★サイト一周年記念企画★
イルファーラン観光ツアー
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参加者の皆様、大変お待たせしました。
キリ番&イラスト御礼期間限定特別企画『イルファーラン観光ツアー』は、
作者ののろま&超・長文体質のために、な、なんと! 連載モノになってしまいました(^_^;)
サイト一周年までにここまでしか書けなかったということもあるのですが、
どっちみち、この調子では一回二回で済む分量では収まらないと思うので……。
不定期・回数未定で書き下ろし連載していきたいと思いますので、
しばらく、のんびりお付き合いくださいませ。
(連載終了後には例によって記念品として一括DLファイルを作成する予定です)
★企画の詳細はこちら★
(注)
参加者の方はほとんどが普段のHNで出演してくださっていますが、
企画の性質上、作中で、実際のご本人なら取らないような言動を取る場合がありえます。
ご自分の小説のキャラで参加してくださっている場合も同様です。
全キャラ、『名前は実在の誰かや他の小説のキャラと同じだけど
実は冬木のオリジナルキャラなんだ』ということで、
『私は(彼は)こんなこと言わないわ!』なんて言わずに、笑って見逃してやってくださいませ。
*
出演者の中で、ご自分のキャラ設定を特に指定していない方、
あるいは冬木から『こうさせてくれ』と頼み込まれていない方は、
みなさん一律に、標準設定である『なかなかキレイなお嬢さん』にさせていただきました。
自分が『キレイなお嬢さん』だと思う人も思わない人も(^_^;)、
ここ、イルファーランでは、『キレイなお嬢さん』になって、
せいぜいローイによだれを垂らさせてやってくださいませ。
では、いってらっしゃいませ。楽しい旅を!
<第一回・イルゼール村中央広場にて> 季節は秋。雲一つなく晴れわたった、美しい朝である。のどかなイルゼール村の中央広場に、奇妙な一団が忽然と集結していた。 『奇妙な』と言っても、それは、ごく普通の若い娘たちの一団である。思い思いのファッションに身を包み、もの珍しそうにあたりを眺め回しながら楽しげにざわめいている娘たち――あまりに美人ぞろいすぎるのが変といえば変だが、その程度で、これといって、ひどく変わった集団ではない。 奇妙なのは、彼女たちの装いが、この村、この世界のものとは微妙に異なっていることだ。 そう、彼女たちは、この世界で言うところの<マレビト>――つまり異世界からの客人の集団なのである。 「うわあ、イルファーランは、今、秋なのね。涼しい〜!」 「言われたとおり、長袖着てきてよかった!」 「ほんと。あたし、秋物、わざわざ押入れから引っ張り出してきたわよ」 「あ、申しおくれました。はじめまして〜! お名前はいつもあちこちの掲示板で拝見してます!」 「あはは、なんか、オフ会みたいですね」 「ほんと、ほんと」 娘たちは和やかに、挨拶や雑談を交わしている。 古来、<マレビト>が来訪する地として知られるこの村にあっても、一時にこんなに大勢の<マレビト>の集団が現れたのは前代未聞のことだ。 すでに陽も高くなったこの時刻、村人たちの多くは野良に出ており、広場には他に余り人影はないが、何人かの子供や老人が、広場のすみで、茫然と目を丸くして、この珍事を見守っている。 娘の一人が、それに気づき、子供の一人に声をかけた。 「ボク、ボク、こっちおいで。可愛いねえ。ホールズ、食べる?」 透明の紙に包まれた小さな四角い飴をおそるおそる受け取った子供は、警戒してふんふんと匂いをかいでいたが、意を決したように、そのまま口に入れようとした。 慌てた娘は、子供の手から素早く奪い取った飴の包装紙を剥いて、奪われた飴の行方をきょとんと見上げている子供の口に放り込んでやった。 次の瞬間、子供は、目を白黒させて、くしゃみを連発した。強いミント味に慣れない幼児は、しばしばこういう反応を示すものだ。 他の子供や老人たちは、子供が毒でも盛られたかと、ぎょっとした様子だったが、ひとしきりくしゃみをし終った子供は、一転してとろけるような笑顔になり、うっとりと頬に手を当てて、 「美味し〜い! 風の味がする!」と叫んだ。 それを聞いた他の子供たちは、老人たちの制止も聞かず、一斉に、その娘のまわりに群がった。 「ボクにもちょうだい、ちょうだい」 「あたしにも、あたしにも〜!」 『子供ふれあい動物園』の飢えたヤギの群れか奈良公園の鹿に囲まれたような状態である。 娘のホールズは、たちまち、ひとつ残らず子供たちの口の中に消えた。 一人で二つも三つも一度にほおばった子供もいる。隣の子の分も奪い取ろうとする子もいる。 何人かは、最初の子供同様、ひどくくしゃみをし始め、飴の多い少ないをめぐって喧嘩も起こり、広場はちょっとした騒ぎになった。 「あ〜あ、ホールズ、全部なくなっちゃった。もっと持ってくれば良かった」 そこへ、大声が響きわたった。 「こら、そこ〜! なにやってんだ。子供に餌をやっちゃダメだ!」 朗々たるテノールの主は、身長190センチを優に越える長身痩躯をド派手な衣装に包んだ若者――ローイことエルドローイである。 カカシのようにひょろっと細長い手足をばたばたと振り回しながら慌てて駆けてくる彼の後ろから、小柄な少女が、息を切らせてもたもたとついてくる。 身長147センチ、棒っきれのようにやせ細って見るからに体が弱そう、走るのも遅くていかにも運動神経が鈍そう、しかもまったく胸が無い――なんとも貧相なこの少女、もちろん、里菜である。 「こらこら、ガキども、散れ、散れ。しっ、しっ」 「わ〜」 「ひゃ〜」 ローイに追い立てられて、子供たちは、蜘蛛の子を散らすようにわらわらと逃げっていった。 「おうい、お嬢さん方! お待たせ、お待たせ! さあ、みんな、こっちに集まって。ほい、リーナちゃん、点呼の用意!」 ローイは得意げに声を張り上げた。 広場に面した雑貨屋の店主がそっと出てきて、ひそひそ声でローイに尋ねた。 「ローイ。いったい、こりゃ、何事だ? この娘さんたち、お前の知り合いかい?」 「ああ? 観光客だよ、観光客。今日は俺が村を案内するんだ」 「観光客? そりゃあ珍しい。何だってまた、こんな何もない田舎に……」 「そんなことねえさ。ここだって、昔はあっちこっちからの巡礼でにぎわった女神様の聖地だぜ。観光客が来たって、ちっとも不思議はないだろうよ。北の聖地シルドーリンは今でも観光のメッカだっていうじゃん。この辺だって、しゃれた土産物屋でも作って木彫りの置き物とか女神饅頭でも売れば観光客が来るのに、ぼさっとしてるから寂れちまったのさ。これからは、この村も、観光で村おこしだぜ。おっさん、何か土産物、考案してみなよ」 「何言ってるんだ。この辺が寂れたのは土産物屋がないからじゃなくて、交通の便が悪いからだろうよ。それが突然、こんなに大勢の観光客とは、いったいどういう風の吹き回しかね。しかも、言っちゃ悪いが、見ればきれいな娘さんばかりなのに、みんな、何だか妙な格好じゃないか?」 「ああ、今どきの都会じゃあ、こういう服が流行ってんだよ。気にしない、気にしない」 「で、なんでお前が観光客の案内なんかしてるんだね?」 「いや、まあ、ちっと、人に頼まれちまってさあ。今回だけ、臨時のガイドを引き受けたのよ」 「へえー、そうなのかい。まあ、折角来て下さったんだから、楽しんで頂けるように頑張って案内するんだよ」 「おう、もちろん、そのつもりよ。バッチリ計画も立ててあるのさ!」 ここでローイは娘たちに向き直り、再び声を張り上げた。 「というわけで、麗しいお嬢さん方、お姉様方、ようこそ、イルファーランヘ! 今日はこの俺、村一番の色男、ローイ19歳が案内係だ。たっぷり楽しませてやるぜ。今日一日、よろしくな! う〜ん、しかし、聞きしに勝る美女ぞろい……。これは楽しい一日になりそうだぜ。……おっといけねえ、ヨダレ出ちまった。さあ、リーナちゃんもご挨拶して」 「みなさん、こんにちは。今日のお目付け役のリーナです。どうぞよろしく!」 「リーナちゃん、お目付け役って何よ。アシスタントじゃなかったの?」 「お目付け役よ。作者さんが、そう言ってたもん。ローイがお客様に手を出さないように見張ってろって」 「ええ〜っ!? 手ェ出しちゃいけねえの?」 「あたりまえじゃない! お客様よ? ガイドがお客様に手を出していいわけないでしょ、もう。やっぱり作者さんの言うとおりだったわ。ローイひとりだと絶対お客様に手を出すから、あたしが見張ってないとだめだって」 「うわあ、ひでぇ! 作者に騙された! きれいな女の子ばかりぞろぞろ来るっていうから、てっきり食い放題かと思って、俺、それが楽しみで、この仕事、はりきって引き受けたのに! 作者も、はっきりは言わなかったけど、俺がそのつもりだってわかってて目つぶっててくれるっぽい口ぶりだったぜ? だからてっきり、つまみ食いは役得で作者黙認かと……」 「うふふ、騙されたのね。そう思わせとけばローイがまじめにやると思ったのよ、きっと。でないと、ローイ、『ど〜んと任せとけ!』とか安請け合いだけして、当日になって『あ、忘れてた』とかいいそうだもん。残念でした。皆さん、大丈夫ですよ。安心して下さいね。あたしが責任持って皆さんをローイの毒牙から守りますから。というわけで、あいうえお順で出席を取りま〜す!」 里菜はポケットからメモを取り出した。作者から預かった参加者紹介である。 「まず、天城麗さん!」 「はい!」 美しい娘の一人が、元気に手を上げて返事をした。 「参加者の方の紹介をしますね。作者さんのメモによると天城さんは、小説サイトEXISTRANCEの管理人さんで、ローイとあたしのイラストを描いてくれたそうです。天城さん、ありがとう!」 「おお、美人じゃん! レイちゃんね。よろしく!」 「ローイったら、馴れ馴れしいわよ」 里菜はあわててローイをつついたが、ローイは平然と笑って言った。 「いいじゃん、堅いこといわずにフレンドリーに行こうぜ。な! さあ、リーナちゃん、次は何ちゃん? 楽しみだなあ」 「次は、尾川朋子さん!」 「トモコちゃんか。かわいいね! 今日一日、仲良くやろうぜ!」 「もう、ローイったら。えっと、尾川さんは、このサイトのVIPなんだそうです。なんと、作者でさえ一度もゲットしたことのないキリ番を、3回もゲットしてくれたんですって。しかも、そのうち2回は4000と8000よ。すごいわ! そして、次は、田島光記さん」 「はい!」 「おお、コーキちゃん。これまた可愛いコちゃんだ。ラッキー! よろしくな!」 「田島光記さんは、小説サイトRuhe storerの管理人さんです。小説を3本も連載してるんですって! うわ、すごい! うちの作者さんには絶対まねが出来ない偉業よね。ええっと、次は姫様!」 「来ておるぞ。わらわが姫じゃ!」 元気に答えた愛らしい丸顔の娘は、まさしく時代劇のお姫様――具体的に言えば、どう見ても、『あんみつ姫』である。 色鮮やかな着物や金ぴかの髪飾りに、ローイがびっくりして目を見はった。 「うわあ、すげぇ。この服、すげえなあ。ギンギンだぜ! てゆうか、キンキラキン! カッコいい〜! ねえ、この髪飾り、どういうふうになってんの? ちょっと触ってもいい?」 無遠慮に髪に手を伸ばしかけたローイを、姫が鋭く一喝した。 「無礼者! ええ〜い、控えおろう! この紋所が目に入らぬか!」 姫になにやら四角っぽい小箱のようなものを目の前に掲げられとたん、ローイの身体は、がばっと地面に叩き付けられ、本人の意思を無視して土下座の姿勢をとっていた。 「うわぁ、ごめんなさい! おみそれしました!」 あわてて謝ってからそろそろと立ち上がったローイは、里菜の後ろに隠れながらひそひそと尋ねた。 「……ねえ、リーナちゃん、この人、何?」 「何って、今、言ったでしょ。お姫様よ。お姫様には触っちゃだめよ。失礼だし、着付けが崩れるといけないでしょ」 「あんたの世界のお姫様ってのは、こういう素ん晴らしいカッコをしてるものなのか」 「そうよ。こうでないのもいるけど、こういうお姫様もいるの。素敵でしょ。あたしも一度、ああいうの着てみたいな」 「で、あの、モンドコロって、何よ? 俺、あれを見せられたとたん、身体が勝手に動いて、地面にへばりついちゃったぞ」 「え〜っと、あれはね、そう、一種の、魔法のアイテムよ。あれを見せられた人はみんな地面に伏せないではいられなくなって、瞬時に戦闘不能になるのよ」 「うへえ、怖ぇ。すげえアイテムだなあ。見れば可愛いコなのに、そんな強力なアイテムを持ってるだなんて、さすがお姫様だぜ」 ローイはいたく感心して、一人でうんうんと頷いた。 「さて、姫様、ローイが失礼してごめんなさいね。えっと、姫様は、もちろん、御覧のとおり、お姫様ですが、小説サイト姫様御殿の管理人さんでもあります。それから、次は藤村脩さん」 「はい!」 「おっ、このコは俺より年下かな? かわいいね!」 「藤村さんは小説サイトClaymoreの管理人さんで、あたしのイラストを描いて下さいました! それがね、『え? これがあたし?』って感じの美少女なのよ〜。すっごい嬉しかったわ。作者さんが、サイトのバナーにも使わせてもらったの。藤村さん、ありがとう!」 「でもさ、たしかにあのイラストのリーナちゃんはかわいかったけど、バナーなら、俺の顔アップを使った方が良かったんじゃねえの? その方が客寄せになると思うぜ。なんたって、この美貌だもん!」 「はい、はい。ちょっと黙ってて。では、次の方、ゆめのみなとさん!」 「はい!」 「おお、これまた可憐なお姉様! いいね、いいね! ミナトちゃんっていうの? 奇遇だなあ。この村にもミナトって娘がいるんだぜ。あんたとは全然違うタイプなんだけどさ。自警団に入ってて、ドラゴン退治にも参加しちゃうような娘なんだよ。でも、美人なんだぜ。その点はあんたと同じだね!」 「ゆめのさんは、小説サイト夢の湊の管理人さんですが、イラストもうまくて、あたし、アルファード、ローイ、ヴィーレと、現時点での主要キャラ4人を網羅して描いて下さいました! それから次は……、あれ? 来てないのかしら? ライディンさん?」 「はい! 来てます」 凛々しい声のほうを見ると、どこから現れたのか、美々しい甲冑姿の若き騎士が立っている。 精悍さの中にもまだあどけなさを残した少年騎士である。朱《あけ》色の短髪、琥珀の瞳、腰には、やや細身の<貴人剣>。 娘たちの間から、いっせいに、ざわめきとため息があがる。 ――「きゃ〜、誰、あれ?」「ステキ!」「凛々しい!」「かっこいい……」「かわいい……」―― ローイがびっくりして叫んだ。 「なんだぁ? あんたも、ツアー客? なんで仮装してんの? 今までどこに居たの?」 騎士は、決まり悪そうに答えた。 「……すみません。ちょっと、その、女性ばかりなので居づらくて、隠れてました」 娘たちはまた感極まったざわめきを漏らした。 ――「やだ、かわいい……」「照れ屋さんなのね……」―― 押し寄せるざわめきに気おされて、騎士は後退りかけた。 里菜があわてて声を張り上げた。 「皆さん、静かにしてくださ〜い! 紹介します。キャロウィン国トレモル騎士団長、朱の騎士、<貴人剣>のライディンさんです! ローイ、これは仮装じゃないのよ。本物の騎士様なの。うわあ、十八歳ですって。あたしよりひとつ上ね。それなのに、もう騎士団長で、キャロウィン宮廷の<八将軍>の一人なのよ。すごいわ!」 娘たちはまたしてもざわめいた。 ――「素敵!」「エリートなのね」「きっとすごく強いのよ……」―― 里菜が一生懸命、声を張り上げた。 「えっと、静かにしてください。まだ紹介が途中なんです。ライディンさんは、小説サイト『叙情性レプリカント(H17.閉鎖済み)』のひさちさんの小説『十五王国物語』の世界から来てくださいました。そりゃもうものすごい超絶美少年の王様とかお人形みたいな超美少女の王妃様とかが出てくるっていうから、その人たちにもちょっと会いたかった気がするけど、ライディンさんもかっこいいわ!」 「あれ、リーナちゃん、あんた、アルファードなんかに惚れるくらいだから美形には興味無いんじゃなかった?」 「うん、まあ、面食いではないんだけど、でも、人並みはずれてものすご〜くきれいな人って、ものすご〜く背が高い人とか、ものすご〜くいっぱい食べる人とか、ものすご〜く食べるのが早い人とか、ものすご〜く髪の毛が長いとか胸が大きい人とかと同じで、なんか、問答無用で目が吸い寄せられちゃうのよ」 「ふ〜ん、あんたにとっちゃ、『美形』ってのは、大食い早食いと同レベルなわけね」 「うん、そうかも(^_^;) さあ、そして最後はラキアさん!」 「ハァ〜イ」 余裕の笑みで答えたのは、さっき、子供にホールズを配っていた娘である。 凛々しさと妖艶さを兼ね備えた、ナイスバディの颯爽たる姉御だ。 「おおお〜っ! なんだなんだ、この素ン晴らしいお姉サマは! 超色っぽいじゃん。ぞくぞくするぜ! ラキアちゃ〜ん、お姉様ァ、仲良くしようぜ!」 「うふふ、よろしくね」 口角を吊り上げて妖しく微笑むラキア。 「うをおお〜、魅惑のハスキーボイス! ソソるぜ!」 「ゆうべカラオケで歌い過ぎて声がかれちゃったのよ」 隣にいた田島(敬称略)が、はたと手を打った。 「あ、それでホールズ持ってきてたのね!」 「そうなの。でも、あっという間に全部無くなっちゃって……」 「いいよ、いいよ、そのままで。俺、その声、好きだから。ねえ、ラキアちゃん、歌が好きなら、あとで俺とデュエットを……」 「はいはい、ローイ、口説くのは後にしてね。紹介がまだなのよ。えっと、ラキアさんは、小説サイトNovelismの管理人である穂高あきらさんの代理です」 「代理って、なんで本人が来なかったの?」 「作者さんが、ぜひラキアさんを寄越してくれってお願いしたらしいわ」 「なんで?」 「ラキアさんが来てくれると楽しそうだからだって」 「うん、たしかに俺は楽しいが、あきらちゃんにも会いたかったな。あきらちゃ〜ん、見てる〜? はるかイルファーランの地から、まだ見ぬ君に俺の熱〜い投げキッスを……」 「はいはい、さあ、ローイ、そろそろ出発しなくちゃね」 「あ、そうそう、あのさ、リーナちゃん、俺、あそこのパン屋に、みんなの分の弁当のパンを予約してあんのよ。ちゃんと、この時間に焼きあがるように頼んどいたの。金は作者が払ってくれてるはずだから、ちょっと行って、貰ってきて」 「は〜い」 里菜が駆け出していくと、ローイはおもむろに娘たちの方に身を乗り出して、ひそひそ声で言った。 「あのさあ、リーナちゃんはああいってたけど、ほら、お客に手を出すなってさ。でもさあ、そりゃあ、相手が嫌がってるのに無理やり手ェ出したらいけないに決まってるけど、相手もそれがお望みだったら、別にいいんじゃねえ? どっちかっていうと、ガイドとして、それもサービスの一種じゃねえ? 俺、皆様のためならどんなサービスでもする気でいるんだけど? あんたたちの中にも、もしかして、俺とのちょっとしたあばんちゅーるなんてぇやつをひそかに期待して来たコとか、いるんじゃねえの? きっと、いるよな、な!? まあ、ほら、ここ、健全サイトだから、作者としちゃ、そういう場面、書けねえのよ。それはわかるよ。でも、書かなきゃいいわけでさ。作者やリーナちゃんが見てないところでこっそりいいコトする分には、いいんじゃねえかなあ? というわけで、あとで俺とふたりっきりで、こっそりどっかの茂みかどっかにしけこんで、ちょっとだけいいコトしてみたい人、いない? 順番で、こっそりとさ。な、後で俺と茂みにしけこみたい人、手ェ上げて、は〜い!」 元気に手を上げて見せたローイの背中が、ぱしんとどつかれた。 ローイの背後に、どこから取り出したのか巨大なハリセンを持った里菜が、怒り心頭の表情で立っていた。 「ローイってば、あたしがいない隙に何とんでもないこと言ってんの! そんな人、いるわけないでしょ!」 「あちゃー、リーナちゃん、聞いてたの? ヤベ。どこから聞いてた? まあ、いいや。たしかに、こんなふうにみんなの前で手ェ上げてっていって手ェ上げるコはいねえやな。やっぱ、普通、羞らいってものがあるもんな。うん、うん。じゃあさ、希望者は、後でこっそり俺のところに言いに来てよ。そしたら、一人づつ、こっそり物陰にエスコートするから」 「そういう意味じゃなくて! みんな、そんなことしに来たんじゃないのよ! ほら、完全に引かれてるわよ。みなさん、ごめんなさいね、ローイがこんなで」 「なんだよ、俺、誠心誠意、みんなに出来るだけのサービスをしようと思ってるだけなのに。大事なお客様にあらゆる種類のサービスを……」 「そういうサービスは、しなくていいの! さ、行こ! 焼きたてのパンももらってきたし、早く出発して、お弁当にしましょうよ。お天気も良くて良かったわ。皆さん、この旗についてきてくださいね〜!」 里菜が、手作りと思しき、ちょっと曲がった小旗を、高々と掲げた。 意気揚々と翻る旗に、なぜか日本語で書かれた文字は……『イルファーラン観光ツアー』! ――続く(^_^;)―― →『イルファーラン物語』目次ページへ →第二回へ →トップぺージへ |
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冬木洋子に帰属しています。
掲載サイト:カノープス通信
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