すばらしい子供達
 
 
資格認定センターにはラジオが置いてあり、それですぐ近くで行われている開会式の実況を聞いていました。しかし、式が始まるとここを訪れる人はほとんどありません。私たちは交代で会場内へ入り、開会式を直に見ることにしました。  

皆さん、開会式のテレビを思い出して下さい。聖火台を正面、テレビの画面で言うと上の方に見て、その反対側には、テレビ画面には入りませんが、天皇皇后両陛下、オリンピックファミリー等の国内外の重要人物が陣取ります。また、画面の右手の方には西口が、そして左手の方には東口があります。東口からはギリシャから始まる前半の選手団が、また西口からは残りの選手団が入場しました。私たちが開会式を見たのは会場東口でした。  

私が東口へ行ったとき、ちょうど力士たちが出て行くところで、付き人の力

士がぞうりや浴衣を持ち見送りました。東口の出口には式進行係、雪んこに扮したたくさんの子供達、力士の付き人たち、そして私たちボランティアでいっぱいでした。進行係スタッフはさすがプロという感じでてきぱきと指示をとばし、皆が一体となってこの世紀のイベントに臨んでいるという感じでした。子供達はこれからの出番が心配なのか少々緊張の面もち。一方、私たちボランティアはまさに間近で見る式とその舞台裏の混沌を楽しんでおりました。  

次は雪んこたちの番です。皆、一声揚げて駆け出しました。入れ替わりに力士たちが戻ってきます。付き人は自分の担当力士のために、浴衣、ぞうり、それとたらいに湯を満たして待機しています。力士は戻るとまず、浴衣を着せてもらい、たらいで足を洗い、ぞうりを履いて控え室へと消えていきます。

 
 Returning Sumo wrestlers
入れ替わりに力士たちが戻ってきます。
 
 
大きな力士たちが居なくなると少しは場所に余裕が出ましたが、すぐに最初の入場選手団となるギリシャ選手が入ってきました。また、入場式に参加する力士も戻ってきました。各国選手、役員たちは実にリラックスした感じでした。森山良子の歌に合わせ踊る者、力士や子供と記念写真を撮る者など。 
しばらくして森山良子との競演を終えた雪んこが戻ってきました。みんな大役を終えた開放感からか満面の笑みを浮かべていました。彼らは急いで次の選手入場に備え、係員から国名の入っ
たプラカードを背中につけてもらいます。子供達と力士の交流も見ていて心が温まりました。力士の大きさに驚く者、握手する者、手を繋いだり離したり、肩車をしてもらう者など。そして力士が子供を肩車したまま、最初の選手団であるギリシャは入場行進を始めたのでした。  

入れ替わり入って来る選手団の半分をこうしてを見送った後、私たちは自分の持ち場へ後ろ髪を引かれる思いで、帰りました。

 
 A child and a sumo wrestler
力士の大きさに驚く者、握手する者、
手を繋いだり離したり、肩車をしてもらう者など。
 
 
後でテレビを見た開会式の映像も含めて、身近で直に見た私の式に対する感想をお話しします。実に日本的な木遣りや力士の土俵入りも日本文化を世界に知らしめるという点では良かったと思いますが、やはり一番印象に残ったのは子供達と音楽でした。  

子供達の表情が非常に良かった。踊りも実に子供らしかった。皆さんは北朝鮮の子供達のマスゲームを見たことがあると思いますが、全員一糸乱れず同じタイミングで同じ動作をする、と言うのは実に子供らしくないと思いませんか。長野の子供達の踊りは適度に乱れたり、そろわなかったり、表情がバラバラと言う感じがしましたが、それ故に子供らしさが現れていたと思います。  

また、地雷処理作業中に片足を失ったというクリス・ムーン氏が子供達と一緒に走ったというのも実に感動的な場面でした。「地雷反対」、「子供達に平和な未来を」と言うテーマをまさにうまく表現したシーンでした。テレビでこの場面を見て、本当に感激しましたし、私はこの場面が一番好きです。

聞くところによると、長野市内の小、

中学校はオリンピック参加国を知るため、一校一国運動を進めてきたそうです。一校が長い時間を掛けてひとつのオリンピック参加国を研究し、その国の子供達と交流してきたのです。このような交流を通し、子供達は日本以外の世界を知り、日本とは異なる人種、文化、生活、宗教、歴史などを学んだのです。  

長野市はオリンピックを誘致したことにより、この子供達の将来へ投資をしたのだと思います。オリンピックというステージを用意し、そこに子供達を上げ、世界というものを学習させたのです。なんと恵まれた子供達でしょう。彼らの中から将来の国連事務総長が生まれるかもしれません。ノーベル平和賞を受賞するものも出るかもしれません。オリンピックという大舞台を踏み、直に肌で国際化を体験したこの子供達は将来どのような人生を送るのか、私は非常に興味を感じます。  

音楽も良かったです。私はベートーベンの第九より、森山良子が歌った「明日こそ子供達が」が印象に残りました。たぶん子供達が出てきた場面で何度も演奏されたためでしょうか。