Compassion 井上嘉浩さんと共にカルト被害のない社会を願う会

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いま考えていること


・『三月のライオン』7〜12巻 (2017年5月29日)

 『三月のライオン』7〜9巻を拝読しました。
 7巻の初出がヤングアニマル2011年15号、12巻が2016年15号とあり、約5年間もの著者の懸命な努力の結晶が、読者には数時間で読めることに申し訳ないと思いつつ、色々と考えさせられました。

 「もちろん神から見れば人間の指す手は悪手だらけなのでしょうが、それが分からないという事です」(8巻より)

と、先崎学氏がライオン将棋コラムで解説されていました。決まった答えなどありません。主人公の零をはじめ将棋の棋士の生きざまは不器用ですが見事です。

 「「思いつき」や「度胸」などで踏み込めるものではありません。<中略>ここまで徹底的にあらゆる場面を想定していたのかと」(9巻より)

 一手一手を考えに考え抜いても、それでも悪手となり、最善の手はめったなことでは見つからないことがよくわかります。それは人生そのものでもあると、さりげなく語られています。まるでカルトとは逆です。社会や人生の様々な問題に対してカルト教祖のたぐいの者たちはもっともらしい答えを掲げていますが、ニセモノにすぎないと、自分自身の過ちから断言できます。

 そもそも本来、宗教は答えを与えるものではありません。問題や答えといった二元論的に物事をとらえる見方を突き破っていく方向にあると言えるかもしれません。現実的な様々な問題の解決と、本来宗教が解決しようとしているテーマとは、重なるものがあったとしても同じものではありません。イエスが「神のものは神へ、カエサルのものはカエサルへ」と語られたように、これらをしっかり切り分けることが宗教の名のもとにおけるテロ事件の再発防止に不可欠であると身に染みています。

 「結局 僕は何もできなかった」(7巻より)と零はいじめの問題を克服したひなたにつぶやきます。「「でも」じゃないっ。桐山くんのバカっ」とひなたは怒ります。ひなたが克服できたのは零が支え続けていたからでもありました。救いとは何か?ということが、とてもデリケートに語られていました。

 「人に伝わるのは結果だけじゃない。世界は結果だけで回っているんじゃないんだよ」
 今の時代に、大切にしたい言葉です。

2017年5月29日 井上嘉浩


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