平和と基本的人権を守ろう!仲間たちの連絡会

 No92-3             webへいき連              2022年11月

最近感じること 2022年秋

(日本の原子力発電について 1)

 ロシアのウクライナへの攻撃で、原子力発電所がミサイル攻撃を受けたとの報道をみて、日本の原発がミサイル攻撃の標的になっ た時、これを防ぐことは可能なのだろうかと考えてしまったところです。
 言うまでもなく原発には常に放射能による環境汚染という問題が伴っています。
 原子力発電は、燃料の放射性物質の最終処分方法や事故処理の対処方法など未解決または、解決できない問題が山積した「止める技 術」を確立していない方式です。
 したがって耐用年数も確立できず、廃炉の方法も確立できていなければ、放射性物質は何十年、何百年、何千年、何万年、何億年単位 で事後管理しなければならず、問題は全部次世代への宿題となっています。
 他の発電方式では事故が起こっても、原子力発電のような広範囲に及ぶ環境破壊は、起こりえないと思われます。
日本の電力事業者別の原子炉分布図  現在日本には、54基の商用原発があり、関東圏では、茨木県の東海第二原発、福島県の第一・第二原発、新潟県の柏崎刈羽原発、巻 原発など、大阪圏では福井県の高浜、大飯、美浜、敦賀、石川県の志賀原発などがあり、静岡県には浜岡原発、ここは将来おこるであろ う東海地震の震源域といわれる立地の原発です。
 北日本は北海道の泊原発、青森県の大間、東通原発、宮城県の女川原発、中国地方では島根県の島根原発、四国地方では愛媛県の伊方 原発、九州地方は佐賀県の玄海原発、鹿児島県の川内原発と日本中を網羅しています。
 福島第一原発の事故の際に、もし原子炉格納容器で大規模な爆発が起こった場合には、関東圏は放射能の汚染により、壊滅的な状況を 招いたといわれています。
 狭い日本でこれだけの原発を作ってしまった現状をどう理解したらいいのかと思ってしまうところです。

 世界の原発保有数(基数)ベスト10は (ネット情報を探したので多少の誤差があります。)
 1アメリカ(105)、2フランス(59)、3日本(54)4中国(35)、5ロシア(3  0)、6韓国(25)、7インド (21)、8カナダ(19)、ウクライナ(15)、10イギリス(15)です。(世界の原発の約10パーセントが日本に)

 また国土面積あたりの密集度は  1ベルギー(7)、2韓国(25)、3日本(54)、4スイス(5)、5フランス(59) となり、密集度では世界第3位が我が国になります。
 なぜか日本の公式サイトと電力各社のサイトでは、この数字を出さない傾向がみられます。

 日本の原子力発電の現状について、以下まとめてみました。

 1.安全重視のPWR(加圧水型)と効率優先のBWR(沸騰水型)

 日本の原子力発電にはPWR(Pressurized water reactor)とBWR(Boiling water reactor)2種類がある。PWRは熱交換器を 使用して、放射能を含んだ高温水とタービンを回す蒸気が混ざらないようにして、外の配管とタービン建屋に送る方式であり、放射能を 原子炉建屋の外に出さない方式であるが、コストがかかり効率も悪くなる。BWRは原子炉圧力容器内で水を直接熱するので、放射能を 含んだ蒸気と水が外の配管とタービン建屋を往復することになり、安全性は落ち、外部に放射能漏れの危険性は高まる。
 放射能に対して二重の安全対策をしているのがPWRであり、一重だけなのがBWRなのだ。
 そもそもBWRは、原子力潜水艦に搭載する原子炉として設計されたものであり、最初から安全性を重視していないという側面を持っ ているものなのだ。

 2.電力会社の安全への姿勢

 原子力発電の型式の選択は、見事なほど発電会社により異なっている。
PWRは  「関西電力」「四国電力」「九州電力」「北海道電力」「日本原子力発電」(敦賀) BWRは
 「東京電力」「中部電力」「中国電力」「北陸電力」「東北電力」「日本原電」(東海第二)
 この違いこそ発電事業を行うのに安全性を優先したか、経済性を重視したかの発電会社の基本的な考え方の問題となる。
 なお日本原子力発電は、日本初の「東海1号PWR」(廃炉中)と「敦賀1号BWR」であるが「敦賀2号」ではPWRに戻している のが注目される。
 もし福島第一原発がPWRであったならば、外部配管とタービン建屋からの放射能漏れは防げたかもしれないのだが、東電はその他で もすべてBWRを選択している。BWRは、安全優先というならば「地震大国日本」が選択してはいけないものだったのだ
 電力業界も経産相もBWRのリスクを当然承知しており、その設置許可を出していた監督官庁も承知の上での建設許可だったのだ。
 「安全を最優先に」という電力業界と行政のコマーシャルがむなしく聞こえる。

 3.現在稼働中の原子力発電所

 福島第一発電所の事故により、全基停止していた原発だが、現在は再稼働されている。
  「関西電力」大飯・高浜・美浜(福井)
  「九州電力」玄海(佐賀)・川内(鹿児島)
  「四国電力」伊方(愛媛)
  (6発電所10基で、これらはすべてPWRの原子炉となっている)
 また再稼働承認済の原子力発電所は
  「東北電力」女川(宮城)
  「東京電力」柏崎刈羽(新潟)
  「日本原電」東海第二(茨城)
  「中国電力」島根(島根)
  (4発電所14基で、これらはすべてBWRの原子炉となっている)
 いずれも何らかの問題があり、再稼働はしていないのが現状だが、当初は安全性のより高いPWRの再稼働申請だったのだが、その後 安全度の低いBWRも再申請を出しているのに対してマスコミもこの違いを問題視して報道していないのは、なぜなのか疑問に感じると ころです。
 政府や電力会社は、「軽水炉」は最新技術で安全という表現を使っているが、軽水炉には2種類あり、BWRが外部配管やタービン建 屋に放射能を含んだ水が循環していることをあいまいにしておきたいと思われます。

 4.最近の動向について

 政府は上記の原発の再稼働について追加で目指す方針を確認しました。また、これまで原発の新増設について「想定していない」 としていましたが、次世代の原子炉の開発や建設を検討することを明らかにしました。これは最近の電力の逼迫状況を利用して発表する タイミングを謀ったとしか思えません。原子力をやめる方向からは、反対の政策です。
 私の住む近所には、久里浜港のそばに横須賀火力発電所があり、今は旧の設備を完全に壊して、新しく火力(石炭)発電所を2基建設 中です。(2023年発電開始予定) 化石燃料の発電では、CO2の排出による地球温暖化を心配する声もありますが、最新の技術を もってすればCO2の排出を極力抑える技術の開発は可能ではないでしょうか?放射能の心配のない方式であり、首都圏に近く発送効率 もよい発電所だとおもいます。
 日本の方針であった核燃料サイクルを推進した「高速増殖炉もんじゅ」(日本原子力開発機構:福井県敦賀市)は2018年3月(平 成30年)様々なトラブルの頻発により廃炉が決定しています。もんじゅの開発建設には1兆円がかかったと言われています。
 また、現在は事故を起こした福島第一原発の4基を含めて24基の原発が廃炉決定となっています。最終処分の方法と処分地も決まら ずに核廃棄物が溜まり続けていくことになります。
 私たちの世代では、解決方法もなく次世代への大変な負の遺産となってしまいました。

 原子力発電所の廃炉に向けて、次回では六ケ所村再処理工場の問題等を取り上げていきたいと思ます。

       2022年10月23日  H.I

◆ 参考とした本
「配管設計者がバラす原発の性能」(古矢光正 (株)三五館 2014年3月発行)
「小出裕章が答える 原発と放射能」(小出裕章 河出書房新社 2011年9月発行)
「明日なき原発」(柴野徹夫 (株)未来社 2011年6月発行)