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2006/07/29



 神聖な骨


  こんばんは、骨盤レポーターの吉岡です(恐縮です)。


  学校でも治療室でも(いつでもどこでも)「骨盤、骨盤」「仙腸関節、仙腸関節」と
  しつこい程に言い続けているので、自分でもちょっとあきれることがあります
  (多分周りはもっとあきれて、、、いや、ウンザリしていることでしょう)。
  しかし、私は骨盤レポーター(自称)なので、それも致し方ありません(???)。
  それが私の仕事なのですから(思い込み)。


  さて、そんな骨盤を構成する骨の中で、特に重要なのが「仙骨」です。
  ご存知かとは思いますが、骨盤は、その真ん中に位置する「仙骨」と、
  それを支える左右の「寛骨」とによって構成されています。
  カイロテクニックでは、この仙骨を重視したものが多く、
  中には「仙骨だけ」にアプローチするテクニックもあるほどなのです。
  もちろん私も「仙骨」を重視しています。


  さてさて、その仙骨ですが、英語では「sacrum」と綴ります。
  この語源は、ラテン語で「神聖な」という意味を持つ「sacer」だそうです。
  紀元前400年頃にはすでに「神聖な骨」と呼ばれていたようですが、
  その由来にはいくつかの説があるそうですので、以下に挙げておきます。


  「神聖な生殖器を保護する骨だから」という説から、死後も腐敗せずに残る
  ことから、「肉体が復活する際の『核になる骨』と考えられていたから」、
  または「魔女狩りの焼殺後に唯一仙骨が残っていたために神聖視された」
  というちょっと恐ろしい説まで、てんでバラバラな諸説が各地で入り乱れていて、
  どれが正しいのかはまだ分かっていないそうです。
  しかし、それだけ多くの説が各地に点在するということは、いつでもどこでも
  「仙骨は神聖な骨だと考えられていた」、とも言えるのかもしれません。
  このように、古代から「特別な骨」と考えられてた仙骨は、
  現代でも我々治療家にとっては「特別な骨」であり続けているという、
  実に興味深い「骨」なのです。


  ちなみに、その仙骨と接し仙腸関節を形成する「寛骨」は、
  英語では「innominate」=「無名」という意味を持ちます。
  名前からみると、骨盤は「神聖なる者」を「名も無き者」が両脇から支える、
  という構図となっています。
  骨盤は、その仙腸関節が離開することで問題を起こすことが多いのですが、
  もしかして、仙骨が神聖過ぎるので、寛骨の腰が引けてしまって、
  結合が緩んでしまうのでしょうか?
  ・・・それはないですね、恐縮です。


  ・参考文献 
   「骨単」河合良訓監修 (株)エヌ・ティー・エス
   「ペルビック・アプローチ」Diane Lee著 医道の日本社




2006/07/26



 支える


  本日午前に来院された患者さん。
  70代男性、主訴は腰部の鈍痛。
  上記に加え、歩行時に「左下肢の運びが上手くいかない」と訴う。
  歩行を観察すると、左足が「すり足」になっている。


  ご本人は、左足が上手く上がらないので、何とかそれを上げようと意識を左に
  集中しているのですが、なかなか上がらないのでご不満のご様子。
  こんな時に、「この左足め!」などと、左足ばかりを責めてはいけません(笑)。


  左足が上がらない時には「左足が悪い」と考えてしまいがちなのですが、
  それは「短絡的過ぎる」というもので、実は右側に問題がある、
  ということも少なくないのです。


  先ず、「左足を上げる」ためには何が必要かを考えてみましょう。
  「左足を持ち上げる」ためには、「右足で立つ」ということが必要になります。
  つまり、右足でしっかりと身体を支える、という前提がなければ、
  左足を持ち上げることなど出来ないわけです。
  したがって、「左足を上げられない」というのは、「右足で立てない」
  ということでもあるのです。


  実はこれ、私の考える「身体の機能的な左右差」と「脳の働き」との関連を
  理解するうえで、非常に重要な意味を持つものなのです。
  さらにここでは、「右足」ではなく、「左足を上げる」という点が重要です。


  これは普段無意識に行われていることなので、この「右足の支えの重要性」に
  気付くことはほとんどありません。
  意識をいくら左に集中しても、右足で身体を支える準備が出来ていなければ
  左足は上がりません。
  ですから、このような場合には、左を意識する前に、「右の支え」を意識する
  必要があるのです。
  なので、施術も「右足の支え」を重視したものになります。
  さらに歩行時には、また違った意識のポイントがあります。


  このように、視点を少し変えるだけで、見え方はガラッと変わるものなのです。
  あなたの周りにも、きっとあなたを支えている見えない誰かがいるはずです。
  時々サボっているかもしれませんので、そんな時には尻を叩きましょう(笑)。
  私はよく子供に叩かれます(^^;。




2006/07/22



 勉強会


  昨日は「場の研究所」の勉強会でした。


  今回はいつにも増してボリューム満点で、ちょっとやそっとでは
  まとめられそうにありません。
  昨日は清水先生だけではなく、参加された方々の言葉一つ一つが示唆に富み、
  なにか貴重な言葉が「場に溢れている」と感じられるような勉強会でした。


  昨日の勉強会で出てきた「キーワード」を並べると、
  「待つ」「競う」「問いかけ」「位置付け」「位置付けの共有」「因果律」
  「存在の地動説」「縁の海」「大無量寿経 第四願」「道得、不道得、未道得」
  「美と救済」「縁=コンディション」「Soccer is beautiful」「長所と短所」
  「分」「分かる、分ける」「近似値」「全部と全体」「問処」「問答」「十界互具」
  ・・・・・・・・以下略。
  こんなのをまとめるのはやっぱり無理!
  皆さん上記のキーワードから内容を想像して、しばらくお楽しみください。


  それにしても、これらを改めてみてみると、ちょっと宗教っぽいですよね。
  基本的には「哲学」の勉強会ですし、特定の宗教団体等とは一切関係ないので
  誤解なきよう(クリスチャンの方もみえています)。
  哲学も宗教もどっちも堅苦しく、「そんな話を聞くのはかったるいよ」なんて
  思う方も多いのではないかと思います(私は好きですが)。
  でも、「場」に絡めて聞くと、こんな小難しそうな話も違和感なく聞けるのが
  不思議です(理解できるかどうかはまた別問題ですが・・・)。


  勉強会には、「親鸞仏教センター」の研究員という、れっきとした「本職」の方も
  みえているのですが、その方も昨日「宗教的な話をすると引かれてしまうので、
  話を聞いてもらう事が難しい」というようなことを仰っていました。


  勉強会の内容も、参加しなければ知ることは出来ないのですが、
  それでは少し「モッタイナイ」気がします。
  誰か上手くまとめてwebで公開すれば、もっと広く「場の思想」も浸透すると
  思うのですが。


  「それならアンタがやればいいじゃないか」なんて声が聞こえてきそうですが、
  皆様、それだけは決して言ってはいけません。
  それは「殺生」というものです(合掌)。




2006/07/18



 宿題


  最近なんだか忙しい。
  「忙しい」とは言っても、患者さんが多過ぎて忙しいわけではないので、
  同業者の皆様、どうぞご安心ください(笑)。
  なんだかすべき事やしたい事だけは多いのですが、どれも中途半端で
  なかなか先へ進まないので、気持ちがあせり、「忙しい」と言うよりも
  「気忙しい」と言ったほうが良いかもしれません。


  この連休も、日曜日は少し遠出をして、月曜日には所用を片付けようと
  思っていたのですが、思いがけず日曜日は泊まりになってしまい、
  結局昨日も一日“楽しく”遊んでしまいました(^^;。
  それでまたすることが先送りになり、今日も焦っています・・・。


  一番の懸案事項は「宿題」が終わっていないことで、実は今もヒヤヒヤしながら
  これを書いています(一応気分転換のつもりですが・・・)。
  この宿題が厄介なもので、まさに「禅問答」そのものなのです。
  これは「場の研究所」から出された宿題で、「道元の『道得』を読解しなさい」
  というものなのですが、これが考えれば考えるほど分からない???


  簡単に説明するのも大変なのですが、要するに、正法眼蔵にある
  「道得(どうて、どうとく)とは何ぞや?」と言うことなのですが、
  さてさてこれをどう読み解くか、、、かなり困っています。


  おそらく「答え探し」をしているうちは、いつまで経っても答えには辿り着けない
  ことは間違いないように思うのですが、もちろんそれは答えではありません。
  タイムリミットまであと3日です。
  最後の悪あがきに、今晩は「座禅」を組んでみようかと思っています。
  そしたら何かが「パッ」と閃くでしょうか?




2006/07/15



 ひそかな楽しみ


  テレビ等を観るときの私の楽しみのひとつに、「利き手当て」があります。
  これは、出演者の歩き方、立ち方、身のこなし方などを観察し、足や骨盤周囲、
  脊柱の動き等の特徴をつかんで「利き手」を推測するのですが、
  これが結構面白くて、番組の内容より、そちらに集中していることのほうが
  多いときもあります(笑)。


  ほとんどの場合「右利き」なので、それ程気になることもないのですが、
  そんな中に「左利き的」な人がいると、もう気になって仕方ありません。
  そんな人が、食事や何かを投げるシーンなどで左手を使っていたりすると、
  「ほ〜ら、やっぱり」なんて一人で喜んでは、家族に変な顔をされています。


  テレビだけではなく、街を歩いていても、自然とそれを気にしています。
  この違いが分かり始めた当初は、街を歩いていて、前を歩く人が
  「左利きっぽいぞ」なんて思った日には、呼び止めて
  「ちょっとすいません、アナタ左利きですか?」なんて確認したい衝動に
  駆られることもしばしばでした(笑)。
  さすがに出来ませんでしたが・・・。


  スポーツを観る時もそういった視点で観てしまうのですが、
  いつも疑問に思うのは「野球」です。
  「右投げ右打ち」の選手は良いのですが、「右投げ左打ち」の選手が
  バットを振るときには、骨盤帯がどのような動きをしているのか、
  非常に気になります(普通に考えると「不自然」なのですが・・・)。
  「右投げ左打ち」の選手には、名選手も多いようにも思うのですが、
  脊柱・骨盤の動きと何か関係があるのでしょうか?
  考えられることはいくつかあるのですが・・・。


  私は、こんなことをいつまでもひたすら考え続けることが出来ます(笑)。
  やっぱり暇なんですね。




2006/07/11



 3年連続


  今年もまた、「日本カイロプラクティック徒手医学会」(以下「徒手医学会」)で
  発表することになりました。
  2004年に始めて参加してから、これで3年連続の学会発表となります。
  昨年は京都で行われたので、参加するのに遠くて大変でしたが、
  今年は東京での開催なので、かなり気が楽です。


  この「徒手医学会」は、日本で唯一の協会の垣根を越えた開かれた学会で、
  日本の著名なカイロプラクターのほとんどが関わる場なので、
  参加のたびに新たな出会いや知識を広げることが出来るため、
  毎年参加するのが楽しみです。
  私は今回で3度目の発表ですが、毎年欠かさず研究発表をされる方もいて、
  その努力には頭の下がる思いがします。


  私は今回も「仙腸関節」関係の発表なのですが、今回は紹介という形で、
  仙腸関節に対する新たな矯正法を報告しようと思っています。
  学会からは「一般講演で」と言われたのですが、やはり実技をメインに、
  参加者と近い距離で発表したいので、ポスター展示でお願いしました。
  「私にはポスター展示が合っている」と、自分では思っています。
  (パワーポイントの使い方が良く分からない、というのも大きな理由ですが・・・)


  今回「矯正法」を発表することで、「関節生理」「検査法」「矯正法」の
  「仙腸関節3部作」(笑)全ての発表が一先ず終了します。
  やはり研究したことはどこかで一度は発表しなければ意味はありませんし、
  オリジナリティーを主張するためにも発表の場は必要です。
  そういった意味でも、「徒手医学会」のような開かれた場が、
  我々カイロプラクターには欠かせません。
  また、日本で唯一の学会を通じて日本の徒手療法界をまとめ、
  現在の混乱した状況を少しでも良い方向に向かわせたい、というのも、
  学会設立時の趣旨には含まれていたようです。
  今のところ、そのような効果が全く現れていないのは、少し残念に思います。


  私自身は、今後も出来るだけ研究を続け、日本の徒手療法業界と
  そこに繋がる多くの患者さんに少しでも貢献できるよう努力しようと思います。
  そんな私にとって、「徒手医学会」は年に一度の「お祭り」になりつつあります。




2006/07/07



 義足のハイジャンパー


  このサイトを開設して3ヶ月、昨日初めて、「HPで当院を知った」という方が
  来院されました。
  これまでもHPを見て来られる方はいたのですが、皆さん「誰かに聞いて」
  このサイトの存在を知った方達だったので、純粋にHPを見ただけで
  来院された方は、おそらく今回が初めてだと思います。


  その、当院にとっての記念すべき第一号は、すごい人でした!


  入室されたときには「松葉杖」だったので、「接骨院と間違えてるのかな?」
  なんて思ったのですが、その患者さん、普段は「義足」を着けている方で、
  昨日は怪我で義足が着けられなかったので、松葉杖を使用していたそうです
  (入ってきたときには、足元が見えない状態でした)。


  簡単な問診と視診、触診をして施術に入ったのですが、その際に「走り高跳び」
  の選手であることが判明し、軽くビックリ(1回目)。
  次に、「パラリンピック」に出場するほどの実力の持ち主であることが分かり、
  またビックリ(2回目)。
  「仕事は何かな?」と、記入してもらったカルテの職業欄を見ると
  「陸上選手」と書いてあり、「陸上選手とは?」と尋ねると「プロなんです」
  ・・・3連続ビックリ。


  プロとして活動するためにはスポンサーが必要で、そのスポンサー探しも
  自分自身で行い、何度も断られながらスポンサーを探し続けたと聞き、
  もうこのあたりまで来るとビックリを通り越し、感動。
  プロとしての意識、努力、全てに前向きな姿勢には、感服。


  やはりプロのアスリートらしく身体感覚も繊細で、身体的な不具合は
  ほぼ把握できているので、こちらも説明が楽でした。
  また、帰られた後に、本人のブログや取材記事が掲載されたその他の
  サイトに目を通してみたら、さらなる驚きの連続が待っていました。
  現在の日本記録保持者であること、世界2位の実績があること、
  取材も多く、かなりの注目選手であること等々、想像以上の内容に
  「すごい人がいるもんだ」と、ついさっきまで話をしていたという事実を
  忘れてしまうくらいでした。


  その彼の名前は「鈴木 徹」、日本で唯一の「義足のプロ・ハイジャンパー」。


  当院にとって記念すべき日は、すばらしい出会いの日となりました。


  鈴木 徹選手のweb site・・・「義足のハイジャンパー




2006/07/04



 伝えたいもの


  サッカーの中田英寿選手が引退してしまいました。
  やはり、少し寂しいですね。


  そんな彼はHP上で、「伝えたいものがあった」と再三述べています。
  そして、それが「上手に伝えられなかった」、とも。


  以前にも少し書きましたが、自分の考えを第三者に伝えるのは簡単ではなく、
  それは同時に、自分の言葉が相手にどのように理解されているかを
  知ることもまた困難だということを意味しています。
  宗教や文学、芸術の解釈が多様にあることを見れば明らかなように、
  本当に伝えたい事など、結局本人にしか分からないものなのかもしれません。


  私自身にも伝えたいものがあって、その相手が家族だったり患者さんだったり、
  また学生や他のカイロプラクターであったりするわけですが、
  やはり、いつも「上手に伝えられない自分」を、もどかしく感じています。
  何度も伝えようと試みるほど、それが次第にすれ違いに変わってしまったり、
  お互いに態度が硬化してしまうなど、結末は「諦め」か「破綻」のどちらかという、
  あまり望ましいものではなくなってしまうことも多いので、
  もうはじめから期待せず、伝えるための努力さえ怠ってしまうこともあります。


  そんなことを思う私は、中田選手が最後まで諦めずに伝え続けた姿に、
  彼の強い信念と、サッカーと日本代表に対する愛情を強く感じると共に、
  あらためて偉大な選手であり人間だったんだと、素直に尊敬の念を抱きます。
  早くも彼が伝えたかったものは何かという議論は始まっていますし、
  これまでの功績をたたえる特集がテレビを中心に行われています。
  それだけでも、彼が残した「伝えたかったもの」は、その真意はともかく、
  我々に大きな影響を与えていると言えるでしょう。


  もう何度も述べているように、私自身が伝えたいものの一つに、
  「仙腸関節の重要性」があります。
  ほとんどは、私自身が主張しているだけの「仮説」に過ぎませんが、
  私の頭の中ではほぼ出来上がっていて、この精巧な機能や合理性を
  何とか伝えることは出来ないものかと努力してはいるのですが、
  やはりうまく伝えることが出来ずに、意気込みだけが「空回りしている」
  といったことがよくあります。


  講義中なども、「あれっ、もしかしたら半分も伝わっていないのかな?」
  なんて思うこともしばしばあります。
  それでも、「これが理解できたらもっと面白くなる」という勝手な思い込みのもと、
  半ば「押し付ける」ように持論を主張しているわけですが、
  実際には混乱させているだけなのかもしれません。
  でも、やっぱりこれだけは伝えたい・・・。


  中田選手の「伝えたかったもの」がうまく伝わったとしても、
  日本代表がブラジルに勝てたかどうかは分かりませんが、
  本人も言うとおり、彼のプロとしての“姿勢”は、間違いではありませんでした。
  しかし、出来ることなら、「伝わるまで続けて欲しかった」というのが、
  私の正直な感想です。
  サッカーをやめることはない、ということなので、今後違った形で
  伝えていくのかもしれませんが・・・。
  彼が今後どういう方向に進んでいくのか、とても楽しみでもあります。



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