『緋牡丹博徒 鉄火場列伝』(1969年/東映)

監督:山下耕作。
出演:藤純子。鶴田浩二。丹波哲郎。若山富三郎。待田京介。

徳島まで出所する子分清吉を向えに行ったお竜は、病院すら紹介してもらえないまま重病の清吉を出迎えることになる。不案内な土地で重病の清吉を抱え途方にくれるお竜は、元はやくざだが今は藍の小作人と旦那衆の仲立ちをする江口に助けられるが、看病空しく清吉は息を引き取る。その頃小作料を巡り地主である旦那衆たちと小作人たちとの交渉が決裂し小作料争議が起こり、阿波踊りの期間に開かれる旦那衆を招いての賭場が一家の重要な資金源となる徳政組の三代目武井は二代目だった江口に小作料争議を収めるように頼むが、江口はこれを無職の人間が口を挟むことではないと断る。そのことにより、徳政組の乗っ取りを企む観音寺組と鳴戸川組が次々とあくどい仕打ちへと出る。
この作品は出番は少ないけど丹波さんがかっこいいと聞き、これは観なければ!ってことでレンタル。確かにかっこいい。登場シーンには思わずのけぞってしまった。舞台は明治の中頃、みんな着流し・・・という中お一人だけ白のスリーピースで参上するんだからズルいです(笑)。おまけに白い中折れ帽子。ダンディすぎますぜ丹波先生。メインでかっこいいのは鶴田浩二さんのはずなんですが、格好からして目立っているし、最後の最後においしいとこ持っていっちゃっうし。この作品は丹波先生ファン必見ですぞ。 まぁ、でもこの作品丹波先生がかっこいいだけじゃなくって、鶴田浩二さんも渋くてかっこいいですし、出てきただけで場面が和む熊虎親分の若山さんなんですが、殴りこみならぬ座り込みで観音寺組の組長たたっ斬るシーンはかっこいいです。お竜さんのデレデレなシーンとドス振りまわるシーンの差が見事だ。「緋牡丹お竜」が強いのは熊虎親分と兄弟分だからかもしれない。 余談ですが、この作品で天津敏さん見ていて、北野たけしさんに似てるってことに気付いた(笑)。

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『人生劇場 飛車角と吉良常』(1968年/東映)

監督:内田吐夢。
出演:鶴田浩二。辰巳柳太郎。高倉健。藤純子。

数年ぶりに上海から故郷に戻った吉良常は、文士になるために東京で勉強している亡き主人の子青成瓢吉を訊ね、そのまま瓢吉の家にやっかいになることにする。その頃、小金一家が匿った飛車角と彼が大横田経営の店から足抜けをさせたおとよのことで、大横田と手を組んだ丈徳一家が喧嘩をふっかけ出入りとなり、飛車角の活躍で小金一家が勝利を収める。ところが兄弟分奈良平が裏切りおとよを大横田に渡そうとしたことから飛車角は奈良平を殺め、逃げる途中巡査の姿を見かけた彼は慌てて一軒の家へ逃げ込む。飛車角を見た吉良常はすべてを悟り、何も聞かずに一杯の酒を手渡す。その一杯の酒で踏ん切りをつけた飛車角は自首し、小金一家と大横田もおとよを大横田に返すことで手打ちとなったが、そのおとよは大横田へ戻るはずの道中姿を消してしまう。やがて4年の時が流れ・・・。
『人生劇場』は何度か映画化されていて、物語を知っているようないないような・・・。多分まともに観るのはこの作品が初めてだと思うのですが、まず青成瓢吉という名前を聞き「はいはい・・・なんとなく知ってる。確か本来の主役は彼では・・・」としっかりと何本かの作品のうちのどれかをちゃんと観ているわけでもないのに、なんとなくでもこの作品のことを知っているというのは、それだけ有名な作品だってことなんですよね。それでちょっとネットで調べてみたら・・・すごい。この原作が完成するまでに20年かかってるとは。最初にこの作品を読み出した読者と一緒に主人公成長してるかも・・・なんか『北の国から』みたいだ(笑)。 そんなことはともかく。この作品はタイトルの通り主人公は青成瓢吉ではなく、飛車角と吉良常。超渋い男たちの物語となっております。飛車角とおとよ・・・そしておとよと宮川。飛車角と宮川。すれ違いの三角形が切ない物語。でもこれ冷静に考えるとおとよあんた何考えて、何やってんの?って話にもなるかと思うのですが・・・。仕方ない美しい藤純子さんだから許してあげようか(笑)。それにしても飛車角と吉良常の二人の関係がいいですねぇ。辰巳さん演じる吉良常が激シブ。度胸の据わった力強さを持ちながら、フッと力の抜けたような雰囲気がすごくいい。男のケジメに女は邪魔なんだねぇ・・・くぅ・・・かっこいい。 ところでこの作品ラストの飛車角の殴りこみのシーンでいきなり白黒になっちゃうんですが、これなんか意味あるんでしょうか?(^^;) 血飛沫が飛んでグロテスクになっちゃうから?・・・んなわけないですよね。

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『椿山課長の七日間』(2006年/)

監督:河野圭太。
出演:西田敏行。伊東美咲。成宮寛貴。和久井映見。

デパートに勤める椿山課長は仕事中に突然死してしまう。気がついた場所は「中陰役所」天国と地獄の中間地点だという。中陰役所の案内人マヤによる死後の説明では、現世に未練のある希望者は初七日までの間現世に戻ることが出来るという。あまりにも突然の死のために未練たっぷりの椿山は迷うことなく現世に戻ることを希望する。大勢の希望者の中から選ばれたのは椿山を含めた三名。ヤクザの親分だった武田。小学生の雄一。武田は自分の死によりヤクザ同士の抗争が起きないように、雄一は一目生みの親に会うために、そして椿山は、あまりにも椿山の知らない事実が多いので、それを知らないのはかわいそうだろうということで、それぞれ現世に戻ることになる。但し、自分たちの正体がバレないように別の人物として・・・。
浅田次郎さんの原作。幽霊、ファンタジー。はっきり言って全く観に行く気はなかった。が、しかし、國村隼さんと綿引勝彦さんが出ていると知り、突然観に行くぞ!という気になる(笑)。二人とも好きな俳優さんなんだけど、微妙に似ているなぁ〜と以前から思っていた。こうして二人一緒に出ているのを見てやっぱり似てるわと確信。私の好みの一つが明らかになる(笑)。
現世に戻った西田さんが伊東美咲さんというのが、大きな笑いのポイントで伊東さんも本当は中年男っていうのを何とかがんばって演じてて、それなりに楽しめたんですが、物語として、メインの椿山課長の話ってどうもいただけないんですよね。ヤクザの武田や雄一少年の話の方が納得もいくし面白かった。知っておいた方がいい事実ってのは、どうなんだろ?確かに知っておいた方がいいかもしれないけど、普通あれじゃ成仏できないぞ。って言うかあれじゃあ椿山課長の人生ってなんだったんだ?って気になっちゃう。流れ的に予定通りに泣かされちゃうんだけど、やっぱり『鉄道員』と同じような感じで納得いかないんですよね。ま、浅田次郎さんの作品だしね・・・大きな理不尽の転がったファンタジー。仕方ないか。 とにかく私の中でのメインのお二人はしっかりとかっこよかったんで、とりあえずは満足。

2006年11月20日(TOHOシネマズ泉北)

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『武士の一分』(2006年/松竹)

監督:山田洋次。
出演:木村拓哉。檀れい。笹野高史。坂東三津五郎。

近習組に勤める下級武士の三村新之丞は、毒見役という役目に嫌気がさしながらも、美しい妻加世と父の代から仕える中間徳平と平穏な日々を送っていた。 そんなある日、いつもの毒見の席で新之丞は、貝の毒に中ってしまう。危うく一命はとりとめたものの、視力を失ってしまう。お役目につけぬ身となった新之丞だが、毒見役という役目上のこと、何とか家禄の半分でも残しておいてもらうようにと、番頭・島田藤弥への口添えを本家から命じられた加世は、その言葉通り島田の元を訪れるが、島田の姑息な罠に嵌ってしまう。そしてそれを知った新之丞は・・・
下級武士の平穏な日常。そんな中起こる不測の事態。それでも大きなうねりを見せることもなく地味に場面は展開する。だけどその地味さがいい。しかもこの映画のパーツすべての接着剤的な役割を果たしている笹野高史さんがすごくいい。キムタクもがんばってるし、この子誰?って映画を観終ってサイトで確認するまで一体どこの誰なんだかもわかんなかった檀れいさんもこの役にぴったりでいいんだけど、もうただただ笹野さんがいい。山田監督って脇の使い方巧いですよね。それにこの作品はとにかく地味(笑)。だけどその地味さの中に、この監督独特の笑いの間があるから観ていて飽きないしだれない。そして観終って清清しい思いにさせてくれる作品です。前の2作も好きですが、もしかしたら私はこの作品が一番好きかも。

2006年12月4日(TOHOシネマズ泉北)

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『忠臣蔵』(1958年/大映)

監督:渡辺邦男。
出演:長谷川一夫。市川雷蔵。鶴田浩二。勝新太郎。京マチ子。

時は元禄15年12月14日。降り積もった雪の中、響き渡るは山鹿流の陣太鼓。ってことで本日は12月14日。ちょうど今日のお昼にCATVで『忠臣蔵』が放映されるからと、しっかりと予約。帰宅して早速視聴。やっぱ今日観ないと(笑)。ところが・・・さすがに長いわ。2時間40分。別に目新しいこと何もないにも関わらず、ラストも間の話もわかっているのにも関わらず、しっかりと観てしまった。 しかし、久しぶりにこういう昔の時代劇を観ると、まずメイクに驚きますね。男優さんも女優さんに負けず劣らずの白塗りにこってりびっしりとアイライン(笑)。今これで映画撮られたら引くだろうなぁ。 これ一本で2時間40分っていうのは、長いと言えば長いんですが『忠臣蔵』といういろんなエピソード盛りだくさんの話からすると短いんですよね。 だから、まず赤穂に早駕籠が到着するところからはじまって、吉良さんの内匠頭いじめがダイジェストで描かれ、あっという間に内匠頭切腹。それから討ち入りまでは、大石の山科での遊興があって、垣見五朗兵衛のエピソードに、絵図面をもらう岡野金右衛門のエピソード、そして赤垣源蔵の不在の兄との別れ。さぁ江戸に下るぞっていうときにはいきなり準備した武器です。っていうお披露目のシーンがあるんだけど、この武器を用意する天野屋利兵衛は出てこない。だから「天野屋利兵衛は男でござる」っていうのがないんですよね。それに、この時間内で基本の流れはいれないといけないんで、討ち入りからはずれてしまったメンバーのお話は一切描かれてないです。 大映創立18年を記念して作られた作品ということで、豪華キャストなんですが、イマイチ、ミスキャストというか、全然魅力のないキャラとして田崎潤さん演じる清水一学がいるんですよねぇ。清水一学ってもうちょっと繊細なイメージがあるのに、田崎さんだと豪快すぎてね。「不審な奴だ!」ってやたらとかかってくるんで、なんだかバカみたいに感じてしまった。(^^;)  あ・・・それと、討ち入り後、橋の前で引き返すっていうパターンに、後進する四十七士たちの元に遥泉院が駕籠でやってくるっていうの、今まで観たことなかったような気がするんですが、こういうパターンもあったのかな。 来年もまた、こうして放映があったら、きっと観るんだろうなぁ(笑)。

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『犬神家の一族』(2006年/)

監督:市川崑。
出演:石坂浩二。松嶋菜々子。尾上菊之助。富司純子。松坂慶子。

昭和23年の冬。信州の大財閥犬神家の当主佐兵衛が死亡。そしてその遺産相続は遺族全員が揃った所で佐兵衛の遺言書により発表されるという。佐兵衛の死から8ヶ月が経ち、遺族の最後の一人佐兵衛の長女松子の長男佐清が復員してくる。 犬神家の顧問弁護士古舘の助手若林から依頼を受けて、信州に赴いていた探偵の金田一耕助は、依頼人若林の突然の死にから、犬神家に次々と起こる事件に巻き込まれることになる。
1976年製作の同名映画のリメイク。しかも監督も同じ。最初このニュースを聞いたときには「なんでまた?」と唖然としたのですが、予告編を見てなんとなく見たいなという気になり劇場へと足を運んだ。
前作の記憶はかなり薄い。だから見終わってぜひとも前作を観直したいと思ったのですが、まずはっきり言って、なぜこの作品をリメイクしたかったのかの意味が全くわからない。あの時出来なかったことが今なら出来るということでのリメイクだとすれば、一体どこが違うの?(^^;) 何にも変わってないような・・・。確かにこの変わってないことに面白さを感じる人もいるのでしょうが、私はダメだった。1976年当時のあの「うわ〜」なんていうダサいベタな芝居そのまんま見せられても・・・ねぇ。すべての芝居があの当時のノリなんですよね。この芝居が市川監督の趣味なのかもしれませんが、私は今の時代あの芝居は嫌だなぁ。それとこの作品の製作発表の時からブーイングだった絶世の美女珠代役の松嶋菜々子さん。美女という設定に私は文句は言いません。ただ・・・ただ・・・でか過ぎるんですよぉ。当時の島田陽子さんも長身だったんですけど、そんなにでかい!ってイメージはなかったんですよね。でもこの人はきついわ。特に奥菜恵さんに、きつく「私の佐智さんに手を出さないで」みたいに言われるシーンでは、本当は強く攻められる感じが出ないといけないのに、珠代の方が性悪みたいに見えましたもん(^^;)。この人の背の高さを責めるんじゃないです。映画ってのは映像のマジックでもあるんですから、観る側に珠代の楚々とした雰囲気を感じさせるように撮影することって出来たんじゃないですか?見るからにはっきりわかる身長差ってカメラのアングルや、昔ながらのセッシュウなんて方法でなんとかなったでしょうに。まぁ、この人のガタイの良さは映像では誤魔化しようないかもしれないんですが・・・。でもせめてもう少し努力していただきたかった。今後この作品がDVD化されて、『犬神家の一族』観ようと思ってるんだけど、って言う人がいたら私は間違いなく1976年版をお薦めします。

2006年12月25日(TOHOシネマズ泉北)

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『恐怖のカービン銃』(1954年/新東宝)

監督:田口哲・浅野辰雄。
出演:天知茂。三原葉子。村山京司。加藤章。三砂亘。近藤宏。

1954年に起きた、防衛庁の職員をカービン銃で脅し誘拐監禁し、公金を奪った『大津事件』のセミドキュメンタリー。
46分という長さから、映画というよりはなんだか再現フィルムのような作品です。 なんでもこの作品が天知茂さんの初主演作ということなんですが、いきなりの主役が元保安庁職員というインテリでありながら見栄っ張りで欲深い大津健一ってのが、単純なスター俳優とならなかった天知さんらしいと言えばらしいですね(笑)。 なんでも実際の映像を交えているようで、まぁある意味面白いと言えば面白いですが、一体この作品はなんだったんだろうと言い切ってしまえば言い切れなくもない(笑)。 この後の新東宝の黄金コンビ(勝手にそう思ってる)の天知さんと三原葉子姐さん。初々しいカップルぶりを堪能したからいいか。
しかし仲間割れを起こし、最終的には情婦みさおを逃避行を続ける大津の映像に被るナレーションは一体なんだ?「我々はみさおが自ら逃げ出してくれることを祈ったが・・・」「2度の結婚で夫に先立たれた(なんたらかんたら・・・)えてしてこういう変態的な行動に走りたがる・・・」って(^^;) 何よその「変態的」ってさ。50年前は「変態的」って言葉の使い方今とは違ったのかぁ・・・。それでもこの映画の中で一番インパクトがありましたよ「変態的」(笑)。

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『暁の非常線』(1957年/新東宝)

監督:小森白。
出演:天知茂。沼田曜一。三ツ矢歌子。

次々と起こる兇悪な銀行強盗。犯人の手掛かりもつかめないまま捜査は難航していた。その頃江戸時代から続く正統やくざの関東三ノ輪一家では、跡取りの健一はやくざを嫌って家出していたため、一家を存続するには娘雪江に婿をとり、その男に跡目を継がそうとしていた。その跡目の候補となっているのは組の代貸しを勤める馬島だったが、その馬島こそ兇悪な銀行強盗の首領だった。雪江と三ノ輪一家を我が物にするために、彼は手段を選ばなかった。しかしスムーズに運んでいた計画は、無理に行った銀行襲撃のために破綻していく。
『恐怖のカービン銃』との抱き合わせ作品。初主演から3年たって、2作目の主演作で、またまたとんでもない悪党ってのもすごいな天知さん(笑)。っていうかこんな悪党が主役の作品って少ないような気がするんだが・・・。さすが新東宝だ。目の付け所が違う。それにしても新東宝の俳優の使い方ってのは面白いですよね。善悪どっちにも使う。この作品では沼田曜一さんが三ツ矢歌子さんの彼氏で好青年ってのにびっくりしますよ。そう言えば丹波さんも、御木本さんも、善悪どっちもやってますもんね。宇津井さんくらいか、悪役ないのって・・・なくって当たり前って気がしないでもないですがね(笑)。
冒頭、強盗に入った先で「そんなに俺の顔がみたいのか」とサングラスをはずす天知さんの顔に、いかにもな付け髭のせいか宝塚女優演じる『風と共に去りぬ』のレッド・バトラーがだぶっちゃいましたよ。若き日の顔立ちはやはり美しいってことか・・・。
必死の逃亡にヨレヨレになり、自分が殺した人たちを思い出し苦しむ馬島。「殺さないでくれ!」結局は死人に祟られるのが、新東宝での天知さんのお決まりか?(笑)。その後の『憲兵と幽霊』『四谷怪談』へとこのパターンは継承されるのであった。

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『昭和残侠伝 唐獅子仁義』(1969年/東映)

監督:マキノ雅弘。
出演:高倉健。池部良。藤純子。待田京介。志村喬。河津清三郎。

雷門一家に殴りこんだその帰り道。渡世の義理からと花田秀次郎に立ち塞がる風間重吉。どっちが勝っても恨みっこなしの勝負に、風間の左腕を切った秀次郎が勝つ。そして5年。出所した秀次郎は林田一家の世話になる。採石の入札を巡って林田一家と対立する樺島一家には、かつて秀次郎と戦った風間がいた。そして風間は秀次郎に斬られた傷が元で左腕を失っていたのだった。偶然に知り合った風間の妻である芸者のおるいから、そのことを聞いた秀次郎は風間とおるいをこの地から離れさせようとするが・・・。
このシリーズ、中には違う名前のものもあるんだけど、どうやらある時から一括して花田秀次郎に風間重吉となっているようだ。名前は一緒でも設定は違う、だけどラストは一緒(笑)。でもついつい観てしまう。私はこのシリーズ健さんよりも池部さんがいいんだわ。風間重吉激シブでかっこいい。たいていこのシリーズで藤純子さんが出てくると、風間の妹だったりするんだけど、なぜかこの作品では嫁だという。やくざな男から離れられない女。その女に冷たく接しているようで、「おるいあっての風間なんですよ」なんて、あなた、クゥ・・・立ち眩みしそうなくらいかっこいいじゃないですか。このセリフ風間というキャラだから似合うんでしょうねぇ。あぁ、かっこいい。

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『男の勝負』(1966年/東映)

監督:中島貞夫。
出演:村田英雄。天知茂。北島三郎。長門裕之。高倉健。藤純子。

山田屋一家の養子、藤岡重助はかつて刑場だった千日前を繁華街にしようと計画を立てるが、重助を邪魔に考える者たちに襲われる。その時助けに入ったのは奥田弁次郎という香具師だった。彼もまた千日前の開発を考えており、重助に協力を申し出る。二人の協力により千日前は次第に賑やかになっていくが、なんとしても千日前の利権を手にいれたい五十路組の親分駒蔵は重助の義父の隠し子である倉吉を利用し、重助と弁次郎を仲違いさせようとするが・・・。
村田英雄さん主演でなんなんだこの豪華なメンバーは?という作品なんですが、映画が始まり、私の第一声は「背低いんだ!」(笑)。天知さんじゃなくって村田さんね。いや、天知さんも低いはずなんですが、その天知さんより低い。こりゃ160切ってますね。ってそんなもん感心してどうすんだって話なんですが、このあとの登場人物見てて思わず笑ってしまった。だって・・・背低い人ばっかりなんだもん!(爆)。映画の感想でそんな話もないだろうってことなんですが・・・でも・・・笑えるんだ。豪華キャストで特別出演の高倉健さんの登場がこれまた苦肉の策とでも申しましょうか、病の妻を抱えた道中で山田屋に草鞋を脱いだ健さん夫婦。ほとんど別室(笑)。小男の村田さんが主演のためか回りを囲むキャストもほとんど小男。その中にやってくる大男の健さん。そりゃ隔離するしかないわな・・・と妙に納得してしまった。いや、この作品を見ている間はそんなこと気にならないくらいに面白くって、充分に楽しめる作品だったんですが、ふとここに気付くとなんだか笑えちゃって・・・(^^;)。早送りでもう一度見直しちゃいましたよ(笑)。
特別出演ということでおいしいとこ、かっこいいとこしっかりとキープの健さんなんですが、とにかく全編通して隔離状態です(笑)。病気の妻を看病する一室。山田屋の騒動を柱の影で聞く健さん。妻の制止を振り切り単身乗り込む健さん。これを隔離と言わずなんという?(笑)。 しかもこの作品村田さん主演なんですが、どう観ても主演の村田さんより天知さんの方がかっこいいし、健さんもこれまたおいしいとこ取り。不思議な作品だ。

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『傷だらけの人生』(1971年/東映)

監督:小沢茂弘。
出演:鶴田浩二。若山富三郎。待田京介。遠藤辰雄。天津敏。

大阪天満にある大聖寺一家の二代目が死亡したことで跡目は二代目の遺言により代貸の半田に決定した。ところが、以前から二代目の女房おしまに思いを寄せていた半田は、二代目の四十九日も済ませていないのに無理矢理おしまに言い寄ろうとしたことで大聖寺一家分家の三橋に刺されてしまう。この不始末で半田は破門。大聖寺の跡目は三橋が継ぐことになるが、半田を三代目に押し上げ、最終的には大聖寺一家の納める賭場を我が物にしようと企んでいた堂本組組長は、大聖寺一家に賭場荒しを送り込んだり手の込んだいやがらせを仕掛けてきた。三橋が釈放されるまでの間大聖寺一家を任されていた三橋の兄弟分である扇山一家大島組の大島は堂本組との出入りを決心するが・・・。
有名な鶴田浩二さんの曲『傷だらけの人生』がこの映画の主題歌でヒットしたのではなく、歌がヒットしたことで、その歌にあわせてこの作品が作られたそうなのですが、いいですわこの作品「筋の通らぬことばかり・・・」まさしくこの歌詞通りの作品です。遠藤さんが、もうあんたどこまで悪い奴やねん!っとムカツクくらいに「腐れ外道」を演じておられます(笑)。ここまで悪を通したら見事ですね。同じく悪役でよくお顔を拝見する天津敏さん・・・というよりも私の中では『水戸黄門』第5部での鉄羅漢玄竜という『水戸黄門』シリーズ中最強という敵役のイメージがこってりとついているのですが、その天津敏さんが何とも情けない悪党に見えるくらい(というかちょっぴり情けないのですが)すごい(笑)。一人飛び道具使うなんてのも悪役の極みです。なんでもこの作品ラストの血飛沫がすごくってテレビ放映されたときはセピアになってたそうなんですが、確かに鶴田浩二さん血まみれ。撃たれて斬られてヨロヨロになりながらも突き進んでいく様は無茶苦茶かっこいいです。物語の流れも面白く、なかなかに見応えのある渋い作品でした。

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『傷だらけの人生 古い奴でござんす』(1971年/東映)

監督:小沢茂弘。
出演:鶴田浩二。若山富三郎。待田京介。天知茂。浜木綿子。

昭和6年。大阪飛田の縄張りの拡張を計ろうとしていた石切一家は軍部と繋がり、分家の大西組を使い、富士上一家のシマウチに横車を押していた。しかし事を大きくしてはと大観進一家の若頭大西栄次郎が、大西組組長大西竜三の実兄でもあることから仲裁をかってでて、一時は事は治まるものの、軍部からの圧力で飛田を手中にしなくてはならない石切はまたしても大西組に富士上一家のシマウチで事を起こさせる。親と仰ぐ親分に逆らうことは出来ない竜三の立場を知らない栄次郎は、自らの手で竜三を斬る決心で竜三を呼び出し竜三もそのつもりで栄次郎と相対するが・・・。
実は天知さんが出てるもんだから『傷だらけの人生』よりも先にこっちを見てしまっていた。(^^;) ま、どちらも見るつもりで録画していたのですがね。だからこれはこれで満足していたのですよ。まずまず面白いじゃないか・・・と。ところが、やっぱ先の作品の方がいいですね。一作目では実の父という血、こちらでは実の兄弟という血が絡むのですが、血の苦悩は一作目の方が濃厚で理不尽で面白い。決してこの作品もつまらなくはないんですけどね。でも遠藤さんの悪役度薄いし・・・(笑)。あ、でもこちらでは天津さんの悪役度が高くなってますけど。 この作品のラストも血まみれで鶴田さんが若山さんを抱え、ボロボロになりながら歩いていくシーンで終わるんですが、前作のラストも待田さんが鶴田さんと共にボロボロ、よれよれ血まみれで歩いていくシーンで終わるんですよ。で、二本見てやっとこのラストの意味がわかった。そう!ここまで読んで「あ〜・・・」と頷いているあなた!(誰だよ)その通りです『傷だらけの人生』なんです(笑)。なんてぇオチだよ。

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『それでもボクはやってない』(2007年/東宝)

監督:周防正行。
出演:加瀬亮。役所広司。瀬戸朝香。山本耕史。もたいまさこ。

フリーターの金子徹平は、ある朝会社の面接に向うため満員電車に乗り込んだ。ところが目的の駅に降り立った徹平は女子中学生に袖をつかまれ「あなた痴漢したでしょ」と駅事務所に連れて行かれる。身に覚えの無い徹平には「やってない」としか言いようがない。しかし彼はそのまま警察に。「やりました」という言葉しか聞こうとしない警察官。一回だけはタダで呼べるという当番弁護士にまで、無罪を主張しても無罪になる確率は99.9%。やったと言った方がいいと言われてしまう。追い込まれる徹平だが、それでもやってないものはやってない。警察の取調べ、検事の取調べ、そして裁判へと長く過酷な日々がやってくることに・・・。
なんなんだコレは?久々に後味が悪い映画だった。とは言っても映画の出来が悪いとか、面白くないとかって意味じゃなく、あまりにもこの映画の出来が良すぎて、周防監督が義務感で作ったというのが痛いほどに伝わってきたことによる後味の悪さです。痴漢っていう行為は本当に最低最悪の行為で、認めたらあっさり釈放なんてのもおかしな話だろうって思うのですが、だからと言って「やってない」が通らないってのもおかしすぎますよね。これじゃ昔の特高と一緒じゃないですか。疑われるあんたが悪いってことですか?しかも無罪主張の99.9%しか無罪にならない。ってつまりは警察と検事がこいつは悪党だって決め付けたらそれでおしまいってこと?ヘタうつと誰かを陥れるために綿密に計画さえねれば、その人は罪人として裁かれる可能性が大っていうことだってあり得るわけですよね。この作品は痴漢という犯罪について描かれてますけど、この司法制度って痴漢だけに対応するわけじゃないですから、考え方一つでとんでもないものを見た。知ったってことになるんですよね、この作品。恐ろしすぎますよ。
それにしてもラストの判決文。小日向さんのあの優しいちょっと高めのトーンで淡々と読まれると、憎らしさと腹立たしさを倍増させる効果がありますね。(^^;)

2006年1月22日(TOHOシネマズ泉北)

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『日本侠客伝』(1964年/東映)

監督:マキノ雅弘。
出演:高倉健。中村錦之助。大木実。三田佳子。

古くから深川木場の材木運搬を担っていた木場政組は、新興の沖山運送からいろいろな妨害工作を受けていた。「男の喧嘩は一生に一度きりだ」と血気に逸る若い者たちを説伏せ、なんとか大きな争いにならないように努めていた木場政が病に斃れる。この機会に木場政組を潰してしまいたい沖山は政治家や警察を抱きこみ、今まで以上に悪辣な嫌がらせを仕掛けてくる。あまりの仕打ちに見かねた木場政組の客分清治は単身沖山運送に乗り込んでいく。それを知った小頭の長吉は清治を追うが・・・。
健さんのシリーズものって『昭和残侠伝』と『網走番外地』しか知らなかったんですが、これも有名なシリーズだとか・・・。そしてこの作品はヨロキンさんが、唯一出演している現代モノの任侠映画というこで、観たいと思ってたんですよね。それがなんと『日本侠客伝』シリーズ一挙放映ってことで、早速録画。う〜ん・・・激シブ!!って感じは『昭和残侠伝』の方がいいかなぁ〜って気はするな。それに錦之助さんはやっぱり時代劇の方がいいな。ピストルは似合わねぇ(笑)。なんだか「あっ」という間に錦之助さんの見せ場が終わり、一体何しに言ったの?ってつぶやいちゃったよ。この作品では健さんの魅力も錦之助さんの魅力もあまり感じなかったんですが、品川隆二さんかっこいいですわ。って結局脇のオヤジに行ってしまう私でした(笑)。

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『日本侠客伝 浪花篇』(1965年/東映)

監督:マキノ雅弘。
出演:高倉健。村田英雄。長門裕之。南田洋子。八千草薫。鶴田浩二。

大正8年。横浜日東組の仲仕、藤川は仕事中に事故死した弟の遺骨を受け取りに大阪の浪花運送へとやってきた。浪花運送は博徒新沢一家が経営する荷受業者で、仲仕を牛馬のようにこき使い、平気で仲仕たちの上前をはねていた。弟の仲仕仲間の寅吉から浪花運送の非道を聞いた藤川は、新沢の子分を痛めつける。彼らに追われることになった藤川を浪花運送の商売敵でもある半田組出入りの和田島であった。これを機に和田島の元で働くようになった藤川だが、新沢一家の悪行は止むことがなかった。新沢一家の代貸し冬村さえいればと嘆く和田島だったが、とうとう彼が闇討ちにあってしまう。
一作目の『日本侠客伝』よりこっちの方が面白い!この作品いいわ。関西人だからやはり「浪花篇」がいいのか?なんてことはないんだろうけど、やっぱり健さんは激シブ系より、ちょっとやんちゃ風な方がいいですね。まぁ、この作品では渋いとこ鶴田浩二さんに譲っちゃってるんですけどね。その渋いとこ鶴田さんに譲りながらも、二人の絡みがこれまた渋い!ラストシーンがこれまた無茶苦茶いい!!好きだぁ〜このシーン。着物の裾についた血を拭うのにスッと手ぬぐいを差し出す鶴田さん。そしてそれを受け取り「おおきに」と大阪弁で礼を言う健さん。そしてその発音を「おおきに」と直す鶴田さん。かっこえぇ〜。しびれるねぇ。

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『日本侠客伝 関東篇』(1965年/東映)

監督:マキノ雅弘。
出演:高倉健。鶴田浩二。長門裕之。大木実。南田洋子。藤純子。

関東大震災後、築地に移転された魚市場はなんとか震災から立ち直ろうとしていた。そんな魚市場を我が物にしようと目論む東京魚市場共同組合理事の郷田はやくざの石津組を使い、組合に入ろうとしない問屋に嫌がらせをしていた。父亡きあと女ながらも、魚市場の中では老舗の「江戸一」を切り盛りしていた市川栄は、頑なに組合への参加を拒否していた。飲みすぎて船に乗り遅れ、次に船が帰ってくるときまで「江戸一」で働くことになった船乗りの緒方勇は、石津組の横暴に黙って耐えている問屋衆たちに苛立ちを覚えるが、「江戸一」で働くうちに力では何も解決できないのだと知る。とにかく魚を仕入れなくては商いが成り立たない。最後の手段で外国船からの直接買い付けを試みるが・・・。
この作品もいい!!『日本侠客伝』っていうからやくざものかと思っていたら、確かにやくざは出てきますが、主演の健さんはやくざではないんですよね。そしてこの作品では、船乗りで、お調子者で、やんちゃ坊主って趣きの健さん。実はこういう健さんが一番好きなんですよね。いいですわ。惚れちゃった栄さんを助けに行った先で、やくざに殴らせるんですが、その前にせっかく栄さんが作ってくれた着物を汚すわけにはいかないときっちり着物を脱いでたたむ健さん。そしてそのやくざを「やくざ君」と呼ぶ健さん。妙におちょくってていいですわ(笑)。出演者の中にどと〜んと出ていた丹波先生のお名前、一体どういうところでご登場かと思えば。これまたやんちゃにかっこよく決めてくださるんだから。無精ひげもよくお似合いの網元として登場。最後に大暴れでなんだか楽しそうな出演だなぁ。
そうそう、もひとつ印象的なシーンが・・・。はじめて栄(南田洋子)にあったとき松夫にあれが「江戸一」の長女と教えられ、気の強えぇ女だな。あんなの嫁にしたら大変だぜと松夫(長門裕之)に訴える健さん。そこまで言うなとちょっぴり本気モードをのぞかせる長門さん(笑)。わかってる人なら爆笑です。
結局この作品でも渋いとこ担当は鶴田浩二さんでした(笑)。

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『日本侠客伝 血斗神田祭』(1966年/東映)

監督:マキノ雅弘。
出演:高倉健。鶴田浩二。藤純子。大木実。藤山寛美。

呉服問屋の老舗「沢せい」の若旦那伸夫は、商売が自分の代になってからうまく行かなくなったことで賭博にまで手を出していた。そしてとうとう土地の権利書まで持ち出してしまう。そのせいで「沢せい」の土地を狙っていた大貫一家に嵌められ、殺害された挙句に店を放火され、借財の形としてとられた権利書は大貫のものとなってしまう。「沢せい」と懇意にしていた火消し神田十一番組の頭は「沢せい」の後ろ盾となり、借財の無効を訴え裁判で争うことにするが、大貫一家は次々と悪辣な手を使い裁判から手を引かせようとする。遂には裁判の当事者である伸夫の妻花恵の誘拐まで謀る。
この作品は、私にはもひとつだったなぁ。副筋の話がちょっと多すぎかな?藤山寛美さん嫌いじゃないんですが、この作品にはいらなかったんじゃないかなぁ〜って気がする。(^^;) おまけにこれまた渋いとこ担当の鶴田浩二さんが出てるんですが、鶴田さんに気をつかってか、別立てで物語があって、渋く純愛を貫いてくださってるんですが・・・ねぇ。世話になった神田十一番組の頭の恩に報いるために単身大貫一家に乗り込む鶴田さん。とりあえず沢せいの奥さんと一緒に捕まっていた番頭さんを助けただけ、第一作目の錦之助さんの殴りこみよりは意味がありましたが・・・。健さんの魅力もこの作品ではイマイチだったような気がします。

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『魂萌え!』(2007年/シネカノン)

監督:阪本順治。
出演:風吹ジュン。寺尾聡。三田佳子。加藤治子。豊川悦司。

59歳の主婦関口敏子。彼女の夫関口隆之が心筋梗塞で63歳で急死してしまう。なんとか葬儀を終えたものの、夫側の親族からは隆之の心臓の不調がわからなかったのかと責められたことで自分自身も責任を感じ落ち込んでいるところに、夫の携帯に見知らぬ女性からの着信が・・・。そしてなんとその女性は夫と10年来付き合っていたという。夫の死よりもショックを受ける敏子。それなのにアメリカで仕事に行き詰った長男は自分の都合で妻子共々同居する段取りを進めようとするし、長女は彼氏と同棲中の気楽さから実家と自宅を自分の都合でいったりきたり。敏子の心労を慮ろうともしない。思い余った敏子はプチ家出を決行!
夫の浮気って妻にとってはすごいショックなんだろうなぁ。しかも生きてる間なら「あなたぁ!!」って問い詰めて白黒決着付けられるけど、当人が死んじゃってたら「死人に口なし」持ってくとこないですもんねぇ。しかしこの主人公の敏子ってかわいいというかのんきというか・・・(^^;)。幸せな人だねぇ。何とも浮世離れした人のような気がする。もちろんこの旦那も。だって、プチ家出して帰ってきて二人の子供に言ったセリフに唖然としちゃいましたもん。なんで今頃そんな話!?長男に、アメリカで勝手に結婚して、奥さんの家族にもあってないのってどういうこと!ってこっちが聞きたいよ。いくら今風で世間が変わっているとはいえ、嫁さんの家族とは事前に会うだろう?長女には同棲相手の彼氏がちゃんと挨拶しに来ない!って、まぁこれは結婚ではないから来ないまま放っておくのもあるかもしれないけど・・・普通女の子の親って、もっと厳しいんじゃないの?これは母親より父親に問題ありかもしれませんが・・・。そら旦那が10年間浮気してても気付かないわな。浮気してた当人である旦那もきっと良心の呵責なんて全然なかったんだろうな。旦那に良心の呵責がないから気付かなかったのか・・・。ま、はっきり言ってこの作品そんなことはどうでもいいのかもしれない。「風が吹いたら桶屋が儲かる」みたいな作品だもん。夫の急死で急展開で替わっていく妻の人生。それをどう転ばすかは自分次第!ってことですよね。表に出ているのは主人公である59歳の関口敏子の人生なんだけど、誰一人として悪役的な位置づけで描いていないから、ちょっと視線をかえると登場人物みんなの人生が見える。その物語がなんとなく透けてくる。その透けてくる部分を自分なりに想像してみる。なんだかスルメみたいな映画だ。噛めば噛むほど味が出てくる(笑)。でもやっぱ女は強えぇや(笑)。

2007年2月12日(動物園前シネフェスタ)

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『丹下左膳 乾雲坤龍の巻』(1962年/東映)

監督:加藤泰。
出演:大友柳太朗。東千代之介。近衛十四郎。桜町弘子。久保菜穂子。

相馬藩、中村大膳から、名うての剣士小野塚鉄斎の道場にある“乾雲”と“坤龍”2本の名刀を奪ってくれば剣術指南役にし500石を加増すると約束された丹下左膳は、小野塚道場に乗り込む。しかし“乾雲”しか奪えずしかも右目を鉄斎に斬られてしまう。左膳の失敗に、中村大膳は同じ藩士渡辺にも左膳と同じ条件で“坤龍”を奪うように命じる。それを知った左膳は渡辺たちよりも早く“坤龍”を奪うも鉄斎の娘・弥生に右腕を刺され、駆けつけた大岡越前により捕らえられてしまう。なんとか奪った“坤龍”は左膳に肩入れする鼓の与吉と櫛巻お藤により相馬藩の中村大膳の元へと届けられるが、左膳は中村大膳に見捨てられ、武士としてではなく無宿人として処刑が決まるが・・・。
おぉ!左膳の隻眼・隻手の訳はこうだったのか!って思わずうれしくなっちゃったんですが、これが正解ではないようです。『新篇・丹下左膳 隻眼の巻』とは全然違いますし、ネットで調べてもやはり後付でネタとしてそれぞれがパターン考えているようですね。しかしこの作品での丹下左膳はかっこいいですよぉ。主人を信じ、立身出世のためと片目を失いながらももう一本の刀を奪わなければと思っている時の左膳は明るく真面目な人のいい武士なんですが、主人に裏切られ、片腕を失い、武士として死ぬことすら出来ず、なんとか鼓の与吉と櫛巻お藤から助けられた後の丹下左膳のガラッと変わった虚無感を背負った陰の雰囲気が無茶苦茶かっこいい。ネットで調べると何でもこの作品は公開当時評判がよくなかったとか・・・。なんでなんでしょうねぇ。すごくリアルで渋くって、かっこいいけどなぁ。

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『三本指の男』(1947年/東映)

監督:松田定次。
出演:片岡千恵蔵。原節子。杉村春子。風見章子。宮口精二。

アメリカで世話になった久保銀造の姪克子が、その町の旧家一柳家の当主賢蔵と結婚することが決まり、その祝いにやってきた金田一耕助は、結婚を邪魔しようとする怪文書が一柳家と久保家に届いているのを知る。そして結婚式の前日、怪文書の主とされる「三本指の男」が一柳邸へと現れる。結婚式は無事滞りなく行われたが、その翌早朝、新郎新婦が密室と化した離れで無残な姿となって発見される。
金田一耕助がスクリーンに初めて登場した作品だそうです。金田一役は片岡千恵蔵さん。スーツ姿で颯爽と登場。で、ちょっぴり多羅尾伴内入ってます(笑)。 いやぁ〜、それにしてもこの作品には驚いた。『三本指の男』というタイトルで横溝シリーズ知ってる人なら、あ、元は『本陣殺人事件』ね。ってわかるかと思うのですが、上のあらすじ読んでちょっと「え?」って思ってるはずだ。そうなんですよ「三本指の男」が現れちゃうんですよ。(^^;) まぁ、この男が現れる前から、なんなんだろうな?これ?って気分になっちゃう作品なんですけどね。肝心の事件が起こってからがこれまたすごいんですよ。まず、雪じゃない(笑)。まあね、それは許そう。外には足跡すらない!っていうのを描くことが出来ないのがネックなだけですからね。しかし凶器が刺身包丁ってのはどうよ?これはやっぱり日本刀でなきゃ意味ないような気がするんですがねぇ・・・って思ってたら・・・。台所から盗まれた包丁だって・・・。あれぇ〜。確か賢蔵ってすごく神経質でやたらとアルコール消毒するくらい潔癖症で・・・ってのだったような気がするんだけど・・・って思ってたら。 トリックを見破り、推理を披露する金田一。「賢蔵さんの無理心中・・・ということになるところですが・・・」って・・・えぇ〜!!そ!そんなぁ!!おまけに金田一が「三本指の男」に化けて街中を歩き一柳家の様子を窺ってただってぇ!そこまでしててなんで事件が起こるんだよ!もうびっくりです。おまけに単純明快に解き明かされる密室トリック。すべてがあっけなくあっさりで、『本陣殺人事件』の意味ないです。以前観た健さんが金田一という『悪魔の手毬唄』もびっくりでしたが、こちらもびっくりです(笑)。東映にかかると横溝シリーズずたボロですわ。(^^;)

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