・映画「リンカーン」(2016年9月7日)
映画「リンカーン」を拝見しました。
リンカーンは1863年の南北戦争で北部を勝利に導き、奴隷解放を宣言したアメリカの第16代大統領です。
南北戦争の主な原因は北部の奴隷解放の動きを南部が反対したことにありました。
ですので奴隷解放の実現と南北戦争の終結は矛盾そのもので両立は不可能と言われていました。
それを決してあきらめることなく実現していくリンカーンの心と姿には、今、世界中で起きている戦争やテロなどの問題を解決していくヒントがあるように思われました。
「何か一つのものとひとしいものが2つあるとそれらはひとしい」
二千年前もの数学者ユークリッドの共通概念をリンカーンが語る場面がありました。これは自明の理だと、ユークリッドは語っていると、リンカーンは自分に問いかけるように語ります。
「はじまりはひとしい、それが願い
差がない、それが公平、それが正義だ」と、リンカーンは自答し、両立不可能とされた矛盾を統一するためのある決断をします。
「それが正義だ」とリンカーンの語る正義に驚き、感動しました。それは戦争やテロやカルトなどで持ち出される矛盾や善悪を二分した上で掲げられる正義を根底からひっくりかえし、差がないことを正義とするものであるからでした。
それは単なる平等でも、理想の理念でもないと、映画のかくし味のように様々なエピソードでさりげなく語られているかのようでした。
それは決まった形のある正義ではなく、むしろ無形のもので、矛盾する様々な姿をもれなく包み込み、つないでいくものであるかのように感じました。
「人民の人民による人民のための政治」とリンカーンが人生をかけて守り抜いた民主主義とはどのような歴史の中で生まれ、育まれてきたのかをはじめて知りました。
改めて救済の大義の名のもとにおいて犯した大罪の罪深さ、いのちの痛みをかみしめています。
二度とこのような事件が起きないように願わずにはいられません。
2016年9月7日 井上嘉浩