酒屋さんへの提案
 
この会は酒屋さんの会と言うことですので、最後に皆さんへ向けてひとつ提案をさせていただきたいと思います。  
日本は工業製品はたくさん輸出するが、自国の文化を輸出するのは不得手だと言われます。例えば、酒について考えてみましょう。日本人は日本酒はむろんのこと、それ以外にもビールやらワイン、ウイスキーなどを飲みます。しかし、海外では日本と同じように洋酒以外に日本酒を飲むのでしょうか。ドイツ人がビールとワインの他に日本酒も飲んでいるというような話はあまり聞きません。これは日本酒の宣伝不足のためではないでしょうか。  

皆さんが扱っておられる日本酒というのは日本の文化そのものです。これを海外へ輸出してみませんか。または、製造技術を紹介してみたらいかがでしょうか。商売的にどうのこうのではなく、それこそボランティアで良いのではないでしょうか。少しでも、日本の文化を世界にアピールすることができたらすばらしいことだと思います。海外の人たちが時にはウイスキーではなく酒を飲む。そのとき酒瓶に書かれた漢字に興味を持ち、かの地日本に思いを馳せる。そのようになれば日本の文化も少しは世界に広まると思います。 
3年前、私は22名の60歳、70歳代を中心としたかたと一緒にオーストラリアを訪問しました。シドニーで行われたパーティーの席では、驚くなかれオーストラリア産日本酒が振る舞われました。オーストラリアを漢字で書くと「豪州」になりますが、酒の名前はそれに引っかけて「豪酒」といいます。当のオーストラリア人にはわからないでしょうが、日本人にはなかなか

おもしろい名前だと思います。アメリカのカリフォルニアでもアメリカ産日本酒が造られていると聞きます。また、先月私の家でホームステイされたオーストラリア人の旦那さんはコシヒカリを栽培、研究されておられるとのことです。少しづつですが、普通のオーストラリア人にも日本の食文化は広まっているのかもしれません。  

この中には直江津・西本町の西沢酒店さんをご存じのかたも多いと思います。そこのご隠居西沢宏一さんは大変ユニークな方で、過去2度一緒にオーストラリアを旅しました。西沢さんは酒屋さんですが、酒の輸出ではなく、ご自分で打つ手打ちうどん屋をシドニー郊外で開いてみたいという壮大な夢を持っておられます。それがだめでも一月間、かの地にホームステイしてホストファミリーに毎日うどんを食べさせたい、と望まれているそうです。実に魅力的なかたです。  

このように日本の文化、今の私たちの生活を海外に知らせる活動はおもしろいと思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか。  

もう一度言いますが、日本酒は日舞、茶、社寺建築などと同様、立派な日本文化です。それに携わる皆様は日本文化を体現されている方々です。ぜひ、一度海外へ出かけられて、酒、しいては日本文化を宣伝して下さい。オーストラリア方面ならばお手伝いできることもあるかと思います。  

長々ととりとめのないお話をしてきました。ご静聴ありがとうございました。