長島雅裕さん(現:文教大学準教授)は、30年間で20万人にもわたる膨大な統計データを分析した結果、少なくとも血液型と自己申告の性格には安定した関係があることを確認するのに成功しました。
これには驚きました! 大変おめでとうございます。 (^^)
もっとも、なぜかこの研究報告については紹介が少なく、ほとんど誰にも知られていません。私も、内容を何回もよくよく読んで、やっとサンプルが約20万人であることを理解しました。いままで読み込みが足らなかったのでしょうか…。(^^;;
#後述するように、なぜか本人も積極的には紹介していません。
今回は、この研究の謎に迫ります。 -- H27.10.11
次は、この驚くべき研究結果の紹介です。
本研究では、疑似科学が用いられた学校教育の実態等を調査するとともに、最近の大規模調査データを用いた血液型と性格に関する解析を行った。…また血液型と性格に関する解析では、過去の研究結果を拡張することができたとともに、21世紀以降のデータでは、安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した。 In this research, we carried out questionnaires survey on pseudo-science experiments in schools and database analysis on relationship between blood type and personal characteristics. ... We also demonstrate that significant difference on personal characteristics between blood-types by using the database on recent huge questionnaires survey. |
出典は次のとおりです。
科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書
教員養成課程における科学リテラシー構築に向けた疑似科学の実証的批判的研究
A demonstrative and critical study on pseudo-science for scientific literacy
construction at teacher education course
2010年度〜2011年度
代表者 武藤 浩二 MUTO, Cosy
研究分担者 長島 雅裕 MASAHIRO, Nagashima
[https://kaken.nii.ac.jp/d/p/22650191.ja.html]
[https://kaken.nii.ac.jp/pdf/2011/seika/C-19/17301/22650191seika.pdf]
もう少し詳しく紹介しましょう。
《本文からの抜粋》
4. 研究成果
(2) 山崎・坂元(1991)の方法に基づき、「A-B」得点を構成し、現在までのデータのうち、利用可能なもの(血液型と性格の双方の調査がなされており、かつ調査された性格項目がA-B得点を構成するために必要なものをすべて含んでいるもの)をピックアップし、血液型ごとにA-B得点がどのように変化しているかを調べた。
その結果、90年代以降、山崎・坂元の結果は固定化(血液型による違いが安定化した)し、かつ2000年代以降は分散も小さくなり、血液型による違いが統計的に明確に有意であることが示された。ただし、有意ではあるが、違いの大きさはごく微少であり、日常生活で「使える」ほどの大きさな違いにはなっていないことも示された。
ここで気になるのは、「現在までのデータのうち、利用可能なもの」とありますが、実際にトータルで何人ぐらいのサンプルを調査したかということです。しかし、残念ながらこの論文には、別項目にさらっと
3.研究の方法
(2) JNNデータバンクの年度ごとデータ及び学生を対象に取得したアンケート調査結果を解析し、先行研究と比較することで、血液型性格判断について「予言の自己成就」現象が起きているかを調べる。
とあるだけで、なぜか具体的な人数が書いてありません。しょうがないので、ザックリと推測することにしましょう。
さて、このJNNデータバンクのデータは、JDNという会社[ビル]が管理しています。
同社のサイトから関係資料[http://jds.ne.jp/pdf/jnndatabank_list.pdf]を見てみると、サンプル数は毎年7,400人。
調査項目の詳細[http://jds.ne.jp/pdf/jnndatabank_detail.pdf]もあるので、ちょっと調べてみました。
ということになりました。
#調査項目詳細には、なぜか2年前の2013年11月のバージョンが紹介されていますが、現在も変わってないということなんでしょうか?
これらから考えると、血液型については山崎・坂元論文データの開始年である1978年から2013年の調査ではほぼ確実に存在していたと推定できます。しかし、「自分の性格や人柄」に全部のB型項目がいつまで存在していたのでしょうか?
報告書の本文には「90年代以降、山崎・坂元の結果は固定化(血液型による違いが安定化した)し、かつ2000年代以降は分散も小さくなり…」とあるので、90年代の調査には存在し、2000年以降のある時点で調査項目から消えたと推定するのが最も妥当でしょう。
問題は、B型項目の2項目が2000年以降のいつの時点で消滅したかということです。
報告書の1ページ目の研究成果の概要には「21世紀以降のデータでは、安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した」ともあるので、少なくとも2000年以降の数年間は存在したと見ることができます。
21世紀(2001年〜)以降のデータを数回は分析しないと「21世紀以降のデータでは、安定して…」とは書けないでしょうからね。
以上のことから、この研究報告で使われたJNNデータバンクの調査項目について、次のとおり推定することにします。
以上の仮定から、サンプル数をザックリ推定してみます。
《年代ごとのサンプル数》
年間サンプル数 サンプル数 1978-1992年
3100人×2回/年 約93,000人 1993-1999年
3500人×2回/年 約49,000人 2000-2005年
7400人×1回/年
約44,400人 2006-2010年
7400人×1回/年
約37,000人(B型項目が存在した場合)
合計 - 約186,400〜223,400人
なんと、約20万人のデータで「血液型と安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した」ということになりました。
これは世紀の大発見だと思うんですが?
#細かいことを言うと、A型とB型しか分析していないので、実質的なサンプル数はもっと少なくなります。 [H27.10.18追加]
実は、10年以上前のことになりますが、私も長島さんと同じことを考えて、JDSの親会社であるTBSに当時の知り合いを通じてデータの利用をお願いしたことがあります。しかし、元々が大会社向けの調査のせいか「会員会社じゃなきゃダメ」とあえなく門前払いになりました。(T_T)
お金は出しますから(金額にもよりますが…苦笑)とも言ったのですが、やはりダメでした。
さすがに国立大学と科研費のネームバリューは効果があるようで、一個人で門前払いだったものが、あっさりとOKになったのは正直羨ましい限りです。
ところで、これほど画期的な「研究成果」が、第三者に非常にわかりにくい形で文章化されている理由は謎というしかありません。
そもそも、国立大学が行う科研費の研究報告書[本]で、サンプル数を隠す必要なんて全くありませんし…。不思議なことに、この報告書のどこをどう読んでも、論文中の文章だけからではサンプル数を読み取れません。いや、あえてサンプル数を読み取られないようにしている、としか思えません。
しかし、長島さんが「ニセ科学批判」の急先鋒であるということなら、その理由もわからなくもありません。
実は、冒頭に紹介した2015年4月号の「RikaTan」に長島さんが執筆した記事では、「血液型と安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した」という自己の研究結果について一行も書いていないだけではなく、逆に全面的に否定しているのです。これはどう考えてもおかしい。
では、なぜそんな奇妙なことをするのでしょうか?
おそらく、この「20万人」の研究結果を正直に公開すると、血液型と性格に関係があることになり、「ニセ科学批判」にとって不利になる…ということなのでしょう。だから、科研費の研究報告書では、あえてサンプル数を読み取れないようにしたのだとも考えられます。
さて、この研究では「疑似科学」を否定することが目的なので、「血液型」だけではなく「水からの伝言」についても結果の記述があります。おかしなことに、「水からの伝言」については4.研究成果の中で、サンプル数が一読してわかるように明確に書いてあるのです。具体的には
《本文からの抜粋》
2010年度は、我々が所属する長崎大学の学生を対象に、4月に調査を実施した。調査対象は教育学部の1年生243名及び全学(教養)科目「疑似科学とのつき合い方」受講生166名、合計409名である。…
2011年度はWeb等でアンケート調査への参画を呼びかけ、応じていただいた複数の大学・高校の教員の協力を得、8大学1,451名、2高校343名への調査を実施した。…
とあります。しかし、全くこれとは対照的に、血液型については、この研究報告書を通じて具体的なサンプル数への言及は一切ないのです。まぁ、どう見ても意図的に隠したとしか考えられません。
#そこまでして隠す必要はないと思うんですが…。
結局、国立大学と科研費のカンバンを使って、一般の人にはなかなか使わせてもらえないJNNデータバンクのデータにアクセスできたので、さすがに科研費の報告書に血液型のことを全く書かないわけにもいかない、ということなのでしょう…たぶん。
あるいは、2010年に行った小規模な学生のみの調査では、次のとおり「安定的な結果が出なかった(=“血液型性格診断”に否定的な結果)」ので、
《本文からの抜粋》
まず、学生へのアンケート調査であるが、山崎・坂元(1991)とほぼ同様の結果[血液型による「信念」や「思い込み」が存在する]を得ることができた。これは20年の歳月を経ても強固な信念が社会に存在することを示す貴重な結果である。一方、山崎・坂元(1992)の結果[性格の自己報告の統計データで安定的に差がある]の再現性は悪かった。
翌2011年には冒頭に書いたように、もっと大規模な調査で、その「裏付け」を取ろうとしたのかもしれません。ところが、意に反して「安定的な結果が出てしまった(=“血液型性格診断”に肯定的な結果)」のです。
しかし、外部の協力者にまでお願いして大規模データを使わせてもらった以上、それらの結果を書かないわけにもいかなかった、ということなのかもしれません。
あるいは、執筆者以外の人も今回の報告書に手を入れたのか…。
しつこいようですが、真相は不明ですから、以上は単なる私の推測に過ぎないことを予めお断りしておきます。f(^^;;
さて、ここまでくれば、否定側の人に「血液型と性格が関係ある」ことを認めさせるのは割と簡単です。国費を使っているのですから、この研究のサンプル数を公開してもらうよう、「情報公開」を請求すればいいのです。なにしろ、「国費」を使っているのだから、情報公開は拒否しようがありません。
#そのうち時間ができたらやろうと考えていますが、面倒くさそうなので誰かやってくれないかなあ。
少なくとも、統計的な論争はこれで終了と考えていいと思います。v(^^)
20万人に比べれば、縄田さんの日米1万人超のデータも肩なしというものです。
あとは、どのぐらい差があるかだけが問題ですね。
そういえば、このエントリーを書いていて、渡邊席子(わたなべよりこ)さんの論文を思い出しました。
彼女の論文も、よく読むと「関係がある」という内容なのです。もちろん、表面的はにそうは見えないのですが、彼女自身はよくわかっていたはずです。その後の彼女ですが、なぜか「血液型」の研究はしていません。何か理由があるのでしょうか?
《長島論文の質問項目》 [H27.10.18追加]
坂元論文の24項目のうち、A型とB型の特徴のうち上位各3項目
A型項目
6. ものごとにけじめをつける
11. くよくよ心配する
15. 何かをする時は準備して慎重にやる
B型項目
4. 物事にこだわらない
17. 気がかわりやすい
20. うれしくなるとついはしゃいでしまう
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