困った人々
 
良いことがあれば悪いこともあるものです。私の配置場所ではあまりありませんでしたが、それでもいくつかはあります。  

外国放送関係者の中で一番多いのはアメリカCBSです。約1800名でした。彼らはいつも決まってお昼頃、大型バスで乗り付けてきます。一度に50人から100人くらいです。そのときはもう大変な騒ぎで、20人も入ればいっぱいになる仮設ハウスはもう大混雑で、外にも列ができます。さながら国際空港でジャンボ機が到着した直後の入国審査場のようです。このときは必要なこと以外の言葉は口にせず、ひたすらコンピュータを叩き、早く終わってくれと祈りながら作業をしました。  

CBSはアメリカの放送会社ですので、言葉は英語です。ヨーロッパの英語圏以外の人も、訛はありますが、流ちょうに英語を話しますので言葉の問題はありません。問題は旧ソビエト諸国です。ベラルーシとかカザフスタンという国々です。彼らは英語を話しません。ロシア語だけです。こちらは英語を、彼らはロシア語を話し、端で見

ると実に奇妙な光景ですが、資格認定の作業は同じことの繰り返しですのでこのような状況でも仕事をこなす上ではあまり問題はありません。ただ、彼らと意志の疎通ができない、雑談ができないのが残念でした。  

少し頭に来たのがギリシャのとある大臣付秘書官でした。2月7日の開会式後に国際放送センターへ来たのですが、必要なパスがなかったために入り口で追い返されました。私たちの所へ来てすぐに入場パスを出せ、と強要します。曰く、  
「5時にギリシャ向けの放送があるのになぜ入れないのだ」  
「書類がそろっていないので発行できません」  
「いや、何が何でも今すぐ発行しろ」
と押し問答。 
そのやりとりの後、別のギリシャ人が入ってきてなにやら話したあとで彼らは出て行きました。たぶんパスが手に入ったのでしょう。でも、おかしいのは5時に放送が始まる、と言いながら彼らが私たちの所へ来たのは5時15分だったのです。時間の観念が日本人とはだいぶ違うようです。

 
Volunteers at work