宇宙空間の広がり                                          岡森利幸   2011/6/3

                                                                  R2-2012/1/14

宇宙が広がっている。しかも加速度をつけて膨張しているという。この発見は近年の宇宙論の根幹を揺るがすほどの大発見であり、専門家の間でも「驚くべきこと」とされている。私も少しは興味を持っている。一般に、物質には引力で引き付け合う性質(重力)があるから、宇宙空間に多数存在する銀河団は、互いに引き合って接近してもいいはずだが、ところが実際は宇宙全体で拡散している傾向にあり、得体の知れない力によってますます離れ離れにされているという。加速度をつけて膨張させるためには、膨大なエネルギーの存在がなくてはならない。その宇宙を膨張させるための力の源として、ダーク・エネルギー(暗黒エネルギー)などと呼ばれているものがあって、そのエネルギーが宇宙を広げ、銀河団などを拡散させていると説明されている。しかし、宇宙が膨張すれば、そのエネルギーは減っていくはずなのに、加速していることはエネルギーが増していることだから、不思議なのだ。ダーク・エネルギーの実態さえも、まだよく分かっていないのだから、ますます謎が深まる。

宇宙の謎の二つを私が改めて提起すると、

@我々の銀河系は、宇宙の中のどの辺にあるか?

よく分かっていないことといえば、我々の太陽系が属している銀河が宇宙空間の中のどの位置にあるのか、という疑問に対する答えがないようなのだ。太陽が銀河のどの位置にあるかということは、分かっていて、円盤状の銀河のやや周辺にある(中心から約3万光年)という。銀河の中心を(うず)のように回っている。他の近くの銀河と相対的な距離関係は分かっていても、宇宙全体では、わからないというのでは、もどかしい。まさか、われわれの銀河が宇宙の中心にあるわけではないだろう。

A宇宙はほんとうに加速度をつけて膨張しているか?

加速度をつけて膨張しているという根拠は、宇宙の果てにある星の光を地球で観測すると、それが遠くにあるほど、その波長が長くなっていることから来ている。光が赤方偏移を起こしているわけだ。それは星が遠ざかっているときに起きるドップラー効果によるものと一般的に説明されている。つまり、光が赤方偏移がドップラー効果によるもので、その遠ざかる速度も計算でき、遠い星ほどその速度が速いというのだ。

 

ただし、赤方偏移に関しては異論があり、光が何億年も地球に到達するまでに、「光がくたびれてしまう」説*1もあるという。光はその強度を減衰するとともに波長も長くなるのだというものだ。つまり、その星が遠ざかっているためではなく、単に星が遠くにあって、長い距離を旅する間に、光の波長が長くなっているのだろうという説だ。地震波にしても、震源が遠ければ、その波長(揺れの周期)は緩やかに感じられるものだから、それもありうるかもしれないと考え、私もその説を支持したい気持ちをいだいている。宇宙の最も遠いところにあると観測される星が発した光が、同心円状に広がり、100億年以上もの長い間(ビッグバン直後に発した光で、最大で137億年とされている)、とてつもなく広大な宇宙空間を通りながら、何も変化せずに地球まで届く方が奇跡的だろう。

赤方偏移がドップラー効果によるものだという根拠の一つに、超新星爆発の観測データがあるという。超新星爆発は、星が急に明るく輝き始め、二週間すると消えてしまう現象だ。その赤方偏移が大きいと、3〜4週間もの間、輝き続けることが観測されている。それらの超新星と地球の距離が異なっていても、速度が相対的に一定ならば、二週間で消えてしまうはずだという。最初の1日目に発した光と14日目に発した光が、同じ経路をたどり、同じ距離を走ったのに、2週間以上の時間差があって地球に届いたとしたら、おかしいことになるという。光の速さに遅い早いがあることになってしまう。実際に3〜4週間も長く見えることがあるのは、その超新星が地球から遠ざかっているものと解釈されている。

しかし、光が、遠距離を伝わる間にまのびしてしまうと考えるならば、光の始点と終点との時間差が生じ、地球ににおいては3〜4週間も長く光って見えることになりそうだ。光は、あるサイズを持った空間に詰め込まれた光子の集団とすると、その集団が遠距離を進むにつれ、その空間サイズは大きくなり、光子の数も位相も薄まる。光子間において時間的な早遅も発生しそうだ。遠距離を進めば、光の速さに遅い早いがあってもいいと私は思うわけで、「光がくたびれてしまう」説を捨てきれない。それならば、ダーク・エネルギーが膨張を加速しているという「苦しい説明」も不要になる。つまり、遠い星の赤方偏移の理由は加速して遠ざかっているからというより、単に遠いせいだとも思えるのだ。私の仮説を実験的に確かめるには、遠距離を行く光の速度を測ればいいが、それを測定できる精度のいい方法や装置があるだろうか。

ともかく、「光の速さに遅い早いはない」という前提に立って、宇宙は加速膨張しているという定説が導かれているわけだ。天文物理学者たちはこの加速的膨張に関して、ほかにも証拠があり、矛盾していないというから、やはり、宇宙の現状は膨張し、その中の星々(特に銀河間で)が散り散りばらばらになりつつあると考えるべきなのだろう。個人的な疑問はあるにしても、宇宙全体もダイナミックに動いているわけで、その先の遠い将来において、さらに膨張するか、収縮に転ずるかはわからないというのが、一般的な宇宙論のようだ。気分的に、宇宙がしぼんでしまうよりはよい。

 

*1. 参照「日系サイエンス2005−06、ビッグバンをめぐる6つの誤解」

 

 

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