近年、法令遵守の観点から仕事を受注するには「建設業の許可」を取得していることが条件とされ、急いで建設業許可の申請をしてほしいと依頼を受けることが多々あります。
同様に近い将来には、社会保険等の完備が仕事を受注する条件になる可能性がでてきました。また、建設業許可の申請や更新時の要件として社会保険の完備が加わる可能性もあります。これは、実務を経験している立場からいうとかなりハードルの高い要求です。なかなか利益の出しにくい昨今の建設業界で新たに社会保険料の支出をすることは会社にも労働者にとっても大きな負担となります。
建設業許可は、知事許可と国土交通大臣許可に大別されますが国レベルと都道府県レベルには大きな温度差があり、圧倒的に数が多く、中小・零細企業が大半を占めている知事許可の建設業者へこれらの政策を浸透させるには至難のことだと思います。しかし、既に話題になっている「パート労働者の厚生年金」問題などのことを考えると総合的な流れなのかも知れません。
社会保険未加入の建設業者は、いざという時のために準備し備えておく必要があります。
↓↓ 国土交通省 省令・告示案のPDFはこちらから ↓↓
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155120303&Mode=0
○法令改正案の背景としては以下のことが挙げられています。
1. | 下請企業を中心に雇用・医療・年金保険について法定福利費を適正に負担しない企業が存在する。(すなわち保険未加入企業) |
1. | 技能労働者の公的保障が確保されず、若年入職者減少の一因となっている。 |
1. | 法的福利費を負担する企業ほど競争上不利となり不公平である。 |
対策は | |
1. | 建設業許可申請に際して保険加入状況の確認・指導を行う。 |
1. | 元請業者に下請業者の保険加入状況を把握させる。 |
1. | 経営事項審査における未加入企業へ評価の厳格化を行う。 |
効果は | |
1. | 技能労働者に対する雇用環境の改善 |
1. | 不良不適格業者の排除 |
目的は | |
1. | 建設産業の持続的な発展に必要な人材の確保 |
1. | 事業者間における公平で健全な競争環境の構築 |
○具体的な対策
@建設業許可申請書の添付書類として保険加入状況の追加 | |
新規及び更新の申請時に"健康保険等"の加入状況を記載した書面を添付書類として提出させ、保険加入状況の確認及び指導を行う。 | |
A施工体制台帳等の記載事項への保険加入状況の追加 | |
特定建設業者及び下請負人が、その請け負う工事における下請負人等の保険加入状況を把握するため施工体制台帳に健康保険等の加入状況に係る事項を追加する。 | |
B経営事項審査における保険未加入企業への減点措置の厳格化 | |
「雇用保険」、「健康保険」及び「厚生年金保険」の各項目について、未加入の場合 それぞれ40点の減点とする。(3保険未加入の場合120点の減点) |
○今後スケジュール
公布 | 平成24年 5月上旬 |
施行 | 平成24年 7月上旬 (上記のうちBについて) |
平成24年11月上旬 (上記のうち@Aについて) |
◇参照資料
中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会基本問題小委員会
「中間とりまとめ」 平成24年1月27日
http://www.mlit.go.jp/common/000189925.pdf
(社会保険未加入問題への対策)
中央建設業審議会 平成24年3月14日
http://www.mlit.go.jp/common/000204540.pdf
(経営事項審査の審査基準の改正について)