えびちゃんの山行記録

加賀白山・・・その一瞬のために
加賀白山の御前峰
急登を終えると白山御前峰が間近に迫る。

日 付
 平成15年 5月 2日(金)〜 3日(土)
ルート
 1日目:別当出合〜砂防新道〜甚ノ助小屋〜室堂〜山頂〜2325m付近泊
 2日目:山頂及び万才谷一帯でスキー〜往路逆順〜別当出合
天 候
 2日間とも快晴

概 要
 年に1度、近畿圏外へバックカントリースキーに行くようになって4年目、いろいろ悩んだあげく、今年は以前から憧れていた加賀白山にしました。
 関西において真っ先に冬の訪れを感じるのは、琵琶湖周辺から遠望できる白山の真っ白になった姿を目にした時でしょう。標高は3000mに満たない山ですが、実際に登ろうとするとGWのこの時期ですら約1500mの標高差があり、富士山級の高さとも言える手強い山であることに気が付きます。
 今回は日程の関係で単独行となったこともあり、初めて山中で1泊できる装備でアタックしました(これまでは日帰り装備のみ)。このためザックの重量がかなりの負担となり苦しめられましたが、幸い2日間とも高気圧に覆われた絶好の登山日和でしたので、全ての苦労は報われました。
 高度が2000mを越える度に、もう2度と高い山には登るまいと思うのですが、山頂周辺のわずか一瞬の快楽がその苦痛を忘れさせてしまいます。人をここまで動かせてしまう雪山、そしてテレマークスキーっていったい何なのだろうと思わずにはいられません。
 雪山の装備について:通常のテント泊行のセットに加え、スキーセット(テレマークスキー、ショベル、アイゼン、予備部品等)がかなりの重量になるため、必要最小限に装備をまとめることが重要なのですが、実際に登ってみると使用しない娯楽グッズは持ってきているのに、本当に必要なモノを忘れてきている等、道具選びの難しさを改めて思い知ることになりました。

03:30 宝塚出発
 宝塚から白山登山口のある白峰村まで、どれくらい時間がかかるのか全く分からなかったので、可能な限り早く自宅を出発した。いつもなら高速代もケチるのだが、今回は福井北ICまで全線利用したので、途中地図を何度も確認したけれども、別当出合の登山口に到着したのは7時前だった。
 アクセスはこれまでで一番良いと感じた。これなら、余裕を持って登れそうだ(^^)

別当出合の駐車場

10:10 甚ノ助小屋
 7時20分頃に別当出合の駐車場を出発し、まずは甚ノ助小屋を目指した。GW中であるからか、平日にも関わらず駐車している車の数は多い。既にかなりの人が登っているようで、初めての私は先行する人の後を追うことにした。時々GPSを確認するが予定したコースをだいたい歩いているようなので安心だ。
 しかし、やけに荷物が重いのが気にかかる。雪も黒と白が交互に縞模様を形成しており一定した雪質は望めそうにない、こういう悪雪はあまり経験がなく本当に滑って降りることが出来るのか不安である。果たしてこの1年間で私のスキー技術は何処まで進歩したのだろうか?

甚ノ助小屋からの急登
 一端林道と合流する所からスキーを履いて登る。スキーを下ろしても荷物は相変わらず重く、スキーも快調には滑ってくれない。いい加減息が上がったところで、ようやく甚ノ助小屋の屋根が見えてきた。小屋は屋根まで雪に埋まっていたが、屋根のすぐ下に出入り口があるので泊まる事は出来そうだった。中を覗き込むと毛布も何枚か畳んで置いてある。この付近にテントを張っている人もいたのでどうするか迷ったが、もっと上でビバークする危険性もあるので、ここは歯を食いしばって荷物はそのままで更に登り続けた。

12:20 弥陀ヶ原南尾根
 激登りであった。スキーシールも利かないほどの急斜面で、もし後ろに滑り出したら滑落を止める自信がなくなり、最後は板を担いで尾根まで登った。ここで、ようやく白山最高峰である御前峰が間近に迫って見えたが、残念ながら山頂付近には雪は残っていなかった。後で聞くと、それでも例年よりは雪は多かったらしい・・・。それよりも遙か彼方の霞の上に、昨年までに登った(滑った)乗鞍と御岳が浮かんでいるように見えたのが感激であった。

尾根からの眺め
 しかし、ここから山頂までは弥陀ヶ原を越えてさらに登らなければならない。これ以上テント等を担いで行くと、山頂直下での滑りが楽しめないと思い、ここで荷物の半分くらいをデポする事にする。これでようやくザックは軽くなったが、今度は空気が薄くなり歩き出すとすぐに息が切れるようになった。 

14:50 最高峰に立つ
 弥陀ヶ原〜室堂まではスキーで行けたが、山頂には雪はないのでまたスキーを担ぐことになる。滑ることだけを考えれば、途中でスキーもデポしてしまえばよいのだが、これまで苦労を共にしてきた板を置いていくことは許されない、それだけは私のこだわりである。カルフのテレマーク板には「引退したら、これまで制覇した山の名前を刻んでやるよ」なんて一人感傷に浸りながら山頂に到着。きつかった。

山頂にて
 山頂の向こうには、剣ヶ峰と大汝峰がそそり立っている。剣ヶ峰は全く雪は残ってないが、大汝峰には綺麗な雪が付いていた。いつかあの斜面にターンのラインを刻みたいものだ。今回は技術的にも体力的にも無理だけど。。。。

15:50〜束の間の天国
 山頂の南西斜面は斜度も適度で、何より広大で最高のプライベートゲレンデであった。登りはあれだけ苦労したのに下りは1分足らず・・・・ものすごく贅沢で濃密なスキー。本当なら登り返して何度か滑るのだろうが、今日はそんな元気は残っていなかった。

広大なプライベート・ゲレンデ!
 登り返すどころか頭がガンガンしはじめた。どうやら、急激に登ってスキーなんかしたもんだから軽い高山病にかかったようだ。もう、重いテントを担いであんな急斜面は降りられない・・・・やむなく、2325mとちょっと高いところのような気はしたが、荷物をデポしておいたハイマツの陰にテントを張ることにした。

18:40 日没
 日が暮れる前にやらなくてはならないことはたくさんある。まず「テント設営」木陰の雪は堅くショベルでもなかなか整地できなかった。次に「水の確保」水分はほとんど飲み尽くしてしまったのでコンロで雪を溶かして確保しようとしたが、雪と言うより氷なのでなかなか溶けてくれなかった。ふと横を見ると雪の壁から雪解け水が滴り落ちている。これだ!ペットボトルを下に置くとアッという間に水は確保できた。ようやく夕食に取りかかれる(^^)
 夕暮れの景色は何とも言えないものがある。御岳はまるで空中に浮かんでいる要塞のようだ。正面の別山も少しづつ紅く染まり始めた。

夕闇せまる
 日が沈むと急激に温度が下がってくる。そう言えば今日は2時半起きだったのだと気づき、7時過ぎにはシュラフに潜り込んだ。前回のテント泊行(七面山)でエアーマットを破いてしまったので今回はマットを持ってこなかったのだが、これが大失敗だった。テントの中の気温は深夜でも4℃くらいだったのだが、地面にあたる部分が冷たくなって何度も目が覚めてしまったのである。ザックの上に乗せている足が暖かかったので、ふと思いついてザックを体の下に持ってくるとようやく暖かくなってきた(^^)いつも夜中に腹が減るので、あらかじめ枕元に用意していた「おにぎり」を1つ食べると、完全に深い眠りについた。ZZZzzz・・・朝方は氷点下まで冷え込んだようだ・・・

05:20 日の出
 ふと気付くとテントの外がやけに明るい。。。あわっ!寝過ごしたか、と思って時計を見ると5時10分だった。なぜか4時半にセットしていたアラームは鳴らなかったようだ。あわててテントの外に這い出すと、かろうじて日の出はまだだった。ホッ(^^;

想像を絶する景色である
 御前峰の尾根が陰になって、テントを張っている地点の日の出は遅いのかもしれない。そう思っている内に太陽がジワジワと姿を現した。昨日はぼんやりと見えていた乗鞍岳や御岳がくっきり見える。今日もいい天気になりそうだ。

〜11:50 大滑走
 折角のこの状況、滑らない訳にはいきません。必要の無いモノは全てデポして、昨日滑った山頂直下のゲレンデを1往復。やっぱり下りは1分足らず・・・、満足出来なかったので、誰も滑っていない万才谷へ滑り降りてみた。あれ〜なんか板の滑りが悪い・・・なんとシールを付けたままだった。登り返してシールを外し再度ドロップイン!楽しいね〜〜ただし、ここの登り返しはスキーを曳航して4つん這いでないとあがれません(xx)

アドベンチャー

〜1410 下山
 フル装備になるとやはりザックは重い。一番の急斜面は転倒すると谷底へ一直線なので、歩いて降りた。雪山はゲレンデと違って安全に滑り降りることが第1優先だから。。。2日目は初日と違ってたくさんの人が登ってきていたのでスキーを担いで降りるのは恥ずかしかったが、これも勇気のある行動と自分を慰めた。
 しかし、滑落しても安全な斜面になった以降はほぼ満足のいく滑走が楽しめた。革靴でまだらの悪雪を重い荷物を持って滑れるのか?なんて心配することでは無かった。ゲレンデで一生懸命練習すれば、その技術は春の雪山で十分通用することが分かった。また涙が出た。なんでこんなに苦労して登ってきたのかを1年ぶりに思い出した。素晴らしい景色、一瞬の滑走、それだけではない自分に自信を付けるため・・・これで、あと1年間は生きていける。

想像以上に滑走も楽しめた

終わりに
 うすうす気が付いてはいたが、白山は圧倒的に山スキーヤー(スノーブレード含む)が多い山域である。2日目は広い駐車場に車が溢れかえっているほど、たくさんの人が登っていったが、テレマーカーは10人いたかどうか・・・・、こういうところでテレマークをすることほど宣伝効果の高いものはないだろう。決してお気軽な山ではないが、こういうアクセスの長い山ほどテレマークは適していると思う。滑れる斜面も無数にあるので、いずれ機会を見つけて再度挑戦したい。

GPSの軌跡1日目2日目

八尾テレマーク研究会の活動記録「第42回研究会」のページに戻る

メインへ