★サイト一周年記念企画★
イルファーラン観光ツアー
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これは、サイト一周年記念の、お遊び企画です。
キリ番ゲッター様とイラスト寄贈者様をイルファーランにご招待して、
不定期・回数未定で書き下ろし連載しています。
★企画の詳細はこちら★
★参加者の紹介は第一回の本文中にあります★
<第五回・羊囲いにて> 秋の日は短い。そろそろ夕方が近づいてきた。次の見学地は、アルファ−ドが働く、村の共同羊囲いである。 「は−い、みなさん、見えますか? あれが冬用の羊囲いで−す。ほら、あそこでアルファ−ドとミュシカが働いていま−す」 柵に向かって歩きながら、里菜が、羊の群れの中の一人と一匹を指さした。 「あのね、ほんとはね、アルファ−ドにもツア−に同行してって頼んだんだけど、仕事があるからって断られちゃったの。でも、実は、きっと、女の人が多いから恥ずかしがってるのよ。だって、最初は、『嫌だって言ってるけど、もう一押しすれば、もしかしたら、うんって言ってくれるかも』って感じだったんだけど、そこでうっかり口をすべらせて、お客さんはほとんど女の人ばかりだって言ったら、突然、ピキ〜ンって、態度が硬化しちゃったもん。でも、夜の懇親会には、ちゃんと来ることになってますから、安心して下さいね。で、その前に、ちょっと、ここでアルファ−ドの仕事を見学させてもらいましょう。アルファ−ド、ちょっと来てー!」 里菜に呼ばれて一行に気がついたアルファ−ドは、ミュシカを連れて大股でこちらに歩いて来た。そして、柵の前で立ち止まり、無言で会釈した。 茶色い革の長靴に乾いた泥がこびりつき、上着には藁くずがくっついて、いかにも農夫然とした出で立ちだが、それにもかかわらず、どう見てもただのありふれた農夫には見えない独特の威厳のようなものが漂っているのは、暗褐色の瞳が宿す穏やかな知性の輝きと、折り目正しく背筋を伸ばした均整の取れた体躯の圧倒的な存在感のせいだろうか。身長は183センチ程と、それほど人並みはずれて高いわけではないのだが、肩幅や厚みがあるので、間近に立たれると、ぬうっとでっかい印象で、妙に圧迫感があるのだ。 「みなさん、ご紹介します。アルファ−ドとミュシカです。アルファ−ド、こちらがツア−の皆さんです。ご挨拶してね」 「え……?」 アルファ−ドは里菜の顔を見て、客人の方を見て、ちょっと困った顔をしたが、やがてぼそりと口を開いた。 「……どうも」 みんな、黙って次の言葉を待った。 そのまま、しばらく、まぬけな沈黙が流れた。 どうやら、挨拶は、今の一言で終わりだったらしい。 里菜が、やっとのことで口を開いた。 「……アルファ−ド。それだけ?」 「ああ。……もっと、何か言った方が良かっただろうか?」 「ううん、いい。もういいわ」 里菜はアルファ−ドにそれ以上の挨拶をさせるのをあきらめた。 「じゃあ、挨拶はもういいから、お客様に何か羊の話をしてあげてくれる?」 「……」 アルファ−ドが困り果てて立ちつくしていると、ロ−イが一同の後ろからしゃしゃり出た。 「ああ、じれってえなあ! いいよ、あんたはすっこんでなよ。俺が説明するよ。いいかぁ、みんな。ここが冬用の羊囲いだよ。山の草が枯れた後、根雪が深く積もるまでの間は、羊はここに集めとくの! ここはな、休耕地なんだけど、ほら、こうやって羊が糞をしたり、蹄で地面を耕して飼料や藁くずを土に混ぜ込んだりするから、それが冬の間にいい寒肥になって、次の年は作物がよく育つんだぜ。柵の中だから、昼間は別に、ずっと羊を見張ってる必要はないんだけど、今は夕方で、これから羊を集めて、飼い主に引き渡して、それぞれの家に連れ帰ってもらうところなんだよ。それで、これから、アルファ−ドとミュシカの出番なんだ。それが終わったら、もう今日の仕事は終わりだから、懇親会に合流してもらうぜ。な、アルファ−ド?」 「ああ」 里菜がロ−イの助け船にほっとした様子で司会を引き継いだ。 「というわけです。何か、羊とか羊飼いの仕事とかのことで、アルファ−ドに質問のある人、いますか?」 誰も手を上げたかったのは、ただ本当に質問が無かっただけなのか、それとも、みんな、寡黙なアルファ−ドに遠慮して質問を控えたのか。 いずれにしても、里菜は、質問が無かったことに、少しほっとしたようだ。 「……いませんね。じゃあ、アルファ−ド、みんなに、羊の毛を刈るとこ、見せてあげてよ」 「……えっ。いや、今は羊の毛を刈る時期じゃないから……」 「ええ〜っ! いいじゃない、何も全部じゃなくて、一頭だけでいいのよ」 「悪いが、駄目だ」 「なんで? 牧場といえば羊の毛刈りショ−よ! これは、絶対、欠かせないわ! 毛を刈った後の羊は、すぐに皮膚を保護するためのラノリンが分泌されて、表面がつるつるになるの。それを、みんなに触ってもらうのよ。それが牧場見学のお約束なの! ねぇ、いいでしょ、お願い、ね?」 里菜が、アルファ−ドの腕に手をかけて下から顔をのぞき込み、伸び上がらんばかりに一生懸命おねだりする様子は、はたで見ているロ−イの目にはムカっ腹が立つほどかわいかったのだが、肝心のアルファ−ドは、頑として揺らがなかった。 「駄目だ。羊に無用なストレスを与えたくない。客人方には、申し訳ないが……」 アルファ−ドは一行に向き直って、深々と頭を下げた。 頑固一徹、こだわりの羊飼いである彼にとっては、羊の飼育管理は何を措いても最優先で、客人へのもてなしも、かわいい彼女のおねだりも、牧羊業務の年間スケジュ−ルをほんのちょっとでも乱す理由には成り得ないらしい。 客人たちは、あわててフォロ−に回った。 「いえ、いいんですよぉ」 「ほんと、ほんと。お仕事中ですし。やっぱり、羊さんの健康が第一ですよねぇ」 「そうそう、里菜ちゃん、ほんとに、いいわよ。羊の毛刈りショ−くらい、なにもイルファ−ランまで来なくても見られるんだから……」 ローイが客人たちに、ひそひそと言いつけた。 「なあ、アルファードって、融通きかないだろ? 愛想も悪いし。みんな、こんなヤツ、かまうだけソンだぜ。人間としての面白みに欠けるって言うか、男としての魅力に欠けるって言うか…….。ほら、男なんて、真面目ならそれでいいってもんじゃねえんだよ。そうだろ、お嬢さん方? 俺の方がよっぽど面白みがあると思わねえ?」 誰も聞いていなかった。 里菜は気を取り直してアルファ−ドに頼んだ。 「じゃ、じゃあ、アルファ−ド、ミュシカの牧羊犬ショ−ならいい? ほら、ミュシカにね、羊を柵に追い込んだり、二手に分かれさせたりして、それを見物してもらうの」 「ああ、それならかまわない。ミュシカ!」 アルファ−ドがひと声かけて鋭く口笛を吹くと、それまでのんびり柵のそばに座り込んであくびをしていたミュシカが、しゅたッと起き直って耳をぴんと立て、次の口笛と同時に、羊の群れに向かって疾風のごとく駆け出した。 アルファ−ドの口笛の指示に従って全速力で羊の周りを駆け回り、羊を二手に分けたり一か所に集めたり、無駄のない妙技を披露した上に、アルファ−ドのせめてものサ−ビスなのか、羊囲いの柵を何度も飛び越えて出たり入ったり、更には密集させた羊の背中の上を走って渡るという、とっておきの芸まで見せてくれた。 最後に、アルファ−ドが仕事終了の合図らしい口笛を吹くと、ミュシカは、それまでの誇り高いプロの顔から、たちまちもとの、のんびりしたただの犬の顔に戻って、ゆさゆさとしっぽを振りながら、とことこ戻ってきた。 アルファ−ドは、戻ってきたミュシカに小さく声をかけてをねぎらい、首の周りを撫でてやった。 それを見た里菜が声を上げた。 「あ! そうそう。田島さん! 他の人には懇親会の時に質問をしてもらうことになってるんだけど、田島さんだけ、質問じゃなくて、『ミュシカを撫でたい』っていうのがご希望なんですって。よかったら、今、撫でてやってください。ミュシカは絶対泥足で飛びついたりしないし、こっちから顔をつき出さなければ顔はなめないから、よそゆきの服を着ててもお化粧してても安心して撫でられます」 田島が嬉しそうに進み出て、ミュシカの横にかがみ込んだ。 「すごいわ、田島さん! 初対面の犬とのつき合い方を心得てるわね。見た? まず、真正面から真っ直ぐには近づかなかったでしょ? ちょっと曲線を描いて斜めから近づいて、で、目は合わせないで、しかも、いきなり正面に立ちふさがったりしないで、何気なく斜め横に屈んだでしょ? で、ほら、手を出す時、普通はつい、高い位置から手のひらを頭の上に降ろしちゃうんだけど、自分の手の甲を低い位置に差し出して、まずは自分の臭いを気が済むまで嗅がせてあげたでしょう。これ、初対面の犬に対する、とっても礼儀正しいお近づき法なのよ。あたしはアルファ−ドに教わるまで、それ知らなくて、いきなり上から手ぇ出して頭撫でたりしてたけど。 ミュシカは人懐こくておとなしいし、臆病じゃないし、我慢強くて落ち着きがあるから、いきなり正面から抱きついたって何したって、まず絶対に怒らないけど、でも、やっぱり、こういうふうに気を遣ってくれる人は、特別に好きになるみたいね」 里菜の言葉どおり、ミュシカは田島が大いに気にいったようで、とても嬉しそうに目を細めて撫でられている。 「よし、よし、いい子だねえ……。うわあ、柔らか〜い。それにあったかい……。う〜ん、お日様の匂いがする……」 田島はミュシカの首の周りの柔らかなたてがみ状の毛に、うっとりと顔を埋めた。 「田島さん、犬の撫で方も心得てるわねえ。ほら、首の回り。あと、耳の後ろとか眉間とかの、自分で掻けないところ。ちゃんと、犬が喜ぶところを掻いてあげてるわ。それと、首の後ろから背筋にかけて、ああやって逆毛にがしがし撫でてもらうのも好きなのよね。あ、ミュシカが仰向けになったわ! ほら、ドテっと。わあ、珍しい。ミュシカは人懐っこい犬だけど、でも、普段、あんまり、人にお腹は見せないのよ。そういえばアルファ−ドの前でも、あまり自分から仰向けにはならないんじゃないかしら。よっぽど田島さんが気にいったのね。他の人も、犬が好きな人は撫でてあげてね」 みんながよってたかってミュシカを撫でているあいだに、里菜が説明した。 「ところで、ミュシカって、何て種類の犬だと思いますか? 実は、どの犬種でも無いんです。だって、ほら、あっちの世界で改良された犬種って、こっちにはいないわけだから。あっちに行ったら、ただの雑種だと思われるわね。あたし、最初、それがわからなくて、アルファ−ドに、『ミュシカって何犬?』って聞いたら、『牧羊犬だ』ですって。『そうじゃなくて、何て種類の犬?』って聞いたら、意味、わからなかったみたい。あっちみたいな犬の種類って、あんまり無いらしいです。 でも、全然ないわけじゃなくて、これは一応、このへんで昔から牧羊犬用に選抜されてきた血筋の犬で、このへんではただ『犬』としか呼ばれてないけど、よそへいくと『エレオドラの牧羊犬』とか、省略して『エレオドラ犬』って呼ばれることもあるらしいです。 見てのとおり、毛並みとか大きさとか、全体の感じはゴ−ルデンレトリバ−に近いでしょ。でも、顔立ちはもっとすっきりして、鼻筋が通ってて、色は御覧のとおり、もうちょっと濃いめの茶色で、耳は大きめの立ち耳。嬉しいとすぐ、先っぽ、折れるけど。体型は、毛が長いから大きく見えるけど、ゴ−ルデンよりひとまわりすっきりと引き締まって、体重も軽めで、動きも活発で、ラブラドルレトリバーみたいな感じ? つまり、え〜っと、ゴ−ルデンとラブとコリ−とシェパ−ドと秋田犬を足して五で割ったような……って、要するに、思いっきり雑種っぽいってことですね(^_^;) チャームポイントは大きな足です! ほら見て、肉球も大きいのよv」 そこへ、ロ−イが干し草を一束持ってきた。 「誰か、羊に餌をやりたい人、いる? ほら、これ」 みんな、羊に餌をやった。それが終わると、里菜がみんなを促した。 「さあ、これで牧場見学はおしまいです。これから懇親会の会場へ向かいます。村に一軒しかない酒場兼食堂を、ロ−イが予約して押さえてくれてます。ね、ロ−イ」 「ああ。そろそろ時間だな。村の中をぶらぶら眺めながらのんびり歩いていけば、きっと、ちょうどいい頃あいだ。アルファ−ド、遅れてもいいから、絶対に来いよ。ぜ、っ、た、い、に、すっぽかすなよ!」 「ああ」 一行はアルファ−ドとしばしの後の再会を約して、牧場を後に村の中心部へ向かった。 ぶらぶらと歩きながら、里菜が謝った。 「みなさん、アルファ−ドが愛想なくてごめんなさいねぇ。アルファ−ドったら、全然しゃべってくれないんだもん。きっと、恥かしがってたんですよ。あのひとってば、照れ屋さんだから。だって、あたしとふたりだけの時は、ちゃんと、たくさんしゃべるのよ!」 『あのひと』と言った口調はとっても嬉しそうで、最後の一言は、ほんのちょっとだけ得意そうだった。 「へええ。ねえねえ、里菜ちゃん、あなたとアルファ−ドさんって、二人っきりの時、たとえばどんな話をするの?」とラキアがからかうように聞いた。 「あ、それ、あたしも聞きたい!」 「うん、聞きたい、聞きたい。いいなあ。ラブラブ同居生活」 「彼、人前ではあんなふうにぶすっとしてるけど、あんがい、二人きりの時はメロメロの甘々だったりして?」 「あはは、それ、ありそう、ありそう」 「きゃ〜、うらやましい!」 みんなにはやし立てられて、里菜は嬉しそうに赤くなった。 「えへへ、そんな、全然、ラブラブなんてのじゃないんですけどぉ……」 ラキアが興味津々で突っ込んだ。 「で、アルファ−ドさん、あなたにどんなこと話すわけ?」 「えっと、いろいろ教えてくれたり。この世界のこととか、家事のこととか。ほら、あたし、何にも知らないから。この世界のことを知らないだけじゃなくて、ここへ来て気づいたことなんだけど、ほんとに、ものを知らないの。 あのね、恥ずかしい話なんだけど、あたし、向こうにいる時は、学校の勉強が得意で、そんなにガリ勉しなくてもいい成績取れてたから、自分はけっこう頭が良いんだと思ってて、人よりいっぱい本も読んでるんだから人より物知りで賢いんじゃないかなんて、心のどこかで、ちょっとだけ、そんなふうに思ってたような気がするんです。 でも、今は、あの頃のあたしは、生きていく上で本当に知っていなければならないことを何も知らない子供だったんだってことが、良くわかるの。魔法が使えるとか使えないとかいう以前に、ほんと、一人じゃ何もできないんだもん。 だから、アルファ−ドが毎日、いろんなこと教えてくれるの。家事のやり方でも何でも。アルファ−ドはすごいの。何でも知ってるのよ! それに、さっきはろくに話さなかったけど、話す気になれば実はすごく雄弁で、レクチャ−は得意なの。もう、理路整然。で、あたしがいくら何にも知らなくても呆れたり怒ったりしないで、やさしく、根気よく、何でも教えてくれるし」 「へええ、いいなあ。手取り足取り?」 「えへへ。時々はね」 「ねえ、あとは? そういうレクチャ−の他には、どんな話をするの?」 「え? えっと、他には、そうね、お説教とか……、お説教とか……、お説教とか……あれ?」 どうやら、よく考えてみたら講義と説教以外の会話に心当たりがなかったらしい。 みんな、気の毒そうに黙り込んでしまった。 「里菜ちゃん……。そんなに毎日毎日、お説教ばかりされてるの?」 天城に怒ったように尋ねられて、里菜はあわてて否定した。 「えっ、いえ、そんなことないです。別に毎日ってわけじゃ……。それに、あたし、アルファ−ドにお説教されるの、そんなに嫌いじゃないかも。お説教っていったって、言い方は優しいし、その時の気分でいろいろ言うんじゃなくて、言うことはいつも首尾一貫してて筋が通ってるし、それに、納得できなくても言い返せなかったりしたらストレスたまるけど、あたし、言いたいことがある時は、けっこう言い返すから」 「へええ、あんた、アルファ−ドに口答えなんかするんだ?」 ロ−イが意外そうに言った。 「うん。あたし、けっこう、言うよ。何でもおとなしく言うこと聞いてると思ってた? でも、口答えしても、アルファ−ドが感情的にならないから、喧嘩にはならないの。で、たいてい、そのうち、いつのまにかあたしが納得させられちゃう。アルファードの言うことって、いつも正論ばかりだから。でもね、そうやって言い合いしたり、お説教されてる時は、とにかく、アルファ−ドがあたしの相手してくれてるってことだから。ちゃんとあたしの方を見て、あたしに向かって話してくれるから、ちょっとだけ嬉しいような気もする」 「ってことは、何か、アルファ−ド、ものを教える時と説教する時以外、ひとつ屋根の下にいても、あんたのほうを見なかったり、あんたに話しかけないわけ?」と、ロ−イがすかさず突っ込んだ。 「えっ? う、うん、そう言えば、わりとそうかも……。あ、でも、ほら、日常会話っていうの? やっぱり、一緒に暮らしてれば、生活するのに必要な最低限の言葉って、あるじゃない。おはようとかお休みとか、ご飯にしようとか出かけるぞとか、そこの塩を取ってくれだとか……。だから、全然口利かないわけじゃないのよ。ただ、あんまり無意味なおしゃべりを楽しむような人じゃないから。だから、アルファ−ドがあたしを見て、あたしにむかって話しかけてくれるなら、内容がお説教でも、ちょっと嬉しいかなって……」 黙って話を聞いていた天城が、突然、がばっと里菜を抱きしめた。 「里菜ちゃん!」 「へっ? うきゃっ!?」 天城は動転してじたばたともがく里菜の頭を、豊満な胸にぎゅむっと抱え込んだ。 「かわいそうに! かわいそうに! 辛い思いをしてるのね!」 「い、いえ、別に、全然辛くなんか……むぐむぐ……」 里菜は、天城の胸の谷間から、くぐもった声で答えた。 「そう? ほんとに? ちゃんと優しくしてもらってる? 寂しい思いをしてるんじゃない? 辛いことがあったら、いつでもオネーサンに相談するのよ!」 「は、はい、ありがとうございます! ああ、びっくりした……」 へろへろになって天城の胸から解放された里菜を、ローイが羨ましそうに肘でつついた。 「いいなあ……。どうだったよ、レイちゃんの胸の感触は?」 「えへへ(*^_^*) 柔らかかったv 窒息するかと思ったけど(^_^;)」 「いいなあ。ねえ、レイちゃ〜ん、俺もレイちゃんの胸で窒息させてほしいなぁ」 ロ−イは天城に無視された。 ――まだ続く(^_^;)―― →『イルファーラン物語』目次ページへ →第四回へ →第六回へ →トップぺージへ |
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冬木洋子に帰属しています。
掲載サイト:カノープス通信
http://www17.plala.or.jp/canopustusin/index.htm