担は重いですが,そのときは運が悪かったと思うしかありません。

1 2013.6.28(金) 【裁判で真実を明らかにする?】
 ときどき報道で「真実を明らかにするために裁判をする。」とおっしゃる方をお見受けします。
 しかし,民事裁判は,立証責任を課された当事者が自ら証拠を収集して裁判手続きに提出するのがルールであり,現在のあまりに貧弱な民事訴訟法上の証拠収集手段を前提とする限り,民事裁判を起こしたからといって,相手方が自ら事実を明らかにする場合を除いて,真実が明らかになることはありません。大変残念なことですが,結果として,嘘を付いている当事者,沈黙を貫いた当事者に対して,裁判所と民事訴訟法がお墨付きを与える事態が起きていることになります。