おもしろ人生学

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 ふれあい広場・サザンクロス講座<おもしろ人生学>
  400円 と 好 奇 心
                  その2
     
私には記録癖のほか、蒐集癖をもっています。 子供がガラクタをやたらと
集めたがるのと同じです。
蒐集の対象はおもに、書籍、美術資料、 絵画を中心とした美術品それに子
供が残したものです。蒐集で一番お金を使ったのは書籍代でしょうか。ビ
ジネス書が中心でしたが、 次々と新刊を書店から取り寄せていました。仕
事のための書籍が職場に置いてあっても、自分のお金で買う。当時はその
書籍を読むことで心の平安を求めていたのかもしれません。

絵画や彫刻はお金をつぎ込むことはできませんが、40年経つとお気に入
りの作品が我が家にやってきました。中には有名作家の作品もありますが、
有名作家であれば良いという考え方はナンセンスです。 皆さんには複製で
はない本物の絵や彫刻を飾っていただきたい。お子さんや、お孫さんの作
品はどんな名画よりも素敵だと思います。

なんといっても子供が残したものは「宝の山」です。
絵本、漫画、教科書、玩具、成績表、作文、その他子供の足跡になるあり
とあらゆるものを残しておきます。いつの日にか、子供にとっても貴重な
ものになるかもしれない。私の両親もそうでしたが、親の判断で子供の宝
物を捨ててしまってはいけないように思います。
余談ですが、 私の子供の頃に読んだ漫画「のらくろ」が一冊 20万円もの
古書価格がつけられていました。いうまでもなく、このようなことがある
からという発想ではだめですが。
     
私の随筆の中で「あまり長生きはせずに69歳で一期を迎えたい」と述べて
います。
私の健康状態は、あらゆる検診項目が正常値の範囲内におさまっています。
つまり、頭の悪さは別にして、どこも悪くないという、いわば恐ろしい状
態にあります。この数年間にクスリ一つ飲んだことはないのです。このま
ま行くと、100歳までは神に召されないかもしれない。そうなると、楽し
いことが辛くなること請け合いです。
それでは、69歳までに神が迎えに見えぬときはどうするのか皆さんに問わ
れます。もちろん、その場合のことは考えています。考えるだけではだめ
で強い信念を持って決意をしております。
70歳になったら、やり残したことがあっても、それまでの暮らしに区切り
をつけなければなりません。その日から縁側で日向ぼっこをして過ごす、
つまり好々爺になるのです。
久米宏氏の言葉「人は好かれないとまずい」を心がけたいと思います。

69歳までは、海外旅行を楽しむことにしています。海外に発つ日は、息子
に「いつもの処に置いてあるから」とのメールを発信します。どこである
かは息子だけが知るところで、皆さんには申しあげられません。
置いておくのは、財産目録、終末宣言書、遺言書、預貯金通帳、実印など
万が一に備えたものを入れた布製の袋です。

財産目録は毎年12月末現在でパソコンのデータを更新します。名義、預貯
金等の寄託先、動不動産や美術品の目録とこれらのおおよその価格を書き
入れています。
終末宣言書は56歳の誕生日に作成したものです。死期を引き延ばさず、延
命処置を一切断ること、死期が迫っていると診断された場合の対応、死後
の葬送に当たっての執り行い等を宣言しています。遺言書は同じく56歳の
誕生日に作成しました。
その後には変更していません。ご厚誼を賜った方々のお名前にお礼のメッ
セージを、妻と息子にはそれぞれ感謝のことばを添えております。私の葬
送は密葬にし、柩の上には妻が好きな季節の花を一輪供え、妻と息子並び
に限られた近親者のみで見送ってくれるよう望んでいます。
いつでも死に備えておくことは「楽しくてこそ人生」で申しあげた、他者
を思いやることであると思います。

   義母・道子のちぎり絵

我が家の暮らし向きは、私の両親からそのまま受け継いだものだといえま
す。妻と夫の間では、お互いの行動はできるかぎり自由にして、たまには
共同歩調をとることにしています。それから、お互いが自由に使えるお金
を持っています。
現役のときは、財産形成の責任は私が持ち、妻には家計費と小遣いを渡し
ておりました。年金をいただくようになってからは、大蔵大臣、いまは財
務大臣と言うべきですか、お金のことはすべて妻に任せています。

私には子供が一人います。
子育てのうえで私たちが心がけたことがあります。
○生まれた日から家庭では共通語をつかう。
○母は勉強を手伝わない。(父に聞けという⇒父も手伝わないが・・)
○子供を対等に扱う。
我が家では、早く起きなさいとか、宿題をしなさいとか、傘を持ってい
きなさい、ハンカチは持った、と一切言わないことにしています。塾にも
通いませんでした。
特に、学校の授業は高学年になってくると、母も父にも難しくて教えるこ
とができなくなるのは必定です。初めから教えないほうが、自分で何とか
しなければと方法を見出すものです。困るのは自分だと思い知ることで、
独り立ちしてゆくのです。親の役割は、子供が感動の機会に出合うことを
手伝うことであると思います。

暮らしの中には、楽しい演出がほしいと思っています。
我が家では、日頃はメザシと漬物の暮らしですが、子供の誕生日は名のあ
る料亭で祝いました。大人になっても物怖じしないマナーを体験させる気
持ちもありました。妻の誕生日には、ネックレスや指輪などの装飾品が嬉
しいようです。もちろん高額なものには手が届かないことは妻が知ってい
ます。しかし、私はできるだけ奮発していました。自分以外の人を楽しく
させる意識を忘れたら「楽しい人生」は生まれないと思います。私の暮ら
しの一端が、他者を楽しくさせるコツを探すヒントになれば幸いです。
    
本日のテーマは「400円と好奇心」でした。
関崎海星館のきら・ら星広場には毎年5万人を超える方々がお見えになり
ます。
関崎海星館は教育施設であるから無料にすべきとのご意見もあるところで
すが、ともかくも、大人400円、小・中・高校生は200円の入館料が必要
です。 お見えになった5万人のうち3分の1の約2万人が入館されます。

海星館で見かけた光景で私が気になった事例をお話させていただこうと思
います。
@「入館料がいるの?」と言って引き返す人。(比較的ご年配者が多い)
A「見たい」と言う子供の手を引っぱって遠ざかるお母さん。
B一緒に来た娘と孫に、
 「私はいいからお前たち見ておいで」と言うおばあちゃん。
C「パンフレットだけいただけますか?」
D視察は当然に無料と思い込んでいるお役人。
Eプライベートできた女性理科教師の「どうしましょう?」と無料入館を
 乞う姿。
このような光景にしばしば出会います。
私が在任中におおよそ500人の方に 「がっかりしたら館長が入館料をご負
担します」 と申して、ドームに招きいれ、太陽のプロミネンスや昼の金星
を観察していただきました。
すると、全員が「感動しました!」と言ってくれました。私が入館料を負
担したことは一度もありませんでした。

はるばる佐賀関半島の突端へ遊びに来たのですから、 少しばかりの無駄遣
いをして好奇心を示していただきたいと切に願うのです。
遊びに行くときは「無駄遣いをするぞ!」 と覚悟をして出かけなければ、
感動の機会を発見できぬまま、単に「何処かへ行った」 だけに終わり、こ
れは行かぬも同じであると思います。
見たいと言う子の手を引っぱって遠ざかったお母さん・・あの子も母親に
なったら同じような行動を繰り返すのでしょうか。心が痛みます。

海外旅行はヨーロッパが中心ですが、海外に出てわかるのですが、日本人
はお金の使い方を知らないように感じます。つまり、好奇心を充たし、感
動を発見することにお金を使う心が欠如しているように見えるのです。

先日、日本人の個人金融資産の資料を取り寄せてみました。私たち日本人
はどのくらいのお金を持っていると思いますか。
10年ほど前の1990年の個人金融資産は1034兆円でした。バブル経済崩壊
後も毎年その個人金融資産は殖え続けて、2002年には実に1358兆円に達
しました。
もう一度申しますが、現在の日本人の個人金融資産は1400兆円を超えまし
た。この内に、60歳代の金融資産は422兆円、70歳代は298兆円、合わせ
ると720兆円です。私たちお年寄りが、実に個人金融資産の半分以上を保
有しているのです。
しかも、年金受給者の預貯金は今も年々増えつづけています。

私は62歳ですが、私が70歳になる頃には個人金融資産の大移動が起きる
だろうと予測しています。 私の世代の大半の方々は、お金を使わぬままに、
そっくりこの世に残して天国へ旅発ちます。
少子化で、残された子供は一人か二人、 その子供へそっくり大金が転がり
込むのです。しかも、親が住んでいた住居(土地・建物)もありますから、
その大金は子供の住居に充てる必要もなく、思いのままに使えます。こう
なると、10年後の日本の社会はどのようになっているか想像してみてくだ
さい。

私の予測は別の機会に譲るとして、日本の社会は子供たちに任せていても、
なんら心配はありません。彼らは残されたお金を使って、 私たちにはでき
なかったすばらしい21世紀を演出するでしょう。この点、私は楽観論者で、
再び日本に文化の花が咲くことを信じています。

しかし、ほとんどのご家庭のご子息は東京や大阪などの大都市に就職して
住んでおります。いずれ郷里(地方)へ戻ってくるかもしれませんが、私
は期待できないと思います。
親が死ぬと、その預貯金の全額を、その子供の住所地の銀行へ振り込むよ
う依頼してきます。そこで、地方から大都市へ資金の大移動が始まります。
その現象はまもなく顕著に現れます。地方からどんどんお金が消えてゆき
ます。地方の金融機関は大ピンチを迎えるかもしれません。 現に、その現
象は珍しくないと私の知る支店長が申していました。
行政、経営者、特に金融機関の経営者、それに地域住民である私たちは、
未来をしっかり見つめて行動を変えてゆかねばなりません。
    
少しお話しが横道にはずれました。
皆さんは、自分のためにお金を活かして楽しく使っていますか。「お金の
使い方」について、ご自身の認識を誇らしく他人にお話しできますか。
「私が死んだら、今住んでいる家屋敷は残るかもしれないが、お金は使い切
ってしまうから、君には残せないだろう。」と息子には伝えています。息子
も当然のことだと受け止めているものと思います。私の場合、妻は専業主婦
という家庭でした。息子夫婦はいわゆる共働きです。しかも、二人とも学者
であり、それぞれの大学に勤務しています。私たちには考えられない暮らし
のスタイルを持っています。この二人が帰省したときは、私たちはお客さん
のように迎えます。子供だから、たまに帰省するのは当然、 親孝行はあたり
まえとは私たちは考えていません。子供たちが心豊に暮らしていれば私たち
ものびのび気兼ねなく遊べます。
自分のためにお金を活かして楽しく使うスタイルは千差万別でありますので、
そこは皆さんにお任せします。

女性は男性に比べてずっと長生きをします。女性は生理的に長生きをするべ
く作られていると言われます。私はそうは思いません。女性が長生きをする
のは、女性は楽しく遊ぶ達人であり、好奇心が旺盛です。 それが、女性の細
胞が活性化する所以だと思います。周囲を見渡すと、男性は好奇心をあまり
示さない。一杯飲んでそれでおしまいというタイプが多い。私の趣味の俳句、
絵画、旅行にしても圧倒的に女性上位です。囲碁や将棋も女性の進出がめざ
ましい。 男性は細胞の活性化に結びつく好奇心を放棄している方が多い。
一足早く天国に昇り、女房殿を楽にしてあげようと思いやる優しい心は誉め
てあげたいのですが・・・。

 カルチャーは女優勢山笑ふ  陽鳥 
私の一句です。男性も負けずに好奇心を発露していただきたいと思います。
      (2004/9/17 サザンクロス講座にて ・ 62歳)

私の随筆の中で、「あまり長生きはせずに69歳で一期を迎えたい」と述べて
います。私の健康状態は、あらゆる検診項目が正常値の範囲内におさまって
います。つまり、頭の悪さは別にして、どこも悪くないという、いわば恐ろ
しい状態にあります。この数年間にクスリ一つ飲んだことはないのです。
このまま行くと、100歳までは神に召されないかもしれない。 そうなると、
楽しいことが辛くなること請け合いです。
それでは、69歳までに神が迎えに見えぬときはどうするのか皆さんに問われ
ます。もちろん、その場合のことは考えています。考えるだけではだめで、
強い信念を持って決意をしております。
70歳になったら、やり残したことがあっても、それまでの暮らしに区切りを
つけなければなりません。その日から縁側で日向ぼっこをして過ごす、つま
り好々爺になるのです。
久米宏氏の言葉「人は好かれないとまずい」を心がけたいと思います。

   
 2012年4月25日
 古希の祝いに七宝焼きのペン皿を息子夫婦から贈られました 
70歳に到達しました。今も薬一つ要らずで過ごしています。妻に勧められ
10年ぶりに一日人間ドックを受診しました。
検査分野の20項目の中18項目が☆印「異常がありません」、他の2項目は
特段の検査を求めるコメントではありませんでした。
あたかも、インターネットの世界が訪れ、老後の暮らしに活力を与えてくれ
る時代となっています。後ればせながら、ホームページやブログを更新し、
ツイッターやフェイスブックを活用し、好奇心を大いに発揮しています。
この調子だと80歳までは居られるかもしれないが「日向ぼこをして過ごす」
心がけで従容として暮らしたいと思います。

随 想 Essay