架空架空鉄道作者・ノザキ電鉄・仮名手本架鉄は人と成長する
チャットでこの話が出た時、実に久し振りにワクワクした。テンプレ架鉄、この一見どうしようもない形骸の内側にどんな見せ場を放り込むか、そう考えただけで血圧と血糖値が上昇してならないのだ。
先ずは骸を整えねばならない。取り敢えず必要なブツを用意する間に、中身をどうするか考えるとしよう。
車両画像はフォロワーさんの提供してくれた4ドア車をいじる位にする。余りいじり倒して個性を出してもつまらない。取り敢えず3ドアにして原色を塗る位に留めよう。
天麩羅架鉄に不可欠な串団子も用意されたモノを使う。駅名も凝らないでありがちなモノを入れてみる。
いっそ種別を極端に増やして見るか。金ピカ特別特急エルドラド、成金特急、A特急、B特急、通勤特急、準特急、1等急行、2等急行、3等急行、4等急行、言訳急行、政治的配慮急行、偽急行、特別準急、快速準急、準準急、区間準急、一部区間準急、特別各停、快速各停、5等各停、6等各停、7等各停、偽各停、行先不明各停。その他20種程。
やめとこう。
紹介文と社史。これもあった方が良い。ここで「架空架鉄作者」のプロフが多少浮かんで来る。
架々鉄作者は小学校高学年か中学校1~2年、どうにもこうにもならない煮ても焼いても食えない「お利口さん」。何、俺の過去をひっかき回せば、リアリティじゃなく「リアル」が描けるさ。
そのリアリティを出すために、あたかも宝石箱をひっくり返したように誤字脱字、嘘敬語の銀河を描き出してウエザリングを施す。
相突きの段階で、「僕が感じる架鉄のリアリティ」とは即ち忙しく電車が出入りする様子であると喝破させている。詰りそれ以外は空洞でも構わない訳だ。車両であろうと風景であろうと、それは飾り以上の意味を持たない。
そこで設定をいじる必要が出て来る。忙しく電車が行き来する駅とはどんな駅だと言う事だ。天王寺や上野は正しくそうだし、新宿や梅田もそうだ。
けど待てよ、別にナニだってデ力ければ良いと言うモンじゃない。そこに色々な制約があればこそ燃えるものじゃないのか恋愛のように。「おぉ、ロミオ、ロミオ、あなたはどうしてロミオなの、生きて添えないものならば、蓮の台の新所帯、今鳴る鐘は七つの鐘、七つの鐘を六つ聞いて、残る一つは冥土の土産、お花覚悟は良いか、南無阿弥陀仏…」。止そう湿っぽくなって来た。
だから詰りその制約だ。彼、ノザキ君の考えた架空駅は、3本の同格の本線が団扇の骨のように散らばる駅なのだ。だから常に電車が出入りして不思議は無い。その上私鉄でこう言う無茶な駅はちょっと見当たらない。これメインで行こう。
駅は上り線と下り線を分けて上下に配して見た。場所が狭いのでこうなったのだと理由付けをして見る。斜めから見た透視図を描いて見たが小さいので余り出来が良くない。
その他の駅名は最初不要だと考えていた。何故ならノザキ君の脳裏は「野崎中央駅」で一杯だからだ。まぁA駅、B駅でも良いかなと思ったが、それじゃ芸が無いので「A秋葉GM前」「B馬事公苑前」「C椿山荘前」…どこ走ってんだ。「Dドンキホーテ前」だって、馬鹿じゃねぇか俺。
あくまでも付け足しで適当な駅名を付けるとして、俺が子供の頃ならどうしただろうか。
友達の名前かなー。そう考えるのが自然だろうな。
なので既に「適当に」付けた駅名に、それぞれの理由を付加してみた。所がこれが面白くなっちゃって、どうにも止まりが付かなくなった。
元々「野崎鉄道」よりも前に、友達の「コバシゲ」と言うお調子者が作った「小林鉄道」と言う架鉄が走っていたのだが、「何らかの理由で」コバシゲは架鉄から手を引いたのだ。で、その後を引き継いだのが野崎鉄道と言う段取り。
理由付けを考えている間に、どうやら架々鉄作者のノザキ君の性格を改めなければならなくなって来た。こいつはどうも友人の多い文系大田区で、場合によっては余り激しくない運動部位には属しているかも知れない。明るい性格。
多少モノが見えて年齢相応の好奇心横溢する所の「出来る大田区」仕様に変えて見よう。挨拶文もまともにして見る。
始発の「神尾」と言う地名は現在の住所と言う設定だったが、こうなると話が違ってくる。そこで、「合唱部の可愛くて思いやりがある、それが判った上でやる事なす事雑で変な女」神尾ちどりさん(14)を登場させて見た。
この女はこれまで俺が見てきた二番目に変な女(一番変だったS女については稿を改める)をモデルにしている。現実の彼女は第一人称を「それがし」とか「やつがれ」と称していた。自分の事を「ボク」と称する女には我慢出来ないが、「それがし」「やつがれ」ならば「突き抜けて」いるので許す。守る物が何もない感じ、それを神尾ちどりのアホに投影して見る。
ノザキ君はこの不思議ちゃん、或いは挙動不審少女に惹かれているのだ、間違い無く。以下はノザキ君の日記より、
「○月×日 僕はまた声を掛けられなかった。今日学校帰りに資源集積場から何かを拾い集めている君に」
「○月×日 今日も街角で君を見かけた。自動販売機から何かゴムひものような物を引きずり出している君の真剣な横顔が素敵だった」
「○月×日 夕日に向かって僕は胸の内を叫ぶ。神尾さん、君は壊れたテレビのプリント基盤を集めてばかり、何で僕の事を振り返ってくれないんだ」
「○月×日 夕暮れの土手で春風に吹かれながら一人座っている君を見かけたよ。何だか淋しそうだった。牛丼の大盛りをメリメリ食べている君が」
「○月×日 今日君から貰ったセラミックコンデンサとスーパーの期限切れの福引券、一生大事にするよ、ありがとう」
等と書きつつ、実はコバシゲの馬鹿が神尾ちどりに接近していて、彼女も満更ではない、そして目出度くもその事にノザキ君は一向に気づいていないと言う裏設定はどうだ。ノザキとコバシゲの間に血を見るのも時間の問題だぞ。
さてここでまとめて見る。
天麩羅架鉄
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架空架鉄作者
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架空架鉄作者の焦がれている挙動不審女
↓
架空架鉄作者の焦がれている挙動不審女とそれを取り巻く激動の人間ドラマ
これが製作を進める上で浮上変転した、今回の「見せる流れ」である。幾つかの支流もあるにはあるが、俺自身が面白くなっちゃっている、そして少し身につまされているドラマはあくまでもこれなのだと言う確言を以って結語としよう。
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