『鰯雲』(1958年/東宝)

監督:成瀬巳喜男。
出演:淡島千景。木村功。中村鴈治郎。小林桂樹。

農村に住む八重は戦争で夫を失い、一人農業に携わり、姑と一人息子と暮らしていた。そんなある日農家の実態を記事にするため取材にきた大川と知り合う。昔ながらの家長制度に縛られ、農家に嫁に来たものは姑がいなくならない限り妻にはなれないのだと自らの体験と八重の兄和助の話をする。そして和助の長男初治も姑、小姑に囲まれ嫁の来てがないと言う八重に大川がそれならいい娘がいると紹介する。初治の縁談相手を調べに行った二人は帰りのバスに乗り遅れ一夜を共にする。東京近郊の農村を舞台に昔ながらの家長制度が時代と共に変わり行く様を和助の家族それぞれの恋愛と、八重と大川の恋愛、そしてそれぞれの生き方が描かれている。
とてもうまく時代の流れが描かれた作品です。好きだなぁ。それにこういう昔ながらの家長制度を描いた場合、その制度の中で生きていく人たちを私のような世代の人間が見ると(私だけかもしれませんが・・・)「バカじゃない」って一笑にふしてしまう部分があるんですよね。時代が違いすぎて理解の範疇を超えてしまってるせいだと思うのですが、ところがこの作品の和助に対してはそんな気はおこらなかった。家を重視した農村の生活の中で自らも家長制度に翻弄され、自らの意思など関係なく3人の妻を娶らされ、農地解放の政策で本家とは名ばかりの状態にあっても昔ながらの本家の意識を捨てきれずにいる彼が哀れとも滑稽とも感じさせずに、どういう生き方であろうとちゃんと一人の人間として生きているんですよ。どういう制度であれ、どういう時代であれ、時代や誰かのせいにする訳ではないそれぞれの生き方がしっかりと描かれている作品だと思う。ま、大川はちょっといい加減かな?って気はしましたがね(笑)。選べないながらもちゃんと選んでいる・・・選んでいないようでもちゃんと選んでいる・・・なんか言い方おかしいですが、私は人間ってそういう生き物だと思ってるんですよ。それを再確認させてもらった気がします。ラストシーンがすごく気持ちいい。空に広がる鰯雲・・・心に残るラストシーンです。

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『沓掛時次郎 遊侠一匹』(1966年/東映京都)

監督:加藤泰。
出演:中村錦之助。池内淳子。東千代之介。渥美清。

旅から旅の渡世人稼業。一宿一飯の恩義と恨みもない相手を斬らなくてはならず、しかも所詮は旅人、使い捨ての駒のようなもの・・・。そんな稼業に虚しさを感じながらも、この稼業でしか生きてはいけない沓掛時次郎は、旅の途中いつものように助っ人を頼まれ、中ノ川一家の最後の一人六ツ田の三蔵を斬る。三蔵は時次郎に女房のおきぬと息子を叔父の元に届けてくれと言い残し息を引き取る。そして時次郎はおきぬに自らが三蔵を手にかけたと打ち明け、嫌だろうが、三蔵さんから頼まれた以上目的地に着くまではと、3人の旅がはじまる。いつしか惹かれあう二人だが・・・。
冒頭「てめぇ生国と発しますところ・・・」と渥美清さんの仁義ではじまる。思わず「寅さん」が始まるのかと思っちゃった・・・なんて訳はないです。錦之助さんと渥美さんの組み合わせってのもなんだか不思議なんですけどね。でも渥美さんはやっぱりうまい。序章部分は錦之助さんよりも渥美さんの映画みたい。渥美さん演じる身延の朝吉が単身牛堀一家に乗り込み殺されてしまうことで渥美さんが引っ張っていたコメディ色ある序章から一気にこの映画本来の軸錦之助さんの任侠時代劇に変わる。そして牛堀一家を相手の殺陣がまたスゴイ。昔何かで聞いたことあるんですが、この太刀さばきは歴代の時代劇俳優の中で錦之助さんが一番早いとか・・・。ガセネタではなかったと納得。その後あらすじで書いた物語へと流れるのだが、この映画は本当に流れがいい。腹八分目の面白さ・・・これがやっぱりベストでしょう。満腹になってゲップが出ないようにおさえるさじ加減のうまい映画ですね。

2002年10月6日(テアトル梅田)

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『首』(1968年/東宝)

監督:森谷司郎。
出演:小林桂樹。南風洋子。下川辰平。神山繁。

昭和18年、弁護士の正木の元に滝田炭鉱の女経営者の滝田と岸本が警察で死んだ従業員の死因に納得がいかないので調査をして欲しいと依頼にやってきた。死亡診断書記載の死因が脳溢血らしいというあまりにも漠然としたものであったため、依頼を引き受けた正木だが、当初彼は遺体の解剖さえさせればこの件は終りだと決めてかかっていた。ところが対応にあたった検事の態度や警察の対応に不審を覚え調査するうちに死因は拷問によるものではないかという疑いが濃厚となる。しかし警察の不正をもみ消したい権力の力により脳溢血であると虚偽の診断をするための解剖が行われ、事件は封印されようとしていた。事件をこのまま終りにする訳にはいかない正木は相談に行った東大教授の首さえあれば死因の究明は出来るという言葉にある決断をする。
これは昭和19年から昭和30年まで前後12年間にわたって裁判が重ねられた「首なし事件」という実話です。自らが所属する司法組織、制度を信用していた弁護士の正木がそれらが完全に信用していいものではないと悟ったあたりからの小林桂樹さんがすごい。そして「早くしないと首が腐ってしまう!」とあせる演技には鬼気迫るものがあります。真相究明のために遺体から首を切断して東京へ持ち帰るまでの描写がすごくおもしろい。途中でみつかってしまうわけにはいかないと切断作業の進み具合にあせる正木と事情も知らされずただ首を切断するようにと連れて来られた中原が飄々と作業を進める様が交互に映し出され、ただ首を切るゴツゴツという音だけが大きく響く。観ているこちらもその首を切る音に怖さとあせりを共有させられる。この音の演出が本当に見事です。それにこの首切りの中原っていうキャラがいいんだ。全編重厚な迫真の演技で迫る小林さんにフッと抜いたような中原っていうキャラがかぶるシーンはなんともうまくブレンドされてて秀逸ですね。

2002年10月19日(テアトル梅田)

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『宣戦布告』(2001年/東映)

監督:石侍露堂。
出演:古谷一行。杉本哲太。夏八木勲。佐藤慶。財津一郎。

福井県敦賀半島の海岸で一隻の国籍不明の潜水艦が座礁した。そして数名の武装集団が日本に上陸。彼らは北東人民共和国の軍事組織の人間であると判明する。
急遽、首相官邸で主要閣僚たちが集まり、この件に関する政府の対応を協議するが、自衛隊の出動は時期尚早と警察の特殊部隊SATが投入される。しかし敵と対峙した彼らに発砲許可は下りず、相手方のロケット砲によりSAT隊員に死傷者が出る。警察の力の及ばぬ範囲だと判断した警察庁長官は首相に自衛隊の出動を要請するが、「自衛隊を動かせば、北に『宣戦布告』したことになる」と閣僚たちの意見はまとまらない。そんな中遂に民間人にまで犠牲者が出る。決断を迫られる首相は・・・。
すごい映画だ。おもしろい。内容が内容だけに自衛隊や警察の協力は得られなかったらしいんですが、こんな映画だからこそ協力するべきじゃないのかなぁ。有事法に賛成、反対は別として、有事とはこういう状態のことを言うんでしょ?だったら口で言うよりこうして映像としてドラマとして見せた方がよりリアルでわかりやすいと思うけどね。だから即自衛隊は合憲、憲法は改正。なんて言うんじゃないですよ。でも現状日本はここまでとんでもない法令に縛られて、武器は持ってるけど撃っちゃいけない。ただ構えてそのまま撃たれてくださいっていう状態なんですよね。本当にそれでいいの?って考える必要は絶対にあると思うけど。そうそうちなみに今の日本の政府はこの場所にこういう人たちが来て、こうしたらこうなって・・・というシュミレーションすら禁止されているそうです。あ・・・そっか、これは一種のシュミレーションになるから協力出来なかったのね(苦笑)。見事なシュミレーションを見せ付けてくれたこの映画に感謝。
これだけの映画なのに、上映館は大阪では2館だけ、おまけに上映期間も短いなんて・・・なんとも勿体ない話ですね。

2002年10月19日(千日会館)

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『日本列島』(1965年/日活)

監督:熊井啓。
出演:宇野重吉。二谷英明。鈴木瑞穂。芦川いづみ。

昭和34年。キャンプスコットCID(犯罪調査課)の通訳主任秋山は北海道の基地から赴任してきたポラック中尉から1年前水死体となって発見されたリミット曹長の事件を洗いなおして欲しいと依頼される。リミット曹長の死体は死因の特定の解剖さえされぬまま本国に送還され、事故死として片づけられていた。当時この事件に関わった警視庁の黒崎、新聞記者の原島らと共に、調査を進める秋山はリミット曹長の死に贋ドルが関わっていること、そしてその贋ドルには特殊な諜報機関が関与していたことまで突き止めるが・・・
この作品は実話ではない・・・だけど、あまりにも巧く戦後日本で起きた数々の事件を絡めているので、観ていて実話のような気がしてくる。先に『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』を観ていたので、余計に深く受け止めることが出来たのかもしれない。でもまさかスチュワーデス殺人事件まで本当にあった話とは・・・。本当にびっくりです。おまけに物語とは関係ないですが、『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』で涸沢を演じておられた大滝秀治さんがこちらでも涸沢だったなんて・・・。この映画の製作は1965年。『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』は1981年。約20年後にまた同じ役をなさるなんて、しかもあまり変わっていないというのもこれまたびっくりです(笑)。この映画をきっかけにネットで日本の過去の未解決だったり、不明瞭だったりした事件を探してみたら・・・これまた結構あるんですよねぇ。こういう暗部を突き刺したような映画好きだな。日本って結構こういう作品の題材に事欠かない国なんだから、もっとこういう映画あってもよさそうなんですけどねぇ。

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『丹下左膳餘話・百萬両の壷』(1935年)

監督:山中貞雄。
出演:大河内伝次郎。喜代三。沢村国太郎。宗春太郎。花井蘭子。

柳生家に代々伝わる百万両の財宝のありかを塗りこめた「こけ猿の壷」。この壷のことを当主が知ったのはなんと江戸の町道場に婿入りした弟に贈ってしまったあと。なんとか壷を取り戻そうと使いを出すが、弟源三郎は兄は城持ちで俺にはこんな薄汚い壷だけか・・・とくさっているところにその壷を返して欲しいと言われ、壷までとりあげるのかと怒った源三郎は妻に命じクズ屋に売り払ってしまう。クズ屋は隣に住む子供安吉の金魚鉢かわりにその壷をやってしまうが、安吉の父親がヤクザ者にからまれ殺されてしまったために安吉は金魚鉢となった壷ごと父親の最後を見取った矢場のおかみの元に身をよせることに・・・。その頃その壷が「百万両の壷」だと知った源三郎は壷探しのため江戸の町を歩き回るが、矢場で働く娘に一目ぼれ。壷探しはそっちのけで毎日矢場へ通うが・・・。
おぉ!これぞ日本映画の最高傑作。すごく面白い。おまけに何度でも観たい映画です。CATVで放映されたとき『人情紙風船』の方が有名だったので、こちらの作品は無視してしまったんだけど、私は断然こちらの方がいい!全編通してセリフの掛け合いがすごくいい。名人の落語を聞いているような安心感のあるセリフ運びが粋だし、場面の切り替えも洒脱なんだ。天涯孤独になった安吉がかわいそうだから家でめし食わせてやろうよと言う丹下左膳におかみがあんな汚い子なんか嫌だよ・・・と場面が変わるとごはん食べてる安吉が映る。このパターンで描かれる丹下左膳と矢場のおかみのなんだかんだ言いながらの安吉に対する親バカぶりが何ともおかしくて気持ちがいい。なんだか人情喜劇のような作りなんだけど、餘話とつくものの、やはりこれは丹下左膳。ちゃんと見せ場はおさえてある。安吉の父親の敵を見つけたシーンでは安吉に目をつぶって10数えな・・・と言い置き、その10の間に見事な抜刀術で相手をバッサリ。かっこいいです。道場破りのシーンの立ち回りも長まわしでバッタバッタとやっつける。まるで舞を舞ってるような殺陣に見惚れてしまいましたよ。ところが何でもラストの方でやくざものをやっつけるシーンが本当はあるらしいのですが、その部分がみつからずに欠けているそうです。きっとこのシーンもすごいんだろうなぁ・・・うぅ・・・もったいない。でも戦前の映画で二度と観ることの出来なくなった映画があることを思えば、この映画が観れるだけでも良しとしなきゃいけないのかなぁ。丹下左膳というキャラは映画では多分観たことなくって、テレビでは何人かの丹下左膳を観たことがあるのですが、この映画の丹下左膳ほど私を惚れさせた丹下左膳はいないね。大河内伝次郎さんの丹下左膳がいいのか、この作品の丹下左膳がいいのか・・・確認したいところですね。

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『噂の女』(1954年/大映)

監督:溝口健二。
出演:田中絹代。久我美子。大谷友右衛門。進藤英太郎。

京都島原の廓の井筒屋の一人娘雪子は東京の音楽学校に通っていたが、自殺未遂を図り母初子により京都へ連れ戻される。自殺の原因を打ち明けようとしない雪子を、自分の愛人である若い医師的場に診察させ、様子を見てやって欲しいと頼む。やがて的場に心を許し、自殺の原因は結婚を約束した相手が雪子の実家の家業が置屋であることを知り彼女を捨てたためだと打ち明ける。的場からそのことを聞かされた初子は、あなたのために病院を買って開業しそこで・・・と暗に結婚をほのめかすが、的場は返事をしない。そしてある日能の見物に行ったロビーで初子は的場の裏切りを知ることに・・・
う〜ん・・・男ってのはどうしようもない生き物か・・・(笑)。母親と愛人関係にありながら、その娘に乗り換えるってとこまでは、ありえない話しではないので、この物語は本当に面白い。ただ、ラストでの的場の行動にはただただ唖然としてしまう。何もここまで最低最悪の男にしなくったって・・・(^^;)。こんなに最低最悪でなくったって、私の好みとしてはこのにやけた的場より進藤英太郎さん扮する原田なんだけどねぇ。
初子が的場の裏切りに気付く能のシーンがすごくいい。一幕が終りロビーに出た初子は雪子と的場の会話を聞いてしまう。そしてその会話にショックを受け、第二幕の演目は狂言の「枕物狂」齢100歳をむかえたじいさんが若い女性に恋をする話。二人の孫に笑われる主人公。それを観て笑う観客と的場に雪子。その笑いが自分に向けられているかのように葛藤する初子。このシーンのショットは見事です。
それにしてもこのタイトルの『噂の女』ってのが粋だねぇ。若い医者にのぼせる初子も噂の女だし、失恋で自殺未遂をした雪子も噂の女だ。そして井筒屋にいる太夫たちも、噂の女に違いない。噂の男にはなかなかなれないが、噂の女には案外なりやすい。「地球は女で回っている」のかもしれいない(笑)。

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『凶気の桜』(2002年/東映)

監督:薗田賢次。
出演:窪塚洋介。RIKIYA。須藤元気。原田芳雄。江口洋介。

今の日本に不満と怒りを持つ若者山口は友人市川、小菅とともに「ネオ・トージョー」と名乗り、自分たちの街渋谷を浄化するのだと、半端な不良たちを狩っていた。暴力の限りを尽くす彼らはやがて右翼系の暴力団青修同盟に目をつけられる。傘下には入らないと抵抗する山口を気に入りかわいがる青修同盟の会長の青田。そして次第に青田を慕うようになる山口だが、青修同盟の若頭兵頭に市川、小菅が取り込まれ、青修同盟と対立する小西組との抗争に利用されてしまう。
劇場に入る前、私の前を歩いていたギャル二人がポスターを見て「キャー!かっこいい!」と騒いでいた。いくらタダとは言え、えらい映画観に来ちゃったかなぁ〜・・・という不安と共に劇場に入る。その不安は的中しなかったが、前半こりゃ、映画というよりマンガだと思った。中盤から後半はそれなりにしまってて面白かったのだが、やたらと凝った映像手法が多用でなんだか疲れちゃった。で、調べてみるとこの監督音楽番組を主軸としている監督だとか・・・なるほど。どうりで・・・。斬新なのはいいんだけど、2時間もの映画でこれはどんなもんか・・・。私としては好きじゃないな。やりすぎ、映画じゃないよこれは・・・って気にさせられちゃった。もう少し正統派でいけば、もっと厚みが出て面白いものになったかも・・・。ま、若者向けの若者の映画ってことなのかな(苦笑)

2002年10月26日(アポロシネマ)

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『からみ合い』(1962年/松竹)

監督:小林正樹。
出演:岸恵子。山村聡。千秋実。渡辺美佐子。

東都精密工業の社長河原は癌の手術を受けるが、残された時間がわずかであることを自ら悟り、三億の財産の三文の一を妻に、あとの二億を3人の隠し子に遺すことにし、その中の2人の捜索を秘書課長の藤井、顧問弁護士の吉田に命じ、あと一人は自分で探すと言いながら秘書の宮川やす子に捜索を命じる。それぞれがそれぞれの思惑を抱いて隠し子探しをしているある暴風雨の夜、河原の妻から泊まっていくように勧められたやす子は、強引に河原に抱かれる。その日以来河原との関係が続き、正式に相続財産の分配が発表される日、隠し子と彼らを探していた者たちの思惑が交錯する。
岸恵子さんきれい!かっこいい!クールビューティーの代表ですね。こんなにもこの役にぴったりマッチする女優さんって今じゃいないんじゃないかなぁ。この映画も当時上映されたときはあまり評判はよくなかったそうなのですが、なんでだろ?面白いけどなぁ。時代的に受け入れられなかったのかな?財産をめぐる争いってよく2時間のサスペンスドラマで描かれてますけど、ここまで練られた作品にはお目にかかったことがない。このタイトル通り男と女も絡み合ってるし、それぞれの欲も絡み合ってる。そのからみ合いが非常に面白い作品でした。そうそう・・・余談ですが、芳村真理さんって若い頃獅子舞みたいな顔してたんですねぇ。(爆)

2002年11月2日(テアトル梅田)

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『たそがれ清兵衛』(2002年/松竹)

監督:山田洋次。
出演:真田広之。宮沢りえ。小林稔侍。大杉漣。吹越満。

庄内地方の海坂藩士井口清兵衛は、禄高50石の下級藩士。妻を病で亡くし、二人の幼い娘と呆けた老母の世話をするために勤めが終わるといつも真っ先にまっすぐ帰宅していた。そんな彼についたあだ名は「たそがれ清兵衛」。
誰から何を言われようと貧しく生活が苦しくても幼い二人の娘の笑顔と共にある今の暮らしに彼は満足していた。そんな彼が密かに想いを寄せる親友の妹の朋江は酒乱の夫と別れ実家に戻っていた。ある日無理矢理に離縁の手続きをしたと朋江の兄に決闘を挑む前夫に身代わりを申し出、あっさりと彼を打ち負かせてしまう。そのことがきっかけで上意討ちの打ち手に選ばれてしまう。
さわやかな優しい映画でした。出演者がみんないい。みんな巧いしはみ出てないんですよ。特に宮沢りえさん・・・いい女優さんになったねぇ。清楚で、でも凛としていて・・・朋江という人物にぴったりだ。そして小林稔侍さん。嫌いな俳優さんではないんですが、テレビドラマで主役級の役をやりだしてからどうも芝居に臭さが感じられて最近はあまり見たくないって気がしてたのですが、この映画の彼はいい。元々の巧さを見事に醸し出してます。クライマックスの殺陣のシーンは前評判通りすごい。まさしく死闘ですね。この死闘があるからこそラストシーンが余計に締まってる。大きく感動というのではなくなんだか胸がキュンとしてしまう。
大切なものはなんですか?幸せってどんなことなんですか?少し考えてみませんか?そんな映画でした。
ただ・・・陽水さんの主題歌・・・いかがなもんでしょうか・・・。私はエンドクレジットに流れるあの歌を聴いて首かしげちゃった。

2002年11月4日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『昨日消えた男』(1941年/東宝)

監督:マキノ雅弘。
出演:長谷川一夫。山田五十鈴。高峰秀子。徳川夢声。

嫌われ者の大家の勘兵衛が何者かに殺害された。長屋の住人が集められ取り調べが始まるが、業つくで長屋中の者に嫌われていた勘兵衛は誰に殺されたっておかしくはない人物。まず、みつかった勘兵衛の死体が柵にひっかけられカンカンを踊っているようになっていたことから日頃からあんな奴たたっ殺してカンカン踊らせてやると息巻いていた文吉が疑われるが、遺体には刀による刺し傷があり勘兵衛に借金の返済を迫られていた浪人篠崎にも嫌疑が・・・。ところが殺害現場にはふたつの簪。それぞれに不審な行動をする長屋の住人たち・・・。アメリカの名探偵映画『影なき男』の時代劇版だそうです。
『昨日消えた男』なんてタイトルだからまさか「遠山の金さん」だとは思わなかった。しかも悪人やっつけて大暴れなんてのじゃなくって、「名探偵金さん登場」という感じの作り。推理サスペンスにすっかりはまっている人には、ちょっと物足りない推理劇かもしれないけど、推理時代劇という面白いパターンだし、なんでもこの映画撮影期間が9日間という最短のもということだから、それを考えると非常に面白い作品じゃないかな。いつも口喧嘩している長谷川一夫さんと山田五十鈴さんのやりとりが妙にかわいかったし。それにしても昔の時代劇って落語の要素がすごく入ってるんですねぇ。駕籠かきの二人なんてそのまんま落語の登場人物だし、確か死人にカンカン踊らせるって話しも落語にあったような・・・。おまけに舞台も落語によく出てくる長屋だしね。

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『なつかしい風来坊』(1966年/松竹)

監督:山田洋次。
出演:ハナ肇。有島一郎。倍賞千恵子。

ある日持病の痔で早退した衛生局防疫課に勤める早乙女は電車の中で土方の源五郎と知り合う。少し酔って大声で話し掛ける源五郎を迷惑に思いながらも妙に惹かれるものを感じた早乙女はその後、同僚の送別会の帰り茅ヶ崎駅のタクシー乗り場で源五郎と再会。送別会ですっかり酔っていた早乙女は源五郎と意気投合し、その日源五郎を家に泊める。それから時折早乙女の家を訪ねてくるようになった源五郎は早乙女の苦手な大工仕事や力仕事を引き受けすっかり早乙女の家庭に馴染み、早乙女のいい友人となっていく。そんなある日源五郎は海に身投げをした愛子という娘を助け早乙女家に連れて来る。しばらく早乙女家で愛子の面倒をみることにするが、いつしか源五郎は愛子への想いを募らせる。しかし不器用な源五郎の行動が仇に・・・。
「寅さん」の原点のような作品ですごく面白い。早乙女役の有島さんがすごくいい。飄々と笑いをとるのは本当にこの人うまいですよねぇ。『暴れん坊将軍』の爺そのまんまでした。肉体労働者の源五郎とうだつのあがらない公務員の早乙女。この二人のさりげない友情がなんだかすごくいいんですよねぇ。さわやかで後味のいい作品でした。そして、私がこの作品をすごく気に入った理由が別にあるんですよ。それは、うちにもいたんですよ「なつかしい風来坊」が。私の父親の友人なんだけど、日雇いの労務者らしくって一体どこでどうやって知り合ったんだか私が小学生の頃の話しなんで全然わかんないんですが、たま〜にうちにやってきてうちの親父と酒飲んでしゃべって帰っていく。なんでも手元に金が入るとふらっとうちに遊びに来てたそうだ。いつもにこにこと優しい気のいいおっさんでした。酒が入ると必ず「聞くも涙語るも涙の物語・・・」って出だしで話しがはじまる。この映画でもこのセリフがあったんで違う意味で大笑いしちゃった。

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『新篇・丹下左膳 隻眼の巻』(1939年/東宝)

監督:中川信夫。
出演:大河内傳次郎。山田五十鈴。高峰秀子。

明石六万石を敵の狙う三之介は大名行列に斬り込む。助太刀の丹下の名を呼びながら。その頃丹下は右腕を切り落とされた姿で必死に三之介の元へと急ぐが、到着した頃はすでに行列も三之介の姿もなかった。そして丹下を待ち受けていた刺客に右目を斬られ橋のたもとに倒れる丹下。やがてその橋を通りかかった吉野屋に助けられ、傷が癒えるまで吉野屋にやっかいになる。その頃三之介は丹下が裏切ったと思い一人明石六万石を相手にする覚悟を決め、またしても参勤交代の道中を狙うことにするが・・・
右腕を切り落とされた姿で走る丹下左膳の両目が開いている。そしてつぶされてしまう右目。おぉ!それで右目を失ったのかぁ!と納得していたが、じゃ、右腕は?いきなり大名行列に斬り込む所からはじまったから、映画のパターンとしてよくある後ろを先に描いて前の話があとから出てくるものなんだなと、安心して観ていたら・・・あれ?いつまでたっても右腕の話しは出てこないし、なんで明石六万石が敵なんだかも出てこない。おまけにラストは立ち回りのシーンの途中でいきなり「終」って出て終わっちゃうし・・・。なんなんだよぉ!一体。とネットで調べてみると・・・。あ・・・なるほどこの映画の前に『新篇・丹下左膳 隻手篇』ってのがある。そっかこれ『新篇・丹下左膳 隻眼の巻』だもんね。そしてこのあとのは調べてないけど、多分もう一本あるんだろうね。つまりは3個1。でもこれ1本しか放映してくれないってことはあとの2本はフィルムがない・・・なんてことじゃないでしょうねぇ。だとしたら最悪。あ〜ん・・・気持ち悪いよぉ!グスン・・・『丹下左膳餘話・百萬両の壷』で大河内傳次郎さんの丹下左膳がすごくよかったんで、『丹下左膳餘話・百萬両の壷』だからよかったのか、どの映画であっても大河内傳次郎の丹下左膳がいいのか確認したいと思ってたら運よく早速CATVで観ることが出来ると喜んで録画したのに・・・。まさかこんな中途半端なことになるとは・・・。ま、大河内傳次郎の丹下左膳がいいという確認は出来たからよしとするか・・・。でもネットであれこれと調べていると大友柳太朗さんの丹下左膳もいいと目にする・・・う〜ん・・・ってことになると大友版丹下左膳も観てみたいなぁ〜。(^^;)

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『緋牡丹博徒 お竜参上』(1970年/東映)

監督:加藤泰。
出演:藤純子。菅原文太。若山富三郎。嵐寛寿郎。

数年前、渡世の成り行きから死に追いやってしまった者の娘お君を探すお竜は、ある賭場で知り合った渡世人青山からそれらしい娘が浅草にいると聞き、浅草の鉄砲久一家に草鞋を脱ぐ。鉄砲久一家は浅草六区の小屋を仕切っていたが、同じ浅草を縄張りとする鮫州政一家はなんとかその利権を鉄砲久一家から奪おうと数々の罠を仕掛けるがことごとくお竜に阻まれる。そして追い詰められた鮫州政一家は最後の手段に出るが・・・。
く・・・口惜しい・・・今まで何本かの古い映画を観てきて多少のコマ落ちやフィルムの不備はあったが、ここまでひどいのは初めてだ。コマ落ちが多すぎてストーリーのつながりがわかりにくいし、ラストの一番いいとこでフィルム切れちゃった(泣)。ラスト文太さんなんて言ったんだよぉ!!一番かっこいいシーンのはずなのにぃ・・・。「緋牡丹」シリーズでは最高の作品だということですごく楽しみにしていたのに。映画の良さすごくわかりづらいよぉ。古い映画はこれがあるからつらいですよねぇ。あぁ・・・なんか消化不良だ(苦笑)。もう一度ちゃんとしたやつ観たいな。でもこのシリーズの癒し系キャラの熊虎の親分はいつ観てもいいなぁ。フィルムがひどすぎて熊虎親分しか印象に残らなかったよ(笑)。しかしこのフィルム上映するたびに短くなってんじゃないだろうか?(^^;)

2002年11月24日(扇町ミュージアムスクエア)

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『宮本武蔵 巌流島の決斗』(1965年/東映)

監督:内田吐夢。
出演:中村錦之助。高倉健。木村功。三国連太郎。

宮本武蔵5部作の最終作。一乗寺下り松で吉岡一門を葬った武蔵は、年端もゆかぬ吉岡源三郎を斬ったことにわだかまりを残し新たな修行の旅にでる。そしてそこで父を亡くした少年伊織と知り合い、暫く彼と共に荒地を耕し農作業に打ち込む。農作期も終り米を納めた頃村を襲った野盗を撃退した武蔵はそのまま伊織を連れまた新たな旅に出るが、そこで細川家の剣術指南となった小次郎と再会。巌流島での宿命の対決の幕が切って降ろされる。
確かに5部全部通して観ないと面白さは半減されるかな。でも冒頭今までのあらすじがざっと語られるのでこの作品だけポツンとひとつ・・・という違和感はあまり感じない。でも前作の一乗寺下り松の73人斬りのシーンはしっかりと観てみたいな。この作品何がいいって健さんの小次郎がいいよ。健さんってかっこいい主役ばかりだけど、案外この人悪役似合うんですねぇ。ちょっといけずそうな雰囲気がすごくいい(笑)。三国さんの沢庵和尚もすごくいいし、この作品はキャスティングがいいですよねぇ。しかし今から考えるとすごいキャスティングだ。こんな作品にはもう2度とお目にかかれないだろうな。やはり、チャンスがあれば5部作全部通して観たいですね。5部作まとめてDVDにでもなれば絶対に買いたいな。原作に忠実な濃厚な作品でした。

2002年11月24日(扇町ミュージアムスクエア)

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『世界大戦争』(1961年/東宝)

監督:松林宗恵。
特撮監督:円谷英二。
出演:フランキー堺。乙羽信子。星由里子。宝田明。

戦後18年。焼け野原と化した東京はすっかり復興し、人々は日々の小さな幸せのために働き暮らしていた。戦後裸一貫で1軒の家を持ち妻と子供三人とつつましく暮らすアメリカ・プレス・クラブの運転手田村茂吉。結婚を約束しあう田村の娘冴子と二階に間借りする貨物船笠置丸の通信技師高野。胃潰瘍の手術で九死に一生を得て保母である娘と子供達に囲まれて生きることを素晴らしさを噛み締める笠置丸のコック長江原。平和であればこそ積み上げられる人々の暮らし。しかし世界情勢は同盟国側と連邦国側の一触即発の状態を続けていた。各地で起こる小競り合いに日本政府はひたすら平和と停戦を呼びかけ続けるが・・・。
古い邦画に興味を持たなければ絶対に観ることのなかった映画だが、この作品を観ることが出来て本当によかったと思う。主人公が言う「間尺にあわねぇ・・・」もう本当にその通りだ。日々慎ましやかに小さな幸せを噛み締めて生きる人々とは、まったく関係のないところで戦争が起こり、その幸せが踏みにじられる。こんなにも見事に平和を謳った映画は他にはないのではないだろうか?戦争勃発を知り、無線で語り合う高野と冴子「コーフクダッタネ……」このあたりからもう涙腺ゆるみっぱなし・・・。物干し台に上がり怒りをぶちまける茂吉。海上から東京へ戻る船の上でぽつりとつぶやく江原「人間は、素晴らしいものだがなぁ、一人もいなくなるんですか・・・」そしてラストのテロップ「この物語はすべて架空のものであるが、明日起こる現実かもしれない」日本らしい・・・日本だからこそ描ける映画だと思う。昨今ハリウッド映画で使われる核爆破のシーンに対する文句をよくみかけますが、この映画を観て私は確信しました。どんなに映像技術が発達したってハリウッドには絶対に描くことが出来ない描写なんですよ。破滅する都市、立ち上るキノコ雲・・・そして降り出す黒い雨。何も残らない地上。 唯一本当に核の恐ろしさを知っている日本だからこそ描ける描写ではないだろうか?

2002年12月8日(テアトル梅田)

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『キューポラのある街』(1962年/日活)

監督:浦山桐郎。
出演:吉永小百合。浜田光夫。東野英治郎。加藤武。

銑鉄溶解炉の煙突キューポラが立ち並ぶ鋳物で有名な埼玉県川口市。頑固なまでの職人気質で鋳物工場で働く父と母、そして二人の弟と貧しい路地裏の長屋で暮らす中学生のジュン。ある日母が産気づきまた一人弟が増えるが、父の働く工場は大工場に買収され、数年前に仕事中の事故で足が不自由になった父は解雇されてしまう。酒浸りの父、家計のために飲み屋で働く母、高校に行きたくても今の家の状況では行くことが出来ない。そんな中で一時は自暴自棄になったジュンはやがて自分の考えで一歩を踏み出して行く。
吉永小百合さんの代表作で有名な作品だったので、これは観なければと観たのだが・・・。すみません・・・つまんねぇ!!なんじゃこりゃ?これきっとこの当時だからよかったんでしょうねぇ。全く年代の違う私には全然理解出来なかった。面白くも何ともない。過去の物語として観るにしてもドラマも何にもありゃしない。ただジュンの友人で朝鮮人のヨシエが父親と弟と共に北朝鮮に帰るという場面が、今帰国した彼らの惨状がワイドショーや週刊誌で取り上げられているためになんだか痛かった。この映画の撮影当時は故国で幸せに暮らせるものと信じてたんだよね。鳴り物入りで「がんばれよ」なんて送っているシーンが本当に痛い。

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『東京流れ者』(1966年/日活)

監督:鈴木清順。
出演:渡哲也。松原智恵子。二谷英明。川地民夫。

やくざ稼業から手を引いた倉田組に敵対していた大塚組は、倉田がやくざ稼業から手を引いたと言っても目障りで仕方なかった。そこで倉田が所有しているビルを我が物にし、倉田の息の根を止めようと画策する。しかし倉田の舎弟である「不死身の哲也」と異名をとる本堂哲也によりことごとく阻止される。哲也さえいなければと考えた大塚は倉田に哲也が東京からいなくなればビルから手を引くと持ちかけ、その話しを聞いた哲也は自ら東京を出て行くが、行く先々で大塚の手のものに狙われることになる。
ガハハ・・・。なんてざっくりしたストーリーなんだ。辻褄があわねぇ!(笑)かっこよさがうりの日活映画としてよしとしようか。しかしさすが清順監督。この人の色だけは本当に強いね。セットや衣装がしっかり清順監督してるよ。セットもそうなんだけど、衣装が物語りを完全にはずれてる。大塚の真っ赤なジャケット。あんたキャバレーの呼び込みじゃないんだからいくらなんでもそれはないだろう?おまけに主人公哲也の水色のスーツに白い靴。まるで昔の漫才師だよ。もう衣装だけで笑っちゃったよ。この当時はこれがかっこよかったのだろうか?そしてラストは真っ白なセットに真っ白なスーツに白いネクタイ姿で現れる哲也。あんたはホストか?(^^;)。そしてラストしっかりと女と抱き合いながら、ふと女を離し、「流れ者には女はいらないんだ」って・・・。だったら最初から抱きしめるなよ(笑)。つまんなくはない。だけど物語としての面白さはあまりないよね。それでもこの映画が有名だってのはなんとなくわかるような気がする。不思議な映画だ。

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『壬生義士伝』(2002年/松竹)

監督:滝田洋二郎。
出演:中井貴一。佐藤浩市。夏川結衣。村田雄浩。中谷美紀。

幕末の京都。壬生狼と恐れられた団体「新選組」に一人の男が入隊する。斎藤一がふと目を止めたその男の純朴な外見に似合わぬ優れた剣技は紛れもなく人を斬ったことのあるものだった。その男の名は吉村貫一郎。盛岡の南部藩出身の彼は文武ともに優秀な武士であったが、身分は下級武士、身重の妻と二人の子供との生活は貧しく、家族を養っていくには脱藩し、自らの剣で稼ぐしかなかった彼は、生きるために人を斬ってきた。故郷と家族を心から愛しみ、武士の面子など構わず、いつか故郷に帰る日を夢見て、家族のために金にこだわり、必死に仕送りをする彼に時代は過酷な運命となって勢いよく流れていく。
物語の流れもよく2時間17分と少し長めだがうまくまとめ上げられていると思う。それにロケーションがすごくいい。きれいだ。最近では映画音楽といえば久石譲さんって感じなんだけど、この映画の音楽もすごくよかった。ただどうしても気になった点がひとつ。家族と別れて脱藩する吉村が追いかけてきた子供たちと別れる橋のシーン。雪って踏んだら足跡つくだろ?私の見方が悪かったのかもしれないがついてないんだよねぇ(笑)。え?つまんねぇとこつっこむなって?こりゃ、失礼。いや、あまりにもきれいにまとめられてるんでつい・・・(笑)。あ、あと思い切り笑いそうになったシーンあったなぁ。吉村の幼馴染大野次郎右衛門役が三宅裕司さんだったんだけど、彼の子供の頃のシーンの子役。よくもまぁこんなに三宅さんのイメージにぴったしくる子探してきたもんだ。彼出てきた途端私ツボはいっちゃって笑いこらえるの必死でした。この映画でこんなに不埒な感想書くの私だけかな?(笑)。でもよかったんですよ。感動しましたよ。吉村が官軍に向かって走っていくシーンにはグッと熱いものがこみあげそうになりましたし。ただそのあとは素になっちゃいましたが・・・。隣に座ってた女の子の二人連れは大泣きしてたようです。私がそんなに感動しなかったのは多分正月の特番で10時間ドラマとして放映されたこの物語を観ているせいで、そのドラマと比べて観ちゃってたからでしょうね。

2003年1月19日(ヴァージンシネマズ泉北)

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『ミスター・ルーキー』(2002年/朝日放送他)

監督:井坂聡。
出演:長嶋一茂。橋爪功。鶴田真由。竹中直人。

阪神タイガースの抑えのエースとして甲子園球場でのみ登板し、大活躍をみせる覆面投手ミスター・ルーキー。彼の正体はビール会社に勤めるサラリーマン大原幸嗣。彼はかつて高校時代にエースとして活躍しプロを夢みていたが、肩をこわしその夢を断念していた。そんな彼がひょんなことで知り合った整体師楊のおかげでプロとしても通用するピッチングが出来るまでに回復、しかもその楊が阪神のトレーナーだったため阪神の監督瀬川の前でピッチングを披露することになる。瀬川にプロ入りを進められた大原は今の生活を捨ててプロ野球に飛び込む勇気はなく正体を隠し甲子園でのリリーフに限って登板するパートタイムピッチャーという奇妙な形で入団することになる。ところが彼に東京への転勤の話が持ち上がり、そうなるとミスター・ルーキーとして甲子園のマウンドに立てなくなる。一計を案じた瀬川監督だが、そのおかげで大原の生活は一変することに。
私は大阪人だが阪神ファンではない。だけどこの映画は本当に面白かった。阪神ファンならなおさら熱狂的にこの映画を支持するだろうな。とにかく面白い。特に橋爪さんの瀬川監督がいいんだ。本当にこの人はうまいです。ミスター・ルーキーのライバル東京ガリバーズの武藤役の駒田さんもいい。この人がこんなに芸達者だとは思わなかった。いい味だしてますよ。しかも野球のシーンはしっかりと元プロや実業団の選手なんかを使ってるから無理がないから違和感ないですしね。後半の代打のシーンには私大爆笑。「代打なんていませんよ監督」というコーチに「わしにはもう一人のミスターがいてるんや」と監督が告げる「代打ミスター○○!」おぉ!と彼が出てきて大ウケするのは30代以上に限定されてしまうかもしれませんけどね(笑)。エンドクレジットに流れる「六甲おろし」これ劇場でしかもその観客の半数以上が阪神ファンだったら大合唱になっていただろうなぁ。なんてこと思っちゃいました。アンチタイガースの人には全く受け付けない映画かもしれませんが、この映画の球団を阪神以外には持っていきようがないというのが、どんなに負けても何年、何十年最下位が続いてもファンがいなくならない阪神タイガースの阪神タイガースたる所以なのかも。

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