Nスぺの補足 あなたのマンションは大丈夫か?

2024年9月1日放送のNHKスペシャルに関連して「“軟弱地盤”で住めなくなる!? あなたのマンションは大丈夫か」(NHKスペシャル取材班 三木健太郎・高橋弦・林秀征・老久保勇太)」が NHK | WEB特集 | 地震)*1にアップ(2024.9.1)されました。ここでは、それに関連したコメントをします。

 タワマン等の超高層建物を除くと、現在でも大地震や液状化に対する杭基礎の耐震設計がされていません。ただし、「中小地震で設計された杭基礎」=「大地震で破壊」ではなく、「杭基礎の破壊」=「建物の沈下・傾斜」でもありません。すなわち、中小地震で設計された杭基礎の多くの建物は、大地震後も継続使用可能でしょう。しかし、ある確率で建物は沈下・傾斜すると予想されます。建物が1°でも傾斜すると、他の損傷が軽微でも人が住み続けることはできなくなり、ジャッキアップ等の復旧工事、または取り壊しになります。ジャッキアップは多額のコスト(建設費の30-50%程度?)と工期(1年以上?)がかかるようです。区分所有のマンションでは、復旧工事の合意をとるのは困難です。
 これまで、私は日本建築学会等を介して、大地震に対する杭基礎の耐震設計の必要性を訴えてきました。しかし、それが実務に反映されているとは言い難い状況です。その要因として、建築基準法への人々の信頼があると思います。法を満たしていれば大丈夫と思いがちですが、建築基準法は「人命保護」を目的としたものであり、「継続使用・財産保全」を担保していません。法を満たす範囲で構造のコストを削減することは、ある意味、合理的な設計です。また、杭基礎にプラス100万かけても日々の生活は変わりませんが、キッチンにプラス100万かければグレードアップします。しかし、杭基礎の破壊に伴う建物傾斜の経済的ダメージはあまりに大きく、杭基礎にコストをかけ、そのリスクを下げる選択はあって良いと思います。もし、リスクに不安を感じるのであれば、マンションの購入を検討する際、「このマンションは大地震が来ても杭基礎は大丈夫ですか?液状化しても住み続けられますか?」と担当者に聞いてください。なお、リスクを許容するのであれば、標準仕様の杭基礎で問題ありません。法に頼るのではなく、リスクとコストを天秤にかけ判断するのが本来の姿と考えています。
 

*1 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240830/k10014563451000.html


2024年09月03日