当ガイドラインでは、「遅くとも平成29年度以降においては、法令に違反する社会保険未加入企業は、下請企業として選定しないとの取扱いをすべきである。」と明言しています。
公共工事については即、浸透するでしょう。民間工事についても、ある程度の規模の現場では元請企業の現場管理責任が年々厳しくなっているので、早い段階で浸透すると思われます。
例えば、オフィスビルの新築工事で大手ゼネコンが受注した場合、多くの下請企業を使って工事を進めていくのですが、その際元請ゼネコンは施行体制台帳の作成や再下請通知書、さらに作業員名簿等で現場に出入りする業者(作業員)を管理するという義務があります。これに加え社会保険の加入状況についても把握しなければならないということです。型枠大工の職人さん、電気工事の職人さん等、個々人の社会保険加入状況を確認し、必要に応じて下請企業等を通じ、指導を行っていくというイメージです。
以前、建設業許可が無ければ仕事がもらえない、ということで建設業許可申請が増えた時期がありました。(請負金額500万円以上は建設業許可が必要) それと同様に仕事を受注するために社会保険加入もやむを得ないという企業が、予想より早い時期に増えると思われます。国交省からすれば効果てき面ということでしょうか?
しかし、先日従業員5人程の建設業者で社会保険(雇用・医療・厚生年金)に加入した場合の試算をしたところ、会社負担が毎月20〜30万円増えることになり、今すぐに加入するのは無理という話になりました。建設業許可の申請を行うのとはケタが違いますよね。
また今後、次のようなことも考えられます。建設企業の多くが社会保険に加入するということは、これまでの見積金額に法定福利費が上乗せされるということです。最終的に元請企業の利益を圧迫することになりかねないという表裏一体になることが予想されます。極論を言えば、建設資本全体を上げていかなければならないということです。
これからの数年間は端境期ですので、どこかにしわ寄せが行くはずです。企業は生き残りを掛けた戦略的な経営に携わる必要があります。もはや安いだけでは仕事が受注出来ない時代に突入するということです。
社会保険に加入しても事業を継続できるか否かが企業の明暗を分けます。法的福利費を増額した金額で契約を取れるか否かということです。
技能労働者の雇用環境の改善を「建設産業再生と発展」の大きな目的に掲げているように、今後は優秀な技能労働者(職人さん)を確保する企業が戦略的に優位に立つことが考えられます。
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」国土交通省HP
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_fr2_000008.html