ネットサーフィンをしていたら、興味深いAP(英語)の記事を見つけました。
Myth about Japan blood types under attack June 8, 2005 June 29,
2005
[日本の血液型神話は攻撃を受けている]
http://mdn.mainichi-msn.co.jp/...
内容から判断すると、たぶん欧米人(英語圏)の特派員が書いたものと思われます。そのせいかどうか知りませんが、欧米人らしい シニカルな内容となっているようです。そして、日本人に読まれることを想定していないせいか、非常に素直で単純明快な意見・主張であるともいえます。確かに、欧米人は日本人に比べてストレートな物言いをしますから…いいか悪いかは別として 。
また、欧米(特に英語圏)ではなぜ血液型が流行らないのか、一読してわかりますから、そういう意味では非常に参考になる貴重な記事です。
しかし、残念ながら、少なくない単純ミスも見受けれらるようです…。
#別にシニカルに言っているのではなく、一日本人としての素直な感想です。f(^^;;
Myth about Japan blood types
under attack To many Japanese, the key
to their personality lies not in their stars but in their blood type. Type
A's, they believe, are perfectionists and make good accountants; Type B's
are sociable but selfish. |
では、いくつかの単純ミスを指摘しておきましょう。
The debunkers point out that blood type is determined by the proteins in the blood - hardly a determinant of character.
血液型は、血液中のタンパク質によって決定されているため、ほとんど性格の決定要因ではないことは明らかである。
これは明らかに単純ミスです。ABO式血液型は「タンパク質」ではなく「糖鎖」です。細かいことをいうと、血液中の「糖鎖」であっても、遺伝子の連鎖や、脳内物質との関係が詳しく解明されていない以上、"hardly a determinant of character"(ほとんど性格の決定要因ではない)とは──少なくとも科学的には──言えません から、二重のミスといえます。
"It's mere superstition," says Tatsuya Sato, associate professor of psychology at Ritsumeikan University.
"Linking blood type and personality is not only unscientific, it's wrong."「[血液型と性格]は、単なる迷信です。血液型と性格を結びつけるのは非科学的であるだけではなく、間違っています。」と立命館大学助教授の佐藤達哉氏は言う。
私も佐藤達哉さんは知っていますが、日本語ならたぶんここまで言い切ったりはしないと思います…たぶん。英語のインタビュアーだから、言い切ってしまったのでしょうか? はて?
Newspaper polls show only 20 percent of Japanese say they're convinced that blood type influences personality.
新聞社の調査では、日本人のたった20パーセントが血液型が性格に影響していると答えている。
ここはすごいですね(苦笑)。正確には、「血液型が性格に影響していると答えている」日本人の割合は20%ではなく、「血液型が性格に影響していないと答えている」日本人の割合が20%でしょう。どこからこのデータが出てきたの でしょうか?
【参考】血液型と性格は関係あると思いますか? ここ10年来、70%以上の人々が「血液型と性格の関係はありそうだ」と考えていて、その比率は変わっていません。しかし、強い関係があると思っている人は20%弱で、多少関係があるという人が50%弱と大部分を占めています。このデータは、私の推理と完全に一致しますね!
なお、1.2のデータは、草野直樹さんの『「血液型性格判断」の虚実』から引用させていただきました。どうもありがとうございます。それから、3.については、NTVの『特命リサーチ200X』でも、関係があると思う人の回答率が75%とほぼ同じ傾向を示していました。 |
さてさて、次にも興味深い記述があります。
The theory has been around for decades, but its dark past is little known.
The discovery of blood types in 1901 was one of the greatest advances in medical history, but the breakthrough was then perverted by the Nazis to claim the superiority of Germans -- mostly types A and O -- over Jews, Asians and others with a larger proportion of type B blood.
The theory reached Japan in a 1927 psychologist's report, and the militarist government of the time commissioned a study aimed at breeding better soldiers.
The craze faded in the 1930s as its unscientific basis became evident.
But it was revived in the 1970s with a book by Masahiko Nomi, an advocate and broadcaster with no medical background.この説は何十年間も存在したが、その暗い過去はほとんど知られていない。
1901年の血液型の発見は、医学 史的には偉大な進展であった。しかし、この進展は、ゲルマン民族──ほとんどはA型とO型──の優秀性を、B型が多いユダヤ人、アジア人、そして他の民族に対して主張するナチスによってゆがめられてしまった。
この説は、1927年の心理学者の報告で日本に到達し、当時の[日本の]軍国主義者政府はより良い兵士を育てることを目的とする研究を依頼した。
この説の非科学性が1930年代に明らかになったため、大流行は終了した。
しかし、それは医学背景もない、提唱者でテレビのキャスターである能見正比古の著書によって、1970年代に復活した。
この文章の内容にも驚きました。ただ、これは欧米人(特に英語圏)の一般的な感覚なのでしょう、たぶん。
それにしても、欧米でなぜABO式血液型がポピュラーでない──つまりタブー──か、これほどわかりやすい説明もないでしょう…。 ABO式血液型はナチスのホロコーストを連想させる(!)というのですから、欧米人(特に英語圏)にとっては極めて研究対象になりにくいのは当然です。また、自分の血液型を知らない人が多いということですが、その理由も納得できます。
確かに、ABO式血液型の研究は、妙に日本人が目立つようです。だいたい、遺伝子の配列を解明したのも日本人ですし…。他の血液型では、必ずしもそうでもないようですから実に不思議だったのですが、これで謎が氷解しました。(^^;;
また、こう言っては何ですが、血液型の研究では有名なR.B.キャッテルは人種差別主義者である(?)というよからぬ噂も一部にあるようです。私は彼のことは全然知らないので判断できませんが、欧米でABO式血液型を研究すると、そういう風に見られる傾向がある、というのはどうやら事実のようです。
これを裏付けるように、ある有名な血液型の研究者から、欧米では血液型の研究はタブーだと聞いたことがあります。そのときは半信半疑だったのですが、こうなるとやはり本当と考えるしかないようです…。
以下は、糖鎖の基礎知識からの抜粋です。
やっぱり血液型の研究はタブー?では、ますますABOFANらしい話題に移ります(笑)。 今まで、一部の否定論者から、血液型は日本だけの現象で、海外では流行っていない[から間違いだ?]と声高に主張がなされてきました。さすがに最近は、英語圏だけではなく、韓国、台湾、中国などのアジアの状況が明らかになるにつれ、こんな事実に反する反論は下火になってきたようです。いやぁ、いいことですね。(^^) しかし、日本でもアカデミック話題として、また英語圏では一般の話題としてもやはりタブーのようです。複数の血液型の研究者から、こんな内容の話を聞きました。読者の皆さんにも知ってほしいのであえて公開しておきます。
実際に、血液型と関係する糖鎖の研究は、日本が世界一番進んでいます。また、「血液型と性格」の研究も、内容はともかくとして、論文の数では日本が一番です。 |
また、単純ミスもいくつか見受けられます。
この説は、1927年の心理学者の報告で日本に到達し、当時の[日本の]軍国主義者政府はより良い兵士を育てることを目的とする研究を依頼した。
1927年の心理学者の報告というと、古川竹二しかないと思います。しかし、古川はナチスとは正反対の意味──つまり人種差別絶対反対──で主張しているのですから、この説明は明らかにおかしいと思います。さらに、1927年当時の日本は軍縮ムードですから軍国主義ではありません。軍国主義が一気に高まるのは、1931年の満州事変以降です。もっとおかしいのは、「より良い兵士を育てる」という表現です。これは、優生学的発想としか考えられませんが、少なくとも当時の日本政府や軍部が、特定の血液型の子供を産むことを強制できるはずがありません…。
この説の非科学性が1930年代に明らかになったため、大流行は終了した。
この説明もおかしいと思います。→詳しくはこちら
しかし、それは医学背景もない、提唱者でテレビのキャスターである能見正比古の著書によって、1970年代に復活した。
ここも間違いです。能見正比古さんは放送作家ですが、テレビのキャスターではありません。
結論として、これだけ間違いが多い記事にもかかわらず、世界的に有名な通信社のAPでさえ通用してしまうということは、そういう背景や必然性があるということでしょう。つまり、血液型と人種差別、そしてナチスドイツが結び付き、そんな研究をするのはトンデモないヤツだ、といったイメージが欧米には──特に英語圏には──存在する(?)ということなのでしょう、たぶん。
しかし、日本では血液型にそんなダーティなイメージはありません。自分の血液型はほとんどの人が知っていますし、多くの人が血液型を楽しんでいます。(^^)
残念ながら、欧米で気軽に血液型の話題が楽しめるようになるには、相当な時間がかかりそうです。(*_*)
かつて、古川竹二は、A型が多い欧米人は、B型が多いユダヤ人やアジア人より優秀だとういう人種差別的な説に反論するため、A型は消極的、B型は積極的という血液型気質相関説を唱えました。また、幸いなことに、日本人はほとんどユダヤ人差別をしていません。戦争中、杉原千畝さんは、自らの危険を顧みず、多くのユダヤ人にパスポートを発行しました。だから、日本人は血液型差別をあまり感じていないのでしょう。
このような歴史をきちんと知った上で、相手の言うこともきちんと聞き、反論すべきは反論するのが、本来あるべき議論の進め方ではないでしょうか?
皆さんはどう思いますか?
【追記】参考までに、欧米の状況をみなさんからのメールから抜粋しておきます。 No.1463 男性のあるあるさんから H19.3.19 18:241.面白いですか?
3.血液型と性格の関係は?
4.メッセージ: [中略] メール(その3) H19.3.21 0:45
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